混乱し、混濁する意識の中で、私は無意識の内にルフィを求めて腕を伸ばして、ルフィを呼んでいた。……けれどもそれを何か勘違いしたらしいドフラミンゴに掴まれる。
触らないでと言いたくても、中で蠢くモノが邪魔をして上手く言葉にならない。出したくもない甘い声が、室内に響く。
「ナミ、俺はお前を」
ドフラミンゴが切なそうな声で何かを言い始めた時、衝撃音が響いた。それを聞いて、ルフィだと何故か素直に思えた直後、自然と力が抜けて笑みが浮かぶ。
そんな私を1瞥したドフラミンゴは、眉間に皺を寄せつつ私の中から無言で己を抜き去ると、舌打ちを1つ落とした。その衝撃に体は反応するけど、やっと終わったと思えば気が抜けそうになる。
「……まだまだこれからって時に、お迎えか」
「仲間に、手を……」
ドフラミンゴの言葉にハッとして、痛みと怠さ、そして薬による疼きのある体を無理に動かす。体に少し力を入れただけで、痙攣する。
でも、ルフィに手は出させない。必死に体を動かして武器に指先が触れた時、ドフラミンゴが私の武器を糸で1纏めにして手元に移動させてきた。
それを無意識に掴み抱きしめるようにすると、武器を纏めていた糸が解かれる。どうやら、見兼ねて渡してくれたらしい。
それにホッと息を吐き出して、ありがとうと笑うと何故かドフラミンゴは動きを止めて、突如唇を重ねてきた。辞めて貰えたと思っていたのに、なんで!?
「……駄目だ、手放せねェ」
「な、にを……」
苦しそうな声で、辛そうに紡がれる残酷な言葉。それに戸惑いの視線を向けると、ドフラミンゴは残酷な笑みを浮かべて、試すように言葉を落とす。
それは明らかに海賊の顔。相手が誰なのかを忘れていた訳でもないのに、今更それを再認識させられてしまう。
「お前の仲間には何もしねェよ。だが、見せ付けねェとは、言ってなかったと思うが?」
「そんな!?」
ルフィにこんな姿見られたくない。ルフィを傷付けたくないのに。
そんな時、ドフラミンゴがベラミーが勝てる筈も無いだろうとは分かっていたがと呟いたのを聞いた瞬間、ベラミーが本誌で何をされたのかを思い出してしまう。確かベラミーが全てを亡くして、そうなった後にルフィとベラミーは再会する筈だわ。
でも、私が関わった今、ベラミーが殺されない保証は無い。助ける為にはと考えて、可愛い部下なんでしょうと言葉を連ねる。
ドフラミンゴを説得していたら、見えて来たのはドフラミンゴの心の傷。この人もまた、この世界の被害者なのだと思い知らされてしまう。
「……可哀想な、人ね」
可哀想で、哀しくて、孤独な人。だからきっと、自らの手で殺す事で失った筈のそれを、それでも求めて……〝大好きだった父親〟のように、そして〝大嫌いだった父親〟が出来なかった〝家族を守る〟事に執着してる。
言葉を交わして、互いに静かに見つめ合う。そんな中でドフラミンゴは呆れたように溜息を落として、突然抱き締めてくる。なんだと思ったけど、その腕が妙に優しくて、同時に震えていて……振り払えなくなってしまう。
涙を流さずに泣いているのだと、何故か思えてしまったから。……明らかに強姦魔でしか無いのに、どうして見捨てられないのだろう。
どうして、この世界の人達は哀しい人が多いのだろう。そう思った時には、私はその背に片腕を回して軽い調子で叩いていた。
幼い子供を寝かし付けるように、泣いている子供をあやすように、優しく1定のリズムで。苦しまないで、哀しまないでと言葉ではなく伝える為に。
「……仲間に手を出さない他に、ベラミーを殺さないと約してくれるのならば、1つ答えるわ」
それに是と応えたドフラミンゴに宝玉である事を告げると、知っていたと返されてしまう。それにそんな……!と思った時、殺さないでやるがと呟くように言ったドフラミンゴを見つめたら、そのまま抱き上げられてしまった。
驚く私に、いい子にしてないとその姿を見られるぞと言われれば、ドフラミンゴに抱きつく他に身を隠す手段が無い。その瞬間妙に優しい声が聞こえた。
「そのままでいろよ」
そう言われて首を傾げると、ドフラミンゴは窓から私を抱いたまま飛び出して、移動する。それに待ったをかけるけど、聞いては貰えない。
「ドフラミンゴ!約束が違うわ!」
「仲間には手を出してないだろう。……帰してやるとは、約束してなかった筈だ」
「そんな!やだ!」
「なんだ、外で抱いて欲しいのか。見られながら?」
「そんな訳な「大声出して、観客を集めようとは随分情熱的な事だな。……俺の子を孕むまでの1部始終を、多くの奴等に見て貰いたい訳か」」
その言葉に指先が冷たくなるのが分かった。だって、確かに今私は何も着ていない。
力でも敵わないし、今はいつもより力も入らない。名を呼べばルフィが危険になる……。
今はまだ、ルフィはドフラミンゴに勝てない。覚醒した悪魔の実の能力者であり、覇王色の覇気を扱える男だもの。
「や、だ。やめて、お願い……」
震えながら頼む他、選択肢が無くて、私はドフラミンゴに連れられて島を後にする事になった。そうして到着したドレスローザの王宮で、ソファに私を落としてからドフラミンゴは優しげな声で問い掛けてくる。
その瞳は狂気に彩られていて、全身が総毛立つ。これは、答えを過つ事が許されない問だわ。
「俺の妻となるか、俺のペットとなるか、俺の奴隷となるか、どれがいい?」
「違いが、わからない、わ」
「奴隷は、この部屋で裸のまま鎖に繋がれて、俺の望む時に、俺に奉仕するだけだ。抵抗したら地下牢に行く事になる」
そんなもの選ぶ馬鹿が居るのかと呆れた視線を向ければ、ドフラミンゴは笑う。望むのは多いぜと呟くように言って。
「ペットは、俺が出掛ける時には服を着せてやるし、共に出掛ける事になる。俺の傍に常に居て、俺の気分次第で何処でも可愛がってやる。残る妻は、俺から逃げようとしなければ、下手な抵抗をしなければ、人として扱ってやるよ」
「……考えさせて。私、今は少し休みたい」
私の言葉にドフラミンゴは笑うと、それぞれ体験させてやろうかと言いながら鎖を手にする。その音だけで身が竦めばドフラミンゴは動きを止めて、奴隷は無理そうだなと笑った。
「ここに鈴をつけて、この部屋でただ鳴くだけというのも楽だっただろうになァ?」
「な、にを……」
言いながら乳首を弾くように刺激したドフラミンゴは、この部屋で会談する事も多いから、人に見られながら可愛がられる事においては奴隷とペットの違いはあまり無いと告げられる。それにキッと睨めば、ドフラミンゴは甘く囁いて来た。
「見られないのは1つだけ、妻になる事だ。見られたくないのなら……望め、ナミ。俺の妻になると」
「ドフラミンゴ!」
「それ迄は、ペットとして、可愛がってやる」
言葉と同時に身体を操られた私は、四つ這いにされてしまう。何をさせるつもりなのかと睨めば、口淫を強要された。
「ペットが二本足で立てる筈無いだろう。さァ、おやつの時間だ。たっぷり味わえ」
言葉と同時に、強制的に奉仕をさせられる。その間も秘部等に指を入れて刺激してくるドフラミンゴに抵抗できずにいる私は、なんと惨めで無様なのか。
妻になると言わなければ、これは毎日の行事だと囁かれれば紙1枚で繋がるだけだからと、なりたくもない妻になる事に心が揺れてしまう。でも、結婚なんてしたくない。
「ほら、口が止まってるぞ。気持ちが良いからと怠けるなよ、ナミ」
言いながら私の中を何度も指が抜き差しされ、容赦無く望まぬ快楽の中に落とされてしまう。ドフラミンゴの欲を口で受け止め、苦しさに喘ぎながら離れようとしたけど、頭を押さえられて動けない。
「飲み込むまで、このままだ。……これはペットのおやつだ。しっかりと飲めよ?」
「んぅっ!」
「お仕置きされたくなければ従え、ナミ。今のお前は、単なるペットなんだからな」
解放されたくて飲み込んだそれが、苦痛でしかない。苦しみに喘ぐ私をそのまま床に転がすと、大きく足を開かされて視姦される。
それだけならまだしも、ドフラミンゴはカメラや大人の玩具を手にして首を傾げる。そんな物を使われる訳にはいかないと、慌てて大声を出してしまったのは不可抗力だろう。
「やめ、て!」
「ペットが主人に腹を見せて、撫でて欲しいと願うのは当然だろう。大好きなおやつを貰ったんだ、次は玩具で遊んでやるのがご主人様としては当然の行為だろうが」
「や、だ!やだぁ!」
「ペットの可愛い姿は撮影するだろう。喜んで、遊べばいい。これから……毎日、な?」
つまりは、これが全て毎日の1連の流れだと言うのか。そんなのは、耐えられない。
そんな扱いを受けるくらいならと舌を噛もうとしたら、即座に指が押し込まれた。それにより死ぬ事を失敗した私を、ドフラミンゴは冷たい視線で貫くように見て来る。
「死んだら、お前の故郷を破壊してやろうか。……1人だと、寂しいもんなァ?仲間達は、まだ冒険したいだろうから、俺がお得意様に売ってやるよ。そうすれば海軍に捕まる事はねェから、毎日安全に、刺激的な日々を送れるだろうぜ」
「や!ふぇて!」
指が邪魔で上手く喋れないけど、捕まえて奴隷にするのだと言われたのは分かるし、家族も殺させる訳にはいかない。だからと必死で声を出せば、耳元に落とされる言葉。
「なら、俺の妻になるか、ペットになるか、選べ。選んだら、今死のうとした事を許してやろう」
「わ、たし……」
「決まるまで、下の口で俺を咥えていたら良いだろう。その方が素直になれるだろうからな。……当然だが、ペットは床で寝るもんだぜ」
言いながら中に挿って来るドフラミンゴに、逃げようと試みても操られた身体はピクリとも動かずにドフラミンゴを受け入れる。身体のぶつかり合う音が響き、私は静かに涙を落とした。
「早く選べよ、ナミ。どちらにしても、俺に抱かれる事は変わらねェがな」
「やっぁ!んっ……!」
「安心しろ。俺が忙しい時は、玩具を入れて置いてやる。1人でもそれなら寂しくないだろう?」
生きて、皆を守り、慰み者になるか。死んで、皆に迷惑をかけるか。
突きつけられた選択肢に、希望は見いだせない。それでも、ならばいつかルフィ達と進む為に、そう思って言葉を口にする。
「ドフラミンゴ、私を「ドフィ、だ。間違えるな」」
そう言って腰の動きを早めたドフラミンゴは私の身体をガクガクと揺さぶり、己の欲を奥へと放って来る。広がる熱に、涙が溢れるとドフラミンゴはそれを唇で拭い、どうする?と囁きかけてきた。
荒い呼吸の中で、私はゆっくりと、震えそうになる唇を動かす。他に、今は選べる選択肢が無い。
なのに、声が出ない。はふはふと動く唇は、音を紡がない。
「ナミ?答えないなら、玩具でイキ狂う姿を撮影して〝元の仲間〟に送ってやろうか。手紙も添えてやるよ『愛しいご主人様にこうして毎日可愛がられて、ナミは幸せにゃん。皆は私の可愛い姿に癒されてにゃ』とでも書いてな」
「……ゃ……」
「ナミは、ペットが希望なんだろう?それとも、死を選び〝元の仲間〟がナミがペットとして生きるのより刺激的な日々を送る事を望むのか?」
「ぃ……やぁぁぁ!やだ、やめて!」
「なら、答えろ。ナミ。どうなりたい?」
選択肢を与えてるフリをして、ドフラミンゴは選択肢を奪う。他を選べるものなら選んでみろと嘲笑うのだ。
悲鳴のような拒絶を声にした事で、もう問題無く声は出せるようになっている。その皮肉に内心で嗤いながら、声を出した。
「ドフィ……私、ドフィの妻になりたい」
心にも無い言葉を口にして、いつか来る解放の時を待つと決めた女と、それが偽りであると知りながら、甘やかな声で呼ばれる愛称により、満足そうに笑う男。王妃なんて務まらないわと嘆いてみせる女に、子を産むのが仕事だとその身体を容赦なく引き裂き、歌う事を強要する男。
そんな中でも女は男の壊れそうな心を気遣い、無意識で甘やかしては男を溺れさせて行く。この二人が素直に互いを見つめ合い、共に歩めるようになるのかは、この話を目撃したあなたの心次第。
ただ、ほんの少しだけかけ違っていたら有り得た未来の断片が、ここにも存在しているというだけのお話。蜜柑の香りを漂わせる少女の悲鳴と嘆きの篭った悲哀の歌は、何時まで響くのだろうか。