いつものように私は宝をせしめてニマニマと海賊船を後にした。偶然にも他の海賊との交戦中らしく、船はほぼもぬけの殻であったのが幸いした。
ウキウキとした気持ちで近くの島に行き、重すぎるそれを換金しようと陸に足を乗せたその瞬間、誰かに肩を掴まれた。咄嗟にクリマタクトで相手の顔面を狙ったけど、その相手を認識すればその動きはピタリと止まる。
「エース?」
「……ナミ、か?」
「大きく……なったわね。……あ、今は白髭の所だったかしら?」
私の言葉にエースは戸惑いながらも頷いてくれる。本当に大きくなった。
私の知る姿になっているエースに、色々な意味で懐かしくてつい笑ってしまう。今はもう勝てないだろうなと思いながら、戸惑い言葉を失っているエースに私は軽く手を振り、忙しいからまた後でねと言って去ろうとしたら、腰を抱かれる形で抱き寄せられてしまう。
どうしたのかと思ったら、宝を指さしつつエースが返せと言う。って事は、まさか……あの海賊団白髭関係なの?
でも、白髭のマーク無かったわよ!?あれば流石に狙わないわ!
「返せって、何よ。……そう言えば、なんでエースここに居るの?」
「ナミが宝を盗んだのはウチの傘下でさ。親父に会いたいって話だったんだが、ビブルカード紛失事件が起きて俺が迎えに来たら、宝を盗み出す泥棒さんを見付けて追いかけて来たって訳だ」
……傘下、なら、海賊旗はそのままだから違うよね。うん、分かったわ。
でも、この宝は私の物よ!
皆の命が、人生が掛かってる。例えエースが相手でも、ここは譲れない。
「理解はしたけど、返さないわよ!私にはお金が必要なの!」
「どうして?昔から少しがめつかったけど、そんなに執着してなかったし、犯罪に手を染めるような事も好まなかった。……何があった?」
言葉に詰まった私は、それでも宝は手放せなくて俯く。そんな私にエースは困った奴だと言って、私から宝を奪い取る。
「やだ!返して!それが必要なのよ!」
「なら、素直に吐け。必要なら現金で渡してやれるかも知れねェぞ」
「ホント?なら!……でも……」
「ナミ」
押し問答の末に、大切な人達を助けるのに10億必要でその内いくら貯まっているのかを話したら、何故かエースの気配が仄暗い炎のようなものに変わった。それから、誰に支払うのかと聞かれて、答えられない私を見たエースは徐ろに私の腕を掴み、体をまさぐったと思ったら突然袖口を切り裂かれ、隠す為にしていた包帯をもほどいてきた。
「や!何す……「これ、か。ん?このマーク……そうか!」」
そう言って立ち上がったエースは、電伝虫を取り出して誰かと会話をはじめた。それから少ししたら、エースが笑顔を向けて来たのだ。
でも、何故かそれが怖い。なんで、エースが怖いの?
「ナミ、助けてやる。ナミの大切な人ってのをさ」
「え?」
「その対価は……ナミ、お前だ」
「……私?」
「あァ、俺のモノになれば良い。俺の側にいろよ。それだけでいい」
私はその時よく考えもせずにエースの提案にのって頷いた。だって、これで皆が助かるんだもの!
お礼を言いながらエースに抱き着くと、エースは少し驚いた様子で、でも嬉しそうに私を抱き締めてくれた。その温もりは、幼い頃から何も変わっては居なくて、怖いと思ったのは気の所為だったのだとホッと体から力を抜く。
でも、少し不思議に思ってしまう。どうやって助けてくれるつもりなのか、そして、対価は私なんかで本当に足りるのか。
「エース……どうやって、助けてくれるの?」
「……今更か。それ普通先に確認するもんだろ。そんなんだから騙されるんだよナミは」
「騙され……!?」
「俺も今回、ナミ相手じゃ無けりゃ、宝を奪い返す為に約束だけして放置してたと思うぞ。……親父に連絡入れたから、親分と2人でやってくれる。それで、俺からも質問だが……ナミの大切な人ってのは、どんな奴?」
質問と同時に締め付ける腕の力が強まり、息が苦しくなる。エースは突然どうしたと言うのか。
戸惑いは強いけど、離してくれそうもないなと判断して、私はゆっくりと唇を動かす。脳裏には笑う家族の顔がハッキリと浮かんでいる。
「優しい、人達よ」
「ナミとの関係は?」
「家族」
「……あァ、姉と母親か!」
そう言って腕の力を緩めたエースは嬉しそうに笑って、それならいいと言う。なんだと言うのか、本当に。
そう思った直後に、エースは私の唇に自らの唇を重ねて来た。それに驚き、思わず抵抗したらエースは私の首を軽く締めて、薄く笑った。
「俺を、拒む事は許さねェ。ナミは、俺のモノになるって決めたんだろ?」
「エー……ス、外は、いや、よ」
拒んでない、だから……皆を助けて。抵抗したのは、人に見られたくないからよ。
そう、エースに訴え続ければエースは嬉しそうに笑い、そうだよな……なんて言って私の首から手を離した。それから、耳元で囁く。
「俺の部屋で、ずっと1緒に居てくれよナミは、俺を置いて何処にも行かないだろう?俺のモノなんだから……」
「エース?」
エースの様子がおかしくて、どうしたのかと不安になる。小さく震えるエースを抱き締めれば、縋るようにエースが私を抱く腕に力を込めた。
それは、当然ながら不快ではなくて、寧ろただただ心配で……エース?と何度も呼び掛ける私にエースはただ、名を呼び返すばかり。エースに何があったのかと落ち着くまで抱きしめていようと思った直後に、私の意識は首に走った衝撃で失われる。
「エース……ど、して?」
「……ナミの居場所は、俺の側だけだ」
意味が、分からないわ。エース、何があったの……?
それからどれくらいの時が過ぎたのか、意識を取り戻した私は誰かに抱きしめられている事に気付く。それにより顔を上げれば眠っているエースが居る。
となれば、宿か、エースの船室か、傘下の船の客室だろうと当たりを付けて、そっとエースの腕から抜け出す。武器も服も何も変化は無いけど、宝だけが無い。
でも、皆を無事に助けてくれるというのならは、ジンベエさんと白髭さんが動いてくれるのならば、大丈夫かなと思う。不安はあるけど、だからこそじっとしても居られない。
そっと眠るエースの頭を撫でてからベッドを降りて、ドアをこっそりと開けてみると船の中だと確信出来た。そうなるとここは傘下の客室か、エースの私室という事になる。
「……あァ、エースの恋人か。エースに当身されたって聞いたが、痛みはないか?」
声に驚きつつ視線を向ければ和服の美人さんが立っていて、成程ここはエースの私室だったらしいと知る。それから背筋を伸ばして立つと、笑顔で挨拶をする。
「初めまして、私はエースの姉のような者でして、名をナミと言います。今は……エースの方が強いので、微妙ですが。……失礼ですが16番隊隊長のイゾウさんにお間違い御座いませんか?」
「あァ、間違いないよ。挨拶だけまともなエースとは違……「ナミと気安く喋んなよ。ナミ、来い」」
言葉と同時に背後から抱き寄せられて、私は何故か怒ってる様子のエースの胸に抱かれる。そんな私とエースを見て、イゾウさんは呆れたような顔をしてから、あんまり虐めると嫌われるから、程々にしとけよと言って去って行った。
それを呆然と見送ってから、ドアを閉めて鍵まで締めたエースにベッドへと投げ落とされる。ぽふんと落ちた体に何が起きたのかとエースを見上げれば、噛み付くようなキスが降ってくる。
「ンゥ!んっ……」
それと同時に着ている物を脱がされてしまえば、エースが何をしようとしているのか位は嫌でもわかる。でも、ここにはエースしかいないし、キスを拒んだ時の反応を思い出せば抵抗するのは良くないと分かるけど……でも!
「待って!エース、お願い、待って!」
「10年待った。もう、待てねェよ!」
「……っ!は、初めてなの!お願い!待って!」
その瞬間エースが動きを止めて、小さく嘘だろと言う。でも、ホントだもん。
それからエースは嬉しそうに笑って、妙な事を口にする。本当にエースはどうしてしまったのか。
「なら、ナミの最初で最後の男は俺だな。……1生離さねェ」
「エース、どうしたの?何が「ナミが抵抗しないなら、俺を拒まないなら優しく出来る。抵抗するなら……縛り上げる。逃げ出したら……死ぬよりつらい思いを、させてやるからな」」
「エース?」
それからエースは私を容赦無く抱いた。私が何処までなら許すのかを確かめるように、辱めるように、執拗に何度も。
エースが側に居る時の大半は抱かれているような生活で、エースの居ない時間も部屋の中で過ごす事となり、どれだけの時間が過ぎたのか。最近では、休ませて貰える日もなく抱かれているからか、体を起こすのもつらくなってきた。
エースは、表面的には優しくしてくれるけど、何故か心は日々離れているような気がする。姉としては、エースが可愛いけど……流石に、つらい。
勿論ベルメールさん達が無事になった、開放されたのだから私はヤリ殺されても文句は言えないし、言うつもりもない。けど……それでも、大切な弟にされ続ける事がつらくない訳じゃなくて……。
涙が零れ落ちる。後から後から、留まる事を知らないかのように。
日に当たらなくなり白くなった肌と、日々落ちて行く筋肉。抱かれるだけの生活は、エースが私を人形として扱いたいと言う思いの現れに思えて来る。
男は抱く事が愛情表現だと信じ、女は男の想いに気付かない。それ故に女は性欲処理の道具にされているのだと思い、弟としての愛情さえも揺らぎ始める。
けれども男はただ、2度と大切な者を喪いたくないと願い体だけ繋ぎ止めようとする事で、その姿が日々儚くなるのだと気付かない。男が女に想いを伝えられ、幸福になれるのかは……皆様のお心次第。