※この作品はR-18です。

売女戦記   作:栗鼠科.aka.メスガキ撲滅委員会

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 今回スケベはなし。




19話.軍上層部の認識。

 エレニウム工廠の威信を掛けた最新プロジェクト、95式魔導演算宝珠開発計画。

 主任技師に選ばれたアーデルハイト・フォン・シューゲル博士の要求もあり、軍は資金援助に加えて、実験要員として魔導士官を派遣した。だが、その開発計画は散々なものだった。

 何名もの貴重な魔導師を失い、尊い人命を損なった。それでも完成すれば、数字の上ではとてつもない成果を挙げる事、疑いようもない。そしてそれは実証された。

 

「どうだね、95式の性能とやらは?」

「素晴らしいです! 素晴らしいの一言ですよ! 演算宝珠に記録されたデータによれば、デグレチャフ少尉とブリッグス少尉の二名が敵の航空魔導中隊と接敵、直後、僅か3分で敵を殲滅、全機撃墜とのこと!」

「素晴らしい・・・! 95式を得て、万全の装備があれば、たった2人で航空魔導師の中隊を殲滅できるのか! いかにエースと言えど、この結果は間違いなく95式がもたらしたものだろう。いや素晴らしい!」

 

 待ち望んでいた吉報に沸き、軍人達はいかにも美味しそうに葉巻を吸った。

 エレニウム95式評価委員会が色めき立つ。最高高度18000を記録しているとなれば、敵航空機すら撃墜可能だ。空中高くから敵戦車を一方的に蹂躙し、トーチカと固定機銃を薙ぎ払って歩兵の進む道を切り拓く。これで我が軍は無敵だと、喜色の声が上がる。

 

「ではさっそく、95式の量産に取り掛かろうではないか! 多少コストが掛かっても構わん。3倍4倍程度なら、戦果で補える。95式にはそれだけの価値がある!」

「・・・・・・あの、その事なのですが」

 

 瞬間、委員会会長を除く全員が熱を失う。

 誠に残念な事ながら、このエレニウム95式、使いこなせるのはたった2人だけという、どうしようもない欠陥品なのである。その2人にしても、起動実験で演算宝珠の宝珠核が融解寸前まで暴走し、そこから奇跡的に安定するという過程を経て、ようやく完成させている。初めはデグレチャフ少尉が爆発寸前となり、数時間に再調整を済ませたブリッグス少尉が実験し、またも宝珠核融解寸前まで暴走させてしまっている。実験施設が消し飛びかけるという、あわや一大事が日に二度も起こった事で、複数の職員が急性ストレスで倒れたという報告まである。

 

 これは後の研究で分かった事だが、宝珠核が魔力暴走であわや融解となった瞬間に、暴走した干渉波が偶然一致。それによって、辛うじて融解寸前で同調を完了させていたのだ。そのためデグレチャフ少尉、ブリッグス少尉それぞれの魔力に適応した、専用の演算宝珠とでもいうべき物となった事で、ようやく安定しているのである。そしてその再現の目処は立っていない。現存する二機のみが、完成品なのだ。それもよくわらない変化で偶然うまくいった物を、よくわからないまま使っているというのが現状だ。

 

「なんということだ・・・・・・。では、量産は不可能か・・・」

「誠に遺憾ながら・・・。しかし、エレニウム工廠からの報告によりますと、性能をワンランク落としてでも確実な安定性を取る方向で、他の魔導師でも扱える演算宝珠なら、開発可能との事です。そちらの研究でも、既に、95式以前の既存の演算宝珠を、数段回る性能を約束できる、と・・・」

「・・・・・・うむ。ならば、その方向でいくしかあるまい。予算委員会に掛け合うとしよう」

 

 これにて95式評価委員会は終了となる。次は96式か、97式か。何にせよ、これからの戦場を支えるのは魔導師だ。ならば、魔導師を魔導師足らしめる演算宝珠の研究開発は必至。そう結論付けて、当会議は終了となった。

 

「ふぅ・・・」

 

 その場の他の者と同じく、様々な念を込めて、深い息を吐く一人の男。参謀本部戦務参謀長官、ハンス・フォン・ゼートゥーア。

 戦務参謀長官として、魔導師の今後を見定める当委員会への出席は当然のことだったが、分かった事は少ない。決定的なのは、デグレチャフ少尉とブリッグス少尉は帝国最強の駒となったこと、そして代替不可能な存在となってしまった事だ。となれば、今後はより慎重な扱いを心掛けねばならないし、希望はなるべく叶えてやる方向でいくしかない。

 両名がそれぞれ提出した論文の通り、先手を打って共和国への外交を申し出た事で、戦線追加も免れた。外交準備の段階で、西方に不審な動きがあるとの報告を受けた時は、ゼートゥーアとて心底震えたものだ。あの二人の少女は、これを的確に見抜いていたのだと。

 

「しかし、前線の損耗を抑えるには、彼女たちの力が必要だ・・・」

 

 一度プロパガンダに利用してしまった手前、今さら2人を前線から遠ざけるわけにもいかない。そんなことをすれば、前線兵の士気はガタ落ちになるだろう。しかし、これ以上、彼女たちに負担を掛け続けるのも好ましくない。ゼートゥーアがそのように思考していた時であった。

 

「閣下! ゼートゥーア閣下! 広報局より至急の入電です!」

 

 突然、すっ飛んで来た警備の者が現れ、緊急事態を知らされる。そして、電話越しに広報局局長から伝えられたのは、耳を疑うような話だった。

 

「こんな事が世間にバレたら、私の政治生命はおしまいです!! 閣下! どうかお助けを!」

 

 ゼートゥーアはすぐさま作戦参謀長官と人事局人事課長を呼び寄せた。そして、

 

「サラ・エレオノール・ブリッグス少尉に緊急の出頭命令を出せ!」

 

 事件の張本人を糾弾するべく命令を下した。査問会の発令である。

 

 

—————

 

 

 や、やあ、今日も軍服の下はドスケベランジェリー、サラ・エレオノール・ブリッグス少尉だ。今日の下着は人気の淡いレモン色、オープンランジェリーとガーターベルトにストッキングという、高級娼婦の装いだ。もちろん軍服は支給のスカート。一皮剥けばスケベなメスガキというわけだ。・・・が、それが実にマズイ。実は今、査問会の真っ最中でして。ええ、はい、エッチな撮影会の写真がバレました。軍人生命のピンチであります。絶対絶命のサラ・ブリッグスであります。

 

 武器と演算宝珠を警備に預け、呼び出された会議室に入室。すると、参謀本部から集まったお偉い高級士官の方々にさっそく睨まれた。作戦参謀長官のルーデルドルフ准将。戦務参謀長官のゼートゥーア准将。情報局秘密情報部長官グレルマン大佐。人事局人事課長レルゲン少佐。そして広報局局長ホルンガッハー少佐。軍でもトップクラスの地位にいらっしゃる方々が、みんなして俺を睨むのである。唯一、面識があるというか、肉体関係を持ったグレルマン大佐だけが、にっこりと微笑んでくれたが。しかし、その目は笑っていなかった。

 

「ただ今出頭いたしました! 北方前線司令部直轄第17混成魔導大隊所属、サラ・エレオノール・ブリッグス少尉であります!」

「うむ。前線から本部まで、長旅ご苦労、少尉」

「さっそくだが。この写真はどういう事か、説明してもらおうか。ブリッグス少尉」

 

 ボードに貼り付けられた何十枚もの写真を見せつけられております。サラ・ブリッグス少尉であります。今、とても恥ずかしい思いをしております、サラ・ブリッグス少尉であります。

 スカートをまくっておパンツを晒している写真に、シャツをはだけてエッチな下着を見せつけている写真。軍服軍帽でチンポ握って罵倒してる写真に、チンポ踏み付けて睨んでる写真。裸に軍服羽織ってチンポ咥えてる写真に、挿入されてる写真。チンポ片手に騎乗位で腰振ってる乱交写真も、四つん這いでサンドウィッチされてる写真も、笑顔のダブルピースでザーメンシャワーを受けてる肉便器そのものな写真も。もちろん全裸土下座もだ。あの日撮ってもらった全ての写真がボードに貼り付けられている。

 どーりで俺の所に写真が届かなかったわけだ。全部ここにあったんだな。って、そんなことを考えてる場合じゃない。これはピンチ、軍人生命のピンチだ。木っ端の歩兵が懐に忍ばせるくらいなら問題ないが、軍の真面目なお偉いさんの手に渡った以上、こりゃ軍法会議モノですよ。実際今、査問会が開かれてるわけで。ここで何も弁解出来ないと、そのまま軍法会議で階級剥奪からの、下手すりゃ追放ですよ。ヤバすぎる。

 

「予め教えておいてあげよう。我々情報部が既に、撮影に立ち会った全民間職員を尋問している。正直に答えることをお勧めしよう」

 

 と、秘密情報部のグレルマン大佐。

 なるほど、内務監査官なのに、外にまで目を光らせていたのですね、大佐。そんなに俺の身体が欲しいのですか。そんなに俺を専用の性奴隷にしたいのですか。いやらしい顔しやがって。

 

「答えたまえ、少尉」

 

 ゼートゥーア閣下のお怒り声だ。そりゃ、怒りますよね。せっかく目を掛けていた将来有望な士官が、前線のエースオブエースが、まさかこんなクソビッチだったなんて。プロパガンダに使った幼女が、誰彼構わずチンポを咥えるようなメスガキだったなんて。お怒りですよね。はい、わかりました。正直に話します。

 

「はっ! それらの写真は、小官が私費を支払って、トラウトマン撮影監督に依頼し、個人的に注文いたしました、個人撮影の写真であります!」

「うむ、証言と一致するな。だが、聞きたいのは、そういう表面的な事ではない。“どうしてこのような写真の撮影を依頼したのか”、そして“なぜ軍服を着た状態で撮影したのか”だ。・・・・・・答えたまえ、少尉」

 

 はい、分かってます。軍服着たままでそんな事したら、そりゃ軍人として裁かれますよね。

 よし、では自己弁護開始だ。どうにかして軍法会議を回避しなきゃならん。久々に頭使って喋らないといけないぞ。

 

「はっ! それぞれお答えします! それは慰安目的であります! 小官は以前より、様々な慰安行為を学んで参りましたが。強いストレスに晒される兵士にとって、最も効果的な慰安が、性的発散である事に気付きました。事実として、士官学校の士官候補生たちは、小官の性的慰安を受けた後、成績が向上しておりますし。現在所属している北方前線基地の陸軍の兵士もまた、小官の性的慰安を受けて笑顔を取り戻し、気力と士気を保って作戦行動に従事しております」

 

 現在進行形で性的慰安を実行中と聞いて、准将たちの目が大きく見開かれる。

 

「そこで、一度でも小官から直接、性的慰安を受けた者であれば、その経験を想起させる物によって、慰安を代用できるのではないか、と思考しました。そのための写真撮影であります! この写真があれば効果的な自慰行為を期待でき、ストレスの発散は容易となり、兵士の士気向上が安価にて約束される事でしょう!」

 

 ここでいったん区切り、皆さまが俺の言葉を咀嚼する時間を設ける。それと共に、舌と喉を休ませて、続く自己弁護に備える。

 

「また、その効果的な自慰行為を最大化するためには、対象となる兵士の趣味趣向に合わせた写真が必要であります。そのため、各種フェチズムに対応した写真を用意する必要があり、その一環として、軍服を着用したまま、撮影に臨みました。以上が閣下の御質問に対する回答であります!」

 

 必要だからやっただけ。実際に効果がある。士気向上に貢献している。とまあ簡単な自己弁護だったが、とりあえず閣下方は今すぐブチギレて査問会終了とはしないでくれた。

 そして、少し落ち着いたゼートゥーア閣下が次の質問。

 

「では、個人撮影の後の、不埒な淫行については、どう説明する? 尋問の結果、彼ら撮影スタッフ全員が、ブリッグス少尉から誘ってきた、と証言しているが?」

「はっ! その通りであります! 撮影終了直後、スタッフの方々が性器を勃起させているのを、小官は確認いたしました。小官は既に女でありますれば、殿方に恥を掻かせるのは忍びなく。また、本来予定に無かった無茶な依頼の結果でもあります。そこで、小官が責任を取って性処理を行うため、自ら申し出ました!」

「・・・ほう? 立派な物言いだな。しかしその割には、随分と楽しそうな顔で写っているが?」

「はっ! 小官は殿方の性処理を心から楽しんでおりますっ!」

 

 目を見てはっきりと言ってやった。何もやましい事はないのだと。楽しんでやったのは本心だと。そう言ってやった。ゼートゥーア閣下はもちろん、この場の全員が、鳩が豆鉄砲くらったような顔をして驚いている。いや、俺の正体がメスガキだと知っているグレルマン大佐だけは別だ。ちょっとは驚いているようだが。

 とりあえず困惑させる事には成功した、このままゴリ押しで突っ切ってやる!

 

「では、何かね? 君は好きで男と寝ているのかね?」

「はっ! 帝国と軍に貢献するために、兵士の士気向上、メンタルケアという名目と実益がありますが。小官が好んで性行為を行なっている事は間違いありません!」

 

 複数の呆れた溜息。なんだよ、みんな幸せになってるんだから、いいじゃないか。

 少しして、皆さんがそれぞれ水を飲んで落ち着いてから、今度はルーデルドルフ閣下。

 

「ならば聞きたい。いくら好きでやっているとはいえ、私費を使ってまで撮影を依頼し、また、前線でも慰安婦の真似事をするというのは、いささか理解し難い熱意だ。君はどうしてそこまで、趣味ではなく慰安行為として、このような事をする?」

 

 その答えはひとつ。お答えしましょう、ルーデルドルフ閣下。

 

「はっ! それは小官が神託を授かったからであります! 小官は主の意思に従っているに過ぎません! それがたまたま、小官の趣味趣向と一致したまでの事であります!」

「神託・・・か。資料によれば、君は敬虔な信徒だそうだな。だが、神託とはなんだ? とにかく沢山の男とセックスしろと、神がそう言ったとでも?」

 

 そうとも、神は愛を求めているのだ!

 

「はっ! 主はこう仰いました、『女として生きよ』と。そしてこう続けられました、『そして愛を育み、信心を育み、神の恩寵を知るのだ。苦難と苦痛の試練を乗り越えた先で、我が名を讃えよ。愛と共に我を感じよ』。私はこの言葉に従い、男性との間に愛を育んでおります! 事実、私を抱く際、愛しているとはっきり言葉にする兵士は、少なくありません。また、女として生きること、つまり女である事の自覚、それは女の身体での最大快楽によって強く意識されておりますっ! 女として生きる幸せ、男性と愛を育む喜び、私は性行為の中で常に神を側に感じ、感謝を捧げておりますっ!!」

 

 呆気に取られた顔の皆さま。事実を知って驚いたらしい。信じられないかもしれないが、嘘は言っていないぞ。俺は確かに神の声を聞いた。女として生きるように言われたし、愛を育むようにも言われた。そして、そう生きやすいように、神は俺を美少女として作って下さった。

 みんなが俺を愛してくれる。だから俺もみんなのチンポを愛するのだ。

 だからこの愛と感謝を、神に捧げるのだ。

 

 

—————

 

 

 隣室にて待機するよう命じ、サラ・ブリッグス少尉を退出させてすぐ。緊急査問会の面々は大きな溜め息を吐いた。当然だろう。僅か10歳の幼女が軍人として戦い、それも戦場でエースを飾っているというだけでも、頭痛の種なのに。そんな幼気な娘がよりにもよって「神の声を聞いた」などと云い、しかもその神託を曲解して、淫乱の如く複数の男と性的な関係にあるというのだ。更に困りものなのが、それで実際に軍に貢献してしまっている点であろう。

 

「北方前線基地の兵士に関する資料が届いた。皆、読んでくれ」

 

 部下を走らせ取りに行かせた最新の資料を見れば、確かに、ブリッグス少尉が広報用撮影から基地に戻って暫く、兵士間の揉め事(ケンカ)の件数が減り、アルコールや煙草の消費量が激減している。特にここ一週間のそれは、戦争が始まる前の、国境警備基地時代のそれよりも低い数字となっていた。それはつまり、他の何かでストレスを発散できているという事実に他ならない。

 ここまで明確な数字で兵士の士気向上とメンタルケアを両立されては、陸軍全体が幼女趣向(ロリコン)になってしまうのを恐れてしまうほどだ。何か手を打たねばなるまい。

 

「一番の悩みどころは、善意でやっているという点だな」

 

 紫煙を吐き出し、ルーデルドルフ准将が零す。その呟きに全員が同意する。これが誰かに脅されているとかいうのであれば、彼女を救うという名目で介入でき、その者を処罰すれば終わる話。しかしそうではない。彼女は嫌々でも、義務感でもなく、自ら進んで、喜んで楽しんでやっているのだ、“神がそう望まれたから”と。

 

「しかし彼女は戦場の要。デグレチャフ少尉だけとなると、この数字は出せん・・・!」

 

 続いて、ゼートゥーア准将の苦悶。資料を見れば一目瞭然だ。戦車三台の素早い鹵獲に、機甲師団の殲滅は過去最速記録。敵航空魔導師の中隊を、接敵から僅か3分で殲滅するほどの、比類無き戦闘能力と圧倒的コンビネーション。いかにエレニウム95式演算宝珠が他を隔絶する性能と言えども、これは明らかにデグレチャフ少尉とブリッグス少尉の二人が組んでいるからこその数字。

 兵士の死傷率の低さ、機甲師団の損傷率の低さ、航空機の帰還率の高さ、全ての数字が彼女たちに支えられている。紛れもない事実として、帝国軍は二人の幼女に支えられて、戦勝確実な状況を維持できているのだ。これをデグレチャフ少尉一人に負わせるとなれば、どこまで犠牲が増えることか。

 

「そして、あのレポートですね・・・」

 

 最後にレルゲン少佐。レポートというのは他でもない、ターニャ・デグレチャフの名で人事局人事課長の下へ送られた、論文の事である。三つある論文はそれぞれ、「戦場における魔導師の最適・最大化運用」、「多数の仮想敵国を抱えた帝国の軍事的配慮」、「協商連合との開戦に際した帝国が取るべき軍事的・政治的行動について」と銘打たれており、そのどれもが革新的視点によって書かれていた。

 魔導師の最適、最大化運用についての論文は、戦務参謀長官であるゼートゥーアをして、喉を唸らせるほど。多数の仮想敵国に睨まれ続ける、帝国の国際的な立場を指摘する論文などは。同封された当時士官候補生だったデグレチャフの、政治的最終目標という論文も合わせて匿名化して提出したところ、議会が大きく揺れ動いた。しかもそのうえ、今後の軍事目標、政治目標がある程度定まってしまったのだから、これらの論文がいかに合理的かつ客観的な判断に基き、そして納得せざるを得ないものであるか。

 特に、協商連合との開戦に際しての論文が、今一番の注目を集めている。まるでこうなる事を予期していたかのように、共和国を始めとする周辺列強国の介入や戦線参加を阻止するための方法が記されていたのだから。

 

「叱りつけて、大人しくするよう言い聞かせるか?」

「馬鹿を言うな、ルーデルドルフ。見た目で騙されそうになるが、彼女はもう少女ではない」

 

 苦々しい顔のゼートゥーア。

 

「ではお目付役でも用意するか?」

「ルーデルドルフ准将、彼女は魔性です。監視など、男性では取り込まれ、女性なら同類にされてしまうだけでしょう。まず間違いなく、無駄に終わるかと」

「監視は無駄か・・・」

「それに、彼女は自分の立場を理解しています! 今の優位な前線を維持し、あのレポート通りに講和を進めるために、自分の存在が欠かせない事を知っているのです! それを理解し、そして利用している・・・!」

 

 人事局人事課長レルゲン少佐の危機感溢れる声には、流石の面々も言葉を失う。

 そして極め付けは、協商連合の開戦についてのレポートで記された、ある利益。

 

「もし・・・、もしあのレポートの通りに事が進めば、協商連合は更なる武力を求めて、大公国に協力を要請するだろう」

「これもレポート通り、外交により明確な戦争の意思ありと言質を取れば、最速で攻略占拠し、大公国を植民地化できる。あの国の油田が手に入るのなら、これを逃す手はない・・・」

「協商連合は、共和国との分割統治でも構わんが。大公国は惜しいからな」

 

 様々な思想と利益が絡む話が続くが。結局のところ、軍はサラ・エレオノール・ブリッグス少尉を手放す事が出来ないという、当査問会の根本的問題についての答えは出せなかった。

 




 デグレチャフ閣下がサラちゃんを身代わりにしようとしてレポートを書かせた結果。
 共和国の参戦は無く、軍上層部は早い段階でデグレチャフの悪魔的先見性に気付く。

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