崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話 作:アルテマ
まああれです、いつものです。文字数が今回の話1話にまとめると12000文字超えそうだったので、流石にクライマックスでもないのに本編でこの長さはなぁってなって話分けて、出来た前半のやつだけ投稿。
後半のもなるべく早く投稿します……
あと今回からセリフも改行して読みやすくしております
今回は戦闘回兼説明回なお話しです。それではどうぞ
「ジャンヌ!東からスケルトンと竜牙兵の群れが来ている!
数が多いから、そっちを優先してイルカたちをぶつけて!ワイバーンの方は僕も援護する!」
「了解です弟君!
さあイルカ突撃隊のみんな、突撃ー!!」
人間とも普通の動物とも明らかに違う生命体のモンスターたちの骸が辺りに散らばっている中で、ジャンヌの場違いともいえる朗らかな声と共に、フラフープが上空へと放り投げられてアーチを描く。
そしてフラフープが描いたアーチの跡には円形の
イルカがスケルトンの群れへと突撃するたびに、スケルトンたちはバラバラに砕かれ骨組みは崩れてただの骨、あるいはその残骸と化す。
スケルトンや竜牙兵は体の一部の骨が崩れたり外れたところで動きを止めたりはせず、執拗に敵とした存在を追い詰めようとするのだが、全身がバラバラに砕かれてはどうしようもないらしく、活動を停止してしまう。
骨だけの見た目の通り脆いモンスターであるために訓練を積んだ武装した人間なら一対一でも勝てるのだが、いかんせんこのスケルトンたちはとにかく群れで行動し、その数もとにかく多いために一体一体のスペックは低い割に、危険度はやや高めのモンスターである。
もっとも、普通の人間でも勝てるような存在が群れをなしたところで一騎当千のサーヴァントにかなう筈もなく、イルカたちが水もないのに水しぶきを挙げながらスケルトンたちに攻撃を加えるたびに、どんどんとその数を減らしていく。
「そのままスケルトンたちは押し切って!
残りのイルカたちをワイバーンの方へお願い!」
「はい!それではイルカ遊撃隊のみんなもとんでいけー!」
今度はジャンヌの足元からひょっこりとイルカが顔を出し、空中に居座るワイバーンたちへと正確無比に飛び立っていき、次々とワイバーンを撃ち落としていく。
当然ワイバーンたちもやられっぱなしで黙っている筈もなく、地面へと墜落していく同胞たちを縫って飛行し、イルカたちに指示を下すジャンヌへと牙を突き立てんと迫るが、分かりやすいその行動を許す筈がない。
「
素早く手を構えてガンドの起句を唱え、指先の方向をワイバーンの飛行する先であろう場所へと向ける。
ワイバーンの飛行速度、僕とワイバーンまでの距離、ガンドの射出速度から大まかにワイバーンへとガンドを当てられる場所を割り出す。
「ガンド!」
叫び声と共に指先から対象を麻痺させる呪術を数回偏差射撃を用いて放つ。
ワイバーンの飛行速度や旋回能力は高く、1発を確実に標的にぶつけられるような技量を僕は持ち合わせていない。よしんば1発当てられたとしても、今回のように敵の数が多い場合は有効的ではない。1体の動きを止める、あるいは仕留めたとしても、他の敵が処理できなければ意味がない。
なので、今僕が魔術礼装【カルデア戦闘服】を装備して放っているガンドは一発の威力を抑え、連射が出来るように調節して撃ちだしている。
本来の仕様では一発の威力に重きを置き、対象範囲が1人という狭さと連射性の低さという弱点があったが、ジャンヌのくれたこの魔術礼装【カルデア戦闘服】の行使によるガンドは、威力と直結する魔力量をガンドの行使者がある程度調整することが出来るのだ。
ゲーム内でも汎用性の高い魔術だったが、更に汎用性が高くなっているので使用頻度は多い。
何故こんなことが出来るのかはジャンヌにも分からないそうだが、こんな死と隣り合わせの世界だ。生き残るためならば使える物は余程のものでもない限りは使っていくべきだ。
指先から次々に放たれたガンドを受けたワイバーンたちは動きを止め、推進力の役割を持っていた翼の動きも止まったために、地上へと真っ逆さまに落ちていくワイバーン。
しかし連射性を優先して放ったために、今放ったガンドには物理的破壊力を持ち合わせていない。あのワイバーンたちはあくまでも動きを止められているだけで、時間が経てばすぐさま空へと羽ばたき、また襲い掛かるであろう。
もっとも、それまでに生きていればの話なのだが
「ナイスサポートです弟君!それ!」
ジャンヌは片手に
神聖っぽい攻撃手段にしては生み出された生々しい光景に顔が少し引きつるが、この崩壊した世界においては特段珍しいものでもないので、動揺はしなかった。
……余談だが、今のジャンヌはメガネに競泳水着とパーカーと言う、所謂第二再臨の霊衣なのだが、第三再臨の際に展開する
『弟君への愛ゆえです!』
と集中線が出てそうな勢いでそんな返答が返されたので適当に流した。その後
これでジャンヌのイルカたちが撃ち漏らしたワイバーンへの対処は出来た。残りのワイバーンの数も多くはないのでジャンヌのイルカ遊撃隊で押し切れるだろう。
スケルトンたちの方へ視線を向ければ、そちらも殆どがイルカたちによって無残に粉砕され、骨だけが散乱していた。
と、視線を少し逸らしている隙に僕の方へと突っ込んでくる1頭のワイバーンに気づいた。
僕がジャンヌのマスターであることに気づいたのか、あるいはガンドの魔術を鬱陶しく感じたのかは分からないが、どちらにせよワイバーンに襲われては所詮ちょっと魔術礼装を扱えるだけの一般人である僕なんてひとたまりもない。
「【全体強化】!」
すぐに魔術礼装のスキルで身体強化を施し、距離をとることによってワイバーンの凶爪の攻撃から逃れる。
しかしワイバーンは回避されたことを認識するや否や、すぐさまこちらへとブレスを吐いてきた。
人の顔よりも1回りは大きい火炎の球体がチリチリと空気を焼きながら僕へと確実に迫りくる。当然こんなものをまともに受ければ重傷は確実なのだが、既に十分距離を取っている僕は特に焦りなくそれに対応する。
「【オーダーチェンジ】!」
そう言葉にして魔術礼装のスキルを発動した瞬間、視界が一瞬ブレる。
映像を無理矢理横伸ばしにしたような景色を認識し、視界が元に戻った瞬間に車酔いのような感覚に襲われるが飲み下し、視線を横へと向ければ先ほどまで僕のいた位置で火球を片手で払い落し、姿勢を低くして地を蹴りワイバーンへと拳を振り上げるジャンヌが目に入った。
「やぁぁああ!!」
掛け声とともに放たれたアッパーカットはワイバーンの顎へと決まり、バキバキバキと何かが折れるような音を立てながら空中へとワイバーンは投げ出された。
錐揉み回転しながら上昇した後、重力に従って地面へと墜落するワイバーン。原形こそ留めてはいるが、うつぶせの状態で墜落したワイバーンの顎の部分は大きく凹み、ピクリとも動かないことから既に息絶えていることは明白だった。
「ありがとうジャンヌ!助かったよ!」
「いえいえ、弟君の魔術礼装のタイミングもバッチリでしたよ!
このまま一気に倒しちゃいましょう!」
その後は特に問題もなく残った敵を殲滅し、残存勢力がいないか確認をしてから僕たちは一息ついた。
きっかけはなんてことはない。言ってしまえばただの僕の我儘だ。
シルク・ドゥ・ルカンは東京の江東区辺りの海沿い近くに拠点を置き、スタジアムもその近くの海上に建設されている。
元々公園等があった場所だったのだが、モンスターたちによって荒らされて巣窟と化していたのを殲滅し、整地をした後に建設を行った。
このモンスターの殲滅の際にはジャンヌ以外にも他のサーヴァントやマスターたちとも協力をし、その後も周辺の安全確保のためにモンスターの警戒と撃退ないしは殲滅、いわば用心棒のようなことをしてもらっているのだ。
シルク・ドゥ・ルカンが発足して当初は僕も雑務をする必要があったりと大変で、そちらに気を向ける余裕がなかったが、時が経って時間に余裕が出来たころにふと思ったのだ。
僕がこうして平穏と安全を享受している中、彼らは今も危険な戦場と言って差し支えない場所を歩き回っているのだと。
自分がこうしていられるのは彼らのおかげであると。
そしてそれを自覚した途端に不安のような、焦燥のような、そんな自分でもよくわからない思いが駆け巡ったのだ。
ジャンヌの開催しているイルカショーを低く見て貶すつもりなんて更々ないし、彼らには雇用側として給料も払っている。こう言ってしまうとその行為の価値が下がってしまいそうで言いにくいのだが、感謝もしているつもりであるし、差し入れ等もそれなりにしている。
それでも何か胸のつっかかりが取れなくて、ふとした拍子に僕はその事をスポンサーであるギルさん(最近やっとスムーズに言えるようになってきた)に零したのだが……
『ではイルカショーの休みの日に、彼らと共にモンスターの駆除を共にしてみてはどうです?』
そう提案され、ジャンヌも僕がそれを望むのならと言ってくれたのでギルさんの言う通り、イルカショーの休みの日に不定期ではあるが、モンスターの駆除の仕事の手伝いをジャンヌと共にしているのだ。
「……」
あれからそれなりの数モンスターの駆除の仕事をし、胸のつっかえは取れるかと思ったが全くそんなことはなかった。
寧ろこれは胸のつっかえが取れたと言うよりは、こうしている間別のものにすり替わっているだけのように感じた。
「お疲れ様でした弟君!
援護やサポートの魔術のタイミングもバッチリです!
魔術礼装の扱いにもすっかり一人前ですね!」
そんな思案をしている中、イルカたちへ労いをした後に念のための周囲の警戒を指示したジャンヌがこちらへと歩み寄り、僕にも労いの言葉をかけてくれた。
それなりの数、モンスターと相対してジャンヌをサポートしてきたので成長していることを褒められるのは嬉しいが、増長するといけないので自戒もこめて言葉を返す。
「ありがとうジャンヌ。
でもほとんどジャンヌの力ありきだし、もっと上手く援護できるように頑張らないと……」
「謙遜するのは良いですが、お姉ちゃんの褒め言葉を素直に受け取るのも大切ですよ?
実際、最後のオーダーチェンジの使い方はユニークでしたが絶妙なタイミングでした」
「そ、そうかな?結局ジャンヌの力に頼ったものだったけど、そう言って貰えると嬉しいよ」
自戒しようと言いつつ、ジャンヌにべた褒めされて少しだけ照れてしまい頬を掻く。とは言うものの、ジャンヌが褒めたオーダーチェンジだが、今回は運が良かっただけである。
カルデア戦闘服の3つのスキルのうちの1つ、【オーダーチェンジ】。
fgoにおいてはバトル中のメンバーの1人を、サブメンバーの1人と入れ替えると言うスキルであるが、僕が使用しているカルデア戦闘服のオーダーチェンジの効果は、『対象となっている2人のサーヴァント、あるいは魔術礼装の行使者の位置を入れ替える』と言う限定的な転移魔術のようなものだ。
オーダーチェンジはその汎用性の高さから、fgoにおいてそのスキルを有しているカルデア戦闘服は様々なクエストで重宝されたのだが、僕が着用しているカルデア戦闘のオーダーチェンジは、現状ものすごく使いどころが限られている。
このオーダーチェンジの対象とすることが出来るの対象なのだが、”魔術礼装を装備している僕”と僕と契約しているサーヴァントの”ジャンヌ”、そして”僕と魔力のパスが繋がっているサーヴァントのみ”であること。
院長先生や尾頭さんのように複数のサーヴァントと契約しているのなら話は違うが、ジャンヌしかサーヴァントのいない僕にとっては僕とジャンヌの位置を入れ替えるくらいにしか使えない。
そしてこの僕とジャンヌの位置を入れ替えると言うのも、使えるタイミングがないどころか戦局が悪化する可能性の方が遥かに高い。
僕は魔術礼装を駆使してジャンヌの援護や多少の自己防衛は出来てはいるが、戦闘能力は低いために前に出て戦闘をするなどほぼ不可能だ。
そうなってくると(と言うよりFateの作中においても普通は)サーヴァントが前衛となって敵と戦い、マスターは後衛でサーヴァントを援護すると言う形になる訳なのだが、オーダーチェンジはこの前衛と後衛の位置を入れ替えてしまうのだから本末転倒になってしまう。
今回は敵の掃討がほぼ終わりジャンヌの周囲に敵が残っておらず、僕に敵が迫ってきたと言うオーダーチェンジを使用するメリットが多く揃っていたために発動した。
僕と契約するサーヴァントが増えたりすれば話は変わってくるが、結論としては今の僕にとってこのオーダーチェンジはまああっても困りはしないが使いにくい魔術礼装スキルと言う感じだ。
「ジャンヌ、もうこの辺りの敵は残ってはいないよね?」
「ええ、イルカさんたちにも素材の回収も併せて周囲を索敵してもらっていますが、最低でもこの視界内に敵生体は存在しておりません」
「ありがとう。一応そのまま警戒していてもらって」
わざわざワイバーンの方を形をなるべく保ったまま倒したのは、ワイバーンの牙や鱗の素材や肉を得るためである。
FGOにおいて霊基やスキルの強化に使用されていた素材を何に使っているのかは僕は知らないが、肉はこの世界においては大事な食糧だ。
安定した食物の供給が不可能となってしまった今、その辺りを闊歩しているエネミーを食料に出来ないかと試行錯誤されている。
中でもワイバーンは数が多く、尚且つ調理がしやすいとのことなので需要は多い。味はチキンのようであり、脂も意外とのっていて美味しいらしい。
念のためにジャンヌの
カルデア戦闘服は装備したまま、いつでもガンドを撃てるように指をワイバーンへと向けたままにじり寄り、襲われても対応が可能な位置で立ち止まる。
一番近い位置にいたそのワイバーンは、どうも先ほどジャンヌが自らの拳で殴り飛ばしたワイバーンらしい。弱い部類とは言え、普通の人間が襲われればひとたまりもない竜種なのだが、僕の視線の先でピクリとも動かないワイバーンの顎はこぶし大の大きさで凹んでおり、ナイフのように鋭い牙の多くは粉々に砕けてワイバーンの口元下あたりにばら撒かれていた。
「……霊基が変わってもアーツゴリラ……」
「何か言いましたか弟君?」
「な、なななななななんでもないよ!?
ただ流石にこのワイバーンから牙は取れなさそうだなーって!も、勿体無いなー!」
「……?別に1体くらいなら問題はないでしょう。
他のワイバーンはイルカさんたちになるべく形を保った状態で倒して貰っていますし」
「そ、そうだよね。
と言うかジャンヌに助けて貰った形でこうなったのだから、僕が咎めるのも変な話だよね。ごめん……」
「いえ、別に特段気にしてはいませんが……変な弟君ですね」
ついうっかりとつぶやいたジャンヌに対する某ネットでの揶揄い言葉がジャンヌの耳に入ってしまったようであり、ジャンヌが僕へと問いただす。
それに対して焦りながら誤魔化すように早口で捲し立てる。あからさまに怪しい反応をしていたのだが、どうもジャンヌは僕が呟いた言葉の内容までは把握していなかったようであり、至極真っ当な意見を返す。
言い訳も失礼なものになっていたのでそれを謝るが、ジャンヌは結局最後まで訝し気であった。
そんなやり取りをしていると、ジャンヌが唐突に視線を横に向け何かに注目し、臨戦態勢を整える。
僕もその視線を追うようにして顔を横に向けると、黒いマントを着こみ髑髏の仮面を被った猫背の人物がそこにいた。
「ふむ、そちらは既に終わっておりましたか。
敵が多いと聞いて駆けつけたのですが、杞憂だったようですな」
アサシンのサーヴァント、山の翁の1人である【呪腕のハサン】は不気味な雰囲気を放ちながら、僕らへと仮面越しに視線を向けていた。
後半に続きます。
Q.1オーダーチェンジとガンドの説明長杉もっと短く
A.オーダーチェンジ→マスターと契約したサーヴァント、あるいは契約したサーヴァント同士で位置を入れ替える(距離制限アリ)
ガンド→ロ ッ ク バ ス タ ー
詳しい仕様は後日投稿予定の設定集に乗せる予定
Q.2ジャンヌの
A.どんな再臨状態でも使用可能。基本はジャンヌの友達のイルカたちを召喚するゲートとして使用
他にも相手を切り裂く状態と、拘束する状態に切り替え可能
……これ気円斬とギャラクティガ・ドーナツの融合技じゃね?
Q.3弟君ってどのくらい強いの?
A.スケルトンやウェアウルフ等が2~3体くらいなら勝てるけど、ワイバーンとかは無理。
スケルトンとかも群れ相手はまず無理
不死身になったり人外化等で強化されている崩壊世界シリーズの主人公たちの中では多分最弱
でも本当にただの一般人はこんな異形の怪異蔓延る戦場に立つだけでもかなりメンタルやられると思うし、指示と援護をしっかりとこなしている弟君はかなりやってる方だと思うよ。