スマホの目覚ましがけたたましくなり響く。いつもであれば二度寝を決めるところだが今日は素直に起きる。そう、今日は待ちに待った高校の入学式の日だ。
入学式。それは新たな生活の始まりでもあり終わりでもある。どれほど仲良しの友達がいたとしても学校が変わってしまえばその関係もリセットされる。したがって俺の今までのぼっち生活もリセットされるのだろうとウキウキな気分で朝を迎えた。
リビングの扉を開けるとすでに起きていた小町が朝食を並べている。両親は今日も元気に社畜のためすでに家にはいないようだ。おお、今日は和食朝食フルコースだな。テンションあがる。
「おはよお兄ちゃん」
「おはよう」
そう軽く挨拶をかわし席に着く。寝起きなのでぼーっとしていると小町は手際よくコーヒーを淹れ砂糖や牛乳をどばどばと投入し机に置く。
「さんきゅ」
「んー、お兄ちゃん今日入学式でしょ?」
「そうだな」
「ちゃんとご飯食べていくんだよ?お兄ちゃんただでさえ目が死んでるんだから、せめて生きた人間と同じサイクルで生活しないと。昨日も夜遅かったでしょ」
「ちょっと小町ちゃん?お兄ちゃんも生きた人間だからね?」
さすがのお兄ちゃんもゾンビ扱いはちょっとショックだよ?と目で訴えると小町は「はいはい」と言わんばかりにご飯を食べるよう促す。おとなしく従い黙々とご飯を半分ほど食べたところでいい感じに冷めたコーヒーを飲む。うん、甘い。マックスコーヒーまでは甘くはないがこれもまたおいしい。なにより小町が淹れてくれたのだし。さながら小町はこのコーヒーのように俺に甘いと思う。かわいい。
「小町の学校はもう始業式やってたか?」
「んーん、まだだよ」
「え、じゃあまだ春休みなのか?」
「そだよ、明後日から学校」
「俺のために早く起きたのか」
「そうだよ!小町はお兄ちゃんが高校デビューに失敗しないように願っているんだよ!今の小町的にポイント高い!」
「小町……」
最後のがなければポイントは高かったが素直に嬉しい。あれ、でも妹に心配されてる兄ってどうなの?ていうか失敗すること前提なの?やだ俺恥ずかしい。
「まぁ正直言うと中学みたいに他人のふりするのが嫌だからちゃんとしてほしいのもあるんだけどね」
「小町……」
前言撤回。小町ちゃん苦い、苦いよ。もっと練乳入れてくれないとお兄ちゃん死んじゃう!
「安心しろ。総武高は知り合いが一人もいない。いや俺に知り合いはいないが同じ中学のやつはない。だから大丈夫だ」
「うう……心配だよぅ……」
よよよとうな垂れる小町を無視して朝食を食べる。最後にコーヒーを流し込み軽く片付け身支度をするためにバタバタしていると小町が不思議そうな顔をした。
「あれ?もう出るの?まだ早くない?」
と言って小町は壁にかけてある時計に目をやる。確かにまだ七時過ぎだ。今出発したら七時半にはついてしまうだろう。だが俺はそんな小町の言葉を軽く受け流して制服の袖に腕を通す。まだ試着で一度しか着ていないせいかすこし生地が固い。だがこれも卒業するころにはテカテカのフニャフニャになっていること想像しまだ入学してもいないのに感慨深くなった。
「ちょっと早めに出るわ。遅刻するといけないしな」
「うん分かった。さぼらないでよ?」
「サボるかっての。じゃ、行ってきます」
新品のスクールバッグを掴み別れを告げると小町がついてきた。どうやら玄関までは送ってもらえるようだ。
「お兄ちゃん、頑張ってね!車に轢かれないでよ」
「おう、気を付けるわ」
自転車にカバンを入れ小町に手を振り出発する。よし、なんとかごまかせたな。まさかワクワクして早く学校に行きたいなんて口が裂けても言えない。うひょー、オラワクワクしてきたぞ!
鼻歌を歌いながら漕いでいると反対の道であほっぽいやつが犬を散歩しているのが目に入った。
おお、危ないなあの飼い主。ちゃんとリード持ってないだろ。ほらあの犬こっちに向かって……あ、
瞬間、自分を制御できなくなった。決して寝ぼけていたわけではない。つい体が動いてしまったのだ。そんなことをしたらどうなるのかわかっていたはずだった。
やたら大きなブレーキの音の後に体に強い衝撃が走る。何が起こったのか理解するまでに時間がかかった。そうか俺、撥ねられたんだな。結構派手に飛ばされたらしく身体中が痛い。腹も痛いし頭も痛い。体を動かそうとしたがピクリとも動けない。体温がどんどん下がっていく気がした。騒ぎを聞きつけたのかまわりに人が集まってくる。いろんな人の声が聞こえるが何を言っているのはよくわからない。その中に犬の鳴き声が聞こえてきてとりあえず助けられたのだと安堵すると、途端に意識が遠くなっていた。
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。
目を開けて真っ先に浮かんだ文がこれだった。いやそうではない、全然知らない天井が目の前にあっただけだ。えっと……どうして俺は寝ているんだ?そうだ、犬を助けて轢かれたんだっけか。じゃあここは病院か?
痛みでうまく働かない頭をなんとか動かす。身体はそこらじゅうが痛くてもうどこが痛いのか分からないくらいで動かすこともままならない。なんなら手足なんて感覚が全くないまである。俺どうなってんの?どんな轢かれ方してんの?
するとなんだが周りが騒がしくなり視線を動かすと両親と小町が顔をのぞかせていた。どれくらい寝ていたのだろうか。窓から見える風景はすっかり夜のようだ。
「八幡が目を覚ましたぞ」
「お医者様に連絡するわ」
「お゛にいちゃんっ!」
三人は大慌てであっちへこっちへと動き回る。どうやらえらく心配をかけたようでなんだか申し訳なくなったため声をかけようとすると、自分の口元になにか器具がついているのが見えた。まさかと思い視線を動かすと俺が寝ているベッドの横にはやたら大きな機械が電子音を鳴らしながら陣取っている。
これはあれですね、重傷ってやつですね。
他人事のように考えていたら医者がやってきて診察され、落ち着いてきたところで事の経緯を聞いた。
車に轢かれた俺は結構な重傷だったらしく長時間に及ぶ手術の末一命を取り留めそれからおよそ一週間が経っているらしい。え?一週間?しかもまだ完治していないらしく入院生活は長く続くらしい。さよなら!俺の学校生活!ようこそ!楽しい療養生活!
いろいろと言いたいことは山積みだが、呼吸器もつけられている状態でうまくしゃべれるわけもなくただ黙って聞いていた。あらかた説明が終わったところで先生は退室し家族だけで部屋に残される。しかももうすぐ来院可能時間をすぎるらしく帰る準備までし始めた。まじか。まぁ仕方ないか。二人とも仕事を休むわけにもいかないし、なにより今日までずっと定時で帰ってきてくれたんだろう。その顔には疲れも見て取れる。
止めるわけにもいかずぼーっと眺めていると小町がベッドの横に置いてある椅子に座りそっと俺の頭をなでる。
「お兄ちゃん……よかった、ほんとに、よかった。小町お兄ちゃんの面倒見るね」
まて、どういう意味だ。と目で訴えるも小町は両親に呼ばれて部屋から出て行ってしまう。俺以外誰一人としていなくなった病室では機械の駆動音と電子音しかしない。
さっきの言葉の裏をさぐろうと頭に血を巡らせる。しかしガツンと痛みが走りうまくいかない。嫌な予感した。きっとこれについて今は追及すべきではない。きっとそうだ。なら、寝るしかない。寝たら夢落ちだったとかあるかもしれない。そう、まだ入学式前で起きたら何事もなく朝を迎える。自分の苦しそうな呼吸だって、夢でしかないのだ。小町の悲しそうな顔もきっと夢でしかないのだ。手足の感覚がないのもきっと夢でしかないのだ。
わー入学式楽しみだなー。
そうして俺は、夢から覚めるのを願いながら瞼を閉じた。
現実は時に残酷である。
そんな言葉をどこかの偉い人が言っていたような気がするが、時には残酷とかそういうレベルではない。俺の人生は残酷なものでしかなかった。むしろ残酷さが当たり前になっているまである。もしかして人生ってそういうもんなの?なにそれクソゲーすぎない?
まぁつまり夢ではなかったということだ。目を覚ましても真っ先に見えるのは病院の天井。身体はあちこちが痛いし現実逃避もする暇がない。ていうか入学もしてないのに交通事故とか残酷すぎるでしょ。神様どうなってんの。
「おにいちゃーん!かわいい妹がきたよー!」
ガラガラと扉を開いて入ってきたのは小町と両親と医者であった。
昨日時間もあまりなく説明がそこまで詳しくなかった。きっと今日改めて説明するのだろう。と言っても俺は相変わらず息をするので精一杯のため聞くことしかできないが、気になることはきっと家族が聞いてくれるだろう。
すると母親が神妙な面持ちで俺の前の前に座った。手を俺の胸に置いて息を吸う。
「八幡、あなたの今の状態を教えるわ」
こくり、と頷き返す。ものすごく嫌な予感がしたが隠されるのも気持ちが悪い。ハッキリと言われてしまったほうが楽だ。
「命に別状はないし、内臓も手術で大丈夫なの。ただ……、両手足は切るしか方法がなかったの」
申し訳なさそうに母親は俺にそう告げる。
は?
両手両足を切断している?誰が?今の話の流れで俺以外の人間の話をするはずもない。つまり、俺の手足がないのだ。
感覚がないのは神経がやられいるせいでない。ないのだ。
小町が面倒を見ると言ったのは俺が手足がないからだ。
なぜ?なぜそうなったのか。母親は切断されたのは肘と膝から先ということ以外の詳しい説明はしてくれずそのまま話を続ける。声は出せない。伝えられない。
話は頭に入らず切断されたという事実だけで俺のキャパはいっぱいになる。息が苦しい。感情がぐちゃぐちゃになって吐き出しそうなぐらいに気持ちが悪い。胃液が逆流するような感覚がして呼吸が乱れる。
それは俺に繋がる機械を通してほかの人間にも伝わったようで母親は大丈夫、大丈夫だから、言って俺の顔や頭を撫でる。
頭が真っ白になっていた。両親がひたすら謝って俺を励まそうとしているのが十分に伝わっている。それに返事ができないのがもどかしくて、とても気持ちが悪い。
「お兄ちゃん」
小町はすでに泣いていた。目も鼻も真っ赤になって俺の肘辺りを掴んでくる。
「ごめんね、お兄ちゃん。小町、あの時お兄ちゃんを引き留めておけばよかったよね。ごめんね……」
小町は後悔していた。
俺が交通事故に遭ったのは小町のせいでない。それは間違いない。だけど小町はこの一週間俺に対して罪悪感を募らせていたのだろう。想像するだけで胸が痛くなる。
ただ泣いて謝る小町の言葉を俺は受けるしかなかった。
数か月後、俺は退院して家へと戻った。
久しぶりの我が家は前と変わっていた。俺の部屋にあったベッドは一階のリビングに運ばれてそれに伴い家具の位置も変わっている。手足がない俺を毎回二階に運ぶのは大変だしそれは仕方がないことだ。
手も足もないと自分で移動できないし何もできない。一人で留守番をするときはテレビを見るしかないのだがつまらなくてもチャンネルを変えることはできない。
お風呂トイレその他諸々も他人なしでは出来ない。オムツ穿くことになるなんて何年ぶりなんだろう。
「お兄ちゃん、あーんして」
「あー」
「どう、おいしい?」
「んまい」
「よかったー!小町の自信作だよー!」
小町は前より早く起きるようになり自分の朝ご飯よりも先に俺に飯を食べさせていた。もちろんベッドから降ろすのは大変なのでベッドの上で食事することになる。
「あのさ小町」
「なに?」
「小町先に食べていいからな」
「えーでもお兄ちゃんご飯食べないと不機嫌になるし」
「それは俺が少し遅くに起きればいい話だ」
「んー、じゃあ小町も一緒に食べる!」
小町はおぼんの上に俺のご飯と自分のご飯を乗せてベッドに座る。俺に食べさせて小町が食べる、それを繰り返した。
「あ」
「あ」
俺の口から味噌汁がはみ出して垂れる。
「おととと、いけないいけない」
小町はすかさず俺の口元をぬぐってにっこりと笑う。
「すまん」
「いいよ、別に小町嫌じゃないから」
俺はそれを否定することはできない。小町が嫌がっていようが本心でそう思っていようがやるしかないことを否定しても軋轢を生むだけだ。追求してはいけないことだと自らを縛る。
その罪悪感で心が蝕まれていく。
過去には戻れないしやり直すことなんてできない。今の現実は変わらない。そうやって開き直らないと今にも涙が出そうだった。
「ごちそーさまー!」
「ごちそうさまでした。ありがとな、小町」
「どういたしまして」
朝食の後片付けをして小町は学校のカバンの整理を始める。俺のために両親や小町の生活を脅かすわけにはいかないしなるべく今まで通りの生活をしてもらっていた。だから両親は仕事に出かけるし小町は学校に行く。ただ母親は昼に戻ってきて俺の排泄物の処理や昼飯を食べさせてくれていたりした。
「お兄ちゃん、トイレ大丈夫?」
「少し、したい」
小町が家にいる時は俺はオムツはしていない。したいときは小町に言ってトイレまで運んでもらうのだ。理由は分からない。
小町はリョーカイ!と言って車いすを持ってきて俺を座らせる。そんなに力があるわけでもないのにどうしてやりたがるのか分からなかった。だが小町がやりたいと言うので俺は口を出さない。
トイレを済ませて再びベッドへと運ばれる。小町は鼻歌を歌いながら着替え始めていた。
「んじゃ小町そろそろ行くね。テレビどこのチャンネルがいい?」
「……適当でいい」
「わかった。お兄ちゃん気を付けてね。何かあったら小町コール押すんだよ」
「ん」
小町コール。俺のベッドに取り付けられたボタンのことだ。なんでも押すと小町に連絡が言って電話ができる。なにそれハイテク。
「行ってくるであります!」
「気をつけてな」
ガチャリと玄関のドアが施錠される。
その音を聞いた途端どっと疲れが押し寄せてきた。
小町が健気であればあるほど俺は胸が苦しい。病院の一件の後喋れるようになってから小町のせいではないと伝えても小町は自分を責め続けていた。きっと理屈ではなく小町の心もまた混乱しているのだろう。手足を失った俺はもうその話をしないことしかできなかった。
小町が何を考えているのかなんて分からない。応えることもできない。両親は小町がやりたいというならやらせてあげたほうがいいと言っていた。多分その通りなのだと思う。それで小町の気分が軽くなるなら、俺はそれで構わない。
ただ、小町の作る笑顔は前と違っているように感じていたのだ。
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お兄ちゃんが交通事故に遭った。
入学式だからって朝早くから学校を出たら交通事故に遭った。
まだ家にいた小町はお母さんから電話を貰ってすぐ病院に行った。
お兄ちゃんが手術室に入っていくところだった。
お兄ちゃんは血だらけになって苦しそうだった。
かける言葉も出なくて小町はその場に立ち尽くしていた。
小町はどうしてお兄ちゃんを止めなかったんだろう。
小町はどうしてお兄ちゃんを助けられなかったんだろう。
お兄ちゃんは幸いにも命に別状はなかった。
でもお兄ちゃんは手と足を失った。
あんなに楽しみにしていた高校生活は絶望的だった。
小町はお兄ちゃんの未来を奪ったのだ。
小町はお兄ちゃんの楽しいを奪ったのだ。
だったら小町は、
お兄ちゃんの未来と楽しさを用意しないといけないんだ。
ご飯もお風呂もトイレもできるだけ小町が面倒を見てあげたい。話し相手になってあげたい。
そう思って小町はできるだけ家に居るようにした。お兄ちゃんは一人で動けないし電話も簡単にはできない。だから小町はお兄ちゃんの寂しさを紛らわせるためにずっと一緒にいればいいんだ。
学校は行けってお兄ちゃんに言われたから行ってる。でも学校でもお兄ちゃんのことが心配であんまり勉強捗ってないんだよね、って言ったらきっとお兄ちゃん怒るんだろうな。
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小町は毎日寄り道をせずに帰ってくる。
土日もほぼ出かけることはない。友達から連絡が来ても断っている。
それが俺に対する罪滅ぼしなのだろうか、小町は自らの人生を台無しにいていた。俺は小町に楽しく生きてほしいし、小町にやりたいようにやってほしい。
きっと善意でやっていることなのだろうが俺はそれが酷く心苦しかった。もちろん嬉しいし正直言ってとても助かる。
だが俺という存在が足枷になっているのであれば、そういうのは要らない。
俺のために身を削っている小町は見たくない。
だがどうしたら分かってくれるのだろう。
小町に遊びに行くように言っても俺と遊ぶから良いという。母親も心配してやんわりと小町に休むよう伝えるが明るい笑顔で断るのだ。
勉強だってできていないはずだ。元々成績が良くないのにこれ以上悪くなったら困る。
ふと、俺がいなくなればいいのかと至極当然の結論に至る。
そしたら小町は解放されて幸せになれるのだろう。
舌を噛みちぎってしまえばよかっただろうか、手足がないと自殺の方法があまりないな。
試しに噛み千切ろうと思い挑戦する。当たり前の話だが自分の舌なのでものすごく痛い。
じわ、と血が出ていけるかもと思いそのまま強く噛むと小町に見つかった。
「どうしたのお兄ちゃん!?」
顔を真っ青にして小町は慌てる。
「ちょっと血が!血が口から!今救急車呼ぶからね!」
小町による迅速な対応で俺は病院に運ばれ自殺は出来ずに終わった。両親にはものすごく心配されて怒られた。
「どうしてあんなことしたの」
家に戻って小町にそう問い詰められた。
舌のダメージは意外と深刻だったらしく当分の間喋ることはできない。だから答えることはできないが、舌を噛み千切ろうとした理由なんて一つしかない。小町も分かっているだろう。
「死んじゃやだよ……、お兄ちゃん……」
小町は俺に抱きついて泣きわめく。
「お、お兄ちゃんが死んじゃったらもう、立ち直れないよ……、お願い、いなくならないで」
俺は泣いている小町を慰めることができない。どうして舌を噛み切ろうとしたのだろうか。俺はもう言葉しか手段がないのに。舌が治ったら精一杯の言葉で謝ろう。そうすることしかできないのだから。
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小町はお兄ちゃんの声が好き。
低めだけど遠くまで通る声が好き。滅多に大声は出さないけど。小町はお兄ちゃんの声を聞くと嬉しくなる。
なのに、お兄ちゃんは自殺しようとして暫く喋れなくなっちゃった。
すごく悲しかった。
小町がちゃんとお兄ちゃんを楽しませてあげられなかったから、お兄ちゃんが自殺しようとするほど悩んでたことに気付かなかったから。小町が悪いんだ。
お兄ちゃんにはずっと生きててほしいし、小町はずっとお兄ちゃんと一緒にいたい。
丁度その時、夏休みになった。
よし、お兄ちゃんとずっと遊べる。すごくうれしい。
しばらくしてお兄ちゃんの声が戻った。まだちょっと聞き取れないことはあるけど意思疎通はできるようになった。
お兄ちゃんは小町に謝った。
なんで?悪いのは小町でお兄ちゃんのせいじゃないよ、というとお兄ちゃんはそれ以上何も言わなかった。
わかってくれたのかな。小町はお兄ちゃんが何を考えているのかわからないよ。
お兄ちゃんは、どうして笑ってくれないだろう。
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ゴソゴソと音がして目が覚める。
「あ、起こしちゃった?」
声の主は小町だったのか明るい声が耳に届く。
「どうした。まだ朝じゃないだろう」
「小町、一緒に寝てもいい?」
「え?」
「お兄ちゃん寂しいかなって思って」
きっとこれも小町なりに俺に気を使っているのだろう。あまり口出ししても逆に傷つけるだけだと悟り許可を出す。
「じゃあお言葉に甘えて」
俺にかかっていた布団を剥がして俺を持ち上げる。
「は?ちょっとまて、ここじゃないのか」
「小町の部屋だよ」
小町の部屋ということは二階まで運ぶつもりなんだろう。いくら慣れてきて持てるようになったからと言ってそれは危ない。
「大丈夫だから~」
小町は器用に俺を持ちながら階段を上っていく。この子いつの間にこんなに力持ったのかしら……。
数か月ぶりに小町の部屋に入った。前見たときと特に変わりなく相変わらず綺麗に掃除されている。
小町のベッドに寝かされて小町はその隣で横になった。
「お兄ちゃん。小町お兄ちゃんのそばにずっといるね」
小町は俺を抱き枕のようにして抱き着いて離れない。
「大好きだよ、お兄ちゃん」
小町は何度も言葉を繰り返して俺の背中を撫でる。
「ああ……」
かける言葉が見つからない。何を言っていいのか分からない。ただ俺は、小町が笑っていたらそれでいいのだと、自分に言い聞かせた。
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お兄ちゃんが交通事故に遭ってから三年が経った。小町は普通の高校に進学した。
あれからお兄ちゃんは小町の部屋にいてもらっている。カメラをつけていつでもお兄ちゃんが見れるようにもした。だから勉強は前よりちゃんとできている。お兄ちゃんも悲しまないでいい。
毎晩お兄ちゃんを抱いて、お兄ちゃんが好きだと伝える。
お兄ちゃんは前より少し笑うようになった。
小町はもっとお兄ちゃんを笑えるように頑張った。
色々調べてお兄ちゃんを喜ばせる方法を見つけた。
嬉しそうに啼いてくれるお兄ちゃんはとてもかわいかった。啼いて啼いて鳴いて泣いてお兄ちゃんは意識を失うぐらいに楽しさに包まれる。辛いことなんて忘れてしまうように小町はお兄ちゃんを愛したい。
お兄ちゃん、愛しているよ。
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毎晩小町に犯される。
どこで調べたのか知らないが突然小町は俺を犯すようになった。
手や道具を使って後ろの穴も性器もまんべんなく犯してくる。
抵抗はできない。ただ小町があまりにも優しくゆっくりと犯してくるのでつい毎回イってしまうのだ。声は抑えようと思っても容赦がない攻めに耐えられず漏れ出してしまう。
それを見て小町は満足そうに笑う。
ああ、小町がいいのならいいのだろう。
俺は小町の笑顔のためなら自分を捨てられる。
「ん…、あ、小町…」
「お兄ちゃん、楽しい?」
「あ゛っ!?、っ………、はぁ……はぁ……」
「お兄ちゃん、気持ちいい?」
「………気持ち、いい」
「良かった。お兄ちゃんほんとここが弱いよね」
「ひっ、あっ………!?まて、まだっ……、い゛……!?お……っ!」
小町が手に持っていた太めのディルドが同じところを何度も攻める。その度に頭がチカチカして、息をするのも忘れる。小町はいつも俺が動けなくなるまで執拗に攻めてくる。気づいた時には朝になっているのだ。
「お兄ちゃん愛しているよ」
そう言って小町は俺に軽く口づけする。それを合図に意識は落ちていく。
そして今日も、俺は小町に愛された。