玉藻側との同時投稿になります。
唯野との決別。
数年間住んでいた寮への巣立ち。
安全な衣食住を求めて俺は親子のサーヴァントと共に歩き出す。
「もう少しで自衛隊駐屯地に着くな」
「でも、本当になかに入れてくれるのかな?」
「もし、無理なら別の場所を探すしかないけど」
「心配すんなって。こんな世界だとサーヴァントは貴重な戦力で喉から手が出るほど欲しい。むしろ優遇してくれるさ」
秩序も政権もないこんな世界では力が絶対で、サーヴァントの数だけ防衛力にも繋がる。自衛隊もそれくらいは嫌でも理解しているはずだからサーヴァントを保有するマスターを野放しにはしない。
『グランドマスター、目的地付近にて戦闘音が聞こえます』
「戦闘……イリヤ、アイリ、走るぞ。自衛官を助けて恩を売るチャンスだ」
もしかしなくても自衛官が化け物と戦っているのだろう。
ルビーがナビゲートする関係上、イリヤが先行してアイリは背後からの奇襲に警戒して俺の後ろをついて行くように進んでいく。
戦闘している場所に着くと──
「がぁあぁぁあ!」
絶叫にも似た声が聞こえて、声の場所まで行くと自衛官が数名いて民間人である学生を保護している。自衛官の一人は肩を負傷していて残った自衛官が治療して、学生は戦場の空気に気圧されて恐怖で震えていた。
そこから十数メートル先ではサーヴァント同士が戦闘していた。
一人は真紅の剣を手にした赤く豪奢な舞台衣装を来た少女──ネロ・クラウディウス。
一人は手に札を持ち、露出度の高い青い和服に狐耳と大きな尻尾の女性──玉藻の前。
「マスター、どうすればいいかしら」
「どっちが敵か味方か分からないよ、お兄ちゃん」
恐らくだが、ネロと玉藻のどちらかがあそこにいる自衛官たちと学生の誰かがマスターだろう。
援護するのは簡単だが、ここで下手に攻撃するのは得策ではない。情報が一切、分からない状態で変に水をさすことできないし、間違えて自衛官たちのサーヴァントを攻撃して敵対するのは避けたい。
「ネロ……ネロ……ネロォォォォ!」
「ご主人様!くっ、ネロさん邪魔しないでください!」
古代の鎧を身に纏うサーヴァント──カリギュラが集団で固まっている自衛官に向かって走り出していて直ぐ様、指示する。
「イリヤ、カリギュラに向かって魔法弾を撃て。アイリは使い魔で拘束しろ」
「フォイヤ!」
「行って、シュトルヒリッター」
イリヤがルビーを振るって魔法弾を放ち、カリギュラに当たって怯むと上空に飛んでいたシュトルヒリッターが降下しながら自身の身体を解いて針金となって縛りつけた。
「よし、いいぞアイリ。自衛隊の人を助けるぞ」
「わかったわ」
魔力で練り上げた針金とはいえ、バーサーカーの腕力ではものの数秒で引きちぎるだろう。
それでも十分な時間稼ぎで急いで自衛官たちに合流すると学生がイリヤとアイリを見て、口を開いた。
「イリヤとアイリ?」
「そっちの人は怪我してるんだよな?アイリ、医療魔術で手当てしてくれ」
「あ、あの。玉藻……剣を持った赤い人は敵です」
「ネロが敵だな。イリヤ、援護にいけ」
「わかった。いこうルビー」
『お任せあれ』
イリヤはカリギュラの相手をしてアイリは怪我をした自衛官に医療魔術を施す。
「あんた、玉藻の前のマスターか?」
「は、はい。
「二ノ宮シロ。イリヤとアイリのマスターだ」
「二人がサーヴァント?それに複数の契約は……できるといえば可能だけど」
「FGOやってないのか?」
「はい、EXTRAシリーズはやってますが」
「なら、簡単に説明するとイリヤとアイリはFGOだとサーヴァントになっているんだよ」
「そうなんですか。二人分のサーヴァントと契約して魔力は持つんですか?」
「ダルいとか気分が悪くなるとかそういったのはないな」
「マスター、治療が終わったわよ」
結羽くんとの話をしていると怪我をした自衛官の治療を終えたようで肩に触れて痛みを感じないことを確認している。
「ありがとう。これで駐屯地に戻らずに行動できる」
「お礼はいいわと言いたいけど、実は私達は安全な場所を探していたの。できればチュウトンチという場所に匿ってもられないかしら?」
「それは勿論だ。あとで本部に連絡しておく」
「なら、さっさとあいつらを倒すか」
「ねぇ、マスター」
「どうした?」
「イリヤと玉藻の前が戦っている大男からサーヴァントとマスターの気配がするの」
カリギュラからマスターの気配?いや、それはおかしい。カリギュラはバーサーカーのクラスのサーヴァントでマスターになるのは不可能だ。
(落ち着け、英霊を召還するとき触媒や相性以外に特殊な英霊も存在する)
カリギュラがなぜ、マスターなのかは置いといて英霊召還についてもう一度、復習しよう。
英霊は通常の召還以外に特別な方法もあって、英霊の持つ負の側面が召喚者の干渉や強力な呪いによるオルタ化。
全盛期前の能力で召還される幼年体。
英霊や神霊を現世の人間に憑依させてサーヴァントにする疑似サーヴァント。
複数の神話エッセンスを合成して作られた人工サーヴァントと呼ばれるハイ・サーヴァント。
英霊の力を自身の体を媒体に具現化させて一時的にデミ・サーヴァント化させるクラスカード。
他にも様々な召還方法があるが今、思い浮かべられるのはこれくらいだ。
「FGOのイリヤは原作じゃなくて、プリズマ☆イリヤだから……アイリ、イリヤと交代してネロと戦え」
「どうしてイリヤと交代するかは今は聞かないでおくわ。あとでちゃんと説明してね」
ふわりと浮遊してネロのほうへ向かって行き、魔法弾や針金を練り上げて造りあげた剣を宙に浮かせて投擲したりしている。
途中で交代してイリヤが戻ってきた。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「イリヤ、大男……カリギュアはネロのマスターなんだよな。それとルビー」
『マスターの考えている通りですよ。大男はクラスカードでデミ・サーヴァントになってます』
ルビーの説明通りネロのマスターはクラスカードによる一時的なデミ・サーヴァント化している。
バーサーカーのクラスカードは徐々に使用者本人の理性が奪われて狂戦士と化してしまう。これによって解除が出来なくなって暴れ続けていたのだろう。
「理性のない狂暴性はバーサーカーのクラスカード。それならネロを抑えつつ、二人で叩く。結羽くんのサーヴァントでネロを任せていいか?」
「わかり……いえ、バーサーカーは玉藻に任せてください」
キャスタークラスとはいえ二人がかりならセイバークラスと対抗はできるが耐久が低い玉藻は倒されるのではないか?
一応、ながらステータスを確認して見ると目を疑う話じゃなかった。
(なぜ、玉藻のステータスがオールAなんだ!?)
サーヴァントは基本ステータス以外に土地、知名度、マスターの能力によって補正がかけられる。
玉藻の前のステータスは筋力と耐久はEランクで俊敏がBランク、幸運Dランク。キャスターの主力となる魔力はAランク。
俺たちがいる場所は日本でアイリとイリヤに比べれば、土地と知名度補正によってランクは上がるがステータスがオールA以上になるのは異常。
「耐久があるがこのままだと死ぬぞ」
バーサーカーであるカリギュラの猛攻にかわしきれず拳を受けているが耐久Aランクのおかげで死ぬことはない。
だが、このまま何もしないと本気で死ぬことになる。
「玉藻は俺の命令に何一つ言わず、黙って従ってくれた。だから俺は──」
手のひらにある令呪が赤く発光している。
「令呪を持って命ず!玉藻の前、殺生石を使ってカリギュアを倒せ!」
「いざや散れ、常世咲き裂く怨天の花……
「がぁぁぁあぁあぁぁ!!」
毒の波動による強力な呪術にカリギュラは耳鳴りがしそうなほどの叫び声をだして前へと倒れこむ。
カリギュラの格好が消えて作業服を着た男性の姿に戻って手元にはバーサーカーの絵が描かれたクラスカードが落ちていた。
「俺は……ごふっ……みんなを守ろうとしてたのに……みんなを殺して……関係ない人も殺して……」
「マスター!」
イリヤとアイリと戦っていたネロは敵に背中を見せて隙を与えるにも関わらず、自身のマスターの元に駆け寄り、二人も後ろからついてきた。
「ママ、これどうにか出来ないの!?」
『無理ですよ、イリヤさん。純粋なサーヴァントでしたら可能性はありましたけど、生身の人間がサーヴァントの魔術を食らえば簡単に死にます。息があるのが奇跡なくらいですが長くは持たないでしょう』
「ルビーは黙って!ねぇ、ママは治せるでしょう?お兄ちゃんの傷だって簡単に治せたんだから」
「ごめんなさいイリヤ。こんな死にかけるほどになる怪我となると手の施しようもないわ」
令呪によるブーストした強力な呪術はデミ・サーヴァント化した身体では耐えきれなかった。
「なあ、あんたはこのクラスカードは何処で手に入れたら?」
「偶然、見つけた……ネロ一人だと仲間を守れないから俺も戦って……」
「そうか、俺はシロ。あんたの名前は?」
「鈴木……ごふっ、がはっ……」
「わかった、鈴木さん。アイリが言うにはもう無理らしいが介錯しようか」
助からないうえに毒に侵されたまま死ぬのは辛い。せめて苦しまずに手をかけようとしたが首を振った。
「いや、いい……坊主、名前は?」
「結羽です、甘木結羽」
「襲ってきた上に不躾なことを言うが……ネロを頼む」
「頼む?」
「令呪……命ず。ネロ、契約、切れ」
「そんな、マスター!」
手の甲に刻まれた鈴木さんの令呪が発光して契約が切れるとネロは現界を保てず消失していく。
「さらに、命ず……結羽と契約しろ。最後の令呪によって、命ず……この令呪をネロの魔力に!」
残り二画の令呪を使ってネロを結羽くんに契約させると手の甲の令呪が消えてなくなると同時に息を引き取った。
結羽くんの手のひらから新たに令呪が刻まれるとガクッと足を崩して肩で息をしていた。
「ぐっ、玉藻とネロの同時契約で魔力が吸われて……」
「ご主人様!わ、私も身体が重く……」
「令呪を持って、命ず。玉藻に魔力を。さらに命ず、ネロに魔力を。玉藻、霊体化……」
「は、はい……」
二画使い、魔力ブーストしてから玉藻を霊体化させて魔力消費を少しでも抑えるのは良い判断。
ネロは迷子になった子供のようにフラフラと足取りが悪い。
「マスター、何処におるのだ。余を置いて行くのは……ぐっ、うぅ……頭が痛い」
「ネロ……大丈夫、俺がいるから、勝手にいなくならない、から……」
「マス……そう、しゃ……」
「おい、しっかりしろ!」
戦場の空気に限界がきたのか倒れてしまう。自衛官は結羽くんの脈拍を計っていて命に別状はないとのことでひと安心した。
「先ほどは感謝する。俺は第5普通科連隊第4普通科中隊第2小銃小隊第2分隊隊長の加島二等陸曹」
「これはご丁寧に。では、改めてまして俺は二ノ宮シロ。こっちはイリヤとアイリだ」
「アイリと言います。この子は娘のイリヤです」
「イリヤって言います。その、魔法少女やってます」
魔法少女の格好をしていて、はにかむように笑っている。手にしているルビーは自分もいるよとアピールしてグニャリと曲げる。
『ルビーちゃんもいますよ~これからよろしくお願いしますね~自衛官さん』
「サーヴァントという強力な人に魔法少女、さらに杖まで喋るとは。もう何でもありだな」
色々なことが一気に起こり過ぎて諦め気味に呆れている。
鈴木さんの遺体は加島さんの部下が運んでくれるらしく、俺は結羽くん、加島さんはネロを背負って近くに駐車している自衛隊車に乗せてもらい、自衛隊駐屯地まで走らせる。
「二ノ宮さん、さっきは聞けなかったが持っているそれは明らかに違法改造した猟銃だよね?」
「うぐっ……できたら目を瞑ってくれるとすごく助かるのですが」
「残念ながらそれは看過できない。悪いがこちらで預からせてもらおう」
ここでを拒否してあとから面倒くさいことはしたくない。しぶしぶと猟銃を渡した。
「話がはやくて助かるよ。民間人が駐屯地で銃を持ってると色々と問題になるからわかってほしい」
「違法改造したことはやっぱり裁かれますよね?」
「そこはなんとかしよう。最悪、執行猶予付きで話をつけるように説得する。猟銃に関しては諦めてくれ」
手元に戻らないという事実にガックシと肩を落とす。わかっていたとはいえ、改造銃の所持は法律違反だから有罪判決されても文句は言えない。
「それにしてもクラスカードか」
持っているクラスカードを親指でなぞり、眺める。
美遊がいた世界の聖杯戦争ではサーヴァントではなく、クラスカードを使って戦闘をしていた。
(聖杯が存在しないのにサーヴァントとクラスカードが同時に出現。これはなにかしら問題が起こりそうだ)
バーサーカーを除く残り六枚のクラスカードは誰かが持っていると考えて、その人はマスターであって、サーヴァントもいるだろう。
そう遠くないうちに規模の大きい争いに巻き込まれるかもしれない。
どうしてサーヴァントを二人契約した結羽が倒れてシロはなんともないのはサーヴァント側に問題があります。
シロはイリヤと契約したことによって同伴しているルビーの魔力を無限に供給できる能力のおかげでアイリと契約しても問題なく、行動できます。
しかし結羽はマスターとして優秀でもサーヴァント二人分の魔力をまわす分は持ち合わせてませんでした。
まあ、複数のサーヴァントと契約する時点で異常ですけど。
良妻狐視点もありますからそちらもご覧ください。