アーロンの支配は長く続かなかった。それは、おつるさんが助けてくれたから。
私はその恩を返す為に海軍に入って、いつもおつるさんとの任務をこなして来て……今回おつるさんから離れた最初の任務だった。仲良くなったベガパンクにクリマタクトも作って貰っていたというのに、どうして……逃げ損ねたんだろう。
「あまりに逃げ回るから、咄嗟に足を撃っちまった。筋は傷めてねェとは思うが……ウタと同年代にしか思えない子供相手だと、心が痛むな」
「ヤソップ、それなら俺が引き継ごう。……預かるぞ」
「おい、それなら俺が預かるべきだろ。副船長と船医なら普通は船医って、考えるまでもない事だと思うんだがな?」
「ホンゴウ……コレは、俺の
物騒な会話が繰り広げられている。でも、私はそれを聞いてるようで聞いていなかった。
だって、まさか潜入した先に赤髪海賊団も侵入して潰そうとしてたなんて、思わなかったんだもの。赤髪海賊団が関わってるならと思って報告に戻ろうとして、追われて……。
正直、撒いたと思って海軍の制服に着替えて歩いてたら、見つかってしまった。その後で遅ればせながら、必死で逃げたらヤソップに足を撃たれて捕まったのだ。
……なんとも情けない。この程度の傷で、動けなくなるなんて。
なぁんて……例え心底思ってはいても、ベルメールさんが撃たれたトラウマで、銃声に身体が怯えてしまったのだから、どうにもならない。それが自分でわかっているからこそ、余計に情けない。
でも、皆は逃がせた。ここで、私が残って気を引けば追撃もない筈。
まさか、日当六千円で働いてた子を巻き込めないじゃない。三食食事付きでも、安すぎるわ。
そうしていつの間にか、私を気にしていたヤソップとホンゴウから引き離されて、今からベン・ベックマンの取り調べらしい。こうなっては仕方ない……素直に応じて、早目に帰らせて貰おう。
運び込まれたのは、恐らく私室。無駄を省いたらしい部屋には、煙草の香りが強く残っている。
視線だけ動かして様子を見ていれば、耳に心地よい声が落ちてくる。淡々とした様子が、色々な意味で慣れてるのだと伝えて来て笑いそうになるのを耐える為に気を引き締めた。
「……名前は?」
「ナミ」
「階級は」
「大佐」
「……素直だな」
「嘘ついても、知ってるんでしょ」
この男が知らない事なんて、この世に何も無い気がする。そういう意味で言ったのに、面白そうに笑ったベン・ベックマンは頷くと突然言った。
何考えてるのかとか、色々思うより先に声が出た。だって、あまりにも想定外だったんだもの。
「脱げ」
「……は?」
「衣服に何を仕込んでるか分からないからな。脱いで一枚ずつこっちに寄越せ。確認する。……それとも、俺に直接確認されたいか?」
その言葉に溜息を落として、身に付けていた支給されていた武器を取り外して近くの机に並べて行く。そうして無防備になった所で振り返ると、ベン・ベックマンの手が伸びて来て勝手にシャツのボタンを外し始めた。
それに動揺してると、服の中に手を入れて中に身に付けていたビキニを外してしまおうとする。そうなれば慌てて抵抗しようと身を捩るけど、歴然とした力の差がそれを封じてきて……町娘みたいな対応をしてしまう。
「やっ……何す「チェックが必要だと言ったのに、外して終わると思うな」」
その言葉に唇を噛むと、耳元に吐息と共に声が落とされた。鼓膜を揺さぶるのは、恐ろしい程の美声。
声優の無駄遣いとまで言われていた程、この世界の人達は端役でも良い声なのだ。つまり、重要人物の声は総じて凶器。
「優しくしてやるから、大人しくして……素直に応じろ」
その言葉に思わず強く睨み付けてしまったのは、不可抗力だろう。私はほぼ無意識で、その手を振り払って声を出していた。
頭では、そんな態度は許されないと理解してる。それでも、海賊に触れられる事は私には耐えられない。
「気安く触らないで!……必要なら、脱ぐわ。それでも、指一本触れさせない」
「……女海兵、お前……〝海賊に囚われてる〟自覚はあるか?」
「あるわよ。だから、抵抗してないじゃない。……それとも、赤髪海賊団も、結局その程度のクズ集団なのかしら?」
「言ってくれる……」
可笑しそうに笑って数歩下がる形で、ベン・ベックマンは距離を取ってくれた。それに内心でホッとしつつ、コートから順番に脱いで投げ付けるように渡す。
それを受け取り素早く確認しては恐ろしく綺麗に畳んで机に重ねて行くその姿に、海での生活が長い事を再認識させられる。半分脱げかけたビキニ姿になれば、身に付けてる武器が丸見えで、仕方なくそれ等を取り外して渡す。
それでも、武器とは普通分からない物ばかり。私の武器はベルメールさんに作って貰った三種の神器と、クリマタクト、先に外して机に置いた海軍支給の銃だけだもん。
なのにベン・ベックマンはその瞳を開いて、驚いた様子を見せる。それは、これが武器だと理解してるという事。
「最初に置いていた銃はどうでも良いが、他が面白いな」
「女の子だからね、趣味みたいなものよ」
「その趣味の道具が全て、殺傷能力の低い武器とは恐れ入る。流石は無血の海兵だ」
褒められてる気がしない上に、そんな二つ名私は知らない。でもまぁ、大将達もいつの間にか勝手につけられた二つ名で呼ばれて、名前を知られてないなんて事もあるから仕方ないかも。
そんな事を考えていた間に器用に流星錘を操り、私を縛るその技術に溜め息が落ちる。初見っぽかったのに、この技術……流石は赤髪海賊団本船の大幹部よね。
「……便利なもんだな」
「扱いが難しいから、使える人を家族以外では初めて見たわ」
「海兵達は使えるのも多いんじゃねェのか?」
「まさか。そもそも武器だと知らない人が大半だし、知ってても扱えた人見た事ないわよ。……ガープさんなんて砲丸投げの要領でしか使えないから、結局爆弾付けて投げて……結局普通に投げた方が早くて威力も高いって言ってたし。流石はルフィの祖父だと思い知らされたわ」
「……ルフィって、麦藁のルフィか?」
その言葉に、そうだったと思い出す。この人は赤髪の大幹部。
ルフィが海賊になるキッカケとなった人達。だから当然、会った事があるのだ。
「え、ええ」
「知ってるのか?」
その言葉に、海軍である今知っていたらおかしいと気付く。だって、私は原作とは違って仲間じゃないもの。
正直、しまったと思う。知識でしか……いや、ガープさんという強力な言い訳がいるわ!
「会った事は無いけど、海賊になっちまったが……なんて前置きしてから、ガープさんが暇が無くても孫自慢してくるから」
「……本当に、アイツは規格外だな。お頭が気にいる訳だ」
そんな事を言って、赤髪の大幹部は皆ルフィが可愛い事位知ってるのよ。……なんて、言えないけど。
懐かしそうに瞳を細める。その様子は離れて暮らす息子を想う父親にさえ思える程。
「会った事が無くても……あれだけ聞けば可愛く思える位だもの。会ってしまったら甘やかしそうだわ」
クスクスと笑えば、ベン・ベックマンは呆れたような眩しいような微妙な顔をした。何事かと思ったら、突然腕を伸ばされて、見詰めている間に腕を掴まれ投げ飛ばすようにベッドへ落とされる。
何事かと思っても、身体は戦いの為に動こうとしてしまう。これは、海軍に身を置いてるが故の反射的な行動。
でも、それをベン・ベックマンは許さない。簡単に関節を抑え込まれてしまう。
「……本当に、自覚が足りねェな。お嬢ちゃん」
「自覚ってな「海賊に捕まってるって、そろそろ分かれよ。流石にこんなねんね相手じゃ、鳴かせるのにも罪悪感しかねェ」」
だから、強気に行く。挑発して隙を作った方が何もしないで犯されるよりはマシだわ。
「あら……幼女趣味の変態なんじゃないの?」
「あ?」
「私、今16歳なんだけど……それに手を出そうって言うなら、幼女趣味って言われても仕方ないんじゃない?」
「なら……育つまで待って、それから食べても良いな」
育つまで待つと言うのが、帰してくれるって意味には取れなくて……空気に飲まれそうになる自分を叱咤する。このままでは居られない。
この肉体を傷付けたくない。特に……海賊なんかには、好きにさせたくないのよ。
「その頃には、勃たないと思うけど」
「試してみるか?」
そう言いながらも、ベン・ベックマンは私の素肌に触れて来る。それが……驚かされる程に、上手い。
経験なんて殆ど無くても分かる。自分で毎日触れてる筈の素肌なのに、自分で触れた時はなんとも無かった筈の腰や背中はもちろん、二の腕や太ももでさえ、私の意志を無視して飛び上がるような衝撃が走って行く。
「や……どう、して……っ?」
この身体に経験なんてない。なのに、肌が粟立つのを感じて、甘い痺れが身体をビクビクと震わせる。
必死で声を耐えても、不安と疑問が渦巻いて声が出てしまう。だって、自分で触ってもなんともない場所なのに。
身体を洗うのに、何も無くて素手で洗うなんてのはよくあって、なのに……こんな事になった事無かったのに。その上戸惑わされるのは、性感帯として狙われるべき胸や下腹部には触れない所。
それでも、怖い。……イザという時に備えて覚悟はして来た筈なのに、どうして。
この肉体を傷付けるのは嫌だけど、海賊に捕まればそうなる可能性だって十分にあるのは分かってたし、そう言われて来た。女海兵は、殺されない代わりに、死んだ方がマシな目に遭うと教育され続けて来たのだ。
頭では分かってるの。でも、痛くて気持ち悪くて、苦しいばかりだと知ってるそれをこれからされるのだと暗示されては、血の気が引くのも当然の事。
「……っ……さ、ん……」
「ん?」
「……ぉっ……さ……っ」
ギュッと眼を閉じた時、手が離れて溜息が落とされた。何事かと薄く眼を開けたら困ったような顔をしてるベン・ベックマンがいて、私は混乱して声を失う。
海賊なのに、どうしてこんなにも血の通った人間みたいな反応を見せるんだろう。……どうして、不快感より快楽を強く与えて来るのかな。
「……流石に、初めてだ」
「なに、が……?」
「組み敷いた女に、別な男の名を呼ばれた事もあれば、行為の最中に名を間違えられた事もあったが……女海兵の名を呼ばれたのは、初めてだ」
言われてから、おつるさんを呼んでいた事に気付かされる。でも、だって、だけど……!
甘える権利なんてないのに。なのに、言い訳ばかりが脳内を駆け巡る。
そして、代わりに言葉が落ちた。私の疑問がそのまま音になる形で。
「どうして……呼んだんだろう」
「ん?」
「助けを求めたりしちゃ、いけないのは、分かってたのに……私、いつからこんなに、弱くなったんだろう……?」
私が助けを求めたら、皆が傷付く。皆が死んでしまう。
大切な人達を悲しませて、本来幸福になるべき少女の人生を奪って、私はここに存在してる。私は、罰せられるべきだ……。
確かにそう思ってきた。存在しては、生きていてはいけない事を、だからこそ誰かに助けを求める権利なんて無い事をしっかりと理解してるのに……。
目を閉じれば、何時でも私を否定して存在を許さない責める声が聞こえて来る。逆らう事を許さない声が、追いかけてくるの。
「なのに、どうして……」
どうして、私は助けを求めたの?おつるさんなら、私を、守ってくれると……守っても死なないと、期待してるのかな?
瞳を開いてる筈なのに、目の前に炎が広かった聞かした。大切な誰かが倒れていく。
爆発するような音が聞こえて、炎を映す赤い液体が目の前に広がり……。そして……耳障りの良い、優しい偽りを告げる。
「……情けない。私は、死ぬ事さえ許されはしないのに」
罪に耐えきれず生命を断つ事さえ、私には許されない。生きて、私を大切にしてくれた人達の為に散る事が私に許された唯一の贖罪。
覚悟を決めて、瞼を開く。目の前にいる男を見据えて、笑った。
その瞬間、ベン・ベックマンが息を飲む。そして、吐息混じりで声を落として来る。
「……驚いたな。こんな小娘が、本気で欲しい」
「は?」
「俺を真っ直ぐ見据えるその瞳が、美しい。他の何も、その瞳に映させたくないと思わされた」
「へ?」
何を言われてるのか分からない。脳がフリーズしそう。
甘く隠微な空気を纏って、色気を垂れ流して、私に顔を近付ける。それから逃げたいけど、逃げられる場所が無くてその顔を見つめる他に選択肢を持たない。
「味見だけしたら帰してやるつもりだったが……気が変わった。俺のものになれ、ナミ」
「謹んで、ご辞退申し上げます」
「拒否権がある訳ねェだろ」
その言葉と同時に愉しそうに笑ったベン・ベックマンが、器用に紐を解いてしまう。それによりハラリと落ちるビキニを押さえるより早く掴まれて投げ捨てられてしまえば、思わず手を伸ばしたのも当然。
けれどもその手を掴まれて、それを解こうともう片方の手を近付ければ両手を纏めて片手でベッドに押さえ付ける形で抑え込まれてしまう。だからって、泣いておつるさんに助けを求めるような愚はもう、犯さない。
強くベン・ベックマンを睨めば、恍惚としたような色がその瞳に宿り……表情が緩んだ。それは、ともすれば本気で愛しいとでも言わんばかりの表情なのに、その瞳には劣情や欲望では無く、恍惚とした何かが宿っているその違和感。
けれどもそれを気にしてる余裕は、すぐに奪われる。何でもないような所を触れられただけで反応してた身体が、胸を、その尖端を弄られて反応しない筈もない。
「ひゃっ!?」
「……未経験か。反応がいちいち初々しいな」
「初めては面倒でしょ!?だから、もう止め「俺は、お前が……ナミが欲しい。初めてなら、覚悟しとけ」」
その声と眼差しで、動けなくなる。声さえ出せない。
じっと見詰めれば嬉しそうに笑って、胸を弄っていた手が私の頭を撫でた。まるで、幼い子にそうするように。
「この先、俺以外の誰にも触れられる事はない。俺だけに愛され続ける覚悟を、今の内に決めておけ」
愛される覚悟って何だろうかと考えてる間に、胸の尖りに舌を這わされ抑えきれない声が出る。イヤイヤと首を横に振っても、更に舌の動きが早くなるだけ。
やめてくれるどころか、声を抑え始めたら頭を撫でていたその手がもう片方の乳首を悪戯する。それに身体が跳ねれば、鼻息で笑ったのが分かった。
それにより顔に熱が集まるのを自覚して、でも、自分ではどうにもならない。……経験が、本当にない訳でもないのに、どうして。
知らないの、こんな感覚。おぞましいだけの行為である筈なのに、こんなに……自我を失いそうな程気持ちいいなんて……。
「も……やだ……こわ、い……」
「ん?」
「なにも、かんがえられなく、なっちゃう……」
辞めて欲しくて、素直に告げれば動きが止まった。胸から口が離れて、戸惑ったように私を見詰める。
そして、深々とした溜め息を落とすから、どうしたのかと思ってしまう。だって、快楽に流されるなんて経験……過去に一度もした事ないんだもん。
でも、何かを言えば泣いてしまいそうで、解放して欲しくて、縋るように見詰める。こんな、子供みたいな自分が、情けない。
「俺の理性を崩壊させる事ができるのは、お頭関連だけだと思っていたんだがな……」
「ベン「ベック……だ」え?」
「虐められたくなければ、そう呼べ」
「ベック……?」
この男に虐められるよりはと、素直に復唱する。すると満足そうに微笑む。
その表情で思考が止まる。こんな顔、見た事ない。
「良い子だ。褒美に、たくさん……気持ち悦くして、イカせてやる」
「いやっ……!」
「まずは、イク感覚を覚えような」
優しい声音で、残酷に紡がれる言葉。胸とクリトリスへの刺激だけで、幾度もイク事を強要され、言葉を仕込まれる。
抵抗は何の価値もない。全力で抗っても勝ち目が無いのに、快楽で力が入らなくなってるから余計に……。
「イク時はイクと言え。自覚を持っているかの確認も兼ねている。……気持ちが良い時は、悦いと言うんだ。できるようになるまで、何度でもイク事になるから、早く覚えた方が良い。それまで、休憩もさせねェ」
「やっ……いやぁぁぁ!」
許しを願っても、縋っても、気持ち悦い……と繰り返し言わされ、イク事を大きな声で言わされながらイクのを繰り返す。それでも、私はこの時まだ、乙女のまま。
何度も達して、体力が失われる事で思考が落ちる。どうしたら、開放されるのか分からないよ。
「ナミは、世界一淫乱で妖艶な処女だ」
「やっ……も、ゆるし、て……」
「後十日……毎日俺にこうして可愛がられて、素直に言葉にできるようになったら……許してやってもいい」
その言葉に縋って、素直に身を預けて、望まれるままに言葉を音にする。そうすれば、他の時は自由にさせて貰えたから……指織り数える日々。
解放まで……あと、何日?そうよ、昨日で十日だわ、なら、今日帰らせて貰える。
そう思って、胸だけでも、クリトリスだけでも簡単にイクようになった他は特に変わらないまま、この身体を傷付ける事の無いままに今日帰れると衣服を身につけようとした時、扉が開かれた。
「……ベック?」
珍しく髪が濡れたままで姿を見せたベックに視線を向ければ、当然のように腰に腕が回されて抱き上げられるようにして唇が重ねられた。身長差を考えれば当然、爪先が床につかないギリギリで重なる唇。
でも、もう今日は開放される日。やっと、帰れる。
「ベック、もうやめ……」
「ナミ、約束の日だ。もう、言葉は強要しない」
「……ん?」
言葉は……って、どう言う……?
そう思って見上げたけど、答えはすぐに体感する事になった。そう、ベックの言葉に従い、指に反応するように教育される期間が終わっただけの事だったのだ。
ベッドに押し倒されて、いつものように弄られる。でも、言葉を強要しないと言われても、癖のように悦いと伝えてしまう私に、ベックは笑う。
「素直になったな……言わなくても良いと言っても、嘘をつけなくなったか」
「あっ……ベック……っ!そこ、悦いのっ!」
「良い子だ。安心しろ、今日はイカせない……」
「えっ?」
「表では……な」
その言葉の意味は、それから間も無く身を持って理解させられた。だって、嫌がって抵抗しても簡単に抑え込まれて、無理に挿れられてしまったから。
幾度も寸止めされた後だからなのか、経験も無いのにすんなりと受け入れてしまうように仕向けられて、痛みのない代わりに快楽を与えられながら、私はこの身体を傷付けてしまった。涙が零れ落ちるのを止められなくて、でも、そんな私にベン・ベックマンは笑うばかり。
「初めに言った筈だ。俺だけに愛され続ける覚悟を、今の内に決めておけ……と。愛している、ナミ。この部屋で、死がふたりを分かつまで共に生きよう」
「やっ……嫌よ!いやっ!」
「仕方ないな。……ナミが望むなら、叶えてやらないと」
辞めてくれるの?
解放してくれるの?
その期待を込めて視線を向ける。声も勝手に落ちた。
「え?」
「二人が嫌なら、家族を増やすしかない。頑張って産めよ」
その先、私の拒絶は受け入れられる事は無かった。表面上は甘やかされて、大切にされて、ただ、人形のように扱われる日々。
帰りたいと願う事さえ許されず、犯され容赦無く奥へと注がれる日々の中、男が本気で愛している事を女は気付けないでいる。そうと分かっていながら、己を真っ直ぐに見詰めるその瞳さえあれば、それだけでいいとばかりに鳴き声を強要する男。
逃げる事ができないように、弱点となる存在を埋め込み、足を弱らせ、傍に置く事を願う男と、その真意に気付かず、乱れ舞う女。この二人が幸福になれる時が来たのかは、この話を目撃した貴方のお心次第。
今宵もまた、迦陵頻伽の哀しい歌声が響く。それを肴に、海賊達は暫しの休息を取るのだろう。