零に堕ちる 作:泥中
クターニッドに挑んだ時は、こんなことにはならなかったのに。
と、今となっては姿を変えてしまった、愛用の武具にため息をつく。
ならばきっと原因はエルフの里のあの肉体改変に違いない。
未だ知らぬ自らの出自。
覚醒の祭壇は私たちのことを二号計画素体とよんだ。
確かあのとき解放されたのはマナ粒子適合リミッターだったか。
そのあと相貌の鎧と神魔の剣は姿を変えた。
確かにその時から妙な肌触りをするとは思っていた。
その様子がおかしいのはここ最近。
具体的にいえば、ふらりと迷いこんだ地下迷宮。
足を滑らせて縦穴に落ち込み、壁を蹴り勢いこそ落としたものの、深く地の底までおりてきてしまってしばらく地の底をしばらくさまよっていたときだった。
何かに反応したというような様子ではない。
もしかしたら、時間経過で発動する、何かの呪いにかかっていたのかもしれない。
何より、事実として今自分は、生物の気配のない地下迷宮の洞窟で、重みを増した鎧に地に縫いとめられ、全身を思うがままに嬲られている。
始まって1日目は、ただ気持ち悪いだけだった。
鎧の動きも緩慢なもので、刺激と呼べるような刺激は存在しない。
これなら、多少の不快な感覚は無視して、数日耐えれば収まるだろうかなどと言う甘い考えは、二日目には裏切られ、状況は切迫したものに一気に変わってしまった。
「ふぅぅっ…..っゃゃあ….」
一日と立っていないのにすでに耳に馴染んでしまった、甲高い嬌声。
そういうものと縁が無かったために耳にすることもなく、さらにはまさか自分の口からこんな声が出ることになるとは思いもしなかった。
原因は聖杯。
七つの最強種の一角に挑んだあのとき、運よく手にした青の聖杯。
インベントリにしまい込んだまま起動することのなかったその存在は、今の今まで久しく忘れていた。
代わり映えのしない刺激にこの程度ならまぁ問題ないかと笑ったそのとき、確かに鎧は怒りと笑みを浮かべていた。
自由を奪われた自分の右手が操られて、格納庫を操作する。
ぴかっと自分を包んだ青色の光。
密着していた肉壁から一回り縮んだ自分の体。
これなら抜け出せるかな?と浮かぶより先に、キュッと鎧はその大きさを一回り縮めて、再び私は肉の檻の中に閉じ込められた。
そのとき、もしかしたら肉体に何らかの変化が加えられたのだろうか。
同じように動いているはずの肉の壁が、妙にくすぐったく感じられるようになった。
それは時間を追うごとにくすぐったさと気持ち悪さが入れ替わっていって、そして最後には全てが気持ちよさ、拒もうとも無理やり押し付けられる快楽に上書きされる。
洞窟の暗闇に私の甲高い嬌声が吸い込まれるようになるまで、そう長い時間はかからなかった。