崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話 作:アルテマ
オリュンポスのストーリーは良かったと、ネタバレを恐れてそれだけとしておき、住人の退役した兵士で英霊級スペックってやべぇなぁとか思いつつ、この崩壊世界シリーズの住人たちもそれに近しいドーピングのようなことしてんなーって思ったり
ティファ可愛い!
ではでは本編です。
ジャンヌと一緒に流れるプールを存分に堪能した後も、僕たちは室内プールの設備を楽しんでいた。
「いやすごいでしょこのウォータースライダー。
発明家サーヴァントたちと魔術師サーヴァントたちに頼みこんで、狭いエリア内で100m以上の長さのウォータースライダーを作って貰って設置して貰ったんだ」
「技術と魔術の無駄遣いすぎる……」
「ジャンヌ、一緒に行きましょう!」
「それは名案ですねマリー!2回目は弟君と滑りたいです!」
中央に大きくドームの天井近くまでの高さを誇るウォータースライダーを何度も利用したり
「あの、このプールの真ん中の位置って水深何mなんですか?
底が見えないんですけど……」
「んー、ごめん正直覚えてないな。
でもこのプールは小学生は利用不可とか注意書きはしつこいくらい掲示して伝えてるし、事故対策でこのプール内にはその人の状態を検知する機械と、それと連動して溺れたりしている人を救出する魔術を組み込んでいるから大丈夫だよ」
「またすっごい技術と魔術の贅沢な使い方を……」
「ぷはっ……これだけ深いプールなら、リースたちとも気兼ねなく泳ぐ事が出来るんでしょうねー」
「底の方まで潜水したのかしら?ジャンヌすごいわね!」
中央の水深が異様に深い50mプールで自由に泳いだら、泳ぎを教わったり
「アターック!!」
「甘いわよジャンヌ!ブロック!」
「なんの!これくらいなら拾えますよ!
弟君、トスお願いします!」
「あ、うん。
……と、トース!」
「……俺たち完全にセッターだな」
「いや、セッターしか出来ないと言うか……」
施設内のビーチバレーコートでペアに別れてビーチバレーにて、サーヴァントの身体能力を間近にして呆然としたり
とまあそんなこんなで室内プールを大体ぐるりと回った後、最後の遊戯エリアの波を人工的に再現している海のエリアへと足を踏み入れた僕たち。
ここまで散々遊びまわっていたにも関わらず、疲れなど見せぬと言うよりも、疲れている様子など一切見れないジャンヌとマリーさんは楽しそうに波打ち際へと駆け出し、水かけ遊びをしていた。
「んー、海です!
室内なのは残念ですが、やっぱり海は青くて波に揺られて、白い砂浜の上になければいけませんよね!」
「ジャンヌ、こっちよこっち!えい!」
「わぷっ!?もう、やりましたねマリー!
お返しです!えいやっ!」
「きゃっ!やったわねジャンヌ!」
そんな感じでお互いに楽しげに水かけ遊びをするジャンヌさんとマリーさん。
僕はそんな楽しんでいる2人を視界にいれつつ、手に持つ売店からレンタルしてきた加圧式の大きめの水鉄砲へと水を汲み取る。
外付けのタンクを水に浸し、満タンになるのを今か今かと待つ僕の姿に広海さんが揶揄うように言う。
「上機嫌だねオーナー君。
てっきり水鉄砲なんて子どもの玩具ってスタンスかと思っていたけど、案外まだまだ童心の持ち主なの?」
「そ、その言いぐさはちょっと心外ですね……別に変に大人びているつもりはないですよ。
……でもまあ、水鉄砲に関してはピストル型の小さいやつは使ったことはあるんですけど、こう言うライフル型の大きなものは使ったことがなかったので、ちょっとはしゃいでると言うのはありますね」
ピストル型の引き金式水鉄砲と違い、ライフル型の加圧式の水鉄砲は給水タンク内にポンピング(加圧作業)して空気を送り込み、加圧することで水を発射するので飛距離や威力がとても強いのだが、そこそこ値段が張るので子どもの頃は手が出せなかった。
この年になって水鉄砲を買うと言うのも機会がなかったので見送っていたのだが、いざ使う場面となるとちょっと楽しみになったりするのは仕方のないことだろう。
「……と言うか、広海さんは僕のこと言えないでしょう。
なんですかその背中のタンク。おまけにその水鉄砲も電動式でしょう?」
揶揄う彼の背中には黄色と青のデザインのシンプルな形の大型のタンクを背中に背負い、そのタンクのチューブの先には電動式の水鉄砲が握られていた。
背中のポンプはともかくとして、電動式は加圧式のようにポンピングする必要はないが、その威力は加圧式のものと比べても遜色ない。
さしづめ加圧式がポンプアクションのショットガンに対し、電動式はフルオートショットガンと言ったところか。
当然電動式なのでとても高価である。引き金式は比べるまでもなく、加圧式のものと比較しても10倍以上は値段に差があるだろう。
「オーナー君。俺は大人ではあるが、大人とてたまには童心に帰りたい時があるのだよ」
「童心に帰りたい割には
都合の良い部分だけ大人の権力振りかざしてません?」
「大人はね、ずるいんだよ」
「そんな悟ったような顔で言われても全然説得力ないでへぶっ!?
ふ、不意打ちな上にこっちはまだ給水中なんですけど!?」
「ふふふ、大人はチャンスも常に逃さないのさ。
憎いと思うのなら、存分に俺を恨むがいい。
その憎しみが君を子どもから大人へと成長させるのだ」
「僕と年齢はそこまで差はないでしょうに……と言うかいいこと言ってる風ですけど、それは今の不意打ちを良しとする言い訳にしか聞こえませんからね!」
そんなやり取りの後に始まった、水鉄砲同士の勝負。
始めは広海さんの電動式水鉄砲の威力と途切れない水量に押され気味だったが、少し距離を取ると目に見えて水の命中率が落ちたので、極力距離を取って反撃をした。
後に聞いたのだが、広海さんはこのホテルタウンの防衛でモンスターと戦闘することは結構多いそうなのだが、基本は近接戦闘かマリーさんの支援をすることが多く、銃器や弓矢等の飛び道具は殆ど使わないらしい。なんでも、飛び道具の命中率はそれほど良くはないらしい。
と、まあそんな感じで反撃の糸口を見つけて水鉄砲を撃ち、あちらも負けじと距離を詰めて滅多打ちにしようとしてくる。
そんな応酬を何度か繰り返した後で
「あ、弟君たちも水遊びしているのですか?」
「とっても楽しそうね、わたしたちも混ぜてちょうだいな」
と、離れたところで水かけ遊びをしていたジャンヌとマリーさんがこちらへと駆け寄ってきた。
僕と広海さんはこれを快諾し、どうせだから先ほどのビーチバレーと同じチームで分かれてやろうと決まった訳なのだが……
「むむむ、本当にやりますねマリー!
正直侮ってましたが、ここまで私に食らいついてくるとは予想外です!」
「わたしだってサーヴァントの1人よ、これくらいは造作もないことだわ!」
「……」
「……」
何が切っ掛けとなったのかは分からないが、キャッキャウフフとした楽しげな水遊びは一転、ジャンヌとマリーさんの妙に白熱した弾幕合戦となってしまい、僕と広海さんはサーヴァント同士の戦いについて行くことは出来ず、俗に言うヤム○ャ視点状態となってしまったのだ。
先ほどのバレーボールでサーヴァントの身体能力の高さについては再認識していたはずなのだが、次々と彼女たちの周囲に形成されて放たれる魔力の膜で覆った水球に、最早残像を所々で残すような敏捷力を目の当たりにしてしまうと、黙って静観すること他ない。
「……ほらオーナー君、愛しのお姉さんが苦戦しているようだし助けに行くといい」
「それを言うなら広海さんだって、マリーさんのことを助けに行かなくていいんですか?」
「いや別にあれは楽しんでいるからいいんだよ……と言うかまあ、それは君のお姉さんもそうでしょ多分」
「……まあおそらくは」
「……」
「……」
それから互いに沈黙する。
元々この海を再現したプールのエリアには僕たちが来た時点で誰もおらず、そんな沈黙の中ではジャンヌたちの間で飛び交う水球の弾ける音くらいしか響いてこなかった。
「……売店で何か飲み物とか買ってくるか」
「あ、僕もお供します」
とてもあの彼女たちの戦いに混じることなど出来ないと、お互いに口にせずとも共に理解し、そう言えばそろそろおやつ時だなんて、それらしい理由を考えながら広海さんと共に売店へと足を向ける。
……とりあえず、僕たちが戻ってくるころには収束していることを祈ろう。
売店の前にはそれなりの人の列が出来ており、設置されているテーブルにはちらほらと席に着いて飲み物や軽食を口にしながら駄弁っている人たちがいた。
売店内の時計へと目を向ければ、時刻は15時を少し過ぎた程度。体内時計通り、やはり間食時であった。
「意外と混んでるな……まあこれくらいならすぐか。
とりあえず全員分の飲み物は買うとして、何か他に買っていく?」
「そうですね……軽めにチュロスとか全員分買っておきましょうか」
「君のお姉さんに焼きそばとかも買っていこうか?」
「それするとなんかこっちの売店でジャンヌがフードファイトしそうなのでやめましょう。
あくまでおやつ程度で」
「ははは、それは確かに。
知識としては知ってはいたんだけど、彼女ってかなり大食いなんだな。
目の前で目の当たりにすると、清貧を心掛ける聖女のイメージとは少し違って驚くよ」
「……いや、正直今のジャンヌには聖女としての姿は殆ど見受けられないかと……彼女の霊基は水着ですのでプライベートモードと言われればそれまでなんですけど、その……」
「……初めて会った頃から分かってはいたけど、苦労してるんだな君」
気苦労が絶えないとばかりにため息をつきながら呟いた僕の言葉に、彼は察してたかのようにそう言った。
……そう言えば広海さんと初めて出会った時、ジャンヌはいつも通りのテンションで、僕にベタベタくっつきながら僕の姉であると自己紹介したんだっけか。
……いや、と言うか、ジャンヌは他人と出会うたびに僕の姉である事を自称するのだけども、僕が注意してもあの姉を名乗る不審者は全く直そうとしない。
それどころか僕が間違っていると言わんばかりに、僕に姉扱いする事を強要してくるのだから始末に負えない(しかも有無を言わせない
全く、本当にどうにかならないものか……、なんて心中で愚痴めいたことが渦巻いていた。
「ま、良いことだと思うよそれは。
「え……?」
そんな事を考えていたからこそ、僕はその広海さんの言葉に対して間抜けな声を漏らしてしまったのかもしれない。
広海さんの言った言葉の意味を把握することは出来た。
けれども、何故良いことであるのかは理解が出来なかった。
「あの、それどういう意味ですか?
……まさかとは思いますが、ギルさんに何か唆されましたか?」
「いやいや、そんな愉悦部案件じゃないさ。
……と言うかあの王様にも苦労しているの?」
「……あの人は多分生まれついての愉悦部部員なんですよ……」
「あー……心中お察しいたします」
また苦笑して手を合わせる広海さんに、はははと似たような苦笑を返す。
シルク・ドゥ・ルカンのスポンサーである子ギルこと幼少期のギルガメッシュ氏は基本的には僕が困ったときや要望に応えてくれる大変頼もしいお方ではあるのだが、時々酷い無茶ぶりをかけてくるのだ。
足を向けて眠ることなど出来ないと言う言葉の通りに世話になっている上に、僕が我慢すれば不可能なことではない無茶ぶりなために断ることなど出来ないと言うのも中々愉悦部じみてて嫌らしいのだ。
『いやだなぁ、僕は愉悦を人の悲嘆を見て悦ぶ意味では用いないですよ。
ただちょっとした不幸やハプニングを見て楽しんでいるだけです』
そんな幻聴が脳裏に聞こえてきたような気がした。
お世話になっているのは間違いないのだが、そこを含めてもちょっと苦手な人であることは間違いない。
「まああのナチュラルボーン愉悦部な王様の事は置いておくとして。
何が言いたいかって言うとな、無理に飾ったり自分を抑え込んで構築された関係って言うのは、いつかは崩れてしまうものだよ。それが良い意味か悪い意味なのかは当人たちの思いによるだろうけど。
これがちょっとした知り合い程度ならいいけど、親友や恋人のように関係が親密であるほどに虚飾や抑制が露見した時は、関係がどう変わろうとも少なからずトラブルは起こる。
そう言う意味では、君のお姉さんはありのままの自分ってのを体現しているんじゃないかな?」
そう語る広海さんの言葉にはどこか実感のこもったような……実際に身をもって味わった辛酸を口にしているように見受けられた。
広海さんが今話した内容が、彼の経験に基づくことであるのならば、やはりその関係相手はマリーさんなのだろうか?それならば、彼らの関係が前よりも親密に見えるのも納得であるのだが……
いや、あまり深く詮索することもないだろう。隠し事や嘘をどちらがついていたかなんてものは知られたくはないだろう。
それに彼らの今の関係性を見るに、過程はどうあれ良い結果を得て前よりも親密になったのだろう。だからこそ、その話を成功した経験談として語っている筈だ。
だが、しかし
「……分からなくはないんですけど、ジャンヌの場合はあれですよ?洗脳してくるんですよ?
それはもうありのままとかって言う次元じゃないと思うんですけど……」
必ずしも、自分の成功体験がそのまま他人の成功体験に繋がるかは別の話だ。
確かに今のジャンヌの霊基はバカンスを楽しむと言うスタンスの水着のアーチャーであり、その在り方はルーラーの時の聖女としての在り方は遥か彼方。夏の魔力で開放された彼女はひたすら楽しそうにし、僕へと深い愛情を向けてくれている。
僕への感情は……触れないでおくとしても、普段の彼女の天真爛漫な姿は素の彼女と言えるとは思う。
しかし、彼女は僕に何度も洗脳を仕掛けて自信を姉であると誤認させてくるのだ。
これはありのままの自分と言うより、ただ自身の願望を相手に押し付けるどころか無理矢理矯正しているようなものではないのだろうか?
やや困惑しつつ、ジャンヌに対して唯一不満に思っている点を疑問の形にして口にすると、広海さんは特に何か考えるような素振りなんてせずに即座に返答してきた。
「でも君のお姉さんの洗脳ってさ、オーナー君の話を聞いている限りじゃそこまで悪辣ではないと思うんだよね。
何と言うか……君にない好意や感情を植え付けていると言うよりは、君が奥底に眠らせている彼女への感情を引っ張り出しているんじゃないかなって。
だってオーナー君、
「……それは」
心当たりがあるとかではなく、広海さんのその所感は間違いなく図星だったために目を逸らしてしまう。
その通りだ。ジャンヌは僕に対してありもしない感情を芽生えさせるようなことはしていない筈だし、ジャンヌが僕を好いているように、僕もまた彼女が好きだ。
それでも、僕がジャンヌへの好意に素直になれないことの原因があるとするならばそれは……
「うん、その反応を見るにジャンヌに何か不満があるというのではなく、君自身に何か踏み切れない問題があると見た」
「……はい、そうですね。
ジャンヌに不満なんてないですし、彼女が洗脳をしてくるのだって元はと言えば自分のせいだと思います」
「それ、君自身だけで解決はできそうかい?」
「……」
僕はその質問に、はいともいいえとも答える事が出来なかった。
何と言うべきか迷ったと言うよりは、自身の考えている問題と言うのが自覚のある物もあるにはあるが、他にも何かは分からないが、漠然とジャンヌの好意を素直に受け止めて良いのかと思う何かがあるような気がして、それを口にして良いのかと迷ってしまった。
「……話したくないのなら、無理に言う必要もないよ」
「いえ、話したくないと言うよりは……自分でも原因の全てが分かってないんです。
だから、今ここで思い当たる事を口にしても良いのかなって……」
「そうか……まあ、確かにダブルデート中に聞く話題でもないか。
ごめん、気が利かなかったかな。
ただ、これでもカウンセラーの仕事に就いている身だ。一般の人よりは人の心や精神については詳しいし、ただ話すだけでも大分楽になる。
何か困った事があったら、いつでも相談してくれ」
「はい……もしも、自分だけで解決策が導けそうになかったら相談します。
それに、今話したおかげで何となく自分がジャンヌと向き合う上でしなければならない事を再認識できたと思います」
「そうかい?まあ君の力になれたのなら、カウンセラーの面目躍如ってものさ」
そう広海さんが締めくくった後、ちょうど良く僕たちが注文するまでに列が進んでいたので人数分の飲み物とチュロスをプレーンとシナモンの2種類の味のものを2本ずつ注文する。
「オーナー君はチュロス何味にする?
俺はプレーンにしようかなって思うんだけど」
「あ、じゃあシナモンで」
「……もしかして気遣ってる?」
「?いえ、そんなことはないですけど……」
チュロスを受け取りつつ、購入したメロンソーダをストローで飲む。
ジャンヌ達ほど躍動的に動いた訳ではないにしろ、それなりに激しい運動をしていたために体の水分は汗となって大分抜けていた。
それだけに、喉を潤すヒンヤリとしたメロンソーダの炭酸は五臓六腑に染み渡る程に美味しく、思わず深く息を吐き出すほどであった。
そんなときであった
「なーなー聞いたか?
向こうの海を疑似再現したプールのエリアのとこでショーをやってるんだとさ。
暇だし行ってみようぜ」
「なんだそりゃ?
プールのイベント情報にそんなのやるだなんてなかったと思うんだが。
どこで聞いたんだそれ?」
「今だよ今。実際に見に行ってるダチから連絡がきたんだよ。
なんでも、イルカと馬が飛び交っているビックリショーだとよ
とにかく行ってみようぜ!」
と、再びメロンソーダを口にしていると近くを歩いていた2人組の若い男性たちがそんなことを話し合いながら通り過ぎていく。
話の内容に聞き耳を立てていた僕はメロンソーダを飲みながら反芻し、やや間を空けた後にストローから口を離す。
「……イルカ?」
「……馬?」
何となく聞き覚え、と言うか常に身近にあるような物として心当たりのあった言葉を呟くと、偶然にも広海さんと言葉が重なり互いに視線が交わる。
次いで紡がれた言葉もまた、重なるのは必然であったのだろう。
「「……まさか!?」」
今の2人組が誰のことを指しているのかを察し、僕たちは互いを見やると同時に頷き、ジャンヌたちの元へと駆け出す。
その方向は、今の話を挙げていた2人組の向かった方向と同一であった。
「ポップ、ステップ、グレイトオーシャン!」
「キラキラキラキラ、輝くの!」
ジャンヌがプールの波を高速で掻き分けるように進むイルカの上に立ち、イルカランディングをし、マリーさんはガラスの馬に跨ってジャンヌの通ったコースの間を縫うようにして駆け回る。
海を擬似再現したプールにおいて、ジャンヌの周りを跳ね回るイルカたちの姿は、まるでそこが海そのものを彷彿させるほどの光景だった。
更にそこにマリーさんの宝具である、フランス王家の紋章である百合の花の紋章の入ったガラスの馬が足元の水にガラスを展開して足場を作りつつ、水晶のようなオブジェを次々と作り上げていく。
まるでその場の水を凍りつかせたようなそれは、水面から現れては破裂して辺りにキラキラと輝く粒子をばら撒く。
イルカたちの泳ぎによって飛んでいる水しぶきとも相まって、太陽の光を乱反射しいくつもの輝きをその場に集まった観客たちを魅了し、さながらライブハウスのような歓声が辺りに満ちた。
「すげぇ!イルカとガラスの馬のショーなんて見たことねえや!」
「サプライズショーだかなんだか知らないけど、今日プールに来ていてラッキーだったぜ!」
「イルカさんもお馬さんも可愛いわ!」
「うおおおおおおお、ジャンヌぅぅうううう!最高にCOOLですぞおおおおおお!!」
「ああ、マリア!君は本当にどんな場所でもどんな時でも、輝きの導を僕へと届けてくれるんだね!」
各々が思い思いの感想を口にし、砂浜からジャンヌとマリーさんのショーに見入っていた。
なんか一部
だって考えても見てほしい。何故こんなことになっているのかは全くもって不明であるが、この屋内プールひいてはホテルタウンは総括して管理を行なっている人がいる。つまり、このホテルタウン全域の地主のようなものだ。
そんな中で、それ程時間が経っていないことを鑑みるに、その管理人から許可なんて得ていないだろう事は目に浮かぶ。
世界が崩壊する前でも、駅前や特定の地域で路上ライブ等をする際は基本許可が必要なのだ。それを無許可でこんな衆目を集めるようなショーなんてやればまあ人は集まるし、管理人の人は許可をしていないイベントと急に集まり出した人たちに何事かと慌てふためいてしまうであろう。
そしてその後の事後処理でまた僕の胃が大変なことに……今日僕はダブルデートしに来たんだけど!?こんなところにまで来て仕事とか冗談じゃないよ!
「ひ、広海さんマズいです!
急いでジャンヌたちのショーを中断させるなり、事後報告でも管理人の方に連絡を……あれ、広海さん?」
「うぉぉおおおおお!!マリィィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!マリーサイコーーーーー!!!」
くっそもうあの人あっちの住人に仲間入りしやがった!
どこから取り出したのか、両手に『マリーLOVE♡』のうちわと鉢巻を装備して振り回す様は、最早マリーさんの夫と言うよりは、どこぞのアイドルの親衛隊隊長のようにしか見えなかった。
声を掛けようにも広海さんはいつの間にか観客たちの最前列に移動していたし、この人混みの中ではとてもではないが広海さんのところまではいけそうにない。かといって大声を挙げても、歓声に掻き消されてしまう。
完全に打つ手がなくなってしまい、もういっそのこと広海さんのようにはっちゃけてジャンヌを応援したい気分である。
「あ……あ、あびゃー」
最早自分ではどうにもならないと悟った僕はその場で頭を抱え、プールのベンチに座り込む。
キリキリと痛む胃痛が限界を迎えて思考は既にもうどうにでもな~れ☆状態であり、この後のことなんて考えたくもなかった。
ああ、どうしてこうジャンヌはどこに行っても問題ばっかり起こすのだろうか……
若干恨めし気な視線をジャンヌへと寄越すと、ジャンヌは僕の視線に気づいてウィンクを返してきた。
いつもならドキリとするあざとい仕草も、今の心労Maxな僕には愛想笑いと数回ばかり手を振る仕草でしか返答が出来なかった。
この後、ホテルタウンの社長に呼び出し食らった。(予定調和)
姉・王妃様・カウンセラー「「「イエーイ!!」」」Foooooo!
弟君「……い、胃薬を……誰か胃薬を……」
Q1.広海氏の助言について
A.nibiiroさんの方の本編でチラッと語られていた彼らの関係についての情報からこんな助言になりました。もっとも、あちらの本編ではまだ関係は改善はされていないそうな。
と言う訳でnibiiroさん更新はよですぞー。URLは以下に掲載
崩壊した世界でマリーと夫婦性活する
https://syosetu.org/novel/200085/
Q2.一部混じってた生前からの熱狂的なファンたちは何者?
A.アイドルがショーやってたらどこへだって駆け付けるのがファンでしょう?(適当)
次回は弟君の謝罪フェイズから始まります