崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話 作:アルテマ
いよいよ本小説でも他崩壊世界シリーズとのコラボをやっていきます。……と言ってもまだ触りですけど。てか内容考えるとそれなりに長くなりそうなんですよねー
nibiiroさんご協力ありがとうございます。
それではどうぞ
「デートがしたいです弟君」
「……え?」
今日もシルク・ドゥ・ルカンでの講演を終えて夕食を食べた後の時間。
ソファで静かに本を読んでいた僕の隣にすっと座り、唐突にジャンヌが呟いた言葉だった。
その言葉の内容が内容なだけに、僕は素っ頓狂な声を上げてしまったのだが、ジャンヌはそれを聞き返す言葉と受け取ったのか、もう一度言ってきた。
「お姉ちゃんはデートがしたいのです弟君」
「……ああ、デートね……うん、そっか、デートかー……デート……」
「どうしましたか弟君?どこか要領の悪い反応ですね?」
「あ、ごめん。別にジャンヌが悪いとかそんなのじゃないから。
ちょっと唐突な発言だったから驚いただけ。
でも、デートがしたいだなんて急にどうしたの?」
「ほら、お姉ちゃんと弟君って相思相愛な関係で毎日エッチしたり、ゲームしたり、エッチしたり、音楽を聴いたり、エッチしたりして愛を育んではいますけど、まだデートってしたことがないじゃないですか。
お姉ちゃんと弟君がこの世界で運命的に出会ってから半年は経つのに、今日までデートがしたことがないって言うのは姉弟としてはどうかと思うのです」
ああジャンヌも一応そう言うの気にしてはいたのね、と言うべきなのか、それとも普通の姉弟の関係でデートはまずしないとツッコミをいれるべきなのか、どちらか一瞬悩んだがどちらとも無粋で今更な質問なので喉から出かかった言葉を飲み下す。
たとえ今更だろうが色欲塗れだろうが、ジャンヌが僕との関係(洗脳による姉弟関係だが)について考えての提案なのだから、そこに茶々を入れるのは野暮と言うものだろう。
……あ、やっぱりツッコミたくなってきた。
「なるほどね……えっと、でも、その……問題が1つありまして……」
「なんですか?」
「……僕ってさ、デートってしたことがないから、その……デートって何をすればいいのか分からないんだ」
このまま黙っていては空気読めない発言がでそうだったので、目下の問題についての言葉を急いで紡ぐ。実際問題であるのは事実だ。
僕はジャンヌに出会う前までは女性経験は0だったし、今だって自信を持って女性との恋愛のスキルがあるだなんて言えない。
そう言うゲームはしたことはあるけど、所詮はゲームでしかないのだからあまりアテにはならないだろう。
復旧してきているネットで調べる手もあるが、生憎と世界は崩壊しているのだから、かつてはデートスポットとして有名だった場所が今も健在しているだなんて保障はどこにもない。
まあ、周りの環境を差し引いても僕が経験不足であるのには変わりないのだから、上手くジャンヌをエスコート出来る自信がないのだ。
そんな心配をしている僕に、ジャンヌは笑いかけてくる。
「なんだそんなことですか。大丈夫ですよ弟君。
お姉ちゃんだってデートはしたことがないですし、ゲームやライトノベルでちょっと齧ったくらいでしかないです。
でも大丈夫ですよ、お姉ちゃんは弟君がいればどこでも楽しいですから!
それにいざとなれば、お姉ちゃんがどうにかしますから安心してください!」
えっへん!と胸を張りながらそう言うジャンヌ。
確かにジャンヌの言う通りではある。僕もジャンヌといればどこにいたって楽しいし、それは間違いなく本心ではあるのだ。
「でもせっかくデートをするのなら、大まかにでもプランはたてたいんだ。
あまり細かくプランを立てても息苦しいだけだとは思うけど、今は少し出かければ何かお店か何かがあるって世の中じゃないし、多少は行く場所にアテはつけておきたいし。
それに、男女差別とかそんなつもりは一切ないんだけど……こう言うのは男がリードするものって言うし、何よりもいつも僕はジャンヌに助けられてばかりだから、せめてデートの時くらいは僕がリードしたいなって思うんだ」
「弟君……」
感極まったような声を出すジャンヌに、ちょっとクサい台詞だったかなと思うがジャンヌに変に思われていないのならいいやと開き直りながら、少し咳払いして場の空気を整える。
「え、えーっと肝心のデートのプランだけど……あ、そうだ!ちょっとデートとか慣れてそうな人に電話して聞いてみるね!」
感動しているような眼差しで僕を見つめてくるジャンヌの視線がちょっと恥ずかしくて、逃げるように強引に会話を切り上げるためにそんなことを言い、世界が壊れる前から使っている愛用のスマホを取り出す。
一時期は機能していなかった電話回線も今では復旧している。
僕は電話帳の最近加わった欄のタ行の人物の名前をページを開き、電話番号の欄をタッチする。時間が時間ではあるが、別に仕事の話でもないしそこまで気を張らなくてもいいだろう。
そして耳に当てて数コールした後に出てきたのは、可能性を考えればおかしくはないが思いもよらない人だった。
『はい、こちら武田広海の携帯電話でございます』
「え?……えっと、アントワ……マリーさんですか?」
『ふふ、そう言うあなたはイルカショーのオーナーさん?お久しぶりね。
私のマスターに用があったのでしょうけど、あいにく今マスターはお風呂に入っているの。
何か用件があるのなら私から伝えますわ』
「あ、えっと……その……」
電話口で応答したのは、目的の人物である
予想外の相手に僕は戸惑い、彼女の普通の電話対応にどもってしまっていた。
何せ、なんとなくデートし慣れてそうなんて理由で電話をしたのだから、それを馬鹿正直にアントワネットさんに伝えるのは正直憚れた。
さりとて時間もそこそこ遅い時間で向こうから掛け直してもらうと言うのも躊躇いがあり、この電話に出てるアントワネットさんにデートについて聞くのもアリなのかもしれないが、何かよく分からないがアントワネットさんにデートについて聞くのは気恥ずかしい思いがあり、結局どうして良いのか分からずに右往左往するばかりであった。
そんな僕を見かねてかどうかは分からないが、ジャンヌが僕へと助け舟を出してくれた。
「あ、マリーが出たのですか?
でしたら代わってください弟君。久しぶりにマリーとお話したいので」
「え、あ、うん。
すみません、ジャンヌが貴方とお話したいとの事ですので、代わってもよろしいでしょうか?」
『あら、そうなの?
勿論歓迎よ!私も丁度彼女とお話したかったの!」
「ありがとうございます。
では、代わりますね」
無難な電話の対応の後に、ジャンヌへとスマホを渡す。
ジャンヌはそれを丁寧に受け取ると、慣れた手つきで耳元にスマホを当てる。
余談と言うか前にも言ったとは思うがが、ジャンヌにもスマホは持たせているし、よくスマホを弄っている姿は割と見る。なので基本的なスマホの操作は出来る事は把握はしているのだが、ジャンヌがスマホでSNSに写真付きで投稿しているのを見るたびに、適応力高いなーとか今時の普通の女子にしか見えないなーとか思ってたりする。
「もしもし、ジャンヌです。……ええ、お久しぶりですマリー!……ええ、そうですね。……ああ、それなんですけど、実はデートって何をすればいいのか聞きたくてですね……」
楽しそうに会話をしながら、ジャンヌはアントワネットさんにデートについての話題を挙げる。
……本当は僕が切り出すべきだったのに、デートで僕がエスコートがしたいと言いながら結局こうしてジャンヌに助けられてしまっていることに歯がゆい思いを抱いてしまう。
ふと思考がマイナス方向へと行きかけていることに気づき、頭を振ってどうにか振り払う。
ジャンヌが僕に助け舟を意図的に出したか否かはともかくとして、アントワネットさんと会話がしたかったのは少なくとも事実の筈なのだから、電話を代わってくれたことに関してネガティブな思考を持っていくのはよろしくないだろう。
(……デートか……)
別の事を考えようとして、心中で呟いたのは今ジャンヌと話し合っているデートについて。
エスコート出来る自信がないとは言ったが、同時にジャンヌとのデートが楽しみでもあるのだ。
これまでジャンヌとはジャンヌ自身が前述した通り一緒に色んなことをしてきたのだが、未だにデートだけはしていなかった。
してこなかった理由としては、最初の頃はシルク・ドゥ・ルカンの公演が軌道に乗るまではてんてこ舞いでデートどころじゃなかったこと。
軌道に乗ってからは休みがとれるようにはなったが、ジャンヌとはプラトニックな恋人関係や普通の姉弟関係を超えた関係としてほぼ毎日姦計(ギャグじゃないヨ)におよんでいるため、デートをするという愛情を育むうえで必要なプロセスの1つをすっ飛ばしている。……と言うか恥ずかしながら、ジャンヌがデートの話題を切り出すまで僕自身ジャンヌとデートをしていないことが頭から消えていた。
しかし、デートと言えばお互いに好き合っている者同士が色んな場所を巡り、楽しい思い出を作るイベントだ。
……いや、まあ僕はデートしたことないのだけど、この所感はそこまで間違いはないと思う。
好きな人とデートをすると聞いて、楽しみにならない人間はいないだろう。かくいう僕もそうであり、デートと言う言葉を心中で反芻するたびに、頬が少し吊り上がりそうになってしまう。
端的に言うと、ジャンヌとデートすると聞いて少なからず浮かれていた。
(デート……初めてのデートなら近場を軽く散歩するとかの方がいいのかな?
いやいや、確かにこの周辺はモンスターはほぼいないけど、ジャンヌとの視察とかで散々回っているし……あれ、つまりこれデートってことなのかな?
……いや、仕事だったし、お互いにデートって意識がなかった時点でそれはデートじゃないよ。
けど、デートって意識してこの辺りをぶらついても、なんか新鮮味がないような……まあその辺も調べるなり聞くなりすればいいかな……)
もうどこに行くかと考えている辺り浮かれ放題なのだろうと思うが、楽しみなのだから仕方がない。
だって思うことこそあれど、思い人とのデートであるのなら強く意識をしてしまっても仕方がないじゃないか。
―――そんなことに現を抜かすとは、いい御身分だことだ。
「―――」
……久しぶりに感じた、胸へと刺し込むような痛み。
以前から度々あったこの痛みはある時を境に鳴りを潜めていた筈だが、今になってまた僕を責め立てるように痛覚を走らせた。
痛みを押さえつけたいがためか、あるいは痛みの正体を探るためか、どちらの自覚もないまま右手を心臓の位置へと持っていき、握りこむ。
伝わってくるのは握るこんでたてられた爪の感覚が加わって微かに残る痺れるような痛みの余韻と、少しだけ平時よりペースが上がっている鼓動だけ。
散々こうやって胸に手を当ててきたが、原因は分からないまま。胸に手を当てる行為が無駄であることは既に僕自身の中で証明されているが、それでもこの行為をせずにはいられなかった。
痛みを別の痛みで誤魔化そうとしている、それもあるとは思う。でも、それだけではない。それだけではない筈だけど、その理由は自分でも分からないままだ。
「……えぇ、えぇ!とっても良い案だと思います!
では善は急げですね。そちらの予定は……ああ、その日でしたらこちらも空いています。
……そうですね、きっと弟君も受け入れてくれます。
細かい調整は追々か、当日で良いですよね?……はい、分かりました。
私も当日を楽しみにしておりますね。……はい、ではまた」
そんな考え事をしているうちに、気づけばジャンヌはアントワネットさんとの電話を終えたようだ。
ジャンヌを心配させたくはないので、今感じた事については横に置いておくとにし、やや強張っていた表情筋の力を抜いてジャンヌの方へと俯いていた顔をあげる。……本当は微笑むくらいは出来れば良かったのだろうけど、そこまで器用な事は、少なくとも今の僕には出来なかった。
僕に背を向ける形で電話をしていたジャンヌは電話を切ると僕へと向き直り、スマホを差し伸べてくる。
「はいこれ、ありがとうございました弟君」
「いや、ジャンヌが楽しそうで良かったよ。
アントワネットさんとは何の話をしていたの?」
スマホを受け取りつつ、ジャンヌの表情から僕が直前まで考えていた何かを感じ取っているような様子がない事に安堵しつつ、無難な話題を振る。
しかし会話の繋ぎとしては適当だと思われたジャンヌに聞いたその話題は、僕の思いもよらない返答がされた。
「ああ、それなんですが、次の休日はマリーたちとダブルデートをする事になりましたから、忘れずに準備をしてくださいね。
お姉ちゃんも一緒に手伝いますので!」
「……え、今なんて?」
「いえ、ですから準備はお姉ちゃんも手伝いますので忘れないようにと」
「いや、もう少し前」
「次の休日はマリーたちとダブルデートです」
「……ダブルデート?」
「はい、ダブルデートです」
「???」
「???」
僕は何故デートにおいて何をするのか聞いた流れでダブルデートをすることになったのかがよく分からず、ジャンヌは僕が何を疑問に思っているのか分からず、お互いに首を傾げていた。
「……『話して伝えるよりも、直接どんなものなのか体感した方が良い』か……いや、理屈としては分かるのだけど、それでダブルデートしようって結論になるのも不思議なような……」
「まあマリーの事ですから、『ダブルデートがどんなものなのか実際に試してみたい』と言う事もあるとは思いますよ。
マリーは楽しそうな事にはすぐに飛びつくような所がありますしね」
時は過ぎてダブルデートの当日の朝。
未だにどこか納得いかないように呟く僕に、ジャンヌは少し苦笑してそう返した。
あのダブルデートが決まった日の日付が変わらぬうちに、僕の携帯に電話が掛かってきた。
その際開口一番に『何か急に君たちとダブルデートするとかってマリーから聞いたのだけど、どういうことなの?』と軽いメダパニ状態の武田さんの言葉を聞き、ぶっちゃけ僕もそれを聞きたいくらいだと思った。
とりあえずお互いにスマホのハンズフリー機能をONにしてジャンヌとアントワネットとも交えて話をした結果、電話越しで話をするよりも近くでどんなことをするのか見ていた方が分かりやすいから、いっそのことダブルデートしようと言う話になったそうだ。
初めてのデートでダブルデートって言うのはお互いに気を遣ってしまって大変ではないかと言う懸念はあったが、それを口にした所向こう側からはそこまでお互いに硬くなる必要はないだろうと言う言葉が帰ってきた。
そのまま場所や日時もあっという間に決まっていき、その日のうちにダブルデートの詳細はほぼほぼ決まっていた。
「それにしても、あそこまでトントン拍子で決まるとは思ってなかったな……やっぱり武田さんたちはデートに慣れてるのかな?」
「ホテルタウンにお住まいのようですから、デートがしやすい環境なのかもしれませんね。
今日のダブルデートもそのホテルタウンでするそうですし、お店選びも基本的にはあちらに頼る形になりそうです」
武田広海さんとそのサーヴァントであるマリー・アントワネットと出会ったのは、シルク・ドゥ・ルカンにてヒロインショーを行うきっかけとなった事件の日の事。
彼らは普段は神奈川にあるホテルタウン、【オーシャン・ビヨンド】でカウンセリングの仕事をしているそうだ。
シルク・ドゥ・ルカンに訪れたのは東京に新婚旅行に来ていた一環で遊びに来たとのこと。
他にも目的はあったが、まああまり話す必要もないだろう。僕としては新婚旅行ということは、もう結婚までしているのかと言う点が気になったのだが、結局聞けずじまいで連絡先だけ交換してその日のうちに分かれた。
……まあ、自己紹介の時に奥さんとアントワネットさんは自称していたし、ほぼ夫婦関係で確定なんだろうけど、僕の目の前には誰彼構わず僕の姉だと名乗る不審者がいるからどうもどこまで真に受けて良いのかが分からないのが本音である。
そんなこんなであれから一か月ほどたち、ちょくちょく連絡等はして今に至る。
ホテルタウンの場所は教えてもらっていたので、いつか挨拶にでも行くことにはなるのだろうなとは思っていたが、思ったよりも早い時期に訪れることになった。
「それにしても、どうして移動手段がタクシーなの?
と言うかこのご時世でタクシー業ってかなり危険なんじゃ……」
一泊分の荷物の入ったキャスターバッグを引きながら、僕の今話題にあげたタクシーの迎えが来る場所へと向かう道中でジャンヌへと問いかける。
てっきり僕はジャンヌがイルカに乗せて空からひとっ飛びでもしてくれるのかと思っていたのだが、提案された移動手段は世界が壊れる前なら真っ当なものだった。
しかし今この世界には化物や過激派カルト教団蔓延る世紀末な世界。
そんな中でタクシーと言う移動手段はかなり危険が付き纏うのではないだろうか?
「マリーから紹介されたんですよ。乗っていてとても楽しいタクシーだそうで、マリーたちもそのタクシーに乗って東京に訪れたそうです。
運転手の方はサーヴァントだそうですし、実績も高いそうです。
あ、あれですね」
ジャンヌの指さした方向には、やや大きめの黒い車が停止していた。
……色はともかく外観からしてタクシーっぽさがないのだが、本当に大丈夫なのだろうか?
「おはようございます、ご予約されたジャンヌ・ダルク様でよろしいでしょうか?」
不安げにその車を凝視していると、助手席の方から降りてきた男性が笑顔で挨拶をしてきた。
「はい、その名前で予約している者です。2人で予約をとったと思うのですが、大丈夫ですか?」
「ええ、把握しております。
私は
(オルタクシー……あれ、なんか聞いたことあるような……?)
心中で何かが引っかかるも、何かは思い出せなかったために思考を脇へとどける。
彼は恭しく礼をした後、僕たちの荷物をトランクへと運んでくれた。
程なくして後部座席のドアが開いたので、ジャンヌを先に乗せる。
ジャンヌはそのまま空いた扉から乗車し、奥の後部座席へと座……らずに何故か手前の席で座り、こちらへと視線と両手を向けてきた。
「さあ弟君!さあ!」
「いや、さあって何さ?と言うか奥の席に座って貰わないと僕座れないのだけど……」
「何を言ってるのですか?
弟君の席はお姉ちゃんの膝の上です」
「ちょっと何言ってるのか分からない」
またジャンヌの謎の姉ムーブが始まってしまい、ネットの機械音声めいた声をあげながら頭を抱える。
別にジャンヌのこの手の行動はいつものことなのだが、流石にTPOは弁えるべきだろう。
一応タクシーと言う公共交通機関を利用するのだし、第三者の事も考えてしかるべきだ。(余談だがタクシーを公共交通機関に含むか含めるかはハッキリとはしてないそうだ)
「ジャンヌ、僕たちの部屋ならともかくとして、タクシーの運転手さんに迷惑かけちゃうかもしれないし今は自重をしないとぅわ!?」
どうにか諭そうとした僕の行動はジャンヌが僕の腕を引っ張り、無理矢理膝に座らせてホールドされてしまい封殺されてしまった。
ジャンヌはじたばたする僕の頭に顔をつっこんでくる。
「すんすん……やっぱり弟君はいい匂いですね……♡
ここから件のホテルタウンまではそこそこ距離がありますから、今のうちにオトウトニウムを沢山補給しておくのが効率的なのです」
「いや効率よりもTPO弁えて!?
こんな人目を気にしないようなことは何度も言うけど運転手さんに迷惑が」
「別に私は一向に構わんぞ」
「ふぁ!?何故!?と言うか誰!?」
抵抗し説得する僕の言葉を遮る形で誰かがどこぞのバトル漫画の執拗な問答に対する返答めいた言葉で一蹴されてしまい、ジャンヌに拘束されて動けない中で声のした方へと視線だけを向けると、運転席からこちらへと顔を向けるアルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕の姿があった。
「当タクシーではこちらの運転の支障になるようなものでもない限り、お客様の逢引に水を差すようなことはしない。
存分に乳繰り合うがよいぞリア充、もといお客様」
こちらへと敬語を使いつつもどこか棘のある言葉を吐いている様は、正にかつて圧政を敷いた王、民に理想の王であることを望まれ、完璧な王であろうとしたアーサー王の反転体である。
そんな彼女がタクシーのハンドルを握っていることに面食らい、同時に吐かれたとんでもない俺ルールのようなものに驚き呆然としていると、彼女はずっと視線を向けられていることに怪訝そうにする。
「む、何故私をそうもじっと見つめるのだ……ああそうか、この服装だな」
別に服装に関して気にしてはいなかったのだが、彼女が着用している服装をよく見ると、黒いインナーに黒いコート、白いベルトに黒のパンツと服装のほぼすべてが黒で包まれているのが特徴的である、彼女がFGOの1.5部の新宿の特異点において着用していた服装そのものだった。
「ふふふ、ついに開放された私の新宿霊衣、漆黒の騎士王ver新宿1999だ。
あの突撃女よりも後と言うのは気に食わんが、霊基がセイバーであったのであればともかくとして、今の私はライダーでありメイド。かつて圧政を敷いた王ではないのだから、寛大な心で許してやろう。
ところで貴様ら、私の新宿霊衣を開放したか?……なに?そもそもセイバーの私を所持していないだと?
霊衣の開放権がショップに出た時にピックアップがされていただろう、引くのを忘れたのか?
まあいい。セイバーの時であれば問答無用でモルガンからの強制ガチャ案件だが、私とてストーリーガチャの闇は知っている。セイバーの私が出るまで引けなどと言うことは言わんさ。
次の星4配布では私を選んで速攻で霊衣開放まで漕ぎ着けるんだぞ、いいな?」
このあからさまなマーケティング、一体誰に向けて言っているのだろうか?
しかし内容は置いておいても、少し気になる点があった。
「あの、今の貴方の霊基はライダーなのなら、どうしてその霊衣を着用出来ているんですか?」
僕のこの質問を聞いたオルタさんはこの質問が想定済みだったのかニヒルに笑い、カッ!と目を見開いて親指を立てた。
「ふっ……メイドさんに、不可能はないのだ!!」
「実際はオーダーメイドで作らせた服を着ているだけですのでお気になさらず」
「おい
トランクに荷物を詰め終えたのであろう安曇さんが助手席に座りながらオルタさんの謎の説得力が嵩増しされた言葉をバッサリと切ってしまい、オルタさんは不満げに抗議していた。
安曇さんはそれを悪い悪いと軽口で宥めながら、こちらへと確認をしてくる。
いやこちらへと確認をする前に僕のこの状態に物申して欲しいのだが
「行き先の確認ですが、ホテルタウン【オーシャン・ビヨンド】まででよろしいでしょうか?」
「ええ、問題ありません」
「いや、そこは問題ないけど僕のこの状態には問題があると言うか」
「かしこまりました。
ではこちらの酔い止め薬をご服用ください。
道中舗装がない道や破損している道が多いので……水はいりませんのでそのまま服用できます」
「ありがとうございます。
ほら弟君、酔い止めです。薬まで用意してくれるなんてサービスが良いですね」
「あれスルー?スルーなの?僕の抗議はスルーされちゃうの?
いや、薬は飲むけどさ……ありがとうジャンヌ。
……と言うか酔い止めが必須でタクシー側から提供される程酷い道行なのなら猶更人の膝の上に座っているのは危なくない?
そこのところどうなんですか、えっと……安曇さん?」
「シートベルトをしっかりと締めてもらえれば問題ありません」
「分かりました!」
「そのシートベルトに対する無駄に高い信頼は何!?シーベルトそこまで万能じゃないから!
ってぐぁ!?ちょ、僕の上からシートベルトつけないでよジャンヌ!
この状態でしっかりとシートベルトを締めるとか無理だから!」
抵抗むなしくシートベルトをされてしまい、拘束が完了したことでいよいよ持って動けなくなってしまう。
ジャンヌはもう僕を放すつもりなど皆無なようであり、ガッチリと両腕を僕の脇の下からお腹に回してロックしていた。
……そのせいか、背中にバッチリジャンヌの2つの大きな桃の感触がダイレクトに感じられてしまい、身を捩るとむにゅっと柔らかな弾力が伝わって動けなくなってしまう。
どうしたものかと考えていた頃、運転席のオルタさんが安曇さんに未だに文句ありげな顔をしつつもシートベルトを僕たちが締めたのを確認すると、自身もシートベルトを締めてチェンジレバーを操作した後にハンドルを握る。
「後で覚えておけよ
メイドとして快適で安全な運転を約束してやろう。
では最初からアクセル全開だ」
「はい!?今酷い言葉の矛盾を感じたんですけどぉうぁぁあああああああああああ!?」
僕の言葉が言い切られる前にアクセルペダルを奥にまで踏み込まれたのであろう車が甲高い唸り声のようなものを挙げて前方へと突進していった事によりとんでもないGが僕を襲い、耐え切れずのけ反ってしまう。
その結果、ジャンヌとの体同士の密着度が増したのだが今はそれどころでは無かった。
「あの既に快適さも安全さも微塵もないんですけど!?
速度超過していると言う点だけで上記2点全部吹き飛んでるんですけど!?」
「何が快適で何が安全かは私が定義する……私が楽しく運転できていればお客様も快適で、私が運転をすると言うのはそれ即ち安全と言う事なのだ。
それに安心しろ。シートベルトはきちんと締めているだろう?
ならば問題あるまい」
「やっぱメイドじゃなくてこの人暴君だわ!
と言うかそのシートベルトに対する信頼は主従共通の認識なの!?」
「んー、焦る弟君も可愛くて愛おしいですねー♡」
「そしてジャンヌは何でこんな時でも平常運転なの!?」
こちらのクレームに軽快にドリフトかましながらさも当然のように俺ルールを展開し、文句を言わせない勢いのオルタさん。
隣の席に座る安曇さんはそれを諫めないどころか、もっとスピードを上げろとばかりにアメリカンな雄叫びを挙げている。
ジャンヌに至ってはこんな時でもマイペースで、僕の髪の毛に顔を埋めてトリップしちゃってるし。
ああもう、まともなのは僕だけか!?
「とりあえずこの場にいる全員【安全】と言う言葉で辞書引いてぇぇええええ!!」
僕の渾身の叫び声による懇願は、車内でいつの間にか流されていたクレイジータクシーの音楽によってかき消され、僕はそれを聞いてようやく思い出した。
SNSで話題に上がっていた、現代版クレイジータクシー、その称号を持っているタクシー運転手のサーヴァントとそのマスターが名乗る【オルタクシー】の話を……
……これ、僕ホテルタウンにつくまでに体力尽きるんじゃ
NG集
弟君「このタクシー本当に実績あるの!?サクラとかじゃなくて!?」
お姉ちゃん「ありますよー。ちゃんと信頼できるサイトからのレビューでしたよ。
ほら、『スリリングな旅を楽しめた』とか『武器の提供までしてくれるとは思わなかった。良い文明』とか『周辺のモンスターの数が減り、安全に車を使えるようになりました!ありがとうございます!』って、高評価なんですよ」
弟君「今すぐタクシー稼業をやめてモンスターハンターにでも転職してしまえ」
メイド「まったく、喧しい客だな……おっと、そう言えば私としたことが曲を流し忘れてた。
貴様も音楽でも聞けば多少は落ち着くだろう」カチッ
「ヌヌネネヌヌネノヌヌネネヌヌネノヌヌネネヌヌネノヌヌネネヌヌネノ」
弟君「」
「テ~ケテ~ケテケテケテン~テ~ケテ~ケテッテッテ」
安・メ・姉「(・∀・)ラヴィ!!」
弟君「なんでこの状況でこの曲!?と言うかジャンヌはなんで知ってるし!?」
メイド「カリカリしているようだからとこの曲をチョイスしたのだが、お気に召さないようだな。我儘な客だ」
弟君「だ、誰かー!誰かここにドラ○もんを呼んでぇ!二重の意味で!ツッコミが追いつかないよ!」
メイド「ちなみに本当ならば目指せモスクワも空耳歌詞で流す予定だったが、ハーメルンの歌詞使用のガイドラインに抵触するラインがよく分からないから没になったぞ」
弟君「メタい!」
崩壊した世界でマリーと夫婦性活する
https://syosetu.org/novel/200085/
と言う訳で記念すべき初コラボ先はnibiiroさんのとこのマリーと武田さんとこの夫婦です。すっごい手馴れてそうだよねこの夫婦そう言うの
Q1.弟君のマリー・アントワネットに対する呼称が電話口でブレた理由について
A.初対面(あちらでのコラボ参照)ではマリーさんと呼んではいたが、後々考えるとファーストネームをいきなり呼ぶのは失礼なのではと考えてアントワネットさん呼びをしています。
ただ電話口ではアントワネットさんと言いかけてマリーさんに訂正したのは、マリーの性格上あまり距離を取ったような対応もあまりよくないのではと考えてのことです。
Q.2オルタクシーについて
A.nibiiroさん考案の崩壊世界における安曇とライダーのアルトリア・ペンドラゴン〔オルタ〕の主従。
タクシーで生計を立てているらしいが、タクシーの癖にやたら武装が豊富で武器庫状態。どんなタクシーだ
Q.3後書きの下りは何?
A.詳しく語ると私の年齢ばれるので、FLASH黄金時代とだけ