※この作品はR-18です。

トキヨジセツ~第一部・愛した人はヴァンパイア~   作:氷ユリ

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26 もう一つの歩み寄り

 

 一通り、観光スポットといわれる場所を一人で巡り、歩き疲れてホテルに戻る。

 

 

 ベッドにダイブしてウトウトしかけた時、ドアが開いた。

 

「新堂先生!お帰りなさい、早かったね。私もさっき帰ったの。も~、疲れちゃったぁ」

 やっぱり一人じゃつまんない!と彼に抱きつくも反応は薄い。

 …………もしや何か、マズイ展開に?

 

「先生?」体を離して先生を見上げる。

 無言で見下ろしてくる彼を見つめる事数分。固まった彼はまるでマネキン。

 

 早く動きを取り戻して!

 

 願いが届いたのか、最初に唇が薄く開いた。そこから美しい先生の声が零れてくる。

「ユイ。突然なんだが、一緒にフォークスへ行ってくれないか」

「うん。いいよ、大丈夫。いつ?明日?」

 私の答えを聞いて、信じられない様子で確認してくる。「……えらいあっさりだな。本当にいいのか?あんなに怖がってたのに」

 

 今日一日、一人で過ごして何度思ったか知れない。ついて行けば良かったと。一人では全然面白くない。何もかも!

 でもこの本音は、まだ伏せておこう。

 

「ここまで来て会わずに帰るなんて、もったいないなって思ったの。そうそう来れないし。それに知ってる?恋人に友達を紹介してもらえるって、結構ポイント高いのよ?」

 最後の部分はピンと来ていないみたいだったけど、彼がほっとした顔になった。

「度胸あるよな、おまえは。そう言ってくれると思ってたけど」

「どうせ、もう言っちゃったんでしょ、連れて行くって」

 ご名答、と先生が苦笑する。

 

「一つ朗報だ。彼の子供達は今不在にしてて、エドワード夫妻しかいないそうだよ」

「なぁ~んだ、残念!」こんな事を言ってみたけれど、内心ほっとした。人数は少ない方がいい。さすがの私でも。

 

 

 こうして翌朝、オリンピック国立公園を抜けて目的地フォークスへ向かう。

 

 そこは自然がいっぱいで、とても空気が澄んでいた。でもあまり太陽は拝めない地域のようで、それがヴァンパイアの住処を連想させる。

 カレン邸は、時代を超越した優雅な雰囲気を醸し出していた。ともて古そうに見えるのにとても美しい。

「すっごぉ~い……」

 こんなありきたりの感想しか言えないのが恥かしいけれど、この一言が全て表しているのも事実。

 

 ここへ来て、また気温が下がった気がする。

「なんか、寒くない?」両手を体に回して思わず呟く。同意してくれる人はいないけれど!

 もう春だからなんて、油断したようだ。もっと厚着してくれば良かった。

 でも、この震えはもしかすると武者震い?

 

 先生が私の左手をそっと握ってくれる。ううっ、冷たっ……。

 

「覚悟はいいか?」腰を屈めて、気遣わしげに私を覗き込む。

 私は気合を入れるために、繋いでいた先生の手を強く握り返す。「思ったよりマシね」

「またお化け屋敷想像してただろ」

 悪戯っぽい笑みが向けられ、少しだけ気持ちが落ちつく。

「バレた?」

 

 束の間、私達は笑いあって、深い木陰をゆっくりとポーチまで歩いて行く。

 玄関に近づくと、ノックする前にドアが開いた。その隙間から室内が見えて、その明るさと広さに再び驚く。カレン家の人達は部屋の中央にいた。

 

「ユイに気を遣って、距離を置いて出迎えてるんだ。悪く思わないでくれ」耳元で説明される。

「そうなのね。お気遣いいただいちゃって悪いなぁ」

 気もそぞろで言い返しながらも、目は室内と中の男女二人のヴァンパイアに釘付けだ。

 にっこり微笑んで歓迎の意を表している。けれど近づいて来る気配はまだない。

 

「(カーライル、エズミ。こちらが私の婚約者のユイだ)」

「(初めまして、カレンさん。ユイです、よろしく)」

 緊張しすぎて、何語か不明なイントネーションになってしまった……。

「(よく来てくれたね、ユイ)」

 カーライルは計算された慎重な足取りで近づいて来た。

 

 躊躇いがちに手を差し伸べられ、迷う事なく前に進み出てその手を握る。

 

「(お会いできて嬉しいです。カレンさん)」今度は完璧な英語で言えた。

「(どうか、カーライルと。こちらはエズミ、私の妻だ。こんなに早くお目にかかれるとは思わなかったよ。一緒にこっちに来ていたんだね。仲の良い事だ!)」

 

 エズミも近づいて来て手を差し伸べてくる。髪は明るいブラウンで、瞳も同じ色。

 その白雪姫みたいな人に、思わずうっとり見惚れてしまった。困らせたらいけないと、すぐに手を握って微笑み合う。

 二人とも、先生と全く同じ冷たくて滑らかな肌をしている。

 

 やっぱりヴァンパイアは、美形しかなれないらしい。

 だってカーライルなんて、新堂先生以上にギリシャ彫刻よ?淡い色の金髪も真っ白の肌も眩しいのに、プラチナゴールドの瞳はそれを上回っている始末で手に負えない。

 アングロサクソン(白人系)の純血だとこうなるのか。先生の半分は日本人だから?だからって先生が見劣りするって意味じゃないけれど。

 

 もう、どこを向いても美しい顔が並んでいて、一向に落ち着かない。

 これは予想外だ!別の意味でどうにかなりそう……。

 

「(ユイ、大丈夫かな……?)」カーライルが不安げに尋ねてくる。

 私の混乱に気づいてしまったらしい。さすが鋭い観察眼をお持ちで……。

「(済みません、その、あまりにお美しいので……お二人が)いや二人だけじゃないか(私、その何ていうか場違いだなぁって……)」私は何を言ってるんだろう?今の英語、通じたかなぁ。

 

 だんだん全てに自信がなくなって、新堂先生の方を見てさらに自信喪失。

 何よ、何なのよこれは!何かの罰ゲーム?

 

 こんな私に、カーライルは優しく微笑んで言った。「(そんな事はない。ユイも素敵だよ。とても可愛らしい。新堂が魅了されるのも無理はないな!)」

 ウソばっかり!私がステキ?でもこれがどういう訳かお世辞にも聞こえない。

 ま、いっか。ここは素直に喜んじゃおう。

 

 再び新堂先生を見上げて様子を窺うと、彼は照れた笑いを浮かべていた。

 その顔がまた可愛いらしいったらなくて!こういう表情はあまり見た事がないから、つい見入ってしまった。

 年上男性にそんなコメントって?だって先生ったら急に若返って、まるで大学生みたいに見えたんだもの。

 

「(素敵なリングをしているね。新堂からのプレゼントかな?)」

 カーライルが私の左手を見下ろして尋ねてきた。こういうのに気づくのって大抵女性だけど。やっぱり鋭いなぁ。

「(はい!エンゲージリングです)」私は堂々と答えた。だって本当だもの。

 横の新堂先生を見て確認するも、彼は押し黙ってカーライルを見つめている。

「先生?」

「……ああ。何でもない」

 

「(さあ、立ち話もなんだから、中へ入りなさい)」

 カーライルの誘導で私達は客間に通された。

 

 並んでソファに落ち着く。

 二人がキッチンで何やら話してる間に、こっちも先生と再度打ち合わせを始める。

 

「ねえ先生、私、ヘンじゃない?こんな感じでいい?」

 先生は私を安心させる笑顔を浮かべて頷く。「緊張しなくていい。大丈夫、いつものようにしていれば問題ないから」

 彼にこう言われてほっと一安心した。

 

 もうすでに、ここへ来る前に抱いていたような恐怖心はない。今は普通に年上夫婦のお宅訪問って感じ。ただ一つは、あの美形に目が慣れるまでは落ち着かないってだけだ。

 

「ねえ先生。さっきの何だったの?婚約指輪って、言わない方が良かったとか……」

「違うんだ。気にしないでくれ」

 だって気になるじゃない。……ねえ?結局何だったのかは分からず仕舞い。

 

「(さあ。どうか寛いでくれ。この可愛らしいお客様にお茶を)」先にキッチンから戻ったカーライルがエズミに言う。

「(あの、私の事はお構いなく!)」

 だって、ここでお茶召し上がるのって私だけでしょ。申し訳ないです……。

「(まあそう言わずに。エズミの自慢のコレクションを是非使っていただきたい。ここの住人はお茶をする習慣がないんで、エズミが残念がっているんだよ)」

「コレクション?」

 

 少しして、エズミがトレイに美しいティーセットを載せてやって来た。普通は聞こえるはずの、陶器とスプーンがカチャカチャいう音も一切立てずに!

 

「(お口に合うといいんだけど。あまり入れた事がないから心配だわ)」

 私の前に綺麗なローズの花柄入りのカップとソーサーが置かれ、三人の目は一気に私に集まる。

 どうしよう。飲めばいいのかな?

 

 そっと先生を覗き見ると、小さく頷いてくれた。

 

「(いい香り。いただきます)」

 カップを口元まで寄せると、フワリと花の香りが漂った。

「(ローズティよ)」エズミが教えてくれる。

「(美味しい!)」

 お世辞とかじゃない。自然とこの言葉が出てきた。絶妙な甘みと渋み、そしてこの香り。ホントに初めて入れたの?

「(気に入ってくれて良かった)」カーライルも安心したようだ。

 

 行き届いた接客。私(人間)を心から持てなしてくれているその姿勢に、逆に恐縮する。けれどその心遣いのお陰で、私の緊張は次第に解けて行った。

 私の身の上話をちょっとだけした。先生と出会う経緯を話すために。続いて彼が私達の出会った頃の事を話してくれた。

 

「(なかなかに運命的と言えるね、二人の出会いは)」

「(ええ。とてもロマンティックだわ)」

 

 こんな感想をもらって、そうかなぁ?との疑問を込めて先生に目を向けると、彼は嬉しそうに私と目を合わせ、最上級の笑顔で私を金縛りに掛けた。

 

「ボージェ・モーイ!」言葉にならずに、なぜかロシア語が自分の口から飛び出す。

 二人が不思議そうに私を見ている。

「(……何でもありません)」説明が面倒なので諦めた。新堂先生のせいよ?

 カーライルがふいにこんな事を言ってくる。「(ユイの英語はどこか、不思議なイントネーションの時があるが……もしかしてロシア語が関係しているのかな?)」

 私が反応せずにいると、慌てて付け加える。「(気に障ったのなら許してほしい)」

 

 私はまだ先生の金縛りから抜け出せず、まともに頭が働いていない。

 そこへ助け舟を出したのは新堂先生だった。当然です、あなたのせいでこっちはこうなっているんですから!

 

「(彼女は多言語を話せるので、時に入り混じってしまうようです、ロシア語に限らずですが)」

「(おや、それは凄いね!てっきり新堂の母国語だから、ユイはロシア語を学んだんだと思ったよ。差し障りなければ、他に何語ができるのか教えてくれるかな?)」

「ウィ・セ・ポスィーブル」私はフランス語で返してみた。

 カーライルが楽しそうに続きを促してくるので、次はドイツ語で質問する。

「ヴァス・フュア・ホビィス・ハーベン・ズィー」

 

「(新堂、通訳してくれ!)」カーライルが先生の方に身を乗り出して言うも、「(無理です)」あっさり断る先生。

 こんな様子に私達は大笑い。とても和やかなムードだ。

「(ごめんなさい、今のはドイツ語で、ご趣味は?って聞いたんです)」

 私の説明に、向かいの二人は関心した様子で頷き合っている。

 

「(ユイのマルチリンガルには私も驚きましたよ。そういえば、イタリア語もできたよな?)」先生が確認してくる。

「(ええ……。)ねえ、自慢話みたいになっちゃうじゃない。言わなくていいのに!」あえて日本語で先生にだけ訴える。

 私がやや不機嫌になったのを見て取ったのか、カーライルが持ち上げてくれる。

「(多言語を解するのは強みだよ。ユイは優秀だね。今いくつといったかな)」

「(二十歳です。でも、できるのは会話だけですから)」ならばこっちは、とことん謙虚に行こう。

 

「(家ではエドワードがその分野を得意としているが、彼は習得にどれ位かかったんだったか……なあエズミ?)」隣りに座るエズミに話を持ちかける。

「(そうね、少なくとも二十年以上はかかってると思うわ)」

 私がゼロ歳から学んで今に至る感じ?う~ん、いまいちピンと来ないなぁ。

 

「(カーライルさんは、どのくらいになるんですか?その……生まれてから)」そうよ、まずはここから始めなきゃじゃない?

「(年かね?聞いても卒倒しないでもらいたいんだが……)」

「(大丈夫ですってば!)ねえ新堂先生?」同意を求めて彼を見上げる。

「ああ、肝だけは据わってるからな」彼が日本語で返してきた。

 

 それ、今回だけは褒め言葉って事にしておく!

 

「(私は一六四〇年代に、ロンドンで生まれた。計算すると……)」

「(三百七十八歳……!)」私はカーライルよりも早く答えを出した。

「(七十二歳くらいだよ)」それをカーライルが訂正する。

「(ごめんなさい、ちょっと間違えた?)」

 慌てて謝ると、カーライルはにっこり微笑んで、気にしないでと言ってくれた。

「(その頃ってクロムウェルの時代?魔女狩りとかやってた!何だか雰囲気たっぷり……)」

 興奮してはしゃぐ私に、カーライルは愉快そうに頷いた。「(だろう?)」

 

 温かい笑いに包まれる室内だけど、室温はむしろ寒い。

 ここで寒さを訴えるのも嫌味になりそう(考え過ぎ?)なので、二杯目のローズティをエズミにせがむ事にした。

 

 早速入れてくれたその香りにもう一度酔いしれてから、ティーカップを両手で持ち暖を取る。

 体の中から温まり、気持ちに余裕が出てきた私はどんどん質問をぶつける。

 

「(三百七十年近く、どうやって過ごして来たんですか?)」率直な疑問。

 すると私以外の三人が硬直したのが分かった。……マズかった?

 けれど、カーライルだけはすぐに平静を取り戻してくれた。「(最もな質問だね)」

 ああ良かった……。

「(私は新堂と違って、始めから医者だった訳ではないんだ)」

「(そうだったんですか?)」元は映画俳優とか?モデルとか!勝手な妄想が膨らむ。

 

「(時間など、あってもあっても足りないよ。知的探究心の固まりだからね、私は!)」 

 この言葉に、新堂先生だけが同意の笑みを浮かべた。

 そしてカーライルは続ける。「(最初は量子力学の観測に興味を持った。それを解すると次に疑問が湧くのは、時間の非対称性と意識の起源についてだ)」

 

 こんな難解な話になり、今度は私だけが一人固まる羽目になる。

 

「(意味論の深淵にはとても心そそるものがある。だが私が最も注目したのはやはり、生命とは何かという大命題。医学を究める事にした理由だよ。ああ……、退屈な話だったね)」

「(いっ、いいえっ!何ていうか、やっぱりカーライルさんは偉大だなって。尊敬します)」

 我に返って慌てて答えるけれど、横では新堂先生がクスクス笑っている。

「ちょっと?先生ったら何笑ってるの?」ムッとして彼を肘で突いて指摘する。

「おまえ、今のどれだけ理解した?顔にチンプンカンプンって書いてあるぞ」彼は私の方に体を寄せて小声で囁いた。

 

 日本語だったので、何を話しているのか分かっていない向かいの二人は、笑顔を絶やさず穏やかモードだ。そんな笑顔を見ていたら、怒りすら忘れる。忘れてあげる!

 気持ちを落ち着かせるために、一旦三人から顔を背けて窓の外を眺める。

 

 どんよりがさらに深まって、雨が降り出しそうだ。

 

 しばらくして視線を戻すと、カーライルが新堂先生を真剣な表情で意味ありげに見つめている。

 やがて横で先生が微かに頷くのが分かった。

 何かの打ち合わせらしい。ここは気づかない振りをしよう。

 

 カーライルが後ろのドアに目をやる。

「(そろそろ息子夫婦が戻る頃だ。ユイ。よければ、是非紹介したいのだが……どうかな?)」

 どこか控え目に聞かれて、私はすぐにお願いします!と姿勢を正した。

 打ち合わせはこの事だったのか。ついにご対面の時が来たという訳だ。

 

 力の入った私の肩に、先生がそっと手を乗せてくれた。リラックス、と声は出さず唇を動かして伝えてくる。私は少し微笑んで頷いた。

 

 私が気になっているのは息子さんの方じゃなく、少し前まで人間だった妻の方。

 もしかすると私の未来の姿が、そこにあるかもしれない。なぁんて……ないか。新堂先生は猛反対してるもの。あ~あ!とにかく、ケンカにだけはならないようにしよう。

 

 ドアが音もなく開いて、二人の男女が滑るように入って来た。

 

 大人っぽくて、一見どちらも成人していそうに見える。でも西洋人はフケて見えるっていうから年齢不詳だ。もしかしたら私と同じくらいかも。

 

「(初めまして、カーライルの一番下の息子、エドワード・カレンです)」

 息子の方が最初に口を開いた。

「(妻のイザベラです)」続いて女性。

 どっちもスラリとしていて生気のない顔。例えるなら西洋人形か。二人とも抜群のルックス!

 エドワードはブロンドで、イザベラさんは赤毛。どっちも瞳は髪の色と同色系。

 

 呆気に取られすぎて、ポカンとアホ面をしている自分が目に浮かぶ!恥かし~……。

 

「(新堂です。こちらが私のフィアンセのユイ。どうぞよろしく)」

 先生が淡々と初対面の挨拶を進行する。フィアンセ……、どうも慣れないこの言葉!

「(お二人は、わざわざ日本から来てくれたんだよ)」カーライルが追加の説明をする。

「(そんなに遠くから!お会いできて光栄です、新堂先生。ユイさんも)」

 

 エドワードが意味深な視線を私に送ってくる。何て魅力的な人!先生と出会っていなければ、絶対に好きになってる気がする……。

「(あっ!えっと、はい……っ)」舞い上がってしまい、もうどう答えていいやら分からず。

 

 改めてにっこりと微笑むと、エドワードは私から先生に視線を移した。

「(ドクター新堂の事は、父から良く聞いていました。その節は父がお世話になりました)」

「(いえいえ。世話になったのは私の方ですよ。あなたのお父上は本当に優秀な方で、いろいろ学ばせてもらいましたから)」

「(よしてくれないか、二人とも!今は私の話をするところじゃないよ)」カーライルが照れた様子で二人を制する。

 

 その姿がとても人間らしくて、思わず笑ってしまった。

 

 ふいに皆の視線が私に注がれ、ドキッとして硬直する。今の、笑うところじゃなかった?

 

 けれど次の瞬間、室内は一転して笑いに包まれた。

 はぁ~……驚いた、息するの忘れたじゃない!どこで反応されるか予想できないところがツライ。

 

 新堂先生が、そっと私の背中に手を当ててくれる。

 変な汗をかいたから、ひんやりしていてとても気持ちが良かった。

 

 

 

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