崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話 作:アルテマ
オルタクシー レビュー
| 安全性 | ★☆☆☆☆ |
| 快適性 | ★☆☆☆☆ |
| サービス | ★☆☆☆☆ |
レビュー本文
まず前提として、個人のレビューなので当たり前なのですが、今から私が書き連ねるのは私個人の感想ですので、特に高評価をしている方々は頭がおかしいなんて指摘するつもりはありませんのでそこはご了承ください。
ええと、まずタクシーの運転手の方が結構きつめの言葉遣いをしていた点ですが、まあ本人の経歴を考えれば敬われる立場にずっといたということから仕方がないと思い、私は特には気にしはしませんでした。 助手席に座っていた方は終始丁寧な言葉遣いでしたし。
で問題はここからなんですけど、席に着いた後で酔い止め薬を提供してくれて、一瞬サービスが良いなとは思ったのですが、酔い止め薬を服用したのを確認して運転手が安全で快適な運転をすると約束した直後にアクセルを全力で奥まで押し込んだんですよ。
もうね、この時点で大分このタクシーおかしいって思って、急激なGが体をシートへと押し込んでいる中で、これのどこが安全で快適な運転なのかと運転手に聞いたら、自分が運転する=安全であり、私が楽しく運転できていればそれ即ちお客様も快適であるとか言い出してきたんですよ。
それから道中で現れた怪物たちを轢いて突き進み、サービスと称してそれこのタクシーのどこに入れてたの?って思える量の重火器をジャラっと並べてレンタルしてきたり、タクシーの外に明らかにロケットにつけるようなブースターをくっつけて、爆発物の爆風も利用して空を飛んだりしたりとか……あの、安全てなんです?
もうここまででも頭おかしいよこのタクシーって思ってたのに、帰りにも同じタクシーを使う羽目になった際、何を思ったのかタクシーのエンジン改造して行きの危険運転が遊びに思える程の速度で走り出したりしたんですよ。 目的地にたどり着いた時、命があることは素晴らしいなとかそんなことを思ってましたよ、ええ。
トランザムってなんなんですか……エジソンさんとテスラさんはもう少し煽り耐性上げてください。 煽られたからって共同開発してオーバーテクノロジーの産物を作らないでくださいよ……
結論から言いますと、アトラクションの要領で利用する分には問題ない(?)のでしょうが、普通のタクシーを希望の方は絶対に利用しない方が良いと思います。
現代版クレイジータクシーの名に偽りがないです。いやホント。
レビューへの返信
オルタクシーの安曇でございます。
この度はご迷惑をおかけいたしましたこと、深くお詫び申し上げます。
今回のお客様のレビューを参考に、スタッフ一同より多くのお客様に安全で快適なドライブを提供していく所存でございます。
またのご利用をスタッフ一同お待ちしております。
なんだ貴様、あの程度の速度で根をあげるのか。 鍛練が足りんぞ鍛練が。
最低でも突然空に投げ出されても平常心を保つ程度の胆力を持て、軟弱者。
「これは僕がおかしいのかな?」
数日前に書き込んでおいたオルタクシーのレビューに返信がついていたので確認してみたら、何故かボロクソに扱き下ろされてました。
いや、まあ僕としてもかなりオブラートに包んでいるとはいえ相当の酷評であったのは分かってはいるのだけど、オルタクシーに乗っていた際に助手席に乗っていた安曇さんは丁寧に返信しているのに対して、名乗っていなくても誰が書いているのかがよく分かる罵倒には正直もの申したい気持ちでいっぱいなのだが、残念ながらレビューに追記や訂正をするのは不可能なようであり、諦める他ない。
と言うかどうしてレビューの返信を2人で書いたし。 普通1人が返信しておけばよいのに、しかも無難に占めることも出来た筈なのに、何故余計な書き込みをしたのだこの暴君様は。 前半が丁寧だっただけに上げて落とされたような気分である。
安曇さんの書いた返信も返信で、完全に企業側のレビュー返信のテンプレのお手本のようなものだし、真面目に取り合ってくれたのか不安である。
……いやまあ、今後利用するつもりなんてないのだけども
「弟くーん、今大丈夫ですかー?」
そんなことを考えながらパソコンの画面と睨み合っていた中、ジャンヌがノックなしで部屋へと入ってきた。
何故か僕がいる部屋に入る際にジャンヌは絶対にノックをしないのだが、何度注意しても直さないので諦めているので、特に目くじら等は立てずにパソコンの画面から目を離してジャンヌの方へと向けた。
「うん、大丈夫だよ。 午前の仕事は終わったし、午後はスポンサーとマネージャーも交えた打ち合わせぐらいしかないから」
時間としては昼時よりやや早いくらいの刻であり、今述べた通り既に仕事を終えて、PCでの情報収集のついでで先日書いたレビューの確認をしている程度には手が空いている。 マネージャーから色々仕事を教えてもらい、出来ることが増えて、必然任される仕事も多くはなるとは思っていたのだが、自分が考えていた程には仕事が一気に増えるようなことはなかった。 恐らくはマネージャーがまだ僕が未成年であることも踏まえて、一気に負荷が来ないように気を遣ったスケジューリングをしてくれているのだろう。
その気遣いは本当に嬉しいのだが、同時にまだまだ僕は能力を認められてはいないのだろうかと少しだけ不安になる時があるが、前まではただの高校生だったのだから、仕方がないのだろう。
……でも、あまりに時間が空いていると、ジャンヌが僕にここぞとばかりにひっついて来るから、心労的にももう少し仕事を回してもらいたいのが本音である。(矛盾)
とにかく、昼食を食べるにはまだ早い時間帯、つまりはまだまだ仕事をしているべきではあるのだが、手持無沙汰で正直出来ることがないと言うのが現状だったので、ジャンヌには正直に手が空いていることを伝えた。 手が空いていると言うと、高確率でひっついてくるジャンヌの事を考えると、まだやることがあると言いたいところなのだが、嘘をつくと、『お仕置きです!』と仕事中でも構わず人目のないところに連れ込んでおっぱじめるので、ここでは嘘はつかず、ひっつかれそうになったら魔術礼装を起動して逃げ、どうにか撒くのがベターなのである。(尚、僕が逃げ切れる確率は良くて2割弱である)
「それは丁度良かったです。 実はですね、今日まで中々機会がなくて紹介が出来なかったお姉ちゃんのお友達を弟君に紹介しようと思っていたんです」
ノータイムでひっついてくることを警戒し、いつでも魔術礼装を起動できるように身構えていた僕だったが、ジャンヌの伝えてきた用件が至って普通だったためにやや気が抜けた。
まあ、普通の用件であれば僕としても断る理由もないのだが……紹介したい友達とは誰のことなのだろうか?
「それくらい全然かまわないけど……紹介する機会がなかったって、それはどうして?
ジャンヌがSNSを通じて色んな人と交友関係を築いているのは知っているけど、もしかしてSNSで会った人がここに来ているとか?」
ここで言うSNSとは、ソーシャル・ネットワーキング・サービスの事ではなく、サーヴァント・ネットワーク・システムの略である。
サービスの内容に差があるのかと言われれば、それほど何かに差があるわけでもなく、サバッター等の呟き及びブログのようなものが多く、名前の略称にある通り、サーヴァントのいるマスターが画面を見せてもらうのを除き、サーヴァント同士でしか情報の共有が出来ない。
この崩壊世界において、多くのサーヴァントが利用しているこのサービスだが、その原理も開発者も分かってはいないらしい。 それこそ一般人でも利用できる掲示板や呟きサイトでは、『エジソンの霊界通信の応用あるいは上位互換』『BBちゃんのBBチャンネルのネットワークが利用されている』等、なぜこんなにも早く一般人でも使える回線が復旧してきているのかも含めて日夜考察や議論が繰り広げられている。
とまあ、そんなシステムをジャンヌもまた利用し、よくイルカショーの宣伝なんかもしているらしいのだが、その宣伝の関係で知り合った者の事なのだろうか?
「いえいえ、そう言った知り合いではなくて、こちらに現界する前からのお友達ですよ。
あの子も私と一緒に現界してはくれたのですが、少々ヤンチャなところがありまして、そこを矯せ……改善してもらうために躾を……いえ、説得をする必要があり、それが思ったよりも時間がかかっちゃったんです」
(絶対その説得は後の言葉に(物理)あるいは(洗脳)の文字が入るやつでしょ)
口には出さず心中で思うだけで抑え、SNSではなく現界した時からの友人と言う言葉について気になった。
ジャンヌはこの世界に現界してからは殆ど僕と一緒の時間を過ごしているのだが、そんな友人と言うのを僕は目にしたことがない。 それこそ、ジャンヌに付き従いショーを共にするイルカぐらいしか心当たりが……
「……なんだろう、すごく嫌な予感がする」
なんとなく思い当たる物がある筈なのだが、何故か思考にハッキリとしたものが出てこない。 喉元まででかかっている、と言うよりは脳が感づくなと現実逃避を強制させているような感覚だった。
そんな渋い表情をする僕を他所に、ジャンヌはその友達に入ってくるように促した。
「ではご紹介しましょう! リースXP、入ってきていいですよー!」
「あそぼ」
「………………」
ジャンヌが手の平に視線を集めて誘導した扉の先……ではなく、何故か床下からリースたち同様の謎の水しぶきを起こしながら床からにゅっと現れたのは、頭から背中にかけて灰褐色と、真っ白な腹部。 曲線状を描く頭部の少しだけ開かれた口からは、たった一本あれば人間の腕など引きちぎれそうなほど大きく鋭い長い三角形状の歯。 更には光を灯さない真っ黒で無機質な瞳は良くできた剥製のような印象を与えつつも、白いラインのようなエラによって呼吸をし、一定のリズムでぶよぶよと揺れるエラの付近が生命活動をしていることを主張しており、人形めいた無機質な瞳とも相まってかえって恐怖を煽るようであった。
僕の目の前、オーナー室の机を挟んですぐに、人食いザメで有名なホオジロザメがいた。
「……………」
「弟君はリースXPのことを知ってはいるでしょうが、まだ直接顔合わせをしたことはないですよね?
とってもいい子ですから、弟君も仲良くしてあげてくださいね」
「……………」
「ほら、リースXPも弟君に挨拶を」
「あそぼ」
「ふんふん……そうですか、それは良かった!
弟君、リースXPも弟君と仲良くやっていきたいとのことです」
「……………フーッ……」
「どうしましたか弟君、急にため息なんか吐いて?
何か悩みでもあるんですか?」
「うんたった今悩みが芽生えてきた。
……ちょっとタイム貰っていい?」
「……? 私は構いませんけど……あら、リースXP?」
両手を組み頭を抱える僕が何に悩んでいるのか察してない様子のジャンヌは怪訝そうな表情をするばかりであるが、今の僕に事細かく心情について説明する余裕はなく、目の前のとんでもない厄ネタに対してどうすべきなのかと考えることと、それから放たれる原始的な恐怖が混ざり合って碌に行動や思考が出来なかった。
ほぼ思考停止状態と言える状態で固まっているなか、頭を抱えた視線の先で影が差し暗くなった。
思考は停止していても、それくらいのことは認識出来ていたので、その原因がなんなのかを探るためにほぼ反射的に頭を上げてしまった。
「あ・そ・ぼ」
「えっ」
頭を上げた僕の目と鼻の先には、大きく開け放たれた口と無数に並ぶ強靭な歯の数々が映っていた。
突然の状況に僕は間の抜けた声を漏らすも、間髪入れずに口は閉じられていき、気づけば僕の周辺は暗闇に包まれて……
ガブッと、頭から食われた。
「…………」
「…………」
「おお、これはリースXPが気を許した人への挨拶!
私でもその挨拶をしてもらうまでそれなりに時間を要したのに、初対面でその挨拶をされるなんて……流石はお姉ちゃんの自慢の弟君です!」
ジャンヌが何故か分からないが感心している様子の言葉は聞こえるのだが、唐突に起きた変化に僕の思考はついていけず、噛み付いたまま無言のサメと一緒に数秒間黙りこくっていたのだが、今自分が客観的に見てどう言った状況であるのかを把握した僕は1つため息をまた零した。
「……もう普通の仕事がしたい」
頭からサメに噛みつかれながら頭を抱える姿で弱音を吐く僕の姿は、自分で考えてもシュールな光景だったと思う。
「で、このタイミングでリースXPの紹介をしたのはなんで?
機会がなかったのは事実かもしれないけど、それだけじゃ無いんじゃない?」
噛みつかれたまま頭を抱えた状態での愚痴発言の後、リースXPに離れるように伝えると素直に離れてくれたので、気になっていた点を早速ジャンヌへと聞いてみる。
僕から離れる際もその迫力満点な姿を真正面から直視していたが、あの衝撃的な登場から含めて悲鳴をあげなかった僕を褒めて欲しい。
さて、それはさておきリースXPを紹介する機会が中々なかったというのはよくわかるが、ジャンヌと初めて会った日からいる友達であるのなら、その紹介に至るまで半年以上も期間が空くと言うのは、いくら何でもタイミングだけの問題ではないのは明白である。
ジャンヌがリースXPを紹介する前に言っていたヤンチャな性格(マイルドな表現)の改善(マイルドな表現2)に要した時間がこの半年ほどの時間だったと言うのは分かるが、僕にただ紹介するためだけにその説得(物理or洗脳)をしたのかと言われると、根拠はないがそれだけではない気がしたのだ。
「ええその通りです弟君。 勿論弟君とリースXPに仲良くなって欲しいと言うのもあるのですけど、この『シルク・ドゥ・ルカン』の名にある通り、ルカンにあたるリースXPもお客さんに紹介したいなと考えたんです」
「ルカン……もしかしてルカンってサメって意味なの?」
「ええ、フランス語ではそうなんですよ弟君」
それは知らなかった。 この世界におけるシルク・ドゥ・ルカンはジャンヌが命名したものであることは説明したとは思うが、アプリのFGOの2019年の夏イベにおいてもカジノ(尚カジノ要素はほぼ皆無)として同じ名前で登場している。
ジャンヌが色々とアクセル振り切った行動(姉ビームとか)をし始めたのがあのイベントだったが、ルカンの意味までは知らなかった。
「ってちょっと待って。 お客さんに紹介したいって、それまさか……」
「はい、リースXPもイルカショーに参加させようと思ってるんです!」
いやアカンでしょ。 イルカショーと銘打ちながらそこにホオジロザメが混じるのは絵面的に良くないと言うか、普通の感性をしている人間は間違いなく怖がるだろうし、子どもとか絶対泣いちゃうよ。
僕は今回こそ、これまでこの世界でサメ以上に不気味で威圧感のある化け物たちを見てきたためか、SANチェックにこそ成功したものの、怖いものは怖い。
なんせホオジロザメは、全長が最低でも3mを超え、人を半分は飲み込めそうな口と鋭利な歯、そして噛むための顎の力は300kgと人間の9倍はあり、人なんて簡単に殺せてしまう。
そんな人を殺すことなど造作もない存在がすぐ近くにいて平常心を保っていられるのは、サーヴァントを除けば余程の胆力の持ち主か、よっぽどサメが好きなマニアだけだろう。
そう結論づけ、ジャンヌにやんわりと難しい旨を伝える。
「あー……ジャンヌ、正直リースXPをショーに出すのは現状かなり厳しいと思う」
「……弟君もやっぱりそう思うんですか?」
「え、やっぱりって?」
「リースXPをショーに出すにあたって色々と調べていたのですけど、サメが人を襲う生き物っていう先入観から一般の人たちに怖がられてるって話は最近知ったんです。
一般的にサメと言うと海において人に襲い掛かるイメージですけど、一口にサメと言ってもたくさん種類がいて、その中には大人しい性格のサメもいますし、リースXPのような人食いサメとして世間に知られるようなサメも、好き好んで人を襲うのではなく、あくまで捕食行動で襲うので、お腹が一杯なら無闇に人を襲ったりはしないのです。
人を襲った事故だって、あまりの空腹の状態で人をペンギンやオットセイと勘違いしたとか、不用意に近づいて刺激したとかと言われてて……とにかく、サメ=人を好んで襲う生き物と言うのは行き過ぎた考えなんです。
だからこそ、リースXPにショーに出てもらって、サメの怖いイメージを払拭したいとお姉ちゃんは思ったのです。
リースXPの可愛さを知って貰えれば、必然サメのイメージも良いものへと変わるかなって」
そう言われてみれば、確かにジャンヌの言うことには納得できる点が多くある。
サメと言われて思い浮かぶのはホオジロザメと言う人は多いと思う。 そしてサメが人を襲うと言うイメージの根幹は、実際にサメに襲われたケースではなく、映画などでさも人を好んで襲うかのように脚色をした結果、人々にそう言ったイメージがついたのだと思う。
実際、ホオジロザメより強い海洋生物は少ないがいる訳だし。
(そう言う意味では、リースXPひいてはホオジロザメは被害者……なるほど、無辜の怪物はこう言う風に生まれてしまうのかな)
無辜の怪物。 Fateシリーズにおけるスキルの1つではあるが、一種の呪いのようなものだ。
と言うのもこのスキル、その対象の人物の生前の行いによる人々の推測や強い先入観が、対象の人物の姿や能力を変質させてしまうもの。
分かりやすい例だと、アヴェンジャーのクラスを持つ音楽家アントニオ・サリエリか。 彼はモーツァルトの作品を盗作した、モーツァルトを毒殺したなどと言われていたが、実際はこれらのことを本当にしたのか立証はされていない。 にも拘わらず、当時のスキャンダルや後世の映画から、サリエリと言う人物のイメージが『モーツァルトに嫉妬し殺した者』と多くの人が思った結果、モーツァルト……アマデウスを殺す者として英霊の座に登録されてしまった。
今回のケースだとサメ=人の天敵のような先入観が、リースXPのあり方をも変えうる可能性があると言う話だ。
最も、リースXPはあくまでサーヴァントであるジャンヌの使い魔であるのだから、無辜の怪物のスキルを手に入れて某サメ映画ばりに人々に襲い掛かるという事もないだろうが。
(でも……)
リースXPやホオジロザメの風評被害については確かに、人の勝手な都合に巻き込まれている被害者であると言うのは分かる。
しかし、しかしだ。
(見た目と大きさ、これがかなりネックだよね……)
ホオジロザメに対する風評被害を抜きにしても、人よりも大きな巨体で尚且つ鋭い牙と無機質な瞳、これらの要素がどうしても恐怖を煽ってくる。
前述した通り、僕は慣れてこそいるが怖く無いかと言われれば、怖い。 見た目というのはどうしても相手の印象をある程度決めつけてしまう。 これが超強面の筋肉モリモリマッチョマンだけど、実は結構優しい人とかだったらやりようはあるとは思うが、いかんせんリースXPと同種のホオジロザメは海におけるヒエラルキーの上位者たる海洋生物。
多少意思疎通は出来そうだが、リースXPが人外の生物であることには変わりないのだ。
ふとリースXPに視線を向けると、彼(?)もまたこちらへと視線をよこしじっとこちらを見つめてきた。
……うん、ちょっとやっぱり怖いけど、少なくともリースXPに人を襲うような意思は感じられなかった。
リースXPが口にしている言がそのままの意味であるのなら、リースXPはただ自分と遊んでくれる友達が欲しいだけの、無邪気な子どものようなものなのであろう。
そんな子どもの無垢な願いくらいは叶えてあげたい。 しかし名案はどうにも思いつかない。
「僕としても、リースXPの良さとかをショーを通してみんなに伝えられればいいとは思っているけど、やっぱりどうにも難しいね……。 ただ会場に出すだけじゃ怯えられるのは勿論、イルカショーに一緒に出しても効果は薄そうだし……」
「リースXPに口をずっと開けているようにお願いして、私がリースXPの口の中に入るって言うパフォーマンスはどうでしょう? リースXPが無闇に人を襲うことはなく、私の言うことは聞くと分かれば、怖がられることもなくなるのでは?」
「いや、それだと『サメの口の中に頭をいれるなんてすごい度胸だ』って思われるだけで、関心が向くのはジャンヌに対してだけだよ。 それじゃあ根本的な解決にならない」
と言うかかなり体を張ったエンターテイメントを提供しようとしているなジャンヌ……まあそれはさておき、ジャンヌの提案したようなパフォーマンスは見ている側に不安を与え、そこから更に安堵や感心を生じさせて盛り上げるようなものなのだから、これじゃあ裏目になってリースXPに対する目は依然と変わらないものとなってしまう。
お互いに考えあぐねて首を傾げていたその時、僕の座る席の後方から声を掛けられもたれかかっていた椅子から弾かれるように立ち上がってしまう。
「失礼ながら、お話は聞かせていただきました」
「のわぁ!? ぎ、ギルさん!? 前から言ってますけど、急に後ろから現れないでくださいよ!」
「ははは、善処します」
朗らかに笑いながら、改善する気ほぼ皆無の常套句を口にするシルク・ドゥ・ルカンのスポンサーたる幼少期のギルガメッシュ王こと子ギルさん。 ジャンヌと同様、世界が崩壊してからの付き合いは長い方ではあるが、出会った頃からこの人は油断している絶妙なタイミングで後ろから現れる悪癖があるため、立場の事など諸々含めて心臓に悪い。 やめて欲しいとこれまで何度も言っているのだが、一向にやめてくれないので最近は諦めの領域に入りつつあった。
「……ああなるほど、こういう子でしたか」
そんな苦手な相手であるギルさんはリースXPへと特に動じた様子もないペースで歩み寄り、すっと手を伸ばしてリースXPを撫でた。 リースXPはそれを特に嫌うような素振りは見せず、撫でられるがままであった。
……これもカリスマA+の力なのだろうか? そう訝しむ僕を他所にギルさんはリースXPを撫でつつ口を開く。
「さて、このホオジロザメであるリースXPと共にショーを行い、この子の良さとホオジロザメの風評被害を改善したいとのことですが、僕にいい考えがあります」
「その最後の提案の仕方は一般的に良い案だったためしがないのですが」
「あの、その考えとは一体なんなのでしょうか?」
僕の茶化しを完全にスルーしたジャンヌがギルさんに詳細を問うと、彼はいつも通りの笑顔から、どこか人を揶揄うような嗜虐心を含んだかのような小さな笑みを僕の方へと浮かべ口にした。
「いえね、前々から僕は思っていたのですけど、このシルク・ドゥ・ルカンのヒーローショーには相棒ポジションのマスコットキャラが足りないと思いまして」
「……はい?」
何の話をしているのか分からず素っ頓狂な声を漏らしたが、何故か僕の体に正体不明の悪寒が襲い掛かってきた。
……ああまた胃痛の予感がする……
リースXPの描写をするために久しぶりにPSVR起動してVR Worldでサメとの遭遇やってきたんですが、VRって分かってても怖かったです。 人より大きいってだけで大分恐怖の対象ですよ。そんで肉食で牙鋭いとかだと猶更
Q1.今までリースXPは何をしていたの?
A.イルカたちと一緒に周辺のパトロールを目立たないようにしたり、海で遊んでたりしてました。
Q2.リースXPはコラボ回で出すって言ってなかった?
A.残念だったなぁ、トリックだよ