空島にてシャンクスと再会後、ミホークの去ったその場所で私はシャンクスに話をしていた。どうしたって私は、シャンクスに甘えてしまう。
アーロンが約束を反故にして、ルフィが……仲間達が助けてくれた事。それから冒険に出て来て、先日またドフラミンゴに会った事を話すと、シャンクスは優しく頭を撫でてくれた。
「よく、頑張ったな。そりゃ、ルフィのものにもなるよな……。ナミは昔から、命よりも家族を優先してたんだから」
「シャンクス……」
「……まだ、俺はナミが泣ける相手なんだろ?なら、もう無理に襲わねェよ。今はまだ、ナミが泣ける相手でいてやる」
そう言って甘やかしてくれる温もりに縋り、私は溢れ出る涙をそのままに体を震わせるしか選択肢が無かった。麦藁の1味として共に居る時は、どれ程ルフィを愛していてもやはり私は皆に頼ってなんて居られなくて……。
愛してるからなんて言って甘える事は出来ないから、どんな時でも平気なフリを、元気なフリをするしか無い。でも、シャンクスが相手ならばそれは気にしなくてもいいという……子供に帰れる貴重な瞬間でもある。
「シャンクスッ!」
「心のままに泣いとけ。どうせまだ、その仲間達に縋って泣ける程じゃねェだろ。ナミは、プライドが高いからな」
私は大人だから、皆はまだ若いから……そんな考えがどうしたって付き纏っていて……家族も含めて、守るべき対象で、だからこそ弱さなんて見せられなかった。何があっても守ってくれると信じられるのは、どうしたって赤髪の皆で……。
そう思いながらシャンクスに縋って泣き続ける私は、恐らく相当に幼かったと思う。それなのに、服が濡れるのも気にしないでシャンクスは私を甘やかす。
涙が枯れるまで泣いておけと、優しく頭や背を撫で続けながら。その優しさに、私はただ縋り付いて甘え続けてしまった。
涙が落ち着くとシャンクスは、私の額に軽くキスをしてから立ち上がった。それを呆然と見上げたら、シャンクスは兄の顔で笑ってくれる。
それからいくつかの質問をして来たのに答えたら、シャンクスは私の姿をマジマジと見詰めてきた。それからマントのように羽織っているそのコートを脱ぐと、私にふわりと掛けて来る。
「これ……」
「いくら夏島でも、その姿は目に毒だ。どうせ仲間の為だとかで必要に迫られてだろうが、俺の心の安定の為に着ててくれ」
シャンクスのコートだから、どうしても大きい。踵のある靴のお陰で、立っていればギリギリで引き摺らない程度の長さはあるからなんか包まれてる感があるのよね。
それにより、シャンクスが傍に居てくれてるような安心感もあるから、いらないとは言えそうもない。……夏島でどうなのとも思うけど、暖かいし。
「このコート、シャンクスが1緒に居るみたいで安心する。ありがとう」
笑顔でお礼を言ったその瞬間、やっぱり兄貴にはなれそうもねェなんてシャンクスが呟いたのを聞いた気がしたけど、突然刈り取られた意識により、本当に言われたのかは既に定かでは無い。意識が浮上した時には、ミホークとシャンクスがいて……私は海上にいた。
……待って、私、空島に!
「ここはどこ!?ルフィ、皆!!」
慌てて甲板に出たけど、目印になるような物のない海の上では、現在位置は分からない。ただ、ここは青海……つまり空島では無く、いつもの偉大なる航路の海である事だけは間違いない。
「シャンクス!どういうつもり!?私はルフィの」
怒りを滾らせて言葉を紡げば、シャンクスがその途中で言葉ごと絡め取るように私の唇を奪う。嫌だと思って身を捩っても、シャンクスはそれを辞めてはくれなくて、寧ろ深くなるそれに涙が勝手に零れ落ちる。
「鷹の目の目の前で犯されたくなきゃ、大人しくしてろ」
僅かに離れた唇の隙間で、王者らしく命じて来るシャンクスの手を振り払い、私は無理だろうと解っていて月歩で空島に向かおうと空を蹴る。その瞬間、情け容赦のない覇気が私に襲い掛かりまたもや意識を失ってしまう。
薄れゆく意識の中で、私は必死になって遠過ぎる距離を隔てる恋人を想う。そして、仲間達を。
「ルフィ……」
航海士無しでは、彼等が先に進むのは難しい。私は、ルフィの元へ帰らないといけないのに……。
それからどれくらいの時が過ぎたのか、心配そうな声が私を呼ぶ。その声に導かれるようにして浮上した意識は、その声が誰のものかを把握すると同時に困らせちゃいけないと思いつつも、溢れ出る涙を止める事が出来なかった。
「ベック……!」
「ナミ!……まさか拐われて来るとは思わなかったが……怪我は無いな?」
「多分。痛みは無いから、大丈夫だと思う」
「……悪かったな。どうにか逃がしてやりたいんだが、お頭が本気となると約束は出来ん。悪い」
私はベックに抱き着くと、首を横に振る。だって、ベックは何も悪くない。
申し訳なさそうにするベックを責めるつもりなんて無いけど、それでも体は小刻みに震える。どうしてこんな事になったんだろうと思いながらも、口から零れ落ちるのは甘えとしか取れないような本音。
「……ルフィの所に、帰りたい」
「……そうだな。帰してやりたいのは山々なんだが……お頭を説得して漸く会えた段階だから、俺にも「ナミの帰る場所は俺の所だけだ。ベック……お前でも邪魔はさせねェぞ」」
ベックの言葉を遮って話すのはシャンクスで、キッと睨み付けるとシャンクスは嗤った。その笑みが昏くて、寒気にも似たものが走るのと同時にベックが私を庇うように、その腕の中に閉じ込めるように抱き締めてくれる。
「ベック……。ナミを離せ」
「断る。俺にとってもナミは大切なもんでな。泣かせるなら、戦うぞ」
「……お前とは、やり合いたくはねェんだが……命かけるつもりなら、相手してやる」
「……分は悪いが、俺も退けねェか「辞めて。ベック、大丈夫だから……戦わないで。ありがとう」」
この2人が戦うところを見たくなくて、私は言えば止まってくれそうなベックに声をかける。そんな私に、ベックは相変わらず甘いななんて困ったように笑ってから、不安そうに私を見詰めて、そっと手を離す。
守ってくれていた温もりが消えると途端に不安になり、縋りそうになる自分を強く抱き締めると頭を軽く撫でられた。それからベックは、シャンクスに泣かせるなとだけ言って部屋を出て行く。
私とシャンクスの2人になった部屋で、何が目的なのかを聞いてみると、思いもよらない言葉が返ってきた。風が吹けば波が立つとでも言うような、そんな軽いノリで放たれる言葉を理解する事を私の脳が拒む。
「ナミは俺のモノだ。それを取り返しただけだ。何もおかしい事はねェ」
「私は……!」
「ナミが逃げるなら、その足を落とす。ナミが抵抗するなら、その腕を落とす。俺はもう二度と、ナミを手放すつもりはねェ」
……本気、だ。シャンクスの本気が伝わって来て、でも手足を失った私に価値なんて無いだろうにと思えば、シャンクスの意図するところが本気でわからない。
シャンクスがそっと私に手を伸ばす。それが〝怖く〟感じられて思わず眼を伏せると、シャンクスの動きが止まった。
「……殴ったりするつもりはねェから、怯えるなよ。ナミが逆らわなければ、優しくしてやる。会いたいなら、ベックやルー、ヤソップにだって会わせてやる」
「私はルフィの元に帰り「ナミの帰る場所は、俺の所だけだ。次に間違えたら、お仕置きだぞ」」
シャンクスの瞳に仄暗い炎が見えた気がした。着ている物は相変わらずシャンクスのコートだけで、他はビキニといつもの武器。
シャンクスには本気で挑み掛かっても勝てないのはわかり切っていて、その上更に……私はシャンクスを傷付けられない。そうなれば武器なんてあっても意味が無い。
そっと息を吐き出して、私はシャンクスに哀願する。帰る場所がシャンクスだと言うなら、旅立たせて欲しいと願って。
「……シャンクス、お願い。私、ルフィの所に行きたいの。ルフィの船には航海士も測量士も、音楽家も船大工も操舵手も副船長さえも居ないのよ。航海士と測量士と音楽家、それに操舵手も私が兼任してるから、だからお願い。……行かせて」
「……俺は、ナミを手放すつもりはもう無い。まァ、話は後だ。とりあえず、抱かせろ」
「え?」
意味が分からなくてシャンクスを見上げたら、そのままベッドへと押し倒されコートを奪われる。何が起きているのか理解出来ないでいる間にビキニの紐が解かれれば、その目的は流石にわかり、遅れて抵抗を開始した。
「やだ!シャンクス辞めて!私はルフィの「ナミは俺のモノだ。次に、間違えたら……俺のものだと認める迄抜かねェからそのつもりでいろよ」」
必死でシャンクスの顔を押しのけようと両手で押してみるけど、顔が近付かなくても手も足も自由なシャンクスにそんな事しても当然無意味。当然のように指先ひとつで高められてしまう体が、反応してしまう自分が情けなくて、涙が1筋流れ落ちる。
「……泣くな。傷付けたい訳じゃねェ」
「なら辞めてよ、シャンクス!私は抱かれたくない!」
「体は、求めてるみたいだがな?」
その言葉が正しい事を示すようにシャンクスが私の秘部に手を近付けて、触れる直前で動きを止めると残酷な笑みを浮かべた。それは、共に過した間に何度も見た事がある海賊としてのシャンクスの顔で……。
「ナミが、濡れて無ければ辞めてやる。自分で足を広げて、確認して下さいって言ってみろ」
「そん、な……」
「出来ないなら、合意の上って事で抱く。濡れていたら、求められたって事で抱く。どうする?」
先程までずっと指先で高められていたから、確認するまでも無い。合意じゃないし、望んでない。
でも、この顔をしてるシャンクスが、他の選択肢を出さない事は分かってる。だけど……どうしたらいいのか、わからない。
「シャンクス……いじめないで……」
甘えて、様子を見て、隙をついて逃げる。それしかない。
思い出せ、子供の頃シャンクスは私のどんな仕草に弱かった?
「シャンクスは、私のこと……キライ?」
「……ナミを嫌えたら、こんな事になってねェよ。ナミは特別だからな」
そう言ってシャンクスは私の濡れているその場所に指を這わせて、わざとその水音を響かせる。それにより顔を背けると、シャンクスが嬉しそうに笑ったのが分かった。
「充分に濡れてるな。……行くぞ」
「や!待って……!」
私の静止は聞き入れられず、当然のようにシャンクスが私の中に押し入ってくる。簡単に抑え込まれて、せめて痛みがあれば耐えられるのに、与えられるのは甘い快楽。
痛みには慣れてる。痛みには耐えられる。
それを分かっているかのように、シャンクスは私に甘やかな、耐え難い程の快楽のみを与えて来るから、声を出せば望んでもいないのに甘い声が出るだろうと分かり必死で声を飲み込む。その為に唇を噛み締めると、シャンクスがそれを許さないというように口付けてきて、声は全てシャンクスに呑まれる。
肌のぶつかる音と、繋がっている場所から当然のように響く水音。荒い呼吸音の合間に、抵抗しても無駄ならばとやり過ごす為にシーツを掴んだ手を強制的にシャンクスへと回させられる。
「俺に、縋れ。
それを拒否するように腕を払い、キッと睨めば愉悦に歪んだシャンクスの笑みが私を貫いた。煽るのが上手いなんて、妙な言葉を聞いたと思った後、私の記憶は薄れている。
それから何日が過ぎただろうか。帰りたいと呟いては抱き潰されて、助けを求めては終わらない快楽地獄に落とされ辱められる。
だからと思って何も言わずにいれば、どこまで耐えられるかとやはり抱かれて……。女に飢えてるのだとしても、これはないと思うのよ。
隙を見て逃げようとしたら縛り上げられて、貫かれて、甘えた演技で誤魔化そうとしたら貪られた。服を着ても、どうせすぐ脱がされるから既に着るのさえ面倒に思える程に体だけを求められていると感じる。
ドクターに持たせてもらっていた薬を飲みながら、ルフィを想う。無事に、空島を出たかな?
「……何、考えてんだ?」
「麦藁帽子、預かってたのにって思って……」
「ナミの乗物に付けて来た。回収してるだろ」
シャンクスの言葉に、それなら私が誘拐されたと判断して追いかけて来てくれるかも知れないと思い、嬉しくなる。今は勝てないのは分かってるけど、互いに求めているのならば、ルフィがつくのが早いか、私が逃げ出すのが早いかでまた合流出来るわ!
「……少し距離はあるが、俺と鷹の目のが軽くやり合った跡もあるから、ナミが〝攫われた〟事は理解出来てるだろうな」
「シャンクス……」
「ルフィが来たら、ルフィの目の前で抱いてやるよ」
「え?」
「ナミはもう、俺のモノだと何度言っても分からないなら、分かるまで何度でも……ルフィの前で抱いてやる」
思わずシャンクスから離れようとしたけど、広くはない室内で逃げ場所なんてある筈も無い。その上最近はただ、抱かれ続ける日々なのだから、体力だって恐ろしく落ちてる。
勝手に震える体に、そっとシャンクスが触れる。嫌だと声を出そうとしたのに、掠れて上手く声を出せない。
「怯えるな。優しくしてやる。……俺は、ナミが可愛いんだ」
なら、どうして?
私は、こんな事望んでないのに。そう思いながらも、ただ翻弄されるのが嫌で生意気にも挑発してしまう。
「ルフィは、シャンクスを超えるわ。それももう、遠くない未来の話しよ」
「……ナミは、我が身が可愛くねェらしいな」
低く唸るような声でシャンクスが呟き、私はふふんと笑ってやる。いつの頃からか、涙の1つも零れなくなったな……なんて思いながらシャンクスの熱に溺れて行く。
溺れ行く者が、無駄と分かっていて水を掴み足掻くように、私はシーツに縋り心が冷えて行くのを感じている。底の見えない海に沈むように、私の心は足掻きながら沈んで行く。
光も届かない深い、深い深海へと。せめて、海に住まう魚の餌としてでも役立てたら良いと、そんな事を思うくらい助かる未来を思い描けなくなっている。
これは……何か1つ、掛け違っていたならば有り得た、もう1つの彼等のお話。この2人が壊れるより先に、幸福へと進む未来を掴めるのかは、このお話を読んだ方のお心次第。