崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話 作:アルテマ
あ、今回ちょっと短いです。最近のが長すぎただけかもだけど
潮風のツンとする刺激を感じながら意識を集中させる。多くの観客が水辺を飛び回るイルカたちを見て興奮し、歓声を上げている中で、1人ぽつんと場に似合わぬ存在として見られていると思うと、緊張を隠せない。
だが瞳を閉じ、イルカたちの立てる波音と僅かに揺れる水面のさざめきにのみ意識をひとたび向ければ、周囲の視線は気にならなくなり、歓声もどこか遠くから響くものとなる。
「……フォームチェンジ【カルデア戦闘服】」
機械的に唱えたその呪文を唱えた瞬間、肌に触れていた衣服の繊維の感触が一瞬にして変化する。
僕は何度も見たことのある光景であり、目を閉じていても何が起こったのか把握できるが、観客たちは一瞬ぼくの体が光ったと思えば、瞬きもしないうちに僕の服装が近未来めいたスーツに変化していることに驚いているのがアリアリと頭に浮かぶが、今はその思考も脇にどけて集中する。
「
口にした言葉は英語だが、表記はドイツ語。そんなつもりで呟いたこの言葉そのものに意味はない。これから行うものにこの起句を唱える必要はない。
ではなぜわざわざ必要がないことをするのかと問われれば、これから行うことの始まりの儀式であり、もっと言ってしまえば気持ちの問題だと言える。
食事をする前にいただきますと手を合わせるように、誰かに感謝を告げるために頭を下げるように、必須ではないが形式として大切なもの。
何よりもこれから行う魔術は、個人的には猫被りな優等生の彼女が代表的な使い手だなんて思っているから、必然的にこのような起句が口からつい零れてしまうし、実際にやってみると無言よりかはやりやすい気がした。
目を閉じたまま顔と片腕を真上からやや前斜めに傾けた状態で止め、上空に掲げている手の指先の人差し指と親指のみを上げ、残りの三指は固く閉じた。
指で象った銃口の照準を固定するように残った片腕で支え、同時に指先に体に流れてるものを指先に込めるようなイメージを強く持ち、人差し指の先端へと集約させる。
銃弾の補給というよりも、血管とは別の流れを脳で把握してつかみ取り、逆流せぬように少しづつ少しづつ一点に集中させる。
練習をこれまで散々してやって掴んだこのイメージは、少し前ならば緊張すると上手く出来ないが、1発撃つだけならばさほど集中力を必要とはしなくなった。
「さあ!いよいよショーもフィナーレです!最後は派手にいきましょう!」
指先の熱を暴発しないように留めながら、待っていた言葉を聞き気を引き締める。
イルカたちの波打つ音はしなくなり、会場はスピーカーから響くドラムロールのみで満たされる。観客の歓声は小さくなった代わりに聞こえてくるそのドラムロールもシャットアウトし、僕はひたすら水の音のみに耳を傾ける。
そして微かに聞こえてきたドルフィンキックの揺れを認識した瞬間に目をカッと開き、指先の熱を開放させる呪文を唱える。
「―――ガンド!!」
引き金を引く言葉たるそれを口にし、銃口を支える手に力を込める。撃鉄の役割を為したその動きを以て指先の熱は押し出され、赤いオーラに包まれた球体が圧縮から解放されたかのように手のひらサイズで膨張し、僕の腕に射出の反作用の余韻を残して空へと放たれた。
赤熱めいた軌跡を僅かに残してグングンと空へと上がっていく球体に追い縋るように、水面からくすだまのような黄色い球体が飛び出していく。
曲線を描いて飛んでいったそれは、僕の射出したガンドと軌道が重なった瞬間に接触した。
最初に変化を感じ取ったのは聴覚であり、ガンドを受けたくすだまは瞬時に破裂し辺りに花火のような低く深い爆発音を残した。
破裂したくすだまは観客席にまで降り注ぐ光の粒子をまき散らす。蛍のように小さくも明るい光の玉は触れても熱を感じることはなく、雪のようにして空気に溶ける。
間近では見たことのない幻想的な光景に観客たちは感嘆の声を漏らして釘付けになっていたが、ショーを締めるに相応しいと拍手が少しづつ巻き起こり、伝播するようにして拍手は大喝采へと瞬く間に変わった。
「ここまで当劇団【シルク・ドゥ・ルカン】のイルカショーにお付き合いいただき、ありがとうございました!またのお越しをお待ちしております!」
ジャンヌとイルカたちが恭しく礼をするのに合わせて、自分もジャンヌと同じようにして礼をする。再び響いてきた強い拍手の音を聞きながら練習の成果を発揮できたことを喜びつつ、無事成功して良かったと頭を下げながら安堵のため息をついた。
「お疲れ様でしたオーナー!素晴らしいパフォーマンスでした!」
「ありがとう。そっちもお客さんの案内とか大変だったでしょ?」
「いえいえ、確かにショーを観に来て下さった方々は多かったですが、此方には十分な数のスタッフが動員されていましたからトラブルなどにも迅速に対応出来ました。……おっと、では私は後片付けの指示出しなどがありますのでこれで失礼します」
「何か手伝った方が良いかな?」
「いやいやいや、後片付けなんて雑務は我々にお任せ下さい。オーナーは今日が初めての舞台だったのでしょう?身体面はともかく、精神面は疲弊してると思われます。オーナーのお姉様共々早めに休まれた方がよろしいでしょう。ではまた」
どう見ても年上とかそんな次元を超えて初老の男性が踵を返して小走りに立ち去っていく姿を少し見つめた後に、撤収作業に入っている会場に背を向けて歩き出す。
その内心はどう考えても自分より業務処理能力の高い人間に敬語を使われている事への拭えない違和感及び距離感と、それに慣れてきてしまっている自分がいるという複雑な思いで絡まれていた。
あとジャンヌと僕が姉弟と認識されているのはなぜなのだろうか。外堀から埋められているような感じがしてとっても怖い。
「―――ではそのように、よろしくお願いしますね」
「ええ、承りました。それではまた」
「……?」
廊下を歩いてる途中、十字路辺りで横へと顔を向ければ2人の少年少女が何やら話し込んでいたようだが既に話を終えたようだ。
「あれは……」
片方の少年の方はよく知っている人物、【シルク・ドゥ・ルカン】スポンサーのギルガメッシュ(リリィ)であるが、もう片方の少女には見覚えすらなかった。
確かにイルカショーを見に来る子どもは多いし、その子どもたち1人1人の顔や身体的特徴を覚えているという訳ではない。だがその少女は日本で見ることは稀な金髪と、コスプレか何かかと言えるような青の目立つ格好をしており、まず一目でも見てしまえば頭のどこかしらには引っかかってる。そう言えるくらいには特徴的な少女だった。
話を終えたギルガメッシュ氏とその少女のうち動き出したのは少女の方であり、出口の方向へと歩み出した。即ちそれは、僕の立っている十字路を通過するのだが、近づいてくるその少女の容貌を見て驚きを口にすることこそなかったが、見覚えのある容姿に固まってしまう。
(アルトリア……アルトリア・ランサー……?)
心の中でそう疑問符を浮かべたのは容貌や格好こそ記憶にある人物とほぼ一致したが、どう見ても身長が違うために確証が持てなかったからである。
結い上げられた金髪に特徴的なアホ毛、髪と同じ色を放つ眼差しに古風な青いドレス。そしてその幼い見た目とは裏腹に、どこか厳格なオーラを放っている。ここまでであれば僕の知っている、アーサー王物語のアーサー王がランサークラスで現界した【アルトリア・ペンドラゴン】で間違いない。
しかし前述した通りどう考えてもマテリアルの情報の身長よりも小さいし、よく見ると顔のパーツもやや幼いように感じ、しかしそれに反して胸の大きさは僕の知っているランサーのアルトリアと同じようなものであり、少し混乱してしまう。
「……!」
「あ……す、すみません」
当然と言えば当然であるが、向こうからこちらへと歩いて来ているのだから見られていることはわかることであり、視線が合うことは必至であった。
向けられた視線が咎めるものであると思った僕は咄嗟に謝罪する。敬語であったのは見た目こそ少女であるものの、相手がサーヴァントに分類されるのであれば子ども扱いと言うのは失礼であると思っての事だった。
固唾を飲み返事を待つが、言葉が返ってくることはない。この距離で聞こえなかったということはないとは思うのだが、これ以上なんと言葉を掛ければよいのか分からずに辺りは沈黙に包まれる。
気まずいような雰囲気に、当たり障りのない話題でも振ってどうにかこの空気を払拭しようと思い、どのような話題が適切であるか考えていた時、先に口を開いたのはその少女だった。
「―――強情なのですね、あなたは」
「……はい?」
前置きもなく振られたその言葉には全く身に覚えがない。唐突に口を開かれて、それでいて真意の不明な言葉につい疑問の声が漏れる。
しかしそれを気にする様子もなく、困惑する僕を置いて少女は尚も言葉を続ける。
「あなたも彼女のように自分の心に素直になり、愛する者と愛を育めばよいものを……いいえ、彼女がああなったからこそ、あなたはそうして今も己の思いを閉ざして、意固地になっていると言ったところでしょうか……それも時間の問題でしょうがね」
「……何が言いたいのですか?」
全く意図の読めないことを言われ、こちらの事などお構いなしとばかりの態度に、つい不機嫌気味に聞き返してしまう。
しかし彼女はそれを気にも止めず、ただその黄金の瞳をこちらに寄越すだけだ。その瞳の視線の先には確かに僕がいる筈なのだが、彼女には僕が映っていない錯覚さえ覚えた。
「まあ、私としては愛の形の証明の為ならば助力は惜しみません。それが彼女の為にもなると同時に、私の都合にも良い」
「あの、だから……!?」
いい加減痺れを切らし、もう少し強めに問い詰めようとした時だった。
確かに視界に捉えていた少女がその場から消えたかと思えば、僕の目の前に移動し襟首を見た目からは想像できないほどの力で引っ張ってきた。
身長差故につんのめりそうになるも、少女は引っ張った手をすぐに戻す事によって僕の倒れ込みを防いだ。
乱暴な行為に文句を言おうと口を開こうとしたが、目と鼻の先と言えるほどの距離で映り込む少女の、その清廉なオーラには似合わない濁った瞳が、僕の文句を封殺し、更に刃を突きつけるような視線を向けていた。
その瞳は全く持って熱を伴っておらず、ただ淡々と目の前の光景を映すように僕には見えた。まるで僕のことなどどうでも良いと、その瞳で語られているような気がした
「ふふ……よく馴染んできていますね……なるほど、彼女から説明を受けて納得はしていましたが、まさかここまで上手くいくとは。ええ、ええ。正に期待以上というものです。ここまでの成果だけでも、私にとっては価値のあるもの。そしてその成果には、相応の報酬を与えねばなりません」
「故に私は彼女を祝福します。その健気で強く思い人を愛する、素晴らしい人間を。思い人に会う為に躊躇いなく世界を乗り越える彼女を。己が全てを捧げて愛に殉ずる少女を。
あなたたちの愛が証明された時は、その愛の成就を私自らが更なる祝福で以て歓迎いたしましょう。
……ですが、もしも私の期待を裏切るのであれば―――」
その先の言葉が語られることはなく、彼女は僕を掴む手を離す。
どこまでも無機質で僕の事など……いや、そもそも人間の事など歯牙にもかけない。羽虫の如く矮小な存在が何人死のうがどうだっていいとでも言いたげな立ち振る舞いが、紡がれることはなかった言葉を想起させ、廊下の壁に寄りかかるようにして尻餅をついてしまう。
少女はそんな僕には目もくれず、僕の横を通り過ぎていく。その横顔の表情は終止変わらず冷たい表情をしていて、何を考えているのか全く分からない。
ただ、1つだけ確信していることがあるとすれば、あの少女は
「……ふふ、ふふふ………マスター……彼女の愛が証明された時、私とあなたも……♡」
不気味に笑いながら、何か小声で呟きながら立ち去るその少女の背中を、僕はただ呆然と見つめることしか出来なかった。
だからであろう。この時の僕にはその少女が呟いていた言葉と、それに乗せられていた万感の思いに気づくことは出来なかった。
「大丈夫ですか?」
「……っ!……は、はい、大丈夫、です……!」
「無理に立ち上がらなくて良いです。ただの人間に、あれの放つ重圧を耐えられる道理などないのですから。正直、気絶していないだけ大したものですよ」
肩に小さな手を置かれて、ようやっと僕は正気に立ち返ることができた。しかし、直前まで受けていたプレッシャーを受けていた体の震えは小さくなることこそあれど、収まる様子がない。
荒れていた呼吸をどうにか整えてようと深呼吸をするも、震える体が肺の動きの阻害をし、上手く呼吸が出来ずに過呼吸になってしまう。
「近くに楽屋がありますので、そちらで休憩しましょう。……立てるまでは、少しここで休む必要があるでしょうが」
「す、すみません‥…あの、あの少女は一体……?」
痛む感覚すらある肺を抑えて、確実にあの存在について知っているであろうギルガメッシュに問いかける。
するといつも穏やかな表情をしている彼にしては珍しく、何か言いづらそうな渋い表情をしていた。その表情には僕へ話しても良いのかと言う気遣いが含まれていると同時に、出来るのであればあまりその話題を挙げたくないというのが、ハッキリと見て取れるくらいには分かりやすい表情をしていた。
「……まあ、いつかは分かることですし、別に言ってもよいですかね……私情を挟むのであれば、あまりあれの話をしたくはないのですが、あなたが立ち上がれるようになるまでの時間つぶしにはなりますでしょうし」
十数秒渋い表情のまま考え事をし、ひとしきり思考した彼は廊下の背中に背もたれを預ける僕の隣に体育座りという、見た目相応な筈だが似合わない座り方をして口を開けた。
「単刀直入に言いますとですね、あれはこの世界を崩壊させた女神ですよ」
「……は?」
開いた口が塞がらないとはこの事なのだろうか。あまりにも突拍子のないその暴露に唖然としてしまい、整えかかっていた呼吸はまた止まりかけてしまった。
「正確には、女神本体ではなく意図的に分離して作成された別端末と言ったところでしょうか。……まあ、常時本体ともリンクしているそうなのであまり関係なさそうですが」
「……待って、待ってください。流石に唐突すぎて、情報の理解は出来ても、受け止めきれないです……!なんでそんな存在が、ここに来ているんですか……?」
「……それに関して答えるとすれば、あれは僕と彼女に用があったと答えましょうか。僕に対する用事は少し長くなりますので楽屋で話すとして、彼女に対する用事は……」
彼は口をそこで噤み、その先を口にしようとはしなかった。彼女とは文脈からも恐らくジャンヌのことを指しているのだろうが、思いなおしたようにして止めた言葉の続きを断ち切り、別の言葉へと彼は繋げる。
「とにかく、あれに逆らうことは現状よろしくないですね。
彼もジャンヌのことを僕の姉として扱っていることは気にもならなかった。なぜなら、それ以上に気になることを彼が言っていたことを見逃すことが出来なかった。
女神、アルトリア・ランサー、この2つのワードから導き出される答えで僕の知っている存在など、1つしか心当たりはない。
「まさか、彼女は……」
「ええ、あなたの想像通りですよ。あれはアーサー王のifの姿。聖槍ロンゴミニアドを長期間所持したことにより人の英霊ではなく、天の神霊と化した聖槍の化身、【女神ロンゴミニアド】です」
「ふんふふんふふ~ん♪弟君の活躍と成長が見れてお姉ちゃんは嬉しいです!今日もたっくさんご褒美をあげなきゃですね~!……あ、お久しぶりです女神様!」
「ええ、ええ!あれから毎日愛を育んでいますよ。これと言うのも、あなたがこの世界と私たちの世界の橋渡しをしてくれたからですね!本当に、本当にありがとうございます!」
「……え?望みですか?今私が欲しいのは弟君の愛なのですが……ああ、いえ。そうですね、それは私があなたに課された課題なのですから、これは自分で解決しないといけませんね。では……」
「弟君を悲しませたくない。それが、今の私の望みです」
※シリアスブレイク注意
甘寧!ちびレオ使用一番のりぃぃぃぃいいい
確認したなかでまだKEY大先生のとこのちびレオだしてる人いなかったので、多分俺が一番乗りの筈……!フハハハ、栄えあるKEY大先生のシェアワールドに向けて配布された設定を最初に使うのは、このDIOだぁあああ!!
Q.1某タマモキャットさんとこの小説で、ロンゴミニアドさんの端末存在出演してたよね?
A.あれはノーカンだ!何故なら描写見る限りはちびレオではないから!
Q.2ギルガメッシュって神様嫌いだよね?なんで戦闘仕掛けてないの
A.詳しくは次回説明する予定ですが、子ギルと賢王はビジネスに私情は持ち込まないと考えていますとだけ
Q.3最後のやり取りは一体……?
A.それはあなたのセキュリティクリアランスでは開示されておりません