もう少しでココヤシ村に帰り着ける。そう思ったのは覚えているけど、それ以外が今にして思えば少し曖昧。
だけどそこで舵の効かなくなってる船を見て、穏やかな海域まで何とか誘導したのは間違いない。その後、何故か私はその船の主に捕まっているのも現実。
「離して。私は、帰らないといけないのよ!」
「礼をしたいと言っているだけだ。逃げるな」
「いらないって言ってるのよ!お願い、帰らせて!」
私の体は気力のみで動いているから、気を抜けば倒れそうなのに……どうしてこんな事に。そう思う私を無視して船の主たる男、ビッグマム海賊団の次男、カタクリが私の腕を掴んで離さないのだ。
早く帰らないと、皆が……!
焦る私に、カタクリはわざとらしい溜息をついた。まるで聞き分けが無いのは、私の方であるかのように。
その態度にカチンと来て、私の口は勝手に言葉を吐き出していた。色々と限界だったのかも知れないけれど。
「私の願いはアーロンパークの壊滅か、アーロン1味から皆が解放される事だけなのよ!それ以外に望む事なんて無いんだから、放っておいて!」
「……分かった」
カタクリの言葉にホッと息を吐き出した私に、カタクリは海賊らしい獰猛な眼差しを向けて来る。……嫌な、予感がした。
「その程度なら容易い。礼としてやってやろう」
続いた言葉にえっと声を発した私の唇は、何故かそのままカタクリの唇で塞がれてしまう。くぐもった声を出す私をそのままベッドに沈めたカタクリにより、私の衣服は簡単に剥ぎ取られる。
抵抗する間も与えられない早業に、何を言葉にしたらいいのかさえ分からない。でも、この状態で何をされようとしてるのかは分かってしまうから、嫌だと、無理だと抵抗する。
「名は、ナミだったな?」
船を誘導する時に名乗ったから、カタクリはそう言って確認して来る。まさか、犯す相手の名を無駄に呼ぶ趣味でもあるのかと睨み付ければ、カタクリは可笑しそうに笑った。
「気丈だな。……願いを叶えてやろうと言うのに」
「私はこんな事望んでな「ナミは〝アーロン1味の壊滅〟を願ったな。だが、ナミもアーロン1味だろう?」」
剥かれた衣服は床に散らばり、残されているのは忌々しい刺青。それにより違うとは言えなくなる。
確かに、私はアーロン1味の幹部だもの。壊滅を願うという事は……。
「……そうね、なら、殺すの?」
それを確認する為に、騒がせない為に唇を塞いで服を脱がせたのかと思えば納得出来る。描かれていたカタクリは、心優しき武人で、こんな無理矢理な行為をするとは思えなかったから。
「……死にたいか?」
狡いと思う。質問に質問を返すなんて。
死にたいか……?
そんなの、どっちでもいい。皆が助かるなら、この命にも価値があったと笑って逝けると言うだけだもの。
「……皆が助かるなら……どちらでも構わないわ。私も殺すと言うなら、好きにして。抵抗しないわ」
「なら、貰おうか」
何をと言おうとした時、それが愚問だと分かる。カタクリは命じゃなくて、この体を狙ってる……!
「嫌よっ!死ぬのは受け入れるけど、これ以上の辱めを受けるつもりも、凌辱されるつもりもないわ!」
「アーロン1味から解放した後に、ビッグマム海賊団の縄張りとして、無償で守ってやると言ってもか?」
「……え?」
「守る対価がナミの体だと言っている」
体格差を考えれば、そう永くは持たずにどちらにしても死ぬだろうし……皆がそれで助かるなら、迷う事は無い。皆が……無事なら、それだけでいい。
「……従順なのと、抵抗されるのと、どちらがお好み?」
震えるのは、2度と会えない家族が脳裏に浮かぶから。せめて約束が守られるその時まで、それを確認する迄は……生きていたい。
「……心のままに行動していい。抵抗したところで、抑え込むのは容易く、従順にした所で優しく出来そうもない。だから……好きに動け」
好きにって……。そんなのどうしたら……。
呆然とする私の足を掴んで、容赦なく割開いたカタクリは何かを確かめるように指を私の中に差し込んでくる。微かな痛みを感じるのは、濡れていないからか……。
ドフラミンゴよりも更に大きなその体を、私の体が受け入れられるのかと心が怯えているからだろうか。恐怖と絶望と、でもその先に待つ微かな希望の為に、私はどうしたらいいのか分からなくなる。
触れて来るその手が熱くて……私の心と体は恐怖と嫌悪と悔しさで冷たく冷えていく。それでも、この場から逃げるとかって選択肢だけは無い。
……どんな事にも、耐えてみせるわ。私は、1番大切なモノを既に決めてある。
「ナミのその性格では、生きにくいだろう」
「……そうでも無いわよ。私の体1つで、解決してくれるのでしょう?なら、どんな事にも耐えられるわ」
「……そんなに嫌か」
「……今、私耐えられるって言ったと思うけど?」
不思議に思った私が首を傾げるとカタクリは、普通なら耐え難いと思うからそんな言葉なのだろうと言ってくる。でも、冷静に考えたら嫌なのも怖いのも当然だと思うのよ。
「好きでもない男に、それも体格差もある相手に、望んで抱かれる筈無いじゃない」
「……体から始まる事もあるだろう」
「私には無いわね」
世間様は知らないけど、私は無いと思うのよ。それに、この体を傷付ける罪悪感って半端じゃ無いのよ?
その時カタクリが私から手を離した。何事かと思ったら、突然鎖で私を繋ぎ始めて、それに寒気がして吐き気迄して来そうなそれにより衝動的に抵抗する。
「や、だ……!ヤダ、辞めてよ!いゃ……」
ジャラッと聞こえる音に、私は身を竦める。その様子を見て、効果絶大だなとカタクリが言葉を落とす。
ベッドに繋がれた私は、その音が与えてくる恐怖に対応出来ない。強制的に開かされて固定された私の足に、カタクリが触れる。
「……俺の能力なら、縛らなくとも問題無く何本の腕でも用意出来るが……少し楽をしようと思っただけで随分と予想外の反応だ」
「や……だ……!」
「怯えている顔は、随分と幼いな。安心しろ、これは始まりだ。体が慣れたら鎖から解放して……「助けて、シャンクス、ベックッ」」
鎖の音から来る恐怖で、心が縮こまり気が付けば夢中で届く筈も無い相手の名を呼んでいた。それに気付いたのは、カタクリが容赦無く私の中に熱く燃え滾るような楔を打ち込んだからだけど……。
初めてを奪われた時も、もうダメだと思った。2度目の相手は、体格差で死ぬと思った。
今回は、もう何かを考える余裕さえない。悲鳴さえ出ない私は、ただ苦しい呼吸を繰返す。
身体が勝手に痛みを軽減しようとして、快楽を拾い集める他に、体そのものがそれに慣れる。永遠にも続くように思えた苦痛は、永遠に続くように思える屈辱に変わる。
それでも、この男が満足させさえすれば……皆は、助かる……。
「ベルメー……ルさ、ノジ……コ……」
2人が平和に生きてくれるなら、それだけでいい。そうよ、受けて立つわ、どんな事だって、耐えてみせる!
キッとカタクリを睨むように見据えれば、カタクリが1瞬驚いたような顔で私を見てから、その瞳を楽しそうに細めた。そして、甘く囁くように残酷な言葉を紡ぎ出す。
「その気高さに、惹かれた。このまま1生、飼い殺してやる」
「……それが、この島を守る条件だと言うなら、好きにしたらいいわ。でもね、心は絶対に屈しない」
何をされようと、この心だけは折れない。これから先永遠に逢えなくても構わないのよ、ただ……皆が平和に生きてくれるなら。
2人の笑顔を思い出すと、自然と顔が綻ぶ。それを見たらしいカタクリは息を飲んだ様子で、1瞬動きを止めたけどまたすぐに動き出した。
その後に、何度中に放たれたのか、何度意識を飛ばしたのか、始まってからどれだけの期間が過ぎたのか……。自分が厭に汚れてる事だけは確かで、苦しいとか痛いとか、そんな事ももうよく分からない。
声も殆ど出なくなって、それでもカタクリは行為を辞めようとはしないから……。私の意識が保てる時間は、どうしたって目減りして行く。
「ナミ……ナミ……」
遠くなる意識の向こうで、カタクリが私を妙に甘やかに呼ぶ。それに視線を向けると、泣きそうな顔をしているのが見えて……。
どうしてこの世界の男達は、強姦しておきながら、してる側が勝手に傷付くのか。そんな事を思いながら、私の意識は闇に沈む。
それから私は衰弱し過ぎて、死にかけていたらしいと知る。その治療されてる間に、カタクリは約束を守ってくれたらしくて、私の荷物と呼ばれる物が運び込まれている事に気付いた。
「カタクリは、私をどうしたいの?」
「……傍にいろ」
カタクリの言葉に私は小さく頷く。約束を守ってくれた以上、私ももう無駄な抵抗はしないつもりだから。
そんな風に考えている私に、カタクリは啄むような口付けを落として来る。何がしたいのかとカタクリを見れば、カタクリが口を開いた。
「欲しいものは手を伸ばせば手に入ってきた。だが、ナミはそれでは手に入らないのか」
「……人を、愛した事位あるでしょう?」
「性欲処理ならば、した事はある。弟妹も可愛く、兄や姉も大切だ」
……まさか、恋愛的なそれの経験が無いの?
だから、泡沫の夢と消えるような嘘偽りの甘い言葉を1度も口にしていないの?
でも待って、だとしたらなんでカタクリは私を……。その先は、勝手に口が動いていた。
「……まさか、カタクリって、私の事を好きなの?」
「………………まさか、伝わっていないとは思わなかった」
互いに無言で見つめ合って、硬直する。この不器用で、奪う事と壊す事でしか愛情を表現出来ない男を、見捨てられない。許す気にはなれないし、許すつもりもない。
だけど……瞳の奥だけで泣きながらも、約束を守ってくれたこの男性を独りにする事も、出来そうにない。少しだけ力を入れられるようになった腕を持ち上げて、その頬に触れる。
「体格差と体力差を考えてくれるなら、約束だから拒まないわ。だから……」
泣かないでとも、泣いていいのよとも、言葉に出来なくて。そっとその頭を抱き締める為に腕に力を入れる。
強さ故の孤独と、孤独であるが故の脆さを見てしまえば……見放す事なんて、私には出来そうになかった。決して甘やかな恋愛ではないし、寧ろ傷の舐め合いでしか無いかも知れない。
それでも、ちゃんと向き合ってみようと思える。カタクリが約束を守り続ける限りは、私も約束通り傍に居続けようと心に決めて……今出来る精一杯の強さでその頭を抱き締める事が、とりあえず今出来る唯一の事だった。