※この作品はR-18です。

崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話   作:アルテマ

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イチャラブがしたいのに絶対にシリアスが割り込むのは最早必定なのだ……


先達からの忠告

 突如僕たちの前に現れたサーヴァント、呪腕のハサンに少なからず驚きつつも、彼が僕の知り合いのマスターに仕えているサーヴァントであることが分かり、僕は臨戦態勢を解いて話しかける。

 

 

「ハサンさん」

 

 

「さんはいりませんぞオーナー殿。

我が主を雇っているあなたからすれば、主のサーヴァントである私もまた雇われの身。

何よりも、2度も"さん"と呼ばれると何かこそばゆいものがありましてな」

 

 

「は、はい。すみません、えっと……呪腕さん」

 

 

「そう言うことではないのですが……まあ、無理にとは言いませぬ」

 

 

 ハサンこと、ハサン・サッバーハ。中東に起源を持つ暗殺教団の歴代党首のうちの1人。

 サーヴァントとして召喚される場合アサシンのクラスで現界する彼らは1人1人が特別な秘技を有しており、それに応じて『〇〇のハサン』と言う通称で呼ばれるのだが、僕の目の前にいる彼は『呪腕のハサン』と呼ばれている。

 彼はその見た目から不気味に思われたり、殺人を平気で行う点からも怖がられたりするが、FGOにおいては幕間にて犯罪者を取り締まったりと、善性の面をみることが出来たりする。

 個人的な所感となってしまうのだが、彼はあくまで暗殺者およびサーヴァントとしてのプロフェッショナルであって、どんな人物でも契約した主であれば忠実に従える性格から、その契約した主の善悪がそのまま彼の見られ方に影響をしてしまうのではないかと考えている。

 

 

 さて、そんな彼を召喚したマスターであるが、まあここに彼が援軍として駆け付けたと述べていた通り、シルク・ドゥ・ルカン周辺地域のモンスターの警戒と撃退をしているマスターの1人である。

 何度か顔を合わせた程度でしかないが悪い人ではなく、呪腕さん以外にももう2騎サーヴァントと契約をしており、積極的にモンスターの駆除をしてくれる男性である。

 今日はその人と僕とでペアを組み、モンスターの駆除の手伝いをしているのだ。

 

 

「あの、ここに来たってことはそちらの方の敵も倒し終えたってことですか?」

 

 

「ええ、こちらの敵は海魔のみでしたので。

相手は群れでしたがこちらほど多くもなく、殲滅にそう時間はかかりませんでした。

その後に戦闘経験の浅い貴殿を主は心配し、私に援護にいくように指示をされましたのでこちらまで馳せ参じた次第です」

 

 

 どうやら呪腕さんのマスターは僕の事を心配して援軍を送ってくれたようだ。

 実際、僕は彼らのように多くの戦闘の経験をしてきた訳ではないし、そのことは事前に説明している。

 そんな僕を気遣って彼らは戦闘に関する知識やモンスターの習性、そしてこのように強力な戦力であるサーヴァントをサポートに向かわせてくれる。

 今回の件も含めて、後でお礼を言わなきゃいけないな

 

 

「そうだったのですか……ありがとうございます、お気遣いして頂き」

 

 

「いえ、お構いなく。私は主の指示に従っただけですので。

 それに既に戦闘が終わっていた後で合流した援軍の身としては、間に合わなかったことを恥じるばかりです。

 これほどの数のスケルトンとワイバーンの群れをサーヴァント単騎で殲滅できたのは、貴殿の采配によるものもありましょう」

 

 

「そうでしょうそうでしょう!呪腕さんもそう思いますよね!

 私の弟君は最強のマスターなんです!」

 

 

 呪腕さんの言葉を受けて、我が身のように喜びながら僕に後ろから抱き着き、雁夜おじさんポーズを取るジャンヌ。

 何とも言えない雰囲気に僕も呪腕さんも苦笑してしまう。仮面で表情は見えなくても、不思議なことに彼が何を思っているのか大体伝わってくるし、こう言ったことから存外に感情豊かであることが分かるのは、彼のマスターの善性の証明なんだろうな、と思う。

 あとまあ、ジャンヌの喜び方は置いておくにしても、ジャンヌ以外の人と言うか、サーヴァントに褒めてもらう機会はあまりないのでそれも少し嬉しかったりする。

 

 

「しかし前から気になっておりましたが、何故オーナー殿は我が主たちと怪異たちの駆除を共にすることを希望したのです?

 幾らそちらの都合がつく日だけとは言え、貴殿もジャンヌ殿もあのイルカショーでの仕事が本業の筈。

 必然負担も大きくなるのではないのですか?」

 

 

「私自身はサーヴァントでお姉ちゃんですし、然程負担は大きくはないのですが、弟君はいたって普通の人ですのでそこは心配なのです。

 でも弟君はあなたたちと共にモンスターの駆除をすることを希望していましたので、私は姉としてそれに従ったまでです」

 

 

「ほう、そうなのですか……オーナー殿。不躾な質問かもしれませぬが、お聞きしても良いでしょうか?」

 

 

 そう問う呪腕さんの雰囲気は少し硬いような気がして、ちょっとした疑問ではないのはよく分かった。

 当然の質問だ。寧ろ僕がギルさんの提案を受けたからとは言え、モンスターの駆除を行う彼らの迷惑にもなりかねないことを僕はしていると言うのに、どうして今呪腕さんのしたような質問がされなかったのかが分からないくらいだ。

 

 

「……きっかけは呪腕さんのマスターさんたちのおかげで、僕とジャンヌが平穏に暮らせていることも含めて、シルク・ドゥ・ルカンのイルカショーが続けられていることに気づいたことなんです。

 それを自覚してから、何か自分の中で言い知れない不安のようなものが渦巻いてしまって……そのことをスポンサーに相談したら、モンスターの駆除を共にしてみてはと言われたんです」

 

 

「なるほど、あの御仁からの提案でしたか。

 成長した姿と比較して本質の違いこそあれど、視点が我々とは違うのはどちらも同じであるので少々懐疑的になりますが……あの黄金の王の幼少期の方の提案であれば、そう間違いはないでしょう。

 して、我らとモンスターの駆除を共にしてそれなりになりますが、答えは得られましたかな?」

 

 

 呪腕さんとギルさんは一応面識がある。

 呪腕さんは暴君の側面を強調して現界しているアーチャーのギルガメッシュに対して良い印象を持っていないのは知っていたために、彼らが出会ったら一触即発の場になると思っていたのだが、特に何か悶着が起こる訳でもなく、寧ろ呪腕さんはそれほどギルさんに対して険悪ではなく、比較的良好な反応であった。

 今も僕たちとは見ているものが違うとは指摘しても、助言事態にそう間違いはないだろうと言っている辺り、信用自体はしているのだろう。

 

 

「いえ、それが全く……こうしてあなたたちと共にモンスターを倒していれば、その疑問は晴れるのかと思ったのですけど、解消したと言うよりは別の不安に挿げ替えられたような気がしてならないんです」

 

 

「あまり考えすぎるのもよくないですよ。

 今後もお姉ちゃんがしっかり弟君を支えてあげますからゆっくりと考えて、いつか答えを得られればよいと思いますよ」

 

 

「……うん、ありがとうジャンヌ」

 

 

 心配そうにして僕の顔を覗き込み慰めてくれるジャンヌに、少し自分でも自覚できるくらいの乾いたような返答をする。

 ジャンヌがそれに気づいたのかは分からないけれど、微笑みを返して続ける。 

 

 

「素材の回収は終わりました。それでは戻りましょう弟君」

 

 

「うん分かった。じゃあ、今日はこれで。呪腕さん、今日はありがとうございました」

 

 

「オーナー殿、少々お待ちを。貴殿に話しておきたいことが」

 

 

「……?構いませんが、話とは?」

 

 

 会釈をして事務所の方へと帰ろうと踵を返した僕を、呪腕さんが引き留める。

 振り返って視線を向けた先の曖昧でも読める筈の彼の表情からは、何を思っているのかは分からない。

 

 

「この話は貴殿の不安の解消に繋がると言うものではありません。

 それでも話しておきたいのは……闇の世界であれど、貴殿よりも多少長生きした先達の経験からでしょうか。

 まあ、自分の名前さえ思い出せない愚か者の世迷言と聞き流して貰って構いませぬ」

 

 

「……」

 

 

 自身を卑下しながらも、彼の声音はどこまでも真剣だったから僕は静かに頷きだけを返した。

 たとえ彼の言う通りに不安の解消に繋がることはなくとも、暗中模索状態の僕には少しでもヒントが欲しかったし、真剣な彼の言葉を聞かないなんてのは僕には憚れた。

 

 

 

「貴殿がご存知の通り、私は呪腕のハサンの異名をもつ山の翁の1人として、ハサン・サッバーハの名を襲名しております。

 ですが、私はその過程で私が持ち得ていたもの全てを失くしました」

 

 

 そう言うと彼はマントをまくり、布で太く巻かれた右腕を僕へと見せる。

 傍目から見てもそれは異常に映るが、その布に隠されているものを考えればそうせざるを得ないことだ。

 彼が呪腕のハサンと呼ばれる所以であるその右腕の宝具の正体を僕は知っている。

 

 

「この右腕こそがその象徴でしょう。

 山の翁の名はその代の暗殺者の頂点が得るもの。

 その1人1人が誰にも出来ない才ある能力や技術を持っております。

 しかしかつての私は誰にも出来ない"特筆すべきもの"と言うものがない平凡な暗殺者でした。

 何としても山の翁の名を得たかった私は、その特筆すべきものを手に入れるために片腕を贄として魔神の右腕を手に入れ、欲して止まなかった山の翁の名を得ることが出来たのです。

 ……その果てが片腕どころか、名前も顔も、何もかもを失うなどとは思いもせずに」

 

 

 ……今呪腕さんが話している内容は聞いたことがある話どころか、FGOを通して僕はその話を良く知っている。

 彼の右腕の正体も、手に入れた経緯も、彼が山の翁の名を得るために犠牲にしたものも、そして悔いていることも、聖杯に叶えて欲しい願いも

 

 

 それでも、僕はその話は知っていますだなんて、彼の言葉を遮ってまで言えなかった。

 だって、彼ほどのサーヴァントが自分の略歴やステータスどころか、プロフィールや悲願まで晒されていることを知らないだなんて考えられない。

 それでもその話をするのには、きっと彼なりの考えがあるのだろう。

 沈黙を保ったまま、掲げた右腕を下げてまくり上げたマントを戻している彼の言葉の続きを待つ。

 

 

「何を犠牲にしてでも手に入れたいものが、やり遂げたいことがある。

 私にはそう言った執念を否定することなど出来ませんし、する権利もありません。

 実際にその執念が実を結ぶこともございましょう。

 ですが、強い執念は時にその者の視界を狭めてしまう。

 もしも代償を払うことで願いを叶えることが出来ると言う場までたどり着いても、得るものと失うものの天秤を計り違えることのないようにしていただきたい。……後悔など、してからでは遅いのです」

 

 

 助言と言うよりは、忠告と言えるだろうそれを最後に締めくくった言葉は、僕だけに向けられたものではなかった。

 だって間を空けて発した彼の紡いだ時の彼の声は悲痛に満ちていて、捨ててしまったものへと向けている後悔の重さが否応にも分かってしまったから。

 

 

「……と、まあそんなところです。

 先ほども述べましたが、所詮は異形の力に頼った未熟者の戯言とでも思っていただければと」

 

 

 少し頭を振り、無理矢理持ち直したようにそう言う呪腕さんに礼を言うと同時に、少しだけ気になったことがあったので一緒に問いかける。

 

 

「いえ、そんなことはないです。ありがとうございました、よく覚えておきます。

 でも、どうしてその話を僕に?」

 

 

「ふむ、そうですな……貴殿がどうも何かに追われ必死になっているように見え、その姿をかつての自分と重ねた……そんなところでしょうか。

 では私はこれで」

 

 

 それだけ言うと彼の姿はぶれるようにして消えた。

 素人ではあるがそこにだれかいたのかさえ分からないほど、気配や痕跡を残さない去り方は彼が本物の暗殺者のプロフェッショナルであると感じさせられる。

 

 

「……」

 

 

「弟君、どうしましたか?はやく帰りましょう」

 

 

「……うん」

 

 

 こちらへと振り向きながら言うジャンヌに生返事をしながら、早歩きでジャンヌに追いついて歩幅を合わせる。

 そんな僕の頭の中で巡るのは、僕なんかよりも多くの経験を積んだ者の忠告。

 彼の性格が善人であるとは僕の口からは断言は出来ないが、少なくとも外道ではなく筋の通った人格者であることは知っている。

 だから僕でも分からなかった、僕が何かに追い詰められている風に見えたと言う所感はそう間違ったものではないのだと思う。

 

 

(……何を犠牲にしてでも、欲しいもの……)

 

 

 今の僕にはそこまでして欲しいと言う物は思い当たらない。

 インフラが復旧してきているとは言ってもそれは一部の地域だけだし、まだまだ復旧を必要としている場所はいくつもある。

 食料の供給だって安定している訳では無い。牧場や畑はモンスターたちに荒らされ、農家の人たちも世界が崩壊した後に多くの人が亡くなってしまっている。

 住居だってそうだ。自分たちの家を失くした人たちは多くいるし、今も避難所や災害公共住宅に住んでいる人たちもいる筈だ。

 

 

 そんな中で、今の僕にはその全てがすぐ近くにあって、すぐに手に入れられる。

 多くの人たちが貧困と恐怖で苦しんでいる中で、僕の今の環境や待遇はかなり恵まれている。

 僕が望んだものとは言え、ジャンヌ含めて周りの人たちのおかげで、今僕はここにいる。

 そんな恵まれた中で、尚も僕に欲しているものがあるとすれば……

 

 

「……?弟君?」

 

 

 ジャンヌの手の平に自分の手を回し、そっと包み込む。

 少しだけ肌寒くてかじかんでいた手は、ジャンヌの温かな手によって氷が溶けるように解れていく。

 無言で行った唐突でいて普段僕のしない行動だったために、ジャンヌは歩みは止めぬままこちらへと視線を向ける。

 

 

「どうしましたか?弟君から手を繋ぐのは初めてですよね?」

 

 

「嫌だった?」

 

 

「まさか!寧ろ嬉しい思いでいっぱいですよ!大好きな弟君がお姉ちゃんと手を繋いでくれたのですから、姉として喜ばない筈がありません!」

 

 

「……そっか」

 

 

 朗らかに笑いながらジャンヌは僕と繋いでいる手を、指を絡めるようにしてぎゅっと握ってくる。

 更に強く伝わってくる彼女の手の温度は、まるで僕の心まで温めてくれるような、ジャンヌの僕へと向けてくれている優しさや思いが伝わってくるようだった。

 それなのに、僕の心中は素直にそれを喜べずにいる。

 

 

 

 

 

 

 ……僕だって君の事が好きだ。こうして君と一緒に手を繋いでいられるだけで幸せだ。

 

 

 

 胸が温まるようで、本当に幸せなんだ。

 

 

 

 でもね、君が僕へと君なりの愛情を伝えてくれるたびに―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――辛くて、苦しいんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕を弟として見ないで




Q1.呪腕のハサンについて

A.筆者のFGOにおける思い入れのあるサーヴァント。最終再臨初鯖は彼であり、筆者のオルレアンのドラゴンスレイヤーは彼。
 ジャスティスハサン好き。六章ほんとすこ

 本文で出てきた彼はシルク・ドゥ・ルカンの周辺地域のモンスターの駆除を行っているマスターたちのうちの1人に仕えるサーヴァント。マスターは善人であるので当然呪腕先生もジャスティスハサンと化す!
 ちなみに呪腕さんの仕えているマスターは呪腕さんの他にアーチャーとランサーとも契約している。(今後登場するかは未定)



Q2.弟君って何に苦悩しているの?

A.弟君は弟君だから苦悩しているのです

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