空島で予期せぬ再会を果たした私は、シャンクスに甘えていた。もう、盛大に甘えていた。
「大丈夫じゃ無さそうだな。……どうした?泣き顔なんて、珍しい。聞いてやるから、1つずつ話してみろ」
シャンクスに耳元で優しく囁かれて、私は頷くと言葉を口にしようとして……またも固まった。だって、そこにはミホークさんが立っていたから。
……どうして気付かなかったの!?
「ん?あァ、鷹の目か。ローグタウンまで案内してやったんだって?」
シャンクスの明るい声に泣きそうになる。それだけで済んでいれば、こんなにビクビクと怯えたりしない。
そんな私の反応の直後に、ミホークさんは私を犯した事について当然のように口に出すから、シャンクスとミホークさんは当然のように戦おうとする。1触即発のそれを、空島がなくなっては困るからと止めれば、シャンクスが怒りをぶつけて来てそれに気圧されそうになる自分を自覚する。
「あァ、泣いて嫌がり、貴様と副官を呼んでいたな。……もし孕んだなら言え。ナミごと貰い受けてやる」
「勝手な事、言わないで!私には恋人がいるわ。もしもの時は、彼が支えてくれるし、薬も飲んでるからご心配には及びま「「恋人?」」」
シャンクスとミホークさんの声が重なる。何事かと視線を向けたら、2人がよく似た顔で私を見ていて……咄嗟に逃げ出していた。
でも、素早さに関しては右に出る者が居ないんじゃないかって感じのシャンクスと、世界一の剣豪から正攻法で逃げられる筈は無くて……咄嗟に木陰でクリマタクトを用いて姿を隠すとその場で座り込む。シャンクスもミホークさんも、どうしてここに居るのかな。
震える体を強く抱き締めていたら、すぐ近くの木が挽肉のように粉砕された。……え、これ、この木でやられてたら私、死んでたんと違いますか?
嫌な汗が流れるのを感じながら、引き攣った表情を取り繕えずにミンチな木をそっと手に取る。この木に動物がいたら1緒に切り刻まれてたわねと思えば、血が飛び散ってない現状に少しホッとしてしまう。
「ナミがいたら死んでただろ、今の!!」
「覇気を纏っていれば死なん」
「纏ってなかったらどうすんだよ!?」
怒り騒ぐシャンクスと、妙に冷静なミホークさんの会話が聞えてくる。そうだ、もっと言ってやってシャンクス!とは、心中で。
「……やはり覇気を使えるのか」
「そこか!?てか、知らなかったならやる前に言えよ!!」
「言えばナミに逃げられる。今も姿は見えず気配がない。隠密に長けてるようだな」
「演技力も昔から高かったから、本気で逃げてるなら難しいぞ」
孫自慢する祖父のようなそれに、お黙りと本気で思いつつ息を吐き出す。どうして私の身近には、普通の人が居ないんだろう。
「…………四皇と七武海に追われて、懸賞金すらかけられていない者が逃げ切れたならば政府に報告だな」
「いや、力隠してる奴もいるから、1概には言えねェぞ。白髭のオッサンとこにも、何人か厄介なのが隠れてるしよ」
「…………力を隠す以前に、ナミの場合無自覚だろう。まァ良い、ナミは俺が連れ帰る」
そのまま喧嘩を初めて戦おうとし始めるから、空島が無くなると思い咄嗟にクリマタクトと短剣を手に間に入る。2人の剣圧を受けて私の姿が顕になると、同時に息を飲んだのが分かり全くこの人達はと思う。
「空島は青海よりも島が脆いので、やめてください。住民に迷惑かけないで」
「「ナミ!」」
良く抑えられたと自分を褒め讃えたくなる程に、私の体は小刻みに震えている。でも、表情も声も震えているのを隠して笑ってみせると2人は同時に剣を収めてくれた。
なので私も短剣をしまい、クリマタクトを強く握るとミホークさんとシャンクスがそれを見て、私に用意してくれたのがミホークさんだという話をし始めた。それを眺めつつそっと姿を隠そうとしたら、ミホークさんの腕が徐に伸びて来て、私を抱き込んでしまうから私と共にミホークさんまで姿が消えてしまった。
「ナミ!鷹の目!」
慌てた様子でシャンクスが声を上げるので、それに答えようとしたらそっと耳元で囁かれる。無駄に良いその声で囁くなぁ!
「ナミ、俺に今この場で切り刻まれるか、今この場で犯されるか、俺と共に来るか選べ」
「……お断りよ。どれも選ぶつもりは無いわ」
「なら、犯してから切り刻むか」
その言葉に驚き振り向けば、狂気を孕んだ瞳と視線が絡む。それは僅かな時だったと思うけど、氷水にでも落とされたかのように感じてしまい、私は呼吸を止めるしか出来なかった。
どれ程誤魔化そうと震えを抑えても、直接触れ合っていれば嫌でも伝えてしまう。震えているのが、私の答えだ。
どうしたって怖い。私が死ぬ事を選べばルフィはそれを傷としてしまう上に、永遠に仲間を取り戻すチャンスを失う。
だからって、愛してる男が居るのに他の男に望んで犯される女が何処にいるというのか。連れ去られないだけマシなのかも知れないけど、でも……!
「ナミ、時間切れだ」
その言葉と同時に与えられた衝撃で意識が奪われると、クリマタクトがその場に転がるのが見えた気がした。意識が戻った時、明らかに陸の上と思われる揺れない大地に違和感を抱き、自らの海賊歴の長さに溜息が落ちる。
陸にいると落ち着かないとか……終わってるわ。三半規管が、波の揺れを正常だと認識してしまっていると言う事になるもの。
腰にも胸にも、当然足にも武器が無くて、部屋の中を確認してもクリマタクトは疎か短剣も鉄扇や鉄笛、流星錘まで無いとなると不安になる。どれもこれも無いと困る物で、そっとベッドから降りてクローゼットや引出しを確認してみるけど、やはり見付からない。
そっと部屋のドアに手を伸ばすと、自動ドア宜しく開かれたドアの前にはミホークさんがいて体がビクリと揺れる。そんな私にミホークさんは視線だけ向けて来て、そっと箱を差し出して来た。
「な、に?」
「……点検して、直せるところは直してある」
言われた言葉に首を傾げつつ受け取り中を確認すると、私の武器達と羽根ペンが入っていた。それにホッとしてひとつひとつ確認して見れば、確かに時と共に歪んたりしていた部分が修正されていて、奪われた訳じゃなかったのだと理解する。
思わず笑顔になってしまうのはもう、不可抗力の域だろう。けれども、その状態で顔をあげてお礼を口にしようとしたら、唇が降ってきてそのままガッシリとホールドされてしまえばお礼を言ってる場合じゃない。
必死で身を捩ってみても、微かな隙間さえ作り出せない。手にしていたのは羽根ペンだった為に武器にならなくて、抵抗している間に床に落ちてしまう。
必死で何とか動かせる足を使って攻撃してみても、反応は無くてそれどころか片足が上がって踏ん張りが効かないのをいい事に簡単に抱き上げられて、ベッドへと運ばれてしまう。あの日の事を思い出して、身が震えるのが自分で分かる。
「い、や……いや、ルフィ!」
思わず叫んだ瞬間、ミホークさんに身に付けていたビキニを剥ぎ取られ、唇を貪られる。嫌がり暴れてみても効果は無くて、それどころか面白いなんて呟かれてしまえばルフィやシャンクスを内心で呼びながら、せめて睨む位はと折れそうになる心を叱咤して震える体を根性で抑え込む。
「気高いな……その、気の強さと気高さを折り、俺の色に染めてやる」
愉悦にとんだ表情と狂気に満ちた瞳。あの日でさえ、狂気の色は無かったのにと思えば、理由が分からなくて微かに付けていただけの虚勢という仮面が剥がれる。
そんな私に甘い女だと呟いて、ミホークさんは私の体に触れて来る。冷える心に反して高まる体の熱。
嫌だ辞めてと繰り返す言葉の裏で、助けてと泣き叫ぶ心。脳裏に浮かぶ恋人や仲間、師匠達の姿が私の心を折らずに居てくれる。
容赦無く、休み無く犯される体は衰弱しても、心だけは自由で居られるのはきっと、いつか助けに来てくれると信じられるから。それに、七武海の召集があれば、嫌でもミホークさんは私の傍を離れる筈だもの。
そう思って耐える日々の中で、ミホークさんは私を犯すだけでなく、私に呼び捨てにするよう強要して来る。そんな日々が続けば私の体から体力と筋力が失われるのは当然で、それに比例して抵抗が弱まればミホークは嬉しそうに、満足そうに笑うようになった。
「体は従順になったが、心は未だ俺に逆らうか」
誰かの名を出せば犯されるので、私はルフィのものだと言えなくなった。それでも、無言で居ても分かるのか、ミホークは私の顎を掴むと無理に視線を合わせてくる。
そして、無慈悲な言葉を私に向ける。それならばいっそ殺してと叫びそうになり、そんな事になればルフィはと思いそれを耐える。
「ナミは、俺のモノだ。……薬も飲ません。他の男にも会わせん。安心して子を宿せ」
「嫌!私は人形じゃない……!」
「俺も人形を抱く趣味はない。ナミを俺だけの女にするには、それが手っ取り早いだろう。……ナミは、子供を見捨てられまい」
産まれるまでは産む為に守ろうとして、産まれてからは母として大切にするだろうと言われれば、否定出来ない。その子供を盾にされればナミは、俺から離れられぬと言われて誰が宿したいと思うのか。
キッと強く睨み付けて、私はミホークの手を振り払う。触るなと無言で伝えれば、ミホークはその表情を満足そうな笑みに変えた。
「孕むまで、毎日抱く。死なぬように加減はしてやるから、安心するといい」
何処か優しささえ感じるような声音で告げられた残酷な宣言と共に、本当に毎日抱かれる日々が続き私は抱かれている時の他は、表情が動かなくなっていく事を自覚していた。それが理由で、抱かれる頻度が増してるなんて思いもよらずに、いっそ殺してくれと叫びそうになる自分を自覚する。
心が手に入らぬならば、せめて体だけでもと襲う事でその心と体の両方を破壊し、終幕を自らの手で手繰り寄せている事に男は気付かない。微かに残る希望の糸が切れた時、女は儚くなるだろう事に気付かないのは、気付きたくないからだろうか。
これもまた、何か1つ歯車がズレていれば有り得た、1つの未来の形。彼等がこの後向かい合い、共に生きる可能性があるのかは、これを読んだ貴方のお心次第。