笑い声が収まったのを見計らって、一歩前に進み出る。
さっきは失敗したので、今度こそきちんと気持ちを伝えよう。
「(お二人、ご結婚されたんですよね?遅れてごめんなさい、おめでとうございます)」
この私の言葉に、エドワードに加えて、人形みたいだったイザベラさんもようやく表情を和らげてくれた。
「(ありがとうございます。ユイさんも、もうすぐですよね?)」
エドワードが茶目っ気たっぷりに聞いてくる。この顔を見て、私より若いと直感した。
さっきの意味深な視線はこの事だったのか。
「(そっ、それは……この人次第かなぁ~)」返答に困った私は、先生を見上げて言ってみる。
すると予想外な言葉が返ってきた。これは本音だ。だって日本語で返ってきたから。
「おい、先延ばししてるのは、俺じゃなくおまえの要望だろ?」
「自分だって、私の親族に関わるの嫌がってたじゃない」一方的に言われて負けずに言い返す。私も日本語で。どうか、ここの人達に日本語が分かりませんように!
エズミがおろおろしながら息子に訴える。「(何だが揉め事が起きてるみたいよ。エドワード、あなたのせいじゃない?)」
「(あの!ごめんなんさい、余計な事を言ってしまったようで……)」
「(エドワードのバカ!心、読みすぎなの!)」横でイザベラも怒っている。
……ちょっと待って。今、心を読むとか言わなかった?エドワードも読めるの?!
先生との言い合いは一旦中断だ。それどころじゃない。こんな事実を発見しては!
「ねえ先生、あの人も、心が読めるの?」こっそり日本語で聞く。
「ああ。おまえが余計な事を考えたからこうなったんだ……待てよ。って事は……」
自分で言って何か引っ掛かっている様子。彼がエドワードをじっと見つめている。
また始まったの?私に聞こえない話し合いが!
こっそりイザベラさんを盗み見るけれど、彼女もじっと固まっている。いいなぁ、あの子は会話に参加できるんだ。ここで会話に混じれないのは私だけ。一人蚊帳の外って感じでイヤになる。
それより、どうにかしてあの子と話ができないか。聞きたい事も山ほどあるし、共感し合える事だっていっぱいあると思うんだ。
「(何とも興味深い!)」いきなりカーライルが言葉を発した。
「(あの、私にも教えてもらえませんか?皆さんの会話!)」耐え兼ねて訴えると、またも私に視線が集まった。
でも、もう怖気づくもんか!「(してたんでしょ?会話)」
「(いやいや、これは失礼した。君は本当に我々の事を良くご存知のようだ)」
カーライルの視線はチラリと新堂先生に向いたけれど、すぐに私に戻る。
「(新堂が他人の心を読めるのは知っているね?)」私は頷く。
「(実は私の息子もでね。ところがパートナーのイザベラの事はまるで何も読めないそうだ。昔も今も)」カーライルが説明を続ける。
曖昧な言い方だ。これは人間だった頃もヴァンパイアになってからもって事。はっきり言ってくれていいのに!
「(新堂は君の心だけが読めない。この共通点について議論していたんだ)」
「(共通点って、好意を持ってる相手、とかですか?)」
「(そうだ。これは実に興味深いじゃないか!)」
カーライルはこういった事を研究するのが好きらしく、生き生きとして見えた。
「(あの!それより私、イザベラさんと話したい事が……)」私は彼女を見て申し出た。
けれど、先生に手を握られて言葉を中断する。「ん、何?」
「ユイ、二人はこれから行く所があるそうだ。また今度にしろ」
ええ~、それはないよぉ!心の中で大いに嘆く。さすがに声に出したら子供だから。
「(ユイさん、新堂先生、会えて嬉しかった。また今度、ゆっくりお会いしましょう)」
「(ユイさん、私も是非あなたとお話しがしたいわ。次の機会を心待ちにしています)」
エドワードとイザベラは交互に挨拶を述べた後、軽やかに去って行った。
また今度の機会なんて本当に来るの?疑わしいところだ。せっかくの機会だったのに残念でならない。今から追い駆けようかな……。
「ユイ?どうした」
私が腰を浮かせた事に、先生はすぐに気づいた。
「ねえ?ちょっとだけでも話せないかな、イザベラさんと。私、今から追い駆けて……」
立ち上がろうとした時、強烈な寒気に見舞われた。体を震わせた瞬間、体勢を崩してしまう。
「おい、大丈夫か。とにかく座るんだ」
先生が支えてくれて、どうにか倒れずに済んだ。
「何か寒気が。どうしたんだろ…………ううっ、寒い」
カーライルとエズミは、こんな私達のやり取りを静かに見守っている。
でもすぐに、新堂先生がカーライルと視線を合わせて硬直したのが分かった。また何か話しているらしい。けれど私にはそんな事を考える余裕もない。ひたすら寒さと戦う。
「(ユイ、顔色があまり良くないね)」ふいにカーライルが心配そうにこう言った。
「(え?そうですか……?)」ちょっと寒いだけです、と続けるつもりだったけれど続かず。
体の震えはどんどん酷くなり、きっと唇は紫色になっていたかもしれない。それはまるで、寒い日にプールに入った時のような感じ。
私は堪らず先生の袖を掴んだ。
「どうした?」先生は身を屈めて私の顔を覗き込む。
「先生、さ、寒いよ……。何だか頭がボーっとしてきた。体に力が……入らないの」
彼の方に体が傾いて行くのを止められない。
「しっかりしろ、ユイ?」支えられて問いかけられるも、何も答えられない。
この後の記憶は、いつの間にかなくなっていた。
・・・
「(彼女には持病があるね)」カーライルが静かに口を開く。
「(ええ。でも現在は寛解の状態です。関係はないかと)」
「(ああ。我々と長く居すぎたせいだろう。これ以上は体に良くない。早急に帰った方がいい)」
ユイを抱き寄せたまま新堂が同意する。
思いつめた表情で凍りついている彼に、カーライルは言う。「(私の心を読んだんだね?)」
「(カーライル。あなたの見る未来は絶対ではない。変える事だって可能なはずだ!)」
新堂がカーライルから得たのは、ユイの命が残り少ないという情報だった。彼女は再発し長くない。例の病は、心機能に症状が出れば危険なのだ。
「(彼女に贈ったそのリング。それは永遠の愛の誓いを意味する物だが……)」
限りある命の者と永遠の愛は誓えない。
つまり新堂がユイを仲間にする事を決意したと、当然受け取られる。
「(確かに、私はユイを永遠に愛します。ですが、彼女を仲間にするつもりはありません)」
こう断言した新堂の表情は苦しげだ。
「(どういう意味だね?)」
「(どうもこうも、そういう事ですよ)」
それきり新堂は口を閉ざす。
「(待て。もう一つ見えたぞ。君達に訪問者が来る。正確にはユイにか……。気をつけろ、それが再発の引き金になるのかもしれない)」
意味深な発言をするカーライルに、新堂はさらなる不安を覚える。
「(訪問者とは?……まさかヴォルトゥーリが?)」
カーライルの言った言葉を瞬時に何度も考える。ユイに訪問者。再発の引き金。そして死。
「(何にせよ、私が必ず阻止する。ユイに手出しする者は、誰であれ許さない!)」
この気迫にユイへの想いの強さを感じるも、あえて冷ややかにカーライルは言う。
「(いずれにしろ、ユイの人間としての時間は短いという事になる。我々の秘密は守られると判断して良いだろう。仮にヴォルトゥーリが来たとしても、それを説明すれば納得するはずだ。ただその訪問者は……どうやら別の者のようだ……)」
未来の詳細が見えたのか、カーライルが補正する。
「(ご忠告、感謝します。誰であれ同じ事です。私が付いていますので。では私達はこれで失礼します)」新堂は短く言い放った。
ユイをそっと抱き上げると、玄関ではなく正面のテラスから外に出る。
一秒でもこの場に留まりたくない。彼女の体のためには。
「(新堂先生、これを使って)」エズミが女性物の厚手のコートを差し出す。「(私のなのでちょっと大きいけど。どうか使って)」ユイを心配そうに覗き込んで言う。
「(ありがとうございます、とても助かります)」
丁重に礼を述べて受け取り、抱きかかえたユイをコートに包む。
国立公園を抜けるまでは足だ。ユイは寒風に晒され続ける事になる。
エズミに続き、カーライルもテラスから外に出た。
「(さっきは酷な言い方をして済まなかった。新堂、私は君の味方だ。困った事があったら、いつでも相談してくれ)」これが本心だと、新堂にはすぐに分かる。
新堂は少しだけ表情を和らげた。
「(気にしないでください。あなたの立場も理解しています。そう言っていただけると心強い。その時は是非お願いにあがります)」
カーライルにとって、昔から新堂は考えの読めない男で掴めないところが多くあった。
今回もそうだ。なぜそんなにもユイを仲間にする事を拒むのか。まだ若いといっても彼女はもう二十歳を迎えた。成人しているというのに?カーライルは思う。
優れた医師としての腕と知識を持つ彼ならば、人間をヴァンパイアに転生させる自信がないという事もないだろうにと。
自分はエドワードを十七で引き入れた。早すぎると思ったが仕方がなかった。死を目前にしたなら、猶予などないのだから。
そしてそれはユイも同じ事。彼女にはもう時間がないようだ。
「(あの娘は、自ら寿命を縮める行為をしている。恐らく新堂と……我々と関わらなければ、あの病に罹る事もなかったのだろう)」二人の去った方向を見つめて呟く。
「(可哀想に……。カーライル、救ってあげる方法はないの?)」
エズミが懇願するように夫を見るも、カーライルは難しい顔で首を横に振った。
「(恐らく新堂はそれに気づいている。自分を酷く憎んでいるんだ)」かつての自分のように、とカーライルは考える。
忌まわしい存在となった自分を許せず、また周囲の人間の脅威となる事に対しても。
それが愛する者に対してならば、その憎しみは計り知れない程深いものとなるだろう。
二人は、彼らに少しでも早く、どんな形であれ安らぎの時が訪れる事を祈るのだった。
・・・
顔の辺りにひんやりした空気を感じて、ぼんやりと意識が戻り始める。
いい匂いもする。この匂いは新堂先生?
「うう……ん」身じろぎをしたけれど何だか窮屈だ。ここはどこだろう。
「ユイ。目が覚めたか?」
この声と共に、匂いが強くなる。大好きな匂いが。それでも私の意識はまだ朦朧としている。
「新堂、先生……どこ?」
手を伸ばして手探りで彼を探すと、すぐに私の手は誰かに握られた。あったかい手に。
何で体温があるの?
「あんまり動くな、落ちるぞ?」でもこの声は間違いなく新堂先生の声。
確認したくて、どうにかして重い瞼をこじ開けるけれど、眩しい光が目に飛び込んできて耐えられない。諦めて再び目を閉じた。この疲労感は一体何?
ひんやりした空気といい匂いに包まれて、またも私の意識は薄れて行った。
次に目が覚めた時は、自分のベッドの上だった。
部屋の隅の椅子に足を組んだ状態で腰を下ろし、新堂先生は私を見つめている。
何でそんなに遠くにいるの?
「おはよう。ようやくお目覚めだね、眠り姫」距離はあるが、飛び切りの笑顔で迎えられる。
「おはよう、で合ってる?」
にっこり笑って頷いてくれた。
「ねえ、どうしてそんなとこにいるの?もっと近くに来て」こう訴えたけれど彼は動こうとせず。
諦めて次の疑問を口にする。「今までの全部、夢だったんだね……」
私としてはほぼ確信に近かったのに、彼が首を横に振った。
「ユイはとても良く頑張ったよ。俺のフィアンセ役を、立派にこなしてくれた。ありがとう」
ちょっと待った!聞き捨てならない言葉があったんですけど?
「役ですって?お芝居なんかじゃなくて本当の事でしょ?それとも何?どこかで話変わったとか?私が寝てる間に!」
起きがけにも関わらず、興奮のあまり飛び起きて彼の元に駆け寄る。
そして気がついた。自分があの大切な指輪をしていない事に。
「あれ?私っ、どこかに忘れてきた……?ウソでしょっ!」怒りはどこへやら、一転してパニックに陥る。ずっと肌身離さず着けていた。そもそも自分では外せないはずだ。……って事は?
「役って、……先生、私との婚約、……取りやめたって事?」顔から血の気が引いて行く。
私の震える唇に、先生の長い人差し指が当てられた。
「しぃ―……落ち着いて。誤解させて済まない。指輪はここにある。ユイは体調が悪そうだったし、機内の気圧の事もあったから外したんだ」気圧で体がむくむ事があると説明してくれる。
そして私の中指に、そっと指輪を嵌め直してくれた。
先生がいつまでも愛おしげに指先を見つめていたので、思わず手を引っ込める。
「あんまり見ないで。こんな不恰好な指なんて!」本当はこの指には着けたくない。
「ユイ。その指、骨折の後遺症だろ。たまに痛みもあるんじゃないか?」
彼のセリフに驚いて手を止める。やっぱり見抜かれてたか。
「痛くはないよ。キライなだけ!」
「形成手術で元に戻せる。してやろうか?」
そう来る?何て簡単に言うの?切り開いて骨を削って繋ぎ直すとでも?
「逆に痛くなりそうだからやめとく!」
私の答えに、先生は悲しそうな顔で言った。「例え指の一本でも、ユイに自分の事を嫌いだと思ってほしくないんだ」
「…………え?」
「俺はユイの全てを愛している。その曲がった指も、小さな胸も何もかもだ」
さり気なく、痛いトコ突いてくるわよね!
先生は私を抱き寄せると、まず中指に、そして私の胸元を肌蹴させて口づけた。
ダメよ、そういう事したら……正気でいられなくなるじゃない?当然何も反論できなくなる。
「変わらず俺達は婚約中だ、愛するフィアンセ。役だなんて、言葉を間違えたな、済まなかった。それと、この指輪はここでよろしく」
この言葉に加えて強烈な瞳の作用までも加わり、私はたちまち体中の力が抜けて、その場にヘナヘナと座り込んだ。
「おい、大丈夫か?」
「……大丈夫です」
先生が私に手を差し伸べて、ベッドへ誘導してくれる。
「私、いつの間に帰って来たの?」
「二日前かな。ずっと眠っていたから」事も無げに言うけれど、さっぱり分からない。
ベッドに腰を下ろしてからも質問攻めは続く。「カーライルさんとこを出た記憶もないけど?どういう事?」
「ユイが力尽きたから俺が運んだ。それだけだ」
「力尽きたって……。すごく、寒かったのは覚えてる。そうだ、あれは飛行機の中だったのね。先生の手、温かかったけど何で?」
「温かかった?さあ……分からないな。それこそ夢じゃないのか」
彼が私の額に軽く触れた。「体温は戻ったみたいだ。良かった。あまり触れないでおこう」
そう言ってすぐに手を離されたので、急いで掴み直した。
「ヤダ!」ギュッと握って、またも震えがくる。
「ほら見ろ。さあ、離すんだ」
指摘されてさすがに力が弱まる。「…………やだよ」上目遣いで訴える。
私、どうしちゃったんだろう。彼に触れただけでこんなふうになるなんて。
今までこんな事なかったのに。
「出会った頃に何度かあったな。こういう事。覚えてるだろ?車でユイを家まで送った日だ。至ってこれは、正常な人間の反応だと思うよ」
「でも最近はなかった。もう慣れたのよ!なのに……」
これじゃエッチどころか、一緒にいる事さえできなくなる。不安で押し潰されそうだ。
「ユイ。これから少しずつ、治療を始めよう」
「あなたといても、寒気を感じなくなる治療があるの!」
それは朗報!と喜んだのも束の間だった。「違う。再発防止に向けた治療だよ」
何のこと?どうして急にそんな話に?私の疑問に答えはなかった。
それから先生は、本当に私にあまり触れなくなった。
何しろ診察は見て聞くだけで終わるから、触診の必要もない。隣りで添い寝してくれる事もなくなった。
それは夏になっても変わらず、部屋はいつだってエアコンで快適温度にされている。
毎晩訳の分からない点滴を施されて、いつの間にか就寝。お陰で寝付けなくて困る事がなくて大助かり?先生は何も説明してくれない。
そろそろ、ユイさんの堪忍袋の緒が切れる頃でしょ。
「ユイ、腕を出して。点滴するよ」
「いや。しない。断固拒否します!」ついに私はストに入った。
と言っても一瞬で終わるけれど。
有無を言わさず見つめられ(どう足掻いても目を反らせない)魔力が掛かる。
「主治医の言う事、聞けるよな?」
……ダメよっ、頷いたら!「は……。っんん!イヤっ!」魔力に勝った。すごいわ、私!
「主治医なら、患者にちゃんと説明して。納得できなければ治療はお断りします。強引なやり方はもうしないで!」
彼は点滴セットを手にしたまま、驚いた様子でしばし固まった。
「私、病気は封じ込めたでしょ?まだ再発してない。違う?」
この問いにはすぐに答えてくれた。「違わない。その通りだ」
「再発防止でこんなに薬を使う必要がある?しかも私の大嫌いな針を毎晩刺すなんて!見てよ、これ。先生には分からないでしょうけど、痛いのよ。とっても!」
腕には針の跡が複数あって、いくつかは内出血して青くなり、いくつかは治りかけて黄色くなっている。つまり一言でいうと、痛々しいって事。
新堂先生は構えていた手を下ろした。サイドテーブルに点滴用の器具類を置く。私の言い分はどうやら通ったらしい。彼の行動でそう判断する。
先生が控え目にベッドの端に腰を降ろした。
「強引だったよな。ユイの気持ちを考える余裕がなかった。済まなかった」
「余裕がないだなんて、どうして……?」
そこで私は事実を知らされた。カーライルが私の未来を予知した事を。そんな能力があったなんて!私にはそっちの方が驚きだけど?
「私、もうすぐ死ぬって事?あと……どのくらいで?」
「そう遠くない将来に」先生はあえてなのか、とても曖昧な言い方をした。
一年もないって事?
不思議と取り乱したりはしなかった。なぜなら、ある意味それは望んでいた事だから。
そうなれば彼は、私を救うために仲間にするしかない。
でも今の苦痛に満ちた顔を見ていたら、とても言い出せない。こんな状況でも、私をヴァンパイアにするのが嫌だとしたら?私だって、愛する彼を苦しめたくはない。
「そういう事なら、ちゃんと言ってくれればいいのに」
「済まなかった。ユイ、怖くはないのか?」私が平然としている事に驚いている。
自分でも不思議だ。死の宣告をされたのに、こんなに冷静でいられるなんて?
「私には新堂先生がついてるから。どういう結果になっても、あなたと一緒なら何も怖くない」
どういう結果になっても、とあえて言った。先生に判断を仰ぐと。
「おまえはやはり、恐怖を感じる神経が欠落しているらしい」彼はおどけて言いながらも悲しそうだった。
「かもね」
新堂先生は、カーライルが予知した未来を変えようとしている。それこそ必死で。私を人間として生きながらえさせるために。彼が望むなら、それは私の望みでもある。
しょうがないから付き合ってあげよう。点滴はイヤだけど。
未来なんて誰にも決められない。予知通りに進むとは限らないんだから。特に、この朝霧ユイと新堂和矢に限っては?ここは強気で行く。師匠だってそうしろって言うはず。
そうそう決められて、堪るもんですか!