私がルフィと再会したのは、スモーカーに届ける書類があってローグタウンに行った時の事だった。本部を離れてる今は、面倒な事に肩書きは大佐でも扱いは少将になる。
その影響から丁寧に私を出迎えるスモーカーに、思わず鳥肌が立ってしまい心の底から素直に気持ち悪いと言ったら頬を抓り上げられた。それにより涙目で抗議した直後に、気晴らしも兼ねて呑気に買い物してた私とルフィは遭遇したのだ。
じっと私を見てくるルフィに首を傾げて、どうしたの?と言った瞬間、その腕は文字通り伸ばされて私をグルグルと拘束した。それが苦しくて、ルフィ!?と名を呼んだ瞬間、やっぱりナミかと言ってルフィは笑った。
それはよく知ってるルフィの笑顔で、少しホッとする。ルフィは何も変わってないらしい。
「ナミは何でそんな格好してるんだ?潜入してんのか?」
「あ、そっか……。私ね、海軍本部大佐なのよ。だからほら〝正義〟を背負ってるの……よ?」
話してる途中で、ルフィの顔と気配が変わって行くのを肌と空気で感じる。どうしたのかと思ったら、ルフィは低く笑って平然と言った。
「なら、奪うしかねェな。俺は……海賊だからよ」
「……ルフィ?」
本能が逃げろと警報を鳴らすのに、私の体は完全に拘束されていて全く動けない。短剣で突き刺すとかすれば逃げられるだろうけど、ルフィに怪我をさせるなんて事を私が出来る筈もない。
躊躇って、迷って、困惑してる間にルフィは私を連れて移動する。そしてメリーに連れ込んだルフィは、私の腰から
「ルフィ、何を……」
「今、ナミの部屋用意して来るから待ってろよ。それは壊せないから、逃げらんねェだろ」
妙に明るく笑うルフィに、いや待てと思う。だって……私を拐ったりしたら、ルフィがどんな額の懸賞金を掛けられるか……!
私はルフィが望むならば、今の地位を捨てる事も本来ならば厭うつもりは無かった。でも、頂上戦争と呼ばれるアレの時、海軍にいた方がいいと思ってたのは確かで……。
私が混乱してる間にルフィは何処かに私の部屋と言う物を作ったらしくて、柵に縛ってある方を解いて部屋に私を連れ込んでしまう。私はそれに動揺を隠す事さえ出来ないままに、抵抗もろくに出来ずに移動させられる。
「ルフィ、どうしたのよ。ルフィが言うなら私は……」
「……海賊に女海兵が捕まったら、普通どうなるか考えた事はあるか?」
「ルフィ?」
何を……言ってるの……?
背筋を冷たいものが走るのは何なのか。海軍指定の真っ白なスーツを着込んでいる私を、ルフィは舐めるように見て来る。
上は普通に正義のマントと、白のスーツ、下は同じく白のスカートタイプのスーツで、武器を取り出しやすいように深いスリットが入っている。特に変わったところのない、よく居る海軍将校だと思う。
それなのにルフィのその瞳に宿る色を見て、アーロンを思い出してしまう。自由にならない手が、余計に恐怖を煽る。
どうして、相手がルフィだと分かっていて……それなのに、どうしてそんなに怖いのか。ルフィが流星錘の端を部屋の奥に用意されているベッドに結びつけるのを、何処か遠い所の映像を見るような感覚で見て、ルフィに視線を向ける。
「……ナミ?」
ルフィが不思議そうに私を見るけど、そんな顔をしたいのも、するべきなのも、私だと思う。ルフィは何をしたいと言うのか。
「……ナミ、分かってるか?ナミは、女海兵は今、海賊に囚われてるって事」
「よく、分からないわ。だってルフィが望むなら、私はルフィと船に乗るのを厭うつもりなんて無いもの……」
「……なら、何で海兵なんかになったんだよ」
そう言いながらルフィは私をベッドに押し倒す。その現実感の無さに少し笑いながら、けれども恐怖に震える体に、心に……情けなくなる。
「村を、救って貰って……。保護されてるだけだもの。長く海軍に居るから、将校なだけよ」
答える私の言葉を聞きながら、ルフィはスリットから手を入れて来て下着に手を掛ける。それにより私が抵抗を見せれば、ルフィが小さく笑った。
それは何処か切なげで、同時に欲望に満ち溢れている。飢えた獣の前に投げ出されたような気持ちにさせられるのは、どういう事なのか。
「もう、遅ェよ……」
「ルフィっ!辞めて!冗談でしょ!?1緒に行くから、辞めて!ねぇルフィ!」
いくら叫んでも、訴えてもルフィの手は止まらずに、器用に手早く私からスーツや下着を取り除いて行く。引きちぎられたりした関係もあって、スカートと正義のマントだけが残されていて、ルフィに縋るように視線を向けるしか私には出来ない。
嫌だと、思う。……こんなのは、嫌だと。
「ナミ……優しくして欲しかったら、自分から誘えよ」
「……っ!ルフィ……」
もう、本当に辞めるつもりは無いのだとわかってしまう。でも、ルフィ……どうして?
「……ルフィ」
「ここで逃がしたら、ナミは永遠に手に入らなくなる。俺はもう、誰もこの手から離さねェ!」
そう言ってルフィは、私の体に手を舌を這わせてくる。抵抗出来ない状態で、でも……抵抗できる状態だったとして、私がルフィを傷つけられる筈もなくて……。
そして……無理矢理高められた私の体を、ルフィは容赦なく貫いた。その瞬間、痛みよりも、圧迫感よりも、いや……体に与えられるどんな刺激も関係無く、饒舌に尽くし難い感情が涙となって零れ落ちる。
「……!?ナミ、嘘だろ、初めて……だったのか!?」
ルフィの戸惑う声が聞こえても、反応さえできない。私達は何を何処で間違えてしまったのか。
何かが壊れた音を、その時私は確かに耳にした。けれども1度壊れたものは、何があっても元に戻る事は無い。
ルフィは驚愕を露わにしたけれども、行為を辞めようとはしない。その手が、眼差しが恐ろしく愛げであろうとも、暖かくとも、私の心は悲鳴を上げる事さえ既に拒絶している。
声が枯れて、涙どころか汗さえもう出ないのではないかと言う段になり、漸くルフィは満足したのか私を解放した。けれども私は多分、気付いていたんだと思う。
ルフィの瞳の奥に仄暗い炎が燻っていて、これはほんの始まりに過ぎないのだと言う事を。私の意識があるかはお構い無しに、ルフィに抱かれ続ける日々の中で、ふとした時に私の中の何かがルフィを信じようとする。
「ナミ、俺を見てくれ。俺の傍に居てくれ」
こんな事をしなければ、私はきっとルフィの傍に自らの意思でいたと思う。なのに、ルフィはまるで私がすぐに消えてなくなってしまうかのような勢いで、必死に繋ぎ止めようとするかのように、抱き続けるから……。
どうやらルフィは繋ぎ止めなければ、私が消えるとでも思っているらしいと、分かってしまうから……。
「……ル、フィ」
掠れた声で呼びかければ、ルフィの視線が私に向けられる。その顔が泣いているように見えて、私はそれはだからおかしいでしょうと心から思う。
だって強姦されてるのも、飼われているのも、意志を無視されているのも、全て私で。この状態が続けばそんなに永くは私は持たないだろう事も、理解している。
「このままでは、いられないのは、分かってるでしょ」
ルフィがビクリとその体を揺らす。ルフィだって本当は、分かってる筈だもの。
「このままだったら、多分、あと数日で、私……死ぬわよ」
「それは、許さねェ!」
「そう、言われても、身体持たないもの……」
既に嗄れた声しか出ないし、少し話すと息切れするし、咳き込むし、意識をなかなか保てなくなってるもの。手足には既に力が入らないし、震えている。
「ルフィは、私を殺したいの?」
それ程に、求めてたの?
ただの、子供の憧れとか、そんなんじゃなかったの?
姉を慕うように、慕ってくれてるのだと……思っていたのに。ルフィが欲しかったのは、この美し過ぎる肉体だけなのかしらね。
「俺は……ナミを殺したい訳じゃねェ!だけど他に、繋ぎ止める方法が分からねェんだよ!」
涙を落とすルフィを見上げて、私は久しぶりに笑った気がする。……本当に、莫迦な子。
「なのに、どうしてかしら……」
「え?」
「憎めそうにないのよ、ルフィのこと。可愛くて、仕方ないのよ」
そうして意識を失った私は、それから暫く目覚める事は無かったらしい。ルフィはその間に随分反省した様子だったけど、私を常に傍に置いていて、手放そうとしないし、仲間達に紹介もしてはくれない。
「本当に、莫迦なんだから……」
そう言って何をされても、全て許してしまう私が恐らく、世界中の誰よりも莫迦なんだと思うけれど。だからこそ決めているのよ。
ルフィの行為を私はこれからもきっと、なんでも許すけど……決して私の想いだけは、ルフィに伝えないって。それがきっと……ルフィには1番辛い罰だろうと気付いたから。
愛を求めて、愛を壊した少年と、それと分かっていて、壊れたフリを続けた少女の、これはある意味で戦いの物語なのかもしれない。壊れたような笑みを浮かべて、少年の悲しげな顔を見るのが、少女からの罰だとは少女以外は誰にも分からなかっただろうけれども。