※この作品はR-18です。

崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話   作:アルテマ

38 / 46
実況『前回までのあらすじ!
   悪の組織の習わし、深刻な人材不足に見舞われてるとしか思えないほど何度も同じ悪役(ヴィラン)を派遣するかのように、シルク・ドゥ・ルカンのイルカを奪いにやってきたブラックバード。
   彼の卑劣な策略により、観客の中からヒロインを爆誕させることができなかったキュア☆ドルフィンのピンチに、謎の仮面のオーナー、マスク・ド・ルカンが颯爽登場!
   マスク・ド・ルカンとその相棒リースXPの活躍により、ブラックバードを追い詰めたが、対するブラックバードは余裕の様子!
   さあ一体、勝負の行方はどうなるのか!? そしていつになったらキュア☆ドルフィンはレギュラーの相棒ヒロインを得て、【1人でプ〇キュア】状態から脱することが出来るのかぁぁああ!!?
   ……ところでスポンサー、ここにかつてヒロインも務めた戦闘系ヒロインに相応しい超絶美少女がいるのですが……え、ダメ?……そうですか……』


解説『(実況の方が天職と思うのですがね……まあ言わぬが花でしょう)』




謎の仮面の少年、マスク・ド・ルカン! (後編)

 キュア☆ドルフィンのピンチに駆けつけた仮面の少年、マスク・ド・ルカンの参戦により、窮地を脱したキュア☆ドルフィン。 既にスタジアムに立っている下っ端戦闘員はおらず、残った首魁であるブラックバードをマスク・ド・ルカンたちが睨みつける。

 構図としては1対3と完全に逆転し、ブラックバードには既に勝ちの目は傍目にはないように思えた。

 

 

「これで逆転だ。 部下たちはやられ、もうお前1人しか残っていない。

 諦めて降参しろ、ブラックバード」

 

 

 

(んー……いつも可愛い弟君ばかり見てたので、こう言うキリッとしている感じも新鮮でいいですね……いえ、勿論どんな弟君でもお姉ちゃんは弟君が大好きなことに変わりはないのですが……なるほど、これがギャップ萌え……おっと、いけません鼻血が)

 

 

「あそぼ」

 

 

 マスク・ド・ルカンの方を向いて、何やら鼻を抑えているキュア☆ドルフィンを訝し気に思いつつも、マスク・ド・ルカンはブラックバードに降伏するように求める。

 敵にも慈悲を向けるその姿にマスク・ド・ルカンの株が上昇するも、ブラックバードはそんな発言を受けて素直に受け取るような者ではなく、床に唾を吐いて返答をする。

 

 

「ケッ、だれがそんなことするかよ。 ここで降伏するくらいなら、俺様はここで最後までテメェらと戦って散った方がマシだっての。

 ……それになぁ、テメェらが勝利を確信するにはまだ早いぜ?」

 

 

「どういうことだ」

 

 

「そのままの意味だよ! 俺様は言ったよな、まだまだこっちには切り札があるってよぉ!」

 

 

 マスク・ド・ルカンの問いに答えるように、ブラックバードは片手を天高く突き上げる。 拳の突き上げられた方へと誰もがつられて空を見上げれば、スタジアムの外の海の上を飛来する何かがスタジアムへと急速に近づいていた。

 一体何が、と思う中ブラックバード以外で飛来する物体を最初にはっきりと認識したのは、暗闇の森の中であろうとも敵の位置を正確に把握する目を持つジャガーマンであった。

 

 

『あれはなんだ!? 鳥か? 飛行機か?

 いや、海賊船だぁああああ!!

 何ということでしょう! どう見ても飛行機能なんてないように思える帆船が、空を海の如く飛んでいるんだニャー!

 ま、まさかあれがブラックバードの切り札なのかぁ!?』

 

 

「ご明察だ! あれこそ、俺様の切り札である空をも行く海賊船、【ブラックスカル号】だ!

 こいつを出しちまった以上、今度こそお前らの命運も尽きるぜ!」

 

 

 遂にスタジアムのすぐ近くにまで接近して停止し、ブラックバードの指示を待つようにその場でホバリングをするブラックスカル号。 船に設置された大砲が一斉に動き出し、照準を定める。 すなわち、スタジアム中央で身構えるマスク・ド・ルカンたちへと大砲が向けられ、発射の時を今か今かと待ちわびていた。

 

 

『な、何ということだぁ!? またキュア☆ドルフィンとマスク・ド・ルカン、それにリースXPがピンチに陥ってしまったぁあ!

 と言うか完全に見た目普通の帆船のくせに空を飛ぶとかズルくない!? 空を飛ぶならプロペラつけるとか、相応の見た目にしてから飛びやがれニャー!

 ……あ、ちなみになんで飛んでるのか分かります、コトミネさん?』

 

 

『ブラックバードの宝具である【アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)】……失礼、切り札たる【ブラックスカル号】は海の近くなら常時展開が可能であり、尚且つ、こちらはあまり知られていませんが、魔力を大量に消費すれば陸も空も進むことが出来るのです』

 

 

『な、なんですとぉ!? 燃費面を抜けばかなり万能な船なのではないでしょうかそれは!? 恐るべし、ブラックバード! よもやこんな隠し玉を持っていたとは、このジャガーの目を以ってしても見抜けなんだ……。

 しかしコトミネさんはその情報はどこで得たので?』

 

 

『ああほら、私一応ルーラークラスのサーヴァントじゃないですか。

 それでブラックバードに【真名看破】を少しばかり』

 

 

『それは職権乱用ならぬ、クラススキル濫用では?

 ジャガーは訝しんだ』

 

 

『私的利用ではないのでセーフですよ』

 

 

 気の抜けた会話をする実況と解説を敢えてスルーし、ブラックバードは突き上げて握り込んでいた拳を開き、一斉攻撃の合図を出そうとする。

 

 

「こいつはちょいとばかり強力でなぁ、1度放てばこの辺りは焼け野原になっちまう。

 当然、テメェらだってただじゃすまねぇぞ。 この会場ごと、テメェらを吹き飛ばしてやらぁ!」

 

 

 自身の切り札の登場で余裕を取り戻したらしいブラックバード。 それに対し、マスク・ド・ルカンはキュア☆ドルフィンを守るようにして前に出て、傍らのリースXPに耳打ちをする。

 

 

「危ないから下がって。

 リースXP、行けるか?」

 

 

「あそぼ」

 

 

「……分かった、任せる」

 

 

 体を引き絞り、構えるようにするリースXP。 何をしようとしているのか、対面しているブラックバードには分からず怪訝に思うも、すぐにその思考を振り払う。

 何故なら相手が何を考えているのかは不明だが、迎撃であれ回避であれ防御であれ、ブラックバードには既にブラックスカル号での攻撃をやめると言う選択肢はないのだから。

 

 

「何をしようとしているのかは知らねえが、もう遅いぜ!

 合計40門の大砲による砲弾の嵐、防げるもんなら防いでみやがれ!!」

 

 

『大変大変またピンチに次ぐピンチ! だと言うのに、マスク・ド・ルカン変わらず冷静!

 リースXPにも何やら指示を出していたようだが、あんな数の大砲にどう対処するつもりなのか!?

 そして先ほどからキュア☆ドルフィン棒立ちしているが、一体どうしたのでしょうか!?』

 

 

「お、弟君……♡」

 

 

『何ということだー!? メスの顔晒しながらごく自然とマスク・ド・ルカンの正体をばらしてしまいました! キュア☆ドルフィン、エロゲのメインヒロインよりもチョロイ上にとんでもないネタバレをしております!

 そうです! 実はあの仮面の少年の正体は、キュア☆ドルフィンの弟君こと、シルク・ドゥ・ルカンのオーナー君なのです!

 な、なんだってー!?』

 

 

『……あの、既にやってしまっていた手前*1今更ですが、その手のネタバレをこちらからするのは禁則事項では?』

 

 

『ぶっちゃけ常連の人たちにはバレバレなので問題ないです。

 ヒロインオーディション落とされたこと根に持ってるとかジャガーは思っていないのです、はい』

 

 

※一応ジャガーマンの言う通り、常連には声と身長で初登場時から身バレしております。

 

 

「弟だかオーナーだとか、今更もうどうでもいいぜ!

 だってもうテメェらはもうおしまいだからなぁ! あばよヒーローども!」

 

 

 気の抜ける実況と解説の会話の切れた瞬間、遂にブラックバードの上げられた手がマスク・ド・ルカンたちの方へと下げられ、ブラックスカル号へと砲撃開始の合図がされた。

 瞬間、待ちわびていたとばかりにすぐさまブラックスカル号の40門の大砲が、重苦しい砲撃音を発しながら次々と斉射されていく。

 迫りくる砲弾へ真っ先に行動を起こしたのは、いつでも動けるように構えていたリースXPだった。

 

 

「お、おおおおおおお!」

 

 

 唸り声を上げて砲弾の嵐へと躊躇いなく突っ込んでいくリースXP。 誰もが無謀にも思えたその行動だったが、マスク・ド・ルカンがリースXPの背中へと手をかざした。 

 その瞬間、リースXPの体が光だし、淡いオレンジ色のオーラのような物を放つ。 そしてオーラは形を形成し、やがてリースXPを包み込む巨大なサメ型の輪郭を作り出し、向かいくる砲弾からマスク・ド・ルカンたちを守るようにその場で立ち塞がった。

 

 

「なにぃ!?」

 

 

 その巨大なサメにブラックバードの放った砲弾が直撃し、次々と着弾と爆発が起こるも、そのオレンジのオーラは揺らぎすらせず、全くの無傷のままでいる。

 絶対の信頼を寄せていた自身の切り札による攻撃を完全に真っ向から防いでいるその姿に、ブラックバードは驚愕を隠せない。

 

 

『なん、だと……!?(本日2度目) 一体我々の目の前で何が起こっているのでしょうか!?

 リースXPが光ったかと思えば、いきなり会場に巨大なサメが現れ、ブラックバードの船の砲撃を防いでおります!

 あれは一体なんだ!? まさかス〇ンドか? スタ〇ドなのか!?

 遂にサメすらもス〇ンドを呼び出してしまうようになってしまったのかぁ!?』

 

 

『あれはおそらく楯鱗(じゅんりん)を魔力で強化・拡張したものを具現化しているのでしょう』

 

 

『じゅんりん???』

 

 

『サメやエイの鱗のことを楯鱗と呼ぶのです。

 簡単に説明すると、サメの鱗は歯と同じような構造をしています。

 エナメル質で外部を覆っている歯と同じ構造、つまりそれは水晶なみの硬度を持つと言うことになる。

 リースXPはその水晶なみの硬度を持つ楯鱗をマスク・ド・ルカンが魔力でその概念を具現化し、更に広範囲に広げることで───』

 

 

『コトミネさん長いです! また長い上に難しくなっています!

 と言うか、ジャガー的にもその解釈は無理があるのではと思うのですが』

 

 

『まああまり深く考える必要はありません。 要はリースXPとマスク・ド・ルカンのコンビネーションによる魔術防御とでも思えばよいのです。

 あの数の砲撃にも揺れない耐久性は凄まじいですが……それはあのオレンジの巨大なサメに限った話なのでしょう』

 

 

『と言うと?』

 

 

『リースXPとマスク・ド・ルカン、両者に注目すればすぐに分かります。

 堅牢な分、やはり相応の魔力を食らうのでしょう。 彼らの様子を見るにかなり苦しそうです』

 

 

 一見ブラックバードの切り札を防ぎ有利に見えるが、実際に追い込まれているのはマスク・ド・ルカンとリースXPである。

 天草の解説の通り、彼らがとった防御の手段は強力であるが、魔力の消耗がかなり激しい。 マスク・ド・ルカンはリースXPへと魔力を送っている片手を、もう片方の空いている手で抑え大きな力で押され揺れる腕を懸命に支えている。 リースXPもまた、自身にかかっている負担に耐えるように雄たけびを上げ続けるも、それも途切れ途切れのものとなっており、ブラックバードに突破されてしまうのは時間の問題と言えた。

 

 

「ゲハハハハ! 往生際が悪い奴らだぜ!

 いい加減諦めて楽になっちまいなぁ!」

 

 

 マスク・ド・ルカンたちが実際は追い詰められていることを知るや否や、ブラックバードは調子を取り戻し、マスク・ド・ルカンたちを追い詰めるかのように口調とブラックスカル号による攻撃の勢いを強める。 

 巨大なサメに砲弾が直撃するたびに、そのサメに変化はなくともマスク・ド・ルカンとリースXPの苦し気な様子は更に強まる。

 誰がどう見ても危機に陥っていることが分かり、正に万事休すと言える状況だった。

 そんな中、スタジアムのスピーカーから興奮したような声が響き渡る。

 

 

『ピンチピンチ! 大ピンチだニャー! このままじゃマスク・ド・ルカンとリースXPが危ない!

 だがしかーし、諦めてはならない! 古今東西より定められたお約束の通り、正義は必ず勝つのです!

 はい会場のみんな、キュア☆ドルフィンにちゅうもーく!

 おーい、キュア☆ドルフィンー!!』

 

 

「弟君……♡」

 

 

『ってまだそこから立ち直ってないんかーい!? どんだけオーナー君にぞっこんなの!?

 いい加減帰ってきてジャンヌちゃん! ここでヒロインショー中断とかされると私のギャラも中途半端なものになりそうだから妄想の世界から現実に帰って、そしてちびっ子たちに夢と私にギャラを与えてくれー!!』

 

 

『そんなこと口にする方が報酬の減額をされそうなものですが……』

 

 

「……はっ!? 失礼しました、ついうっかり見惚れてしまい……。

 コホン、会場のみんな! どうかおと……マスク・ド・ルカンとリースXPに力を送って上げてください!

 みんなの力が必要なんです!」

 

 

 実況の本音の混じった呼びかけに、トリップしていたジャンヌは正気を取り戻して誤魔化すように咳ばらいをした後に、会場の観客に呼びかける。

 初見の者たちは何がなにやらといった様子だったが、常連の観客が懐から手馴れた様子でペンライトを取り出すのを目にし、それに合わせて各々このシルク・ドゥ・ルカンの入口にて配布されたペンライトを手にする。

 

 

『さあみんな、ペンライトは持ったか!

 持ったならば、あの場所で戦っているマスク・ド・ルカンとリースXPに聖なる光を向け、私たちのパワーを送るのだニャー!

 頑張れ、リースXP! このジャガーの戦士であり、みんなからは忘れられている要素だけど、なんだかんだ神霊であるジャガーマンの力を、なんか神々しい演出と共に分けてやろう!

 海のギャングの底力を見せてやるんだニャー!!』

 

 

『では私もこの流れに乗りまして……

 さあ私たちの力を分けましょう!踏ん張り時ですよ、マスク・ド・ルカン!

 会場の皆様も、我々に続いてください!』

 

 

 実況と解説の2人がマスク・ド・ルカンとリースXPへと手を翳すと、彼らの頭上に光り輝く光球が現れる。

 幻想的な光景に一瞬驚くが、解説の言葉を受けた観客の1人がペンライトの光を光球へと翳すと、仄かに光球の色に変化が起き、他の観客もそれに続くように光球へとペンライトの光を向けて、マスク・ド・ルカンたちに声援を送り始めた。

 

 

 

「負けないで、マスク・ド・ルカン!」

 

 

「サメさんも頑張ってー!!」

 

 

「がんばえーキュア☆ドルフィンー!!」

 

 

「キュア☆ドルフィンに愛されてるとか羨ましいぞ、そのまま爆発しろリア充がー!!」

 

 

「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ、不遜にも聖処女たるジャンヌの隣にたつ者に力を与えるなど……!

 し、しかしジャンヌのピンチを救うためならばこのジル・ド・レェ、我が信念をこの一時のみ曲げることも厭わないですぞぉおおお!!」

 

 

「どうしようガネーシャ様。 この追い出された筈なのにいつの間に帰ってきた人、微妙にズレた方向でヒーローショーの観客として観戦している気がする」

 

 

「その人にとっては推しがキュア☆ドルフィンのみなんだから、別に普通っスよ。

 熱狂的なとこも含めて、アイドルのファンと言うのは一種の狂信的な信徒みたいなもんなんスから、害がない限りはスルー推奨っス」

 

 

 毎度のことながら変な声援や嫉妬のヤジも飛ぶが、会場の観客の声援を受け光球は更に輝きを増し、その光がマスク・ド・ルカンとリースXPへと刺し込むと、彼らの体に力が漲り、押し付けられていた斥力を震えながら支えていたような状態から復帰し、寧ろ力の本流の後押しを受けて押し返すような勢いで力を込めていく。

 

 

 

「ウ、オォォォオオオオオオオオオオ!!」

 

 

「おおおおおおおおおお!!」

 

 

 キュア☆ドルフィンが雄たけびをあげると、それに続くようにリースXPもまた雄たけびをあげる。

 会場の人々からの声援を受け、託された力を今も盾となり耐えている巨大なサメへと送り込んだ。

 ブラックスカル号からの攻撃を受け続けている巨大なサメが輝き、一喝するかのように口を開き衝撃波を放った。

 衝撃波はブラックスカル号の放った砲弾を全て掻き消し、さらにはブラックスカル号そのものでさえも飲み込んで、空を駆け抜けてやがて消えていった。

 ブラックスカル号の浮いていた場所には、魔力の残滓が少しばかりあったが、それもキラキラと輝きながら空気に溶け、それを見届けた様子のオレンジ色の巨大なサメも役目を終えたことを認識し、ブラックスカル号と同様に空気に溶けるように消えていった。

 

 

「ば、馬鹿な! お、俺様のブラックスカル号が、こうもあっさり……!?」

 

 

 絶対の信頼を寄せていた切り札が消えてしまったことに衝撃を受け、目を見開き未だに信じられない様子でブラックスカル号のあった場所を見つめるブラックバード。

 敵対している相手が目の前にいると言うのにも関わらず、隙を晒していることはブラックバード本人も分かってはいたのだが、部下も全滅し、切り札であり文字通りの最後の手札を切ったブラックスカル号をも破壊されてしまい、端的に言って詰みの状態になったのだ。

 

 

「ありがとう、会場のみんな!

 リースXP、君も頑張ってくれてありがとう」

 

 

「あそぼ」

 

 

「ああ、そうだな。

 ───ブラックバード、今度はこちらの番だ!」

 

 

 声援を向けてくれた会場の観客たちに礼を告げ、リースXPを労った後、マスク・ド・ルカンは再びブラックバードの方へと向き、指をさして決着をつけることを宣言した。

 その声にハッとした様子で立ち直り、ブラックバードもまたマスク・ド・ルカンの方へと向き直り、お互いににらみ合いの状態となる。

 戦闘員たちが全滅した後と同じような構図になるも、先ほどと違いブラックバードには余裕がなく、その顔色は傍から見ても悪いことが見て取れた。

 

 

『おや、ブラックバードの顔色が悪いように見えますが、これは一体どういうことなのでしょうかコトミネさん?』

 

 

『簡単な話ですよ。 ブラックバードの魔力はもう尽きかけているのです。

 先ほど、ブラックスカル号は空も飛べるが相応の魔力を消耗すると言ったでしょう。 加えてあれだけの数の砲撃も行ったのですから、魔力の消耗は甚大。

 ブラックバードにはもう、長期戦闘をするほどの力は残ってはいないでしょう』

 

 

「関係ねえよ!

 消耗してんのは向こうだって一緒なんだ、だったら俺様にだって勝ちの目はあるぜ!

 海賊の意地ってやつを見せてやるよぉぉおおおおお!!」

 

 

 解説の言葉に反抗するように吠え、マスク・ド・ルカンへと吶喊するブラックバード。

 精一杯の強がりと同時に放ったその突撃は、本人でさえも無謀だと自覚しているものであり、同時に隙だらけの攻撃でもあった。

 

 

 ブラックバードが猛突進してくる中、マスク・ド・ルカンは右手を向かい来るブラックバードへと向け、左手で右手を支える。 右手の指先の形が人差し指と親指のみ立てられている状態のそれは正に、子どもがピストルを真似たものであり、子ども以外がやれば失笑ものな幼稚な行為。

 しかし、その幼稚な姿の筈のピストルを構える彼の姿はどこか様になっており、この会場で彼の姿を笑う者は1人としておらず、みな食い入るようにマスク・ド・ルカンの一挙一動に注目していた。

 

 

「Anfang(Set)」

 

 

 そうマスク・ド・ルカンの口から告げられた瞬間、マスク・ド・ルカンの右肩から右手に掛けて細く青い光が駆け抜け、右手の人差し指の銃口が青白く輝く。

 次いで銃口から青く輝く光球が低い電子音のような音を響かせながら射出された。

 

 

「っぐ、がぁっ……!」

 

 

 高速で射出されたその光球はブラックバードの胴体へと直撃し、まともに攻撃を受けたブラックバードはうめき声をあげ、その場で金縛りにあったかのように硬直する。 そしてブラックバードの前方には3つの青い光の輪(ハイロゥ)が斜めに道を作るかのように展開された。

 

 

「いくぞ、リースXP」

 

 

 リースXPへと声を掛け、身を低く構えるマスク・ド・ルカン。 傍にいるリースXPとの呼吸を合わせて意識を同調し、高く飛び上がる。

 次いでリースXPもまた1拍置いて追従するようにして飛翔。 回転し、水流を生み出したながら空中のマスク・ド・ルカンへとたどり着く。

 マスク・ド・ルカンはそこで1回転し、右足を硬直し動けないブラックバードへと突き翳す。

 

 

「ウォオオオオオオオ!!」

 

 

 雄たけびを合図に、リースXPは生み出した水流をマスク・ド・ルカンへと託し、マスク・ド・ルカンは愚かな敵対者へと裁きを下すべく水流の竜巻を身に纏って急降下。

 更に展開されていた青い光の輪(ハイロゥ)をくぐり抜けて加速し、超高速でブラックバードへとその鉄槌は振り下ろされた。

 

 

「ぐっ、ぐぁあああああああああ!!」

 

 

 マスク・ド・ルカンの蹴りはブラックバードの体を貫き、危うげなく膝を曲げ着地する。

 苦悶の声を上げ、爆発するブラックバードを背にマスク・ド・ルカンは静かに立ち上がり、爆風が彼の髪をユラユラと揺らす。

 

 

『き、決まったぁあああ!! マスク・ド・ルカンの必殺技、【マルトゥー・ド・ルカン】がブラックバードに炸裂だぁああ!!

 今回の正義と悪の戦いを制したのは、正義たるニチアサヒーローヒロインたち、キュア☆ドルフィンとマスク・ド・ルカン、そしてリースXPだぁああ!!』

 

 

 一瞬の静寂の後に、実況席のジャガーマンが机に足をかけて立ち上がりマイク片手に興奮したようにそう告げると、会場が正義のヒロインとヒーロー、その相棒を称える歓声と拍手、口笛で満ちる。

 爆発的な熱狂の音の渦の中、キュア☆ドルフィンはその拍手に応えるように両手を振り、マスク・ド・ルカンは恭しく頭を下げ、リースXPもそれに続いた。

 

 

 こうしてマスク・ド・ルカンとリースXPを初登壇させたヒーローヒロインショー、彼らの試みの第一歩はつつがなく終わりを迎えたのだった。

 

 

*1:
前話冒頭でジャガーが思いっきりネタバレしてる




※爆発してますが、黒ひげは死んではいませんのでご安心を


Q1.アン女王の復讐(クイーンアンズ・リベンジ)って飛べるってマジ?

A.マテリアル Ⅰの黒ひげのページの説明に相応の魔力があれば飛べるとありましたのでマジです。


Q2.スタンド攻撃だ!スタンド攻撃を受けているぞ!

A.えー自分でも楯鱗(じゅんりん)のくだりの解釈はかなり無理があるとは思っています。まあショー限定の演出と思ってください。


Q3.マスク・ド・ルカンの必殺技について

A.フランス語で直訳すると、【サメの鉄槌】。モデルにしたのは仮面ライダーデルタの必殺技【ルシファーズハンマー】と、仮面ライダー龍騎の必殺技【ドラゴンライダーキック】です。
 前半のガンドで敵を拘束するまでの動きはルシファーズハンマー、後半のリースXPと一緒に飛び上がった辺りからはドラゴンライダーキックです。


Q4.弟君人間やめたー?

A.この仮面つけてもバゼットさんには勝てないでしょうからやめてないです(暴論)
 そもそも、弟君は戦闘経験が皆無であり、歴史に刻まれる偉人・英雄たちと比較するのは雲泥の差と言える程です。
 そんな戦闘経験の浅い弟君のとれる戦法など、敵の回避に専念し、消耗して動きが鈍くなったところに、全力の一撃をぶつけるくらいしかないです(多分)
 こんな戦闘方法じゃあ、初見はともかく、戦闘経験豊富なサーヴァントたちにはまず勝てないですね。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。