崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話 作:アルテマ
ぶっちゃけ投稿遅くなったのはレイドイベ回りまくってからです。QPカンストとか初めてですよ……まあ天草くんが2億持ってっちゃったんですけどね
まだまだ続くよコラボ回。しかしプロットを考えても後最低3話はコラボすっぞ長すぎぃ!
ジャンヌとマリーの親和性が高すぎるのが悪いんだよホント
ざざーん、ざざーんと夏を思わせる波音が響く波打ち際。見上げれば快晴の空と雲の化粧をしていない太陽がサンサンと輝いている。
常夏のような雰囲気ではあるが、実際は太陽の光はガラスのドームを通って降り注ぎ、屋内であるために風は吹かず水着でも過ごしやすい温度で保たれている。
横目で見た水着を身に纏っている広海さんも、僕と同じように目の前の光景に呆然としているようだった。
「やりますねマリー!ですが私の力はまだまだこんなものではありませんよ!」
「それはこちらの台詞よジャンヌ!遊びと言えど、いえ、遊びだからこそ手を抜かずにやらせてもらうわ!」
互いの視線の先では水着に着替えたジャンヌが水風船サイズの水球を、マリーさんはバレーボール大の水球を用いて水かけ勝負をしている真っ只中であった。
女性同士の水かけと言う字面だけ見れば微笑ましいものなのだが、実際に僕たちの目の前で行われているのはそんな生易しいものなどでは断じてなく、魔力の膜で覆われて形を成している水球が弾幕の如く互いにすれ違い行き交っている光景は、最早戦場と言っても過言ではない程にに激戦を繰り広げていた。
「……あの、広海さん」
「何も言わなくていいよオーナー君。多分考えていることは同じだから」
「……そうですね」
視線はそのままに広海さんへと呼びかけた言葉は間髪入れずにそう返され、僕はそれもそうかと納得する。
尋常じゃない量の水しぶきがそこら中で舞い上がり、機械が再現している規則的な波の間隔はズレて、不規則に揺らめいていた。
普通の人間では再現など到底不可能であろう光景に、僕と広海さんはほぼ同時に呟いていた。
「「これが、サーヴァントの戦い……!」」
我ながら今思うと、この時の僕と広海さんは現実逃避してるだけだった。
「どうよ、このプールの感想は?ベースになったデザインは俺が考案したんだけど、自分でも結構良い線行ってると思うんだ」
「その辺は素人なので断言はできないんですけど、ホテルタウンの一部にこれ程の施設を設置できたのなら充分だと思いますよ」
海パンを身につけ、控えめに両手を広げてその場所を誇示するようにそう言う広海さんにストレッチをしながら素直な感想を答える。
実際、このホテルタウンの施設のひとつとして、それこそ私営プールとして営業が出来そうなほどの大きさの室内プールを設置できたのはかなりの贅沢なのではないだろうか?
「このホテルタウンの住人はみんな娯楽に飢えててね。
こんな世界だし不安が尽きないんだろう。それが子どもだろうと、大人だろうと。
だから大人も子どもも楽しめる施設って事でこの室内プールの設立とデザインの提案をしたんだ。
特にウォータースライダーには結構気合を入れたつもりさ。
……まあ、こんな事に金を回す余力があるなら居住施設を増やして避難民を受け入れる数を増やせって意見もあるけどな」
ほらこれ全体マップ、と彼は後ろに設置されている看板をコンコンと叩く。そこには僕たちがいる屋内プールの地図と各遊戯エリア、売店の位置が記載されていた。
喫茶店で昼食を済ました後、僕たちはアミューズメントエリアの施設の1つである屋内プールへと遊びに来ていた。
屋内プールへと行くことになった経緯なのだが、意外に感じるかもしれないがジャンヌが屋内プールに行きたいと希望したからなのだ。
喫茶店にて談笑している際、このホテルタウンのエリアの1つであるアミューズメントエリアに最近屋内プールがオープンした事が話題に上がった。
武田さんたちは1度視察に近い形で利用したきりで、それ以来は利用する時間がなかったそうだが、その時の話を楽しそうにしていた。
それを聞いていたジャンヌが私も行きたいと希望した。
目を輝かせているようにも見えるジャンヌに一瞬、どうしてそこまでプールに行きたいのだろうかと考えたが、答えはすぐに出た。
ジャンヌは今日までレジャー施設は勿論、海で泳いだり水遊びをしたりといった事をしたことがなかった。
普段着はビキニスタイルの水着にパーカー、ショーの際は競泳水着と、日常生活で殆ど水着で過ごしている割に、水着が本来の用途で使われはいなかったのだ。
もちろんこれは霊基の関係上仕方ない面ではあるのだが、流石に全く本来の用途では使用されてこなかったと言うのは酷な話だとは思うし、何よりこんなにも強くプールに行きたいと言うジャンヌの希望を聞き届けないと言う選択肢はなかったので、万場一致で屋内プールへと行くことが決定した。
ジャンヌのやりたい事を汲み取れてなかったと言う、罪悪感もあっての事だった。
さて、そんな屋内プールのデザイン担当だったらしい広海さんの指し示すマップには、中央には縦横無尽に曲がりくねったコースを形成しているウォータースライダー。
それを囲うようにして、直線や曲線を描いている流れるプール。
僕たちのいる更衣室から見て対極の離れた位置には人工的に波を生み出し海の疑似再現をしているプールや浅い端から中央に行くほど水深が深くなる50mプール。
他にもビーチバレーができる砂浜とコートが4つと、アイスや飲み物に食べ物、浮き輪にボートやマットを売っている売店もあるようだ。
僕が今着用している水着もその売店で購入したものだ。水着を持ち合わせてなくてもプールを利用できるようにと言う配慮であるそうだ。実際このホテルタウンの住人たちは避難民だった人も多いらしく、需要はそこそこあるらしい。
しかし同時に、それを良く思わない人間もいるようだ。
僕は衣食住は人間が生きていく上で必要なものであると重々承知しているし、殆どの人がそれを認識している筈だ。
だが娯楽は人々の豊かな生活と精神を癒すのに必要なものである事を、シルク・ドゥ・ルカンを通して学んだ僕は、広海さんが考案したと言うこの施設を無駄な物だなんて切り捨てたくはなかった。
「その意見も分かりますが、こう言った娯楽を楽しむ遊戯施設が全くないとストレスの元ですし、こんな壊れた世界だからこそ、心に安寧をもたらしてくれるものは大事だと思います。
実際に、利用している人が多くいるのはここから見ていてもよく分かりますから、広海さんの考案したこの施設は必要とされているのでしょう」
「そっか……そう言ってもらえると嬉しいよ。なんだか気を遣わせちゃったみたいだけど、悪いね」
「いえ、気遣いではなく本心ですよ」
「弟くーん!お待たせしましたー!」
そんなやり取りをしていると、後ろから呼びかけてくる声が聞こえてきたので振り返る。
視線の先で女子更衣室の隣接している女性用シャワーのエリアからこちらへと手を挙げて笑顔で駆け寄ってくるジャンヌが目に入った。
その姿は黒いビキニに白いパーカーを羽織ったいつもの霊基の第一再臨の姿であり、僕に1番馴染みのある水着のスタイルであり、これといって言うことと言えばやっぱり似合ってるな、なんて感想程度くらいなのだが……
「……」
僕の視線はジャンヌのばるんばるんと激しく上下に揺れる2つの砲弾へとつい向かってしまっていた。
いや、別に今の今までジャンヌのそう言った場面を見たことがなかったと言う訳でもないし、なんならほぼ毎夜不本意ながら(ここ重要)ビキニの外された状態で揺れる胸を直視してしまっているのだが、やっぱり僕はこんなでも男なのであって、その性でつい母性の象徴であるそれについつい視線を向けてしまうのだ。
そして一般的に女性は男性のそういった視線に敏感であると言うのは有名な話であり、僕はその事を常々実感してしまっている。
まあこのことから何が言いたいのかと言うと……
「ジャ、ジャンヌ、マリーさんはどうしたの?
どこにも見当たらないのだけど」
「弟君、今お姉ちゃんのおっぱい見てましたよね?」
「いや見てな……!」
「見てましたよね?」
「……み、見てました……」
「ふふ、よろしい♡お姉ちゃんは正直な弟君が大好きですよー、ぎゅーっ♡」
「んむぅっ……」
ジャンヌは僕がどこを見ていたのかすぐに察知し、確信を持った言葉で聞いてくるのだ。
この時嘘をついたり取り繕ったりしようとすると、ジャンヌはひたすら胸を押しつけたり、僕の手を自らの胸に導いて強制的に揉ませるなどして性欲を煽り、紅潮したところで耳元でひたすら何故胸に触れて興奮しているのか淫語を交えてささやいてくるのだ。で、その後はお察し。
流石に他のペアのいるダブルデート中に、こんな施設の人目のある場所でおっぱじめるなんてことはないとは思うのだが、どこか人目のつかないところに連行されることもありうるために正直に答えた。
正直に答えてもこうして胸に顔を押し込まれて抱擁されてしまうのだが、直接的に愛撫されるよりかはずっとマシではある。……現状水着であるので、テントをたてないように精神の昂ぶりを鎮めるのが大変ではあるが。
「……いいなぁ」
「あ な た ?」
「ヒエッ……ま、マリー?」
チラッとどうにか視線を広海さんの方へと向けると、彼の後ろには水着の霊基であるキャスターのクラスでの第一再臨の霊衣と同様の赤いスカートタイプのワンピース水着を着用し、どこか怖い笑顔を浮かべるマリーさんがおり、あちらもあちらで修羅場に突入しかけていた。
「鼻の下が伸びてるわよ。……ジャンヌの胸見てたでしょう?」
「えっと……も、申し訳ない……」
「ええ、確かにわたしもジャンヌの体型が良いことは分かっているし、男の子がそう言ったところに注目しちゃうのは良く分かるわ。
けど、そんなことされちゃうと妻として不安になってしまうわ」
頬を膨らませて、不機嫌そうな表情を浮かべるマリーさんはそう言うと、バツの悪そうな広海さんの顔に両手を回し、思い切り自身の方へと引き寄せて抱きしめた。
それは僕が今ジャンヌにされている抱擁の状態と同じような体勢であった。
「……わたしのでは、不満?」
「今日からここに住むわ」
なんだただのバカップルか。
どこからか、『ブーメラン乙』と言う言葉が聞こえてきたような気がしたが気のせいだと思うことにした。
「さて、それじゃあまずどうしようか」
数分前まで緩んだ表情を隠しきれていなかった広海さんは一転してキリッとした表情でそう言う。正直カッコ悪いのだが、先ほどまで似たような状態だった僕が言っても説得力ない気がした。
「じゃあ最初は流れるプールで、気ままに流されるなんてどうかしら?
売店で浮き輪のレンタルはしているみたいですし」
「いいですね!では私はこの自前の浮き輪を使います!」
そう言ってジャンヌは虚空から大きな浮き輪を手元へと呼びだした。
ジャンヌの浮き輪やフラフープはアーチャーの霊基での武器扱いされているので特にその現象自体に何か言うつもりはないのだが、これまで散々ワイバーンをぶん殴ったりする際に使われていたものが、やっと正しい用途で使われるのかとか、冷静に考えるとこの浮き輪かなり物騒で曰く付きだよな……なんてくだらないことを考えてしまう。
「俺はそれでいいぞ。浮き輪なんて海とか行ってももうあまり使わなくなっていたから久しぶりだな」
「まあ年齢重ねるとなんとなく使いにくくなりますよね。大きさとか周りの目とか考えると」
「そうなのかしら?勿体無いわね、浮き輪で気ままに流されるままにしているのってとっても楽しいのに……」
「まあ別に何となく使いにくいってだけで、使えない訳ではないからさ。
ほら、浮き輪レンタルしてこよう」
そんな他愛ない会話をしつつ、広海さんとマリーさんと共に売店の方へと脚を向けようとしたのだが……
「あ、弟君ちょっと待ってください」
「ん?なに、どうしたのジャンヌェッあ!?」
声をかけながらこちらへと近づいてきている様子のジャンヌに、僕は首だけ後ろに回しながらなんのようなのか聞こうとするも、言葉を言い切る前に両足の膝裏に衝撃が走り仰け反ってしまう。
下手人であるジャンヌは体勢を崩した僕の首元と膝カックンされて溝のできている足へと手を通すと、お姫様抱っこをしてきた。
突然のジャンヌの奇行に文句も言えないまま、なすがままになってしまう僕なんて気にもせず、ジャンヌは足元に置いていた自前の浮き輪を流れるプールと地面との間ギリギリくらいの位置にまで蹴り、僕を抱えたまま浮き輪の外側に足を乗せると
「ていっ!」
と言う掛け声と共に浮き輪を流れるプールへと自分たちごと落とした。
当然、そこには僕も乗せられたままであり、さながら今の僕の状態はジャンヌの体の上でラッコが貝を持っているかのような体勢でジャンヌに支えられ、流れるプールの緩めな流れに沿ってプールを漂い始めていた。
「ちょちょちょジャンヌ!説明!説明してよこの状況!?」
「えへへ、やりました!こうして弟君と一緒に浮き輪で流れていくのは1度はやってみたかったですから」
「いや一緒って、流石に同じ浮き輪に乗るなんて聞いてないんだけど!?」
「そんな細かいことはどうでもいいじゃないですか。
それに、同じ浮き輪に乗ってれば、こうやって弟君と密着する事が出来るんですからいい事尽くめですよ、ぎゅーっ♡」
「ひうっ……」
ジャンヌがそう言ってこちらの腰に回した両手で強く僕のことを抱きしめてくる。
背中に強く押し当てられたジャンヌの胸が形をぐにゃりと変えていることがよく分かってしまい、さっきようやく落ち着いた心臓の鼓動が再び強く響き加速していく。
それに加え、ジャンヌは僕をただ抱きしめるだけでなく、僕の体があることを確かめるかのように手で僕の体をなめるようにしてさすってくる。
じらすようにゆっくりと手を動かされ、興奮を促されて僕の心拍数はますます加速していく。
ジャンヌはそれをよく理解しているようで、クスリと笑みを零したような声をあげて僕の反応を更に楽しむように僕をくすぐる。
そんな中、間近で唐突な行動を見ていた広海さんたちが何事かと流れるプールで流れている僕たちへと駆け寄ってきた。恐らくはジャンヌの奇行の真意を問うためであろう。
当然と言えば当然の行動と言えるが、今の僕には救いの手である。どうにかこの状況から脱するべく2人に話しかけようとするが……
「あらジャンヌ、弟さんとの仲の良さをアピールするのかしら?
とっても熱々で羨ましいわ」
「え」
「ええマリー、弟君と私の間にある愛は誰にも負けませんから!」
何故か……いや、冷静に考えたら天然でふわふわ系お姫様なマリーさんなら言うであろうセリフを受けて、嬉しそうにするジャンヌは更に僕の事を強く抱きしめてきた。
いよいよもって単独での脱出が困難となり、このままでが詰むと危惧して僕は最後の砦である広海さんへと助けを求めた。
「ひ、広海さんヘルプミー!
もうあなたしか頼れる人がいません!」
「お、おう……まあ本人が嫌がっているのなら助けるべきではあるよな」
「広海さん……!」
「あなた、わたしたちもあれやりたいわ!」
「すまんオーナー君、ちょっと急用が出来た。
俺から言えることはたった1つだ。頑張れ」
「広海さんんんんんんん!!」
僕の助けの声に耳を傾けてくれた広海さんは、一瞬にしてマリーさんに籠絡されてしまいあっさりと僕のことを諦めてしまった。現実は残酷であった。
広海さんとマリーさんはそのままスキップするような足取りで売店の方へと行ってしまった。
おのれ他人事のようにして……いや他人事なのか実際。
「すんすん……♡やっぱり弟君はいい匂いがしますね……もういつまでもこうしていたい気分です」
「ッ……あぅ……」
そのままジャンヌのされるがままになってしまい、身動きが取れなくなってしまう。
身をよじって抜け出そうにも、ジャンヌはとても離してはくれなさそうだし、何より背中に伝わる柔らかな感触が僕の脱出しようとする気力を削いでくるのだ。
とても抜け出せそうにはない状況に、どうしたものかと考え始めたころに、僕の頭に顔を埋めていたジャンヌが不意に口を開いた。
「……楽しいですね、弟君」
「……え?」
「このデートが、ですよ。
いつも弟君は忙しそうで、休みの日は2人っきりでも部屋で過ごすことが多かったじゃないですか。
勿論、そうして過ごした時が楽しくなかった訳じゃないですけど、今日のデートだってそれに負けず劣らず楽しいです」
唐突なジャンヌの心情の吐露に呆然とする僕へ、ジャンヌは僕の体をさする手を止め、ギュッと抱きしめながら続ける。
「マリーや広海さん、そして弟君とショッピングやお茶をして、今もこうやってプールで一緒に遊んでいます。
この世界に来るまでは考えられなかったことで、それまではただ夢見ることしか出来なかったんです。
だからこんなに楽しい時間を過ごせるのは私にとってはそれこそ夢のようで、とっても嬉しいことなんです」
僕への密着を強くし、いま過ごしている素晴らしい一時を噛みしめるようにそう呟く。
……ジャンヌが何故こんなにも、僕の事を思ってくれているのかは未だに良くは分からない。
ジャンヌの僕に対する感情の理由について聞こうと思ったことは何度もあるけれど、その実1度だって口に出して聞いたことはない。
聞く勇気が、持てなかった。僕はこう言うところが本当にヘタレだ。
でも、ジャンヌの思いの根幹が分からずとも、今この時を楽しんでいるジャンヌの気持ちを曇らせるようなことはすべきではないのだろう。
抵抗を続けていた体の力を抜き、ジャンヌの拘束をなすがままに受け入れて、本当に楽しそうにしているジャンヌへと何か返答をすべきであると考えて口を開く。
「……そっか」
咄嗟ではなく、幾らでも気の利いた言葉など考えられるであろう間があったにも関わらず、紡いだ言葉はひどく無味乾燥で素っ気ない返答だった。
口にした直後に後悔し、自分の頬を思いっきりひっぱたきたい気分になった。
……『これからもずっと一緒だよ』『こんな楽しい時間をもっと過ごせるよ』
心中に浮かんだこの言葉を、僕はどうしても口にすることが出来なかった。
どこまでもヘタレな自分に嫌気が指し、同時にいつまでもそんなではダメだと奮起し、詰まりそうになる喉をこじ開けて言葉にする。
「……今度は!」
「はい?」
接着剤で固められていたような喉を無理矢理開いたために、口から出た言葉の音量にブレーキを掛けきれずに勢いよく出ていき、無駄に語尾が強くなってしまった。
唐突な発言にジャンヌが首を傾げたのが見ていなくても分かったが、構わず続けた。
「今度は、2人っきりでデートしようか」
絞り出された言葉は、直前の味気ない返答なんかよりはマシではあったけど、心中で思い浮かんだ言葉よりも色あせたものだった。
ああ、どうして僕はこうまでヘタレなのだろう……
そんな自己嫌悪に陥るなかで、ジャンヌは僕のその言葉を聞いて一瞬呆然としていた様子だったが、すぐにクスリと笑みを零すように呟き、僕の耳元で囁いてくる。
彼女の温かい吐息が耳にかかり、心拍数は更に加速しドキマギしてしまう。
「……弟君は、意外と独占欲が高かったりするんですか?」
「い、いや……別にこのダブルデートが不満だとか、そんなつもりはないのだけど……」
「冗談ですよ。……でも、独占欲ちょっとは高い方がいいなぁ」
「え、何か言った?」
「なんでもありませんよ。
……そうですね、マリーたちには申し訳ないですが、次は2人っきりでデートしましょうか」
「別に今後マリーさんたちと遊ばないって訳でもないから、たまには遊びに誘ったっていいとは思うけど」
「むぅ‥…気遣いなんでしょうが、マリーとはいえ他の女性を交えて遊びに行こうだなんて言われると、お姉ちゃんとってもジェラシーな気分になっちゃいます」
「ご、ごめん……」
「……もう、そんな困った顔が可愛いから、お姉ちゃんもついつい弟君にイジワルしちゃうんですよ。
今の言葉に他意がないことは分かってますからね、弟君」
「……うん、ありがとうジャンヌ」
ジャンヌが僕の体に回している手に、僕の手をそっと重ねる。
指と指の間を通すようにして重ねられた手の平からは、ジャンヌの体温がじんわりと伝わってくる。
「ん、今日はちょっと積極的ですね弟君。
いつもこれくらい積極的だと、お姉ちゃんも嬉しいのですが」
「あはは、善処します……」
苦笑しながらそう返してジャンヌの手を包み込むようにして握り、瞼を閉じた。
ジャンヌもまた、僕の頭に再び頭を埋めると、寝息のような静かな呼吸をしてピタリと手を止める。
心臓の鼓動は先ほどよりは幾らか落ち着いて、視界を閉じて少し鋭敏になった触覚でジャンヌの体温を感じながら、流されるまま気の向くまま、僕とジャンヌは浮き輪の上でプールを堪能していた。
先のことは、何も分からない。
けれどせめてこの時間が、彼女にとって幸せな思い出として残りますように。
口には出さず、ただ心中でそう祈っていた。
……ああそれとこれは余談にはなるのだが、流れるプールを1周してマリーさんたちと合流した際のこと
「ジャンヌの持ってるくらい大きな浮き輪がよかったのに、まさか売店のレンタル品で取り扱ってないなんて……残念だわ」
「まあまあ、浮き輪自体は標準サイズだけど借りられたし良かったじゃん。
それにさ……ほいっと、捕まえた」
「あ……」
「こうやって手を繋いで流されるままってのも、悪くないでしょ?」
「……ふふ、そうね。でも……えいっ!」
「ん?」
「両手でつないでいた方が、もっともっと温かいわ」
「マリー……」
「……」
「あら、マリーたちを見つめてどうしましたか弟君?」
「いや、広海さんたちって思ったよりも健全な関係なのかなーって思っただけだよ。
……ところで話は変わるけどやっぱり浮き輪借りてきても」
「ダメです」
「デスヨネー……うぅ」
やっぱり広海さんたちくらいの距離感から始めたいと思った、ヘタレな僕なのだった。
↓それぞれの相手ペアに対する所感
お姉ちゃん(仲睦まじい夫婦ですねぇ)
オーナー(すっごいイチャついてるなー)
キラキラの王妃様(仲の良い姉弟ね!)
カウンセラー(姉弟ってなんだろうな?)
終盤でそのままエンドロール入りそうな文がありましたが、まだまだ続くのでご安心を
Q1.冒頭のシーンは何?
A.次の話で描写しますのでお待ちください。まあ大した理由がある訳でもないのですが、そこまでこの話で描写すると長引きそうだったので
Q2.結構目立つことしてるような気がするけど、大丈夫?
A.マリーさんたちはホテルタウン公認なとこ本家でもありますのでいいとしても、弟君たちはばっちり注目されちゃってますね。
まあ傍目からは姉弟に見えなくもない……?