※この作品はR-18です。

崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話   作:アルテマ

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どうもアルテマです。

コラボは続くよどこまでも。……おかしいな、まだ二軒目なんだけど。

と言うか前回投稿からまた日が空いちまったぜ……それに文字数も10000文字また超えちまった……

そんな訳でドゾー


ダブルデート その2

「その服とっても似合っているわよジャンヌ。

 気に入って貰えたかしら?」

 

 

「ええ、ありがとうございますマリー。

 こう言うのがJK風って言うのでしたっけ?

 弟君はこの服装どう思いますか?」

 

 

「うん、似合っていると思うよ」

 

 

 隣で歩くジャンヌの今の出で立ちは、三つ編みに結われた金髪は甲冑もカチューシャもつけていないこと以外にはいつも通りで、紺色のスカートに白のワイシャツの上から灰色のボタン付きのニットを身に纏い、鎧装束とは違った見た目相応の服装に身を包んでいた。

 ジャンヌの言う通り、JK風と言えるその服装は肉体年齢が女子高生の辺りである彼女によく似合っていると思うし、その感想をそのまま口にしたのだが僕の評価の言葉にジャンヌはどこか不満げだった。

 

 

「むぅ……」

 

 

「ど、どうしてそんなふくれっ面で僕を見てくるの?」

 

 

 頬を膨らませて、何かを待つようにじっと見つめてくるジャンヌに困惑する僕。

 そこに助け船が入ってきた。

 

 

「オーナー君、きっと彼女はそう言う曖昧な表現じゃなくて、もっと具体的にどう似合っているのか言って欲しいのさ」

 

 

 そう助言をする広海さんはどこか苦笑しているようであった。

 もしかして、同じような経験をしたことがあるのだろうか?

 ともあれ言葉が足りないと言うのは分かったので今一度ジャンヌの服装をよく見てみる。

 

 

 何と言うべきなのだろうか……灰色のニットがジャンヌの身体をふんわりと包み込み、かつジャンヌの引っ込むところは引っ込み、それでいて丸みのあるスタイルを惜しげなく表現している。

スカートの下は白いスニーカーと青のくるぶしソックスのみ。そのため、ルーラーの第一再臨の簡易霊衣の時とは違い、太ももの絶対領域のみだけでなくほぼ生足と言って差し支えない。

 水着の際も足の露出は高かった(と言うか水着で足の露出が低いってのも変だが)が、普段着と言えるものを纏っている今のジャンヌにはまた別の魅力が……

 

 

「……その、可愛い、と思う……」

 

 

 ジャンヌの事をまじまじと見た上に、脳内で誰かに聞かれようものなら気持ちの悪いとしか言いようのないことを考えていた自分を恥じ、同時にジャンヌの今の服装が客観的に見てもあざといと言われるレベルで可愛いことを再認識してしまい、顔が熱くなってしまった。

 これ以上変な事を考えないように、自身の最終的な感想を短く述べて視線をジャンヌから逸らす。

 正直、ただ可愛いと言っただけで限界だった。他にも何かそれぞれの服との組み合わせがジャンヌと合ってるとか、言えた言葉はあった筈なのに結局曖昧な表現になってしまった。

 

 

「!それなら良かった!ありがとうございます、弟君!」

 

 

 だと言うのに、ジャンヌは本当に嬉しそうにして僕の片腕にひっついてきた。

 猫のように頭をこちらへと擦りつけてくるジャンヌに少し驚くも、僕に対して激しいスキンシップをジャンヌがしてくるのは日常茶飯事だったので、特に抵抗せずにそれを受け入れつつもジャンヌに問う。

 

 

「……ジャンヌはなんでそんなに嬉しそうなの?

 こう言っては難だけど、今僕が言った感想は正直さっきの言葉と比べても大した差はない曖昧な表現だったと思うのだけど……」

 

 

 それを聞いたジャンヌは一瞬ポカンとしたように僕を見たが、すぐに持ち直して返答をしてきた。

 

 

「弟君がそんなに顔を真っ赤にして言う時は、恥ずかしいけど本心から言ってるってことはお姉ちゃん知ってるんですよ。

 大好きな人に本心から可愛いと思われて嬉しくない人はいないんですから」

 

 

 輝くような笑顔でそう言ってのけた後にまた僕へと抱きついて胸へと顔を埋めるジャンヌ。

 ……正直、今はそれが少しありがたかった。

 だってその真っ直ぐで純粋な想いのこもったその返答は、僕の顔で発せられている熱の温度を高めるには充分すぎたから。

 

 

「……別に、似合ってるって言葉が本心じゃなかったって訳じゃないんだけどね」

 

 

「それも分かってますけど、なんだか味気ないなぁとは思いましたよ?」

 

 

 視線をジャンヌから逸らしながらなすがままにジャンヌに抱きつかれるのを許容する。

 恥ずかしいのは事実だけど、彼女の言葉も抱擁も僕同様に本心からのもので、自分には嬉しいものだったから。

 

 

「うふふ、やっぱりとっても仲が良いみたいね。

 素敵な姉弟で見ていてとっても微笑ましいわ」

 

 

(押し気味の姉と控え目な弟か……確かにまあ丁度良いバランスのカップルなのかもしれないな……いや、姉弟なのか?)

 

 

「……あ」

 

 

 と、ここで僕は今更デートに同行しているペアががいる事を思い出し、そのペアが何か微笑ましいものでも見るかのようにこちらへと視線を向けていたことに気づいた。

 

 

「す、すいません!そちらを蔑ろにするつもりはなかったのですが、その」

 

 

「別に焦る必要なんてないさオーナー君。

 今日の主旨はダブルデートなんだし、よっぽどの事でもない限りはイチャついてたって問題ないさ。

 その分俺たちもイチャつかせて貰うから」

 

 

「あ、もうあなたったら……♡」

 

 

(……?)

 

 

 マリーさんの肩を掴み、大胆に抱き寄せる広海さんと顔を赤くしつつもそれに甘んじて身を寄せるマリーさんを見て少し違和感を覚える。

 やり取り事態は仲睦まじい夫婦であり、目の前の2人の夫婦仲を考えれば特段特別な事を相手側はした訳ではないとは思うのだが……初めて会ったときよりも大胆になった、と言うよりは何か、彼らの間にあった遠慮のような壁がなくなったように僕は思えた。

 

 

「あ、ここよここ。このホテルタウンの中でもお気に入りのカフェなの」

 

 

 違和感について広海さんたちに聞くか聞かないか考える前にマリーさんが前方を指差す。

 そちらへと視線を向けると、外装はシンプルな木造のログハウスのような建物が目に入った。

 テラスには幾つかテーブルがあり、店の中との間に隔たりはなく開放的な作りで、今日のような天気の良い日にテラスで一服出来ればさぞ気持ち良いのだろうと思えるカフェだった。

 

 

「天気の良い日にここのテラスの席でお茶をするのがわたしは好きなの。

 サンドウィッチやクレープとか軽食は勿論、カレーライスやパスタのようなお料理もあるから安心してちょうだい。

 ちなみにオススメはオムライスよ」

 

 

「へー、それは楽しみですね!今からお腹が減ってしまいそうです!」

 

 

「いや、ジャンヌはさっきからお腹の音を鳴らして空腹ですってアピールを散々してるじゃん」

 

 

「お、弟君!それを口にするのはデリカシー的によろしくないですよ!

 私だって恥ずかしいものは恥ずかしいんですから!」

 

 

「あらあら、それじゃあジャンヌがこれ以上恥ずかしい思いをしないうちに入りましょう。

 ほら、マスターも早く早く」

 

 

「そんなに急かさなくても、見た感じ人は少ないから大丈夫さ。

 昼時は混んでる事が多いのに、ラッキーだな」

 

 

 そんなやりとりをしながらカフェへと入店する。

 カランカランと扉が開いたことを知らせる鈴がなると、程なくして店員らしき女性が席へと案内してくれた。

 案内された先は、マリーさんが絶賛していたテラスの日当たりの良い席であった。

 入店した際に店員とマリーさんは何やら親しげそうにしていたので、恐らくはマリーさんが常連であるが故の対応なのだろうと当たりをつけつつ席へとつく。

 

 

 四角のテーブルに囲まれた4つの椅子にそれぞれが座った位置の関係は、僕から見て隣に広海さん、目の前にジャンヌ、対角線の位置にマリーさんと、男女の対岸とカップリングの直線で並ぶ形となった。

 

 

「あ、結構料理のメニューも豊富なんですねー」

 

 

 早速メニューに目を通してどれにしようかと悩んでいるジャンヌ。

 どれもこれも美味しそうだと言わんばかりにメニューの写真と睨めっこしては、ページをめくって同じことを繰り返していた。

 マリーさんはそんなジャンヌに微笑みを浮かべながら一緒にメニューを見て、どの料理がどんな味がするのかを教えていた。

 

 

 傍からみれば仲の良い友人同士ではあるが、お互いに良く似た別人の事は知っているだろうが、この2人自身に関しては出会ったのは一月ほど前の話である。 

 やはりマリー・アントワネットとジャンヌ・ダルクという英霊の相性によるところがあるのだろうか?

 なんて事を頭の隅で考えつつ、広海さんとメニューを共有しつつ注文するものを決めた。

 ジャンヌも僕が注文するものを決めた少し後に決まったようであり、広海さんが店員さんに声を掛ける。

 

 

「お待たせいたしました。ご注文をお伺いします」

 

 

「コーヒーのオリジナルブレンドとカレーライス」

 

 

「わたしはダージリンティーとフルーツサンドで」

 

 

「えっと、カフェラテとオムハヤシライスをお願いします」

 

 

「では私はミルクティーと、このメニューのここからここまでの料理を1つずつでお願いし」

 

 

「ステイジャンヌ。ちょっと待とうかジャンヌ」

 

 

 しれっととんでもない注文をしようとしていたジャンヌへと待ったをかける。

 見た目スタイル抜群の美少女がフードファイターばりの注文をしたものだから、注文を受けていた女性の店員さんの注文票を書く手が止まり、茫然とジャンヌの方へと視線を向けていた。

 

 

「どうしましたか弟君?」

 

 

「いやいやいやさも何かおかしいの?みたいな顔してこっち見るのやめよ?

 流石にお腹が減ってるからってそんな大量注文はお店にも迷惑がかかっちゃうし自重しようよ。

 そもそもこう言うカフェでそう言った注文って基本通らないから」

 

 

「あ、い、いえ。すみません、そのご注文を承ることが出来ないと言うことではないのですが……」

 

 

「え、通るの!?」 

 

 

「はい。ですがその、こちらの方はそう多くの量の料理を食べるような方には見えなかったので、少々驚いてしまいました」

 

 

「は、はぁ……」

 

 

 困ってた様子の店員さんを庇うべくジャンヌへと待ったをかけたつもりだったのだが、横合いから僕の制止の声に待ったをかけたのはその店員さんだった。

 と言うかジャンヌが指さした料理の量はこの店の料理の全てと言うと大袈裟な表現になるが、一般的な成人男性1人では少々苦しいと言える量だ。いくら比較的店内に客が少なそうな状況だからと言って、そんな大量注文をして負担をかけてしまわないだろうか?

 そんな懸念をしていた僕に対して説明していた驚いた理由を聞きつつも、聞きたいのはそれではないのだがと心中で思い適当な返事を返してしまう。

 

 

「彼にはこちらから説明しておくわ。だからあなたは注文を厨房の方へと伝えてくださるかしら?」

 

 

「……すみません承知しました。では、お手数をおかけしますが……」

 

 

「いいさ別に。それに彼らは今日初めてここに来てくれた人たちだから、どちらにしても説明はする予定だった。

 だから君が気に病む必要もないよ」

 

 

 どこか気まずい空気が流れ掛ける中で、マリーさんと広海さんがそれを払拭するようにして割って入ってくれた。

 店員さんはそれを聞くとこちらへと会釈し、厨房の方へと注文票を手に入っていった。

 それを見送った僕は視線を広海さんたちへと向き直して尋ねる。

 

 

「……あの、本当に大丈夫なんですか?

 昼時の混むかもしれない時間帯に大量注文した件もそうですけど、その……」

 

 

「それだけの量の食事を1人に与えられるほど食糧に余裕があるのか、それが気になるのだろう?」

 

 

「……はい」

 

 

 僕が何を聞きたいのかをすぐに察してそう言ったのは広海さんだった。

 世界が崩壊した後で問題になっているものの1つに、安定した食物の供給が出来なくなっているというのがある。

 これは一重に世界中に蔓延っている異形の怪物、モンスターたちが食物の生産者たちを殺し、食糧となる家畜や農作物を食い荒らしているからに他ならない。

 そんな中で、世界が崩壊する前の飽食国家と言われる日本でもマナーがあまり良いとは言えない注文をこの場でしても良いのかと言う不安があるのだ。

 

 

 と、そんな僕の疑問に答えてくれるのは、当然と言えば当然なのだがこのホテルタウンで暮らしているマリーさんと広海さんの2人だった。

 

 

「まず結論から言わせてもらうとね、少なくともこのホテルタウンの住人全員に不足なく行き渡るくらいには、食べ物に困っていることはないわ。

 このホテルタウンにはそう言った食べ物を生産する設備が整っていて、今も拡大している最中よ」

 

 

「オーシャン・ビヨンドのホテルタウンはホテルを中心に4つのエリアで区切られているんだ」

 

 

野菜畑と花畑、公園や森林が並ぶ『ネイチャーエリア』。

 

様々な生活用品を始めとした製品店が並ぶ『ショッピングエリア』。

 

和洋中、様々なジャンルの食事が可能な店の並ぶ『フードエリア』。

 

ホテルタウンに住む3歳から中学生程の年齢の子どもを対象とした託児及び教育施設である『スクール』が設置され、子供から大人まで楽しめる娯楽施設の並ぶ『アミューズメントエリア』。

 

 

 このホテルタウンはそう区切られ、それぞれのエリアで多くの人が各自の仕事に従事しているそうだ。

 そう言えばこのホテルタウンの入口で大まかに書かれた地図を見たような気がしたのを思い出した。

 記憶が曖昧なのは例のタクシーの……いや、まあそれは置いておこう。嫌なことを思い出すと同時にまた憂鬱な気分になりそうだ。

 

 

「で、主に食料となる物産の生産をしているのがネイチャーエリアなんだけど……君たちって今この世界で野菜を育てようとするとどんな現象が起きるのか把握している?」

 

 

「あ、私それ知ってます!ただ耕して整えただけの畑に種を植えると、一晩で実がついて成熟してしまうってSNSで結構上がってました」

 

 

 広海さんの問いに答えたジャンルのその話は、僕も少なからず聞いたことのある話だった。

 話自体は今ジャンヌが答えた内容がすべてである。その原因は魔術に精通したサーヴァントたちの話によれば、この世界に神秘が満ち溢れていると言っても過言ではない環境により、生態系に何かしらの変化が発生し、植物の異常な速度の成長はその変化のうちの1つとのことらしい。

 その神秘の影響を受けた食物を食べて人体に何か悪影響を及ぼさないかは心配されているが、現時点では何か問題が起きたとは聞いたことがない。

 それにまあたった一晩で野菜や果物が実をつけると言うのは、この崩壊した世界においては願ったり叶ったりではあるのだから、背に腹は代えられないだろう。

 

 

 僕もジャンヌもその事を知っている旨を伝えると、広海さんはまた話を続けるために口を開く。

 

 

「それを知っているなら話が早い。端的に言ってしまえば、このホテルタウンもその恩恵にあやかっているってだけの話さ。

 野菜や果物は勿論、余った野菜を餌にした畜産もやってはいるんだ。最も、野菜ほど多く生産は出来ないし、塩とかは作れないからその辺は別のツテだったりするのだけど……ま、とにかく現状食うに困っているようなことには、少なくともこのホテルタウンではないって思って貰えれば構わないよ」

 

 

「でも、いくら生産は出来ても結局あのモンスターたちに荒らされたら意味がないですよね。

 そこの対策はどのように?」

 

 

 このホテルタウンは見た限りでは外周が壁やフェンス等で囲われているような様子は見受けられず、簡単に怪異たちに侵入されそうではあるが、見た目通りであるのならこのホテルタウンは維持できないと思うし、出来ていたとしてもここまで平穏であるとは思えない。

 シルク・ドゥ・ルカンにおいても、周辺のモンスターの駆除はジャンヌのイルカたちが24時間警邏し行っており、イルカたちの行動範囲外はこちらで雇った呪腕さんたちサーヴァントとそのマスターで駆除をしている。

 オーシャン・ビヨンドにおいても似たような対策を取っていると思うのだが……

 

 

「やっぱりオーナーとして勤めている人はそう言うのにすぐ気がつくのかな?

 まあともあれ、それについても問題ない。このホテルタウンの周囲は、魔術に才でたサーヴァントたち……主にキャスターのサーヴァントたちによって結界が貼られているんだ。

 ホテルタウンの出入り口以外から侵入しようとすると、問答無用で弾かれるって言う典型的な結界だけど、今結界の効果の改良も進められているから、将来的にはもっと細かい判別や認証のできる結界が開発されるかも……ってそれはさておき。

 とにかく、ホテルタウンの防衛に関しても心配はしなくていいよ」

 

 

 なるほど、キャスターのような魔術に特化したサーヴァントたちによる結界の展開がこのホテルタウンのモンスター対策だったのか。

 確かにこれだけの規模のホテルタウンなら住人だって多いだろうし、それに付随してサーヴァントたちの数もそれなりの数いると言うのは予想がつく。

 聖杯戦争においても、キャスターの基本的な強みは陣地作成スキルを活用した『陣地戦闘』。

 このホテルタウンに求められるような陣地防衛において、陣地を自らの有利なエリアへと変えて戦闘を行うキャスターの右に出るものは例外を除いていないであろう。

 

 

「なるほど、それならこのホテルタウンの防衛に関しては問題はないでしょうし、安定して食料を供給することができるという訳なんですね。それならここの住人の人たちも、安心して暮らせるのでしょう」

 

 

 納得したようにそう言い、いつの間に先にテーブルへと届けられていたカフェラテに口をつける。

 ミルクの甘さを強調しつつも、コーヒーの味も損なわずに旨味が確かに感じられたことに感嘆し、カップをソーサーへと置いて視線を再び広海さんの方へと向けると、少しだけ堅い表情をしているように見受けられた。

 

 

「あの、どうかしましたか?」

 

 

「うん、まあ……防衛に関しても、食料の生産についても、君の言う通り現時点では問題はない。

 ただ、その食料そのもの……いや、それに関連してある懸念がされているんだ」

 

 

 広海さんはそう言って自身の注文したコーヒーを口につけ、言いにくそうに固められていた口を緩めて再び話し始める。

 

 

「先ほども上がった話題に連なる話なんだけど、神秘がこの世界に満ち溢れた事によって、全てが確認されたわけではないけど少なからず生態系に影響は出ている。

 先ほどの植物の急激な成長を含めて、鳥や馬、牛や豚……この世界の動物にも神秘による何かしらの影響があるんじゃないかって言われているのさ。

 ……当然、そこには人間も含まれている」

 

 

「……!」

 

 

 ピシリ、と何かが走ったような感覚が背中に走り、思わず視線をガバッと広海さんの方へと向けて凝視の睨むような勢いで凝視してしまう。

 真剣な表情の彼もまた僕の方へと視線を向けて話を続ける。

 

 

「オーナー君も、薄々は察しているんじゃないか?

 世界が崩壊する前と比較して、自身に何か変化があったと思うのだけど」

 

 

「……そうですね。少なからず体力とか身体能力は上がりましたし、勘違いでなければトレーニングで得られる筋肉や持久力がつきやすくなったと感じてます」

 

 

 シルク・ドゥ・ルカンにおいて、未だに多くの仕事に手を付けられない僕は、余った時間にはマネージャーの許可を得て筋トレや有酸素運動等のトレーニングをしている。

 この世界に跋扈しているモンスターたちと相対するようなことがある身としては、少しでもジャンヌの援護や自身の安全の確立のためにも、身体能力を高めるためのトレーニングは必須だった。

 しかし、トレーニング内容自体はそれほど変わったことはせずに基本的なメニューをこなしているにも関わらず、それに伴う結果が過去にトレーニングをした時よりも高く感じられたのだ。

 

 

「この崩壊した世界に満ちた神秘の濃度は、それこそ神々の存在が認知されて信仰されてきた神代の時のもの比べても遜色ないと言う話を、俺は神代の時代出身のサーヴァントから聞いたんだ。

 世界が崩壊する前からこの世界に神秘が薄くともあったのか、それとも無かったのかは分からないけど、薄かったにせよなかったにせよ、急激な環境の変化は生物に多大な影響を及ぼす。当然人間にも。

 よく聞く話だと、身体能力の急激な向上と、魔力回路の形成および魔術の行使が可能となった事だな。

 俺もそうだけど、このホテルタウンの住人の殆どはそれを実感していると聞いた。……まあ、ここまでであれば良いこと尽くめではある。

 こんな死が隣り合わせの世界で、少しでも生存確率を上げられるのならそれに越したことはない」

 

 

 今まで、自分の身体の変化の原因については深く気にしてはいなかった……と言うよりも、気にする暇も考察する余裕もなかったのだが、いざ聞いてみると広海さんの考察には説得力があるし、同時に自身の体に起きている変化について気味の悪さのような悪寒を感じる。

 どうにか気を紛らわせようと無意識でカップに口をつけようとして、ハッと気づき留まる。

 ……このカフェオレの原料となったものも、神秘の影響を受けているのだろうが……

 

 

「黄泉戸喫(よもつへぐい)、と言う言葉をオーナー君は知ってるかい?」

 

 

「……確か、『あの世の食べ物を口にすると、この世に帰ることが出来なくなる』と言う意味だったかと」

 

 

 唐突に振られたその話題に少し戸惑うが、すぐに持ち直して把握している知識を口にする。

 黄泉戸喫、この言葉で有名なのは日本神話の伊邪那岐命(イザナギノミコト)と伊邪那美命(イザナミノミコト)の話だ。

 短くまとめると、死んでしまったイザナミの夫であるイザナギはあの世である黄泉の国へと向かい、イザナミを連れ戻そうとするも、イザナミは黄泉の国の食べ物を口にしていたために連れ帰ることが出来なかったと言うのが大筋だったはずだ。

 黄泉戸喫についての覚えている知識を大まかに頭の中で整理しつつ、何故このタイミングでこの言葉について聞いてきた真意がイマイチ掴めず、僕は広海さんに胡乱気な視線を向けていると、彼はすぐに僕の視線に応えてくれた。

 

 

「俺たちの生きているこの世界は文明や文化が滅びかけはしたけれども、あの世や冥界、黄泉の国と言った死者の世界ではない。

 ただ、黄泉戸喫はその土地の文化によって築かれた食事をするというのは、そこに住まう者たちの仲間であると認め、そこに根付く共食信仰から生まれた言葉であると言われているんだ。 

 今この世界は神秘で満ち溢れて、かつてオカルトとしか信じられていなかった魔術は身近なものとなり、空想上の神秘纏う生物は今も外に跋扈している。

 そしてその神秘に触れて育ったものを口にすることは、こ(・)の(・)世(・)界(・)が(・)壊(・)れ(・)る(・)前(・)に(・)は(・)戻(・)る(・)こ(・)と(・)は(・)出(・)来(・)ず(・)、倫(・)理(・)も(・)法(・)も(・)崩(・)れ(・)去(・)っ(・)た(・)今(・)の(・)世(・)界(・)を(・)認(・)め(・)て(・)し(・)ま(・)う(・)よ(・)う(・)な(・)、そんな気がしてな」

 

 

「……」

 

 

 どこか曖昧な表情を浮かべてそう言う広海さんのその言葉は、直接的には神秘の人間に及ぼす悪影響の話とは繋がってはいない。

 ただ、最後を締めくくったその言葉に、何か僕は引っ掛かりを覚えたような気がした。

 その引っ掛かりは僕の胸の奥でつっかえて、奥底に潜んでいるナニかを引き上げようとしているような、僕の自覚していない秘めた感情を呼び起こそうとしているような、だけど、まだ引き上げるには足りないようなそんな感覚だった。

 その不鮮明な物の正体がなんであるのかを無言で思考していると、いつもの調子でジャンヌが言葉を紡ぐ。

 

 

「しかし黄泉戸喫ですかー……その土地の食事を口にすることはそこに根付くことを意味するって話型は日本以外にも確かありますよね?もきゅもきゅ」

 

 

「ギリシャ神話のペルセポネの冥界下りが有名かしら?

 冥界で食べ物を少し口にしたぺルセポネは、1年のうち4か月は冥界で暮らさなければいけなくなったと聞いたわ」

 

 

「他にもメソポタミア神話の冥界においても、冥界の食べ物を口にすると冥界の住人となり戻れなくなるって話をギルくんから聞きました。あー……むっ……もきゅもきゅ」

 

 

「あ、もうジャンヌったら。ほっぺたにソースがついちゃってるわ。

 拭いてあげるから、じっとして」

 

 

「えへへ、ありがとうございますマリー。

 あ、弟君!このハンバーガーとっても美味しいですよ!

 ほら、あーん♡」

 

 

「……ハァ……ジャンヌ、流石にマリーさんたち以外にも人目がある中で食べさせてもらうのって恥ずかし……………………ん?」

 

 

「ん?」

 

 

「んんっ!?」

 

 

「どうしましたか?」

 

 

「いやダメでしょ!この流れで食べちゃうのはダメでしょ!」

 

 

 大きく齧られた跡のあるハンバーガーを差し出され、ジャンヌは呑気だなぁなんて思いつつ気恥ずかしさから断ろうとした言葉を最後まで紡ぐ前に、ジャンヌが会話をしながら何をしているのかに今更気づいた。

 あろうことか、いつの間にか並べられていた料理を美味しそうに口にしていたのだ。

 

 

「もう、急に叫んでどうしたんですか弟君」

 

 

「いやいやいやジャンヌはなんでこの会話の流れで食べちゃったの!?

 シーンを考えたら普通は食事するのを躊躇う描写が発生するよね!?」

 

 

「なんでもなにも、注文したのは私たちじゃありませんか。

 注文したものなら、責任もって残さず食べないと料理した人にも料理に使われた野菜やお肉に失礼です」

 

 

「し、至極真っ当な意見が帰ってきた……いや僕もそれはその通りだとは思うけど、今結構真剣にこの世界の食料事情について考察していたんだよ!?

 せめてこう、なんか……なんかいい感じのことって言うか、それらしい決意表明とか色々必要なプロセスってものがあるでしょ!?」

 

 

 良い喩えが浮かばずにあやふやな表現をして伝えた僕の必死のツッコミを受け、ジャンヌは数瞬の時間を空けた後に手に持っていたハンバーガーを皿に置き、合掌した。

 

 

「……この世の全ての食材に感謝を込めて、いただきます!」

 

 

「違う、そうじゃない」

 

 

 某漫画のセリフ丸パクりな上に、求めている言葉とは全然違う言葉が返ってきたので鋭く言葉を燕返し。

 と言うかそれは食事前に言わなきゃいけないセリフだよジャンヌ……

 僕だけでは説得力がないのかと思い、広海さんにも何か説教をしてもらおうと視線を横に向ける。

 

 

「ハァ……もう、広海さんからもジャンヌに何か言ってあげてくださいよ。

 もっとこう、緊張感が必要とかビシッと」

 

 

「はいあなた、あーん♡」

 

 

「あーん♡……お、このサンドイッチ美味しいな」

 

 

「なんでアンタも食ってんだぁ!!」

 

 

 助けを求めた視線の先ではなんといちゃつきながらサンドイッチを食べさせてもらっている言い出しっぺがおり、ついうっかり敬語が消し飛び声を荒げてしまった。

 あれか、緊張感は休暇か?横須賀辺りに出かけてしまったのか?

 

 

「いや、マリーからあーんされた食べ物拒否るとか、たとえ世界が滅びようともあり得ないから。

 と言うか黄泉戸喫とこの世界の食の事情を結びつけるのは無理があるだろ。

 そもそも神秘が今もこの地球上に神秘が満ち溢れている時点で、何しようが生物に影響が出るのはほぼ間違いないから、今更食べ物に含まれているであろう神秘の経口摂取による影響とか考えるだけ無駄だと思うぞ」

 

 

「言いだした本人が身も蓋もねえまとめかたしおった!?」

 

 

 しれっとさっきの真面目な話はここまでのフリであったと言われても不思議ではない様子でそう言われ、完全にこちらの調子が崩れてしまう。

 客観的に見て若干取り乱している僕を見て、何を感じたのかは分からないがマリーさんが話しかけてくる。

 

 

「オーナーさんは食べないのかしら?

 せっかく注文したできたてなんですから、冷めないうちに食べた方がいいと思うわ」

 

 

「え、あ、いや……別に食べないとかそう言う訳じゃなくて……」

 

 

「?訳じゃなくて?」

 

 

「…………い、いただきます」

 

 

 純真めいた視線をじっと向けられて僕はそれ以上何か言うことは無粋にしかならないと感じ、大人しく席に着いてスプーンを手に、注文したオムハヤシライスを口にする。

 

 

「どう?美味しいかしら?」

 

 

「……美味しいです」

 

 

「それは良かったわ。まだまだこのホテルタウンには楽しいところや美味しいものもたくさんあるから、楽しみにしていてくださいな」

 

 

「あ、はい。……いや、もういいか……」

 

 

 朗らかな笑みでそう言うフランス王妃様に毒気が抜かれ、何か釈然としないような気持ちもあったがそれを隅においやり、オムの部分を切り崩していく。

 2口ほどカレーも絡めて口にし、絶妙な辛さと卵の甘さに舌つづみ打っている頃には、胸のつっかかりはいつの間にか忘れ去られて消えてしまった。




私の各キャラのイメージ


弟君←ツッコミ及び胃痛ポジ

広海さん←ツッコミ(但しマリーにはイエスマンなためにボケる)

マリー&ジャンヌ←ナチュラルゴーイングフリーダムマイウェイ(つまりボケ)



Q.1弟君はツッコミの時声荒げてること多くね?

A.心労が重なると内に秘められたツッコミの魂が呼び起こされるのでしょう。普段の言葉遣いが丁寧なのに、ツッコミを入れる際に敬語が吹き飛ぶキャラはいますしね


Q.2崩壊世界における神秘についてもうちょい詳しく

A.昨今崩壊世界において現界したサーヴァントたちを使役しているマスターたちの1つの設定の後付けのような何か。
 知っての通りサーヴァントの維持には魔力を多く求めらるが、崩壊世界の多くのマスターたちは元々魔術師とかではなく、普通の一般人。
 しかし崩壊世界シリーズの本家曰く、崩壊世界においては魔力が自然発生し、神秘が満ち溢れているとのこと。
 環境が変化すれば生態系に何かしらの影響は出ると思いますし、『世界に異形の怪物や空想上の生物たちが現れたのと同時に、大気に満ちた魔力と神秘の影響を受けて人々の身体構造にも何かしらの変化が起きた』なんて設定を考えてみました。
 主な変化は本文でも述べた通り、身体能力の向上及び魔力回路の形成等です。神秘万能説。
 ただし、身体能力の向上の幅や形成された魔力回路の本数と魔力量は本人の適性に依存し、全ての人間がこうなった訳では無く、適性の低いものは神秘による急激な変化に耐えられずに死んでしまう。
 野良サーヴァントたちも、魔力と神秘が外気に満ち溢れているのなら現界だけなら支障はない。
 ……なんて考えてみました。これならマスターによっては1人で4騎くらい使役しているやついてもいいんじゃないかな(不安)
 それに現界しているサーヴァントたちの多くは聖杯貰ってるし、そこも理由として盛り込めそうだよね



おっと長文失礼。コラボは続くよ、次回はお待ちかね水着回だ!
……え?いっつも水着着てるだろって?
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