僕のお兄ちゃんが大概変態野郎だったのは知っていたけど、まさか僕を女の子にしてくるとは思わなかったよチキショーめぇ!な物話 作:らいじゅう
女の子生活二日目を迎えたその日。
目が覚めてから僕は頭が死ぬほど痛かった。別に病気とかではない。寝不足とかでもない。寧ろ死ぬほどよく寝れた。朝までばっちり熟睡だったよね。泥のように眠るっていうのかな。そう昨日は━━━━━━。
『フォンセ様っ』
━━━━━どっかの執事に犯し尽くされて、力尽きてぐっすり寝たからね。はっはっはっー。
「ふぉおあああああぁぁぁぁああああぁあっああ!!」
寝たからね!じゃないからぁぁぁぁ!いやぁぁぁぁぁぁ!!ふぉあああああああ!!ぬうぉああああああ!!あーーーーームリムリムリムリムリムリ!現実を受け止め切れないぃぃぃぃぃぃ!!チンコぶっ刺されてますけど!?僕、男のチンコをマンコにぶっ刺されてますけど!?男なのに!!いや、男なのにチンコないけどぉ!あーーーわけ分からん!チンコなかったら、女じゃん!女じゃないけど!僕は男だけど!今は女だけど!自分でも何言ってるのか分からんくなってきた!なにこれ!?なにこれ、なにこれ、なにこれぇぇぇぇ!?
昨日の情事を思い返すだけで顔が熱くなる。アホみたいに甘い声を出して、ストラーフにキスまで迫って、なんであんな事しちゃったのか分からなくて本気で困る。仕方なかったとはいえ、本当に嫌だったのに。僕の予定では本当にちょっとだけ、本当の本当の本当に必要だけして止めるつもりだったのに。
言い訳ではないけど、リェレンにキスされた辺りから、僕の何かがおかしくなったんだ。そうリェレン・・・・リェレンにキス、リェレンに、リェレン・・・そういえば、なんかあの時、リェレンの、だ、だえ、唾液がやたらと甘かったような・・・お風呂の時と違ったような・・・?ん?まぁ、良いか。それは。別にリェレンが悪い訳じゃないだろうし・・・はぁ。
でも、今日はどうしよう。
昨日のことはもう忘れる・・・いや、全然忘れられないけども。少しも忘れられないけどもさ。でも一旦置いておいて、僕は今日もあれをしなくちゃいけないのだ。考えただけで恥ずかしくて死ねる。というか、男に抱かれるのむりぃ。本当、もう一回とかむりぃ。頭パァンが嫌だから、結局はやらないとなんだけど、でも今からそれを考えるのは本当にムリなのだ。
ストラーフは本当に優しくしてくれた。痛くしないように気を使ってくれて、それこそ本当の女の子を相手してるみたいに。だから、行為自体に苦しさや辛さがあったわけじゃない。嫌悪感と羞恥する気持ちさえなければ、それは気持ち良かったとも言える。でも肝心の二つは消えるどころか頭の中で大きくなる一方だったのだ。
次は色々と持たない気がする。主に心が。
リェレンはどんな形でも良いから体内に精液を貰えっていったけど、それってご飯に混ぜて貰うとかムリなのだろうか?いや、食べたくないよ?そんなもん。でもそうしないと頭パァンなんだよ。あっ、いや・・・なんか駄目そう。そもそも、性的欲求がどうとかいってたからなぁ・・・男の性をだけとか意味ないんじゃ。じゃ、じゃぁ、二つを分けて、こう上手く意識出来ないやり方を━━━━無理な気がする。うん。無理だな。なんとなく分かる。リェレンにキスされた後、体がアホみたいに火照った。慰める為色々してたけど、体が熱くなる一方で全然スッキリしなかった。寧ろあれは逆効果だった気がする。
それから暫くあれこれと方法を模索したけど良い考えは浮かばず、リェレンに朝ごはんに呼ばれて僕は一旦考えるの止めて部屋を後にした。
ストラーフに気を使われながら食べた気まずい朝御飯タイムが終わった後、僕は兄貴の書斎に向かった。例の件で何か良い方法はないか調べる為だ。兄貴が調べてくれてるのは分かってるし、兄貴が調べている以上僕みたいな凡人が調べるなんて効率が死ぬほど悪い無駄なことなのは分かる。だけど何もしないのが辛いのだ。ただやられるがままやられるとか、本当キツイ。
書斎に入ってから少し。
魔法に関する書籍を開いていると溜息が聞こえてきた。部屋にいるのは僕と僕の世話係のリェレンだけなので必然それはリェレンのもの。視線を溜息の聞こえた方へと向ければ、呆れた顔をしてるリェレンが視界に入る。
「まったく、無駄な足掻きを。旦那様が分からない事をフォンセ様が分かる訳ないじゃないですか」
「う、うるさいな!それくらい分かってますぅ!リェレンは静かにしててよ!もうっ!・・・あっ、この続き探しておいてくれる?」
「それでしたらこちらに」
「うわっ、もうある」
渡された本を開くと通称魔法語と呼ばれるアコル語でびっしりページが埋まっていた。アコル語は数ある魔法言語の中で最もポピュラーな言語で、魔法に溢れるこの国では母国語より覚えて当然のものだ。僕も物心つく頃には母国語と一緒に教えて貰ったから読めるし言える。魔法の才能が無かったから、使う機会はなかったけど。
必要な章を探してページをめくっていくと、一応専門書なのに兄貴の赤文字の直しが幾つも入ってるのが目につく。もうこの時点で望みが薄いけど、読まないで終わりに出来るほど僕は諦めてない。そのまま何十枚ものページをめくっていくと目的の場所に辿り着いた。これと良く似た現象を引き起こす、変性魔法について書かれた章だ。
「んーーーーーーーー」
「どうですか?」
「んーーーーーーーーーーーんんんんにぃぃぃ」
「駄目そうですね」
読んでみて分かった事だけど、変性魔法には大きく分けて二種類あるらしい。一つは体に覆わせた魔力を変化させて着ぐるみみたいに皮を被る手法と、もう一つは魔力によって肉体を直接変化させる手法。それぞれメリットとデメリットはあるんだけど・・・まぁ、取り敢えずそれは良いか。今は解除する方法だ。
どうやら僕に掛かってる魔法は後者の肉体を変化させる物で、魔法としては優れているけど中々に厄介なものでもあるらしい。前者の魔法と違って後者の魔法は文字通り変性させてる。元に戻すも何もない。魂の記憶を書き換え、僕の中に本来ある形を根源から変性させてるのだから。本来は変性前に対象となっている物の記録をサーチとうで取り、元に戻す時の為の備えとするそうだ。何らかの形で記録を失ったが最後、変性物の復元はほぼ不可能。限りなく元の姿に近いものへ変性し直すことは可能だけど、まったく同じ物には出来ないそうだ。
尤も僕の変化は厳密にいえば変性魔法ではなくて、謎生物の分泌液によって起きた別の現象。似て非なるものだ。ただの変性魔法なら僕の記録くらい幾らでもとってそうな兄貴に直せない訳はない。となれば、別の要因があって変性し直せない可能性が高い。魔法・魔術においてこの国トップクラスレベルの技術と知識を持つ兄貴でも研究必須案件なら、これ以上は調べるだけ本当に無駄だ。悔しいけど。
「・・・・・はぁ」
「だから言ったではありませんか。まったく、フォンセ様は、お馬鹿可愛いのがチャームポイントなのですから、呑気にのんびりボケボケなさってれば良いのです━━━あら、口が滑りました。お忘れ下さい」
「忘れられるか!そうやって影で僕の悪口言ってるんだな!もうっ!」
きっと睨みつけてやったけど、リェレンはどこ吹く風といった様子で涼しい表情のまま。そのまま睨み続けているとドアがノックされた。
「おーい。フォン坊、いるか?」
聞き慣れた男の声にムカッとしながら「いるよ」と返すと、無遠慮にドアが開いて腰に銀の剣を提げた真っ黒な制服を身に纏うガタイの良い男が入ってきた。男は短く切り揃えた赤毛の頭をボリボリかきながら、やる気を感じさせない眠たそうな眼で部屋を見渡し僕を見つけると「よぉ」と軽い態度で手をあげる。
「フェイレス様から聞いてたが、すっかり可愛くなっちまって、まぁ・・・いや、でも元から女みてぇにちっこいやつだったからな。逆にしっくりしてんぞ」
「うるさぁい!アガット!誰が女の子みたいだ!僕は男だ!目玉おかしいんじゃないか!」
「いや、見た目はっ、ほっ、本当に女だろ。どっ、ドレス似合ってんぞ。ぷふっ、くくくくくく」
こいつ、笑いやがった!皆を気を使ってくれてんのにぃ!もぅ!こいつぅ!腹立つぅ!
クスクス笑うアガットに心底イライラしてると、リェレンが用件を聞き始めた。するとアガットは少し真面目な顔になって話出す。なんでも僕の仮の服を作ってくれる仕立屋さんがもうすぐやってくるらしい。後ついでに、兄貴が失踪したらしい。兄貴は魔法関連でよく失踪するので、珍しい話ではない。意味不明な事をブツブツ言い始めたら、それが大体失踪する兆しだ。伝言っぽい物を誰かに言ったら、もう失踪開始だ。今回は生徒さんが伝言係になったそうだ。・・・可哀想に怖かったろうな。狂気に染まる兄貴に迫られて。
「まっ、そういう事な。準備しときな、フォン坊」
「分かったよ。でもさ、僕が言うのはなんだけど、さっきのって話す順番逆じゃない?」
僕が思ったことをそのまま口にすれば、アガットはぼんやり窓の外を眺めた。何かを諦めたような何処か遠い目だ。
「ドラゴンを指先一つで捻り殺す人の、一体何を心配せにゃならんのだ。世界の終わりが来たって生き残るだろ、あの人は。心配するだけアホらしい。俺は俺の役目を果たすだけだ」
そういうとアガットは僕の事を見て不敵な笑みを浮かべる。それからがさつに頭をポンポン叩いてきた。
カチンときて力一杯それを払ってやれば、ペシィという軽い音と共にアガットの手が弾かれる。追い払ってやったぞ、と思ってアガットと見たら目を丸くしていた。なんだろ?
「フォン坊、お前・・・・・また一段と弱くなったなぁ・・・・・ぷふっ!たははははは!なんだ今の?ペシィっつったぞ!ペシィって!ははははは!そんなんじゃ蚊も殺せねぇーぞ!お前!いよいよどーすんだよ、つか笑かすなよなぁ!たはははは!」
「なっっっっ!むぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」
腹にキックしてやったが、思ってた以上に頑丈な体で逆にこっちの足が痺れた。痛がると馬鹿にされるので何とか我慢して、復帰と同時に腹パンしてやる━━━━そう、してやったんだけれど、気がついたらそれはアガットの掌にキャッチされてた。
「膨れるなよぉ、悪かったって。笑いすぎた。すまんすまん。しかしよぉ、そんなに可愛い顔されても怖くねぇぞ。たはははは」
「むきぃぃぃぃぃ!なんだよ!もう!離せよ!」
振りほどこうとしたけど、アガットの握力の前に僕の腕の力はあまりに弱くて全然ほどけない。息切れするまで頑張ったけど、腕が痛くなっただけで終わった。肩で息をしてるとリェレンが汗を拭いてくれて、アガットは何が面白いのか僕の掌をふにふにしてくる。猫の肉球触るみたいに。
「もう離せよぉ・・・」
「んっ、お、おう。悪かったな。なんか触り心地が良くてよ。・・・・少しは剣だこもあったってのに、ただのふにゃふにゃした手になっちまったな」
「悪かったなぁ・・・」
そういって睨んてやったら、アガットは珍しく眉を下げた。そして優しい手つきで手を撫でてくる。
「別に責めてる訳じゃねぇよ。ちと、指導してた身として悔しいと思ってな。下手なりにお前も剣振ってたんだ。それが綺麗さっぱりなくなっちまうのはな・・・さっきはからかって悪かったよ」
「っう?うん・・・・まぁ、分かれば良いよ」
いつもと違って殊勝な事をいうアガットに違和感を感じながらも頷けば、今度は頭をワシワシと撫でられた。力が強すぎて首ががっくんがっくんする。怒りたいけど怒るどころじゃない。目が回って気持ち悪くなってきた。
「っふん!」
「だぁっ!?リェレン、てめぇ、何しやがる・・・つか、これ女の蹴りじゃねぇぞ。どんな鍛え方したらそうなんだ」
「フォンセ様を離しなさい、筋肉ダルマ。少しは自分の力が並みではない事を自覚なさい。フォンセ様が目を回しておいででしょう」
「お?あっ、わ、わりぃ!フォン坊!」
申し訳なさそうな声と共に解放された。
わざとじゃないのは分かる。
でも、だ。
「ゆっ、ゆるひゃん・・・・!」
「あっ、ちょ━━━━ったぁ!?」
お返しに魔術書の角で脛を叩いてやれば、流石に頑丈なアガットとも苦痛の声を漏らした。踞って脛をさする姿は滑稽そのものである。
この、アホめが!