※この作品はR-18です。

崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話   作:アルテマ

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何故か文字数が多くなってしまうのが最近の悩み……今回も1話で纏めるつもりが長くなってしまったので分割し、その前半を投稿します。

しかしキャスターアルトリア……アーツサポート最強のサーヴァントが爆誕するとは……お姉ちゃんでの周回が捗るぜぇ……


ヒーローショー 閉幕と舞台裏 表1

 ───待ってください!

 

 

 興奮冷めぬ会場の中心で、観客たちに頭を下げたマスク・ド・ルカンとリースXPがその場から立ち去ろうとしていたのを、キュア☆ドルフィンが引き留める。

 マスク・ド・ルカンは立ち去ろうとする足を止めたが、キュア☆ドルフィンの方を振り返ることはなかった。

 しかし、構わずキュア☆ドルフィンはマスク・ド・ルカンに問う。

 

 

 

 ───マスク・ド・ルカン、どうしてあなたは私を助けてくれたのですか……?

 

 

 その言葉は至極単純な内容ではあったが、問われた側のマスク・ド・ルカンは沈黙し、視線を足元へと向けたりと答え辛そうにしていた。

 いつの間にか会場の観客も、彼の次の言葉を待つかのように歓声を1度止め、見守っていた。

 

 

 静寂の中で、マスク・ド・ルカンは遂に意を決したかのようにキュア☆ドルフィンの方へと向き直り、仮面越しに彼自身の決意表明を告げた。

 

 

 

───私は君のためなら、どこにだって飛んでいくさ。 そのためにこの仮面を手にして、君を守るためにこの力を手に入れた。

 

 

───君を守るためならば、私はどんなことだって出来る。 私は、それ以上のものを君に貰ったのだから。

 

 

───君に貰ったものを少しでも返せるように、これからも私は君を守るために戦い続ける。

 

 

───だから、君の傍で戦うことを、どうか許してほしい。

 

 

 

 マスク・ド・ルカンはそう言い終えると、キュア☆ドルフィンに背を向けて歩き出す。 キュア☆ドルフィンはまだ何か言いたげに引き留めようと手を伸ばしていたが、リースXPがマスク・ド・ルカンの周りを囲うように回転し始め、数秒後にはそこにいた筈のマスク・ド・ルカンは立ち消え、リースXPもまたスタジアムの水槽へと飛び込み、姿を消した。

 

 

 それを見届け、一瞬呆然としていたキュア☆ドルフィンは伸ばしていた手を自身の胸へと持っていき、静かに目を閉じた。

 

 

───ありがとう、マスク・ド・ルカン……

 

 

キュア☆ドルフィンのマスク・ド・ルカンへの感謝を最後に、今回のヒーローヒロインショーは終了となり、再び観客の喝采と歓声の中、シルク・ドゥ・ルカンのヒーローヒロインショーは閉幕となった。

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

『だから、君の傍で戦うことを、どうか許してほしい』

 

 

 

「うーん、何度見てもとっても良いシーンです。 これは永久保存確定ですね、弟くん!」

 

 

「殺せ。いっそ殺してくれ」

 

 

 どうも、シルク・ドゥ・ルカンのオーナーであり、先ほどまでマスク・ド・ルカンを演じていた者です。

 先ほどからジャンヌが今日のヒーローショーの終わり際のシーンを延々と見せつけてきており、今自分でも死んだ魚の目のような色を宿していることがよく分かります。

 

 

 ……本音を言えば今すぐにでもこの場から逃げ出すなり、耳を塞いで目を閉じたいのだがそれも出来ない。

 と言うのも、現在僕はシルク・ドゥ・ルカンで体調不良の人が出た際の対応をする医務室におり、その医務室のベッドに横たわっているのだ。

 

 

 ショーが終わり、舞台裏にてマスクを外した瞬間僕の体はガクンと崩れ落ちてしまった。 何が起きたのか分からないが、とにかく立ち上がろうと足を動かそうとするも、膝を曲げた瞬間に足に激痛が走って痛みに耐えられずにまた床に伏してしまった。

 結局自分の力でその場から動くことも出来なかった僕は、床に倒れていたところをスタッフの人が見つけてくれて、医務室に運ばれて軽い診察と応急処置を受けてベッドで横たわっていたところ、ショーを終えたジャンヌに今日のヒーローショーの録画を延々と見せつけられている今に至るのである。

 

 

「えー、なんでそんなこと言うんですか弟くん? とってもカッコよかったですよ。

 『いや、もうタイムオーバーだ、ブラックバード』っていうセリフとか、キリッとしていて様になっていましたよ!」

 

 

「くぅう……ジャンヌの場合素で言ってるから怒るに怒れないっ……!

 せめて、せめてもうこれ以上その映像見せてくるのやめてくれない!?」

 

 

「ダメです! お姉ちゃんあと70回はリピートして弟くんの勇姿を心のHDに焼き付けるのです!」

 

 

「ジャンヌは僕の心のHDを焼き切りたいの???」

 

 

 僕の心情なんて知らぬとばかりにジャンヌは手元のリモコンを操作し、巻き戻しをしては何度もマスク・ド・ルカンが注目されているシーンを大音量で見せつけてくる。

 耳を塞ごうにも未だに体は痛み、布団をただ被るだけの動作でさえ億劫で動くことも出来ないために、僕に出来る抵抗など瞳を閉じて自分の黒歴史となるであろう姿を視界にいれないようにすることのみであった。

 そんなささやかで無駄と言える抵抗をする僕へと、隣のベッドで横たわっている人が話しかけてきた。

 

 

「まあまあ、気にする必要はないですぞオーナー殿。

 お主くらいの年頃の中二病の発症は特段珍しいことでもなし、せいぜいが5年後あたりに自分の過去の醜態をふと思い出して死にたくなるくらいでしょうから、気にすることもないのでござる」

 

 

「いや中二病は発病してないですから! あれは仮面の洗脳のせいであんな中二マシマシのセリフを言っちゃってただけですよ!

 それに5年後とか待たなくても既に実害が出て今すぐにでも自害してしまいたいんですけど黒ひげさぁん!!」

 

 

 隣のベッドで僕と同様に横たわりながら、若干生温かいような笑みを浮かべながらそう言うのは、先ほどのショーのブラックバード役を演じた黒ひげこと、エドワード・ティーチ氏である。

 彼とはヒロインショーでの悪役(ヴィラン)を演じてもらうことの他に、海上輸送で商売をしている彼に、子ギル(スポンサー)の扱っている商品を売って輸送してもらうなどと接点があり、その仕事の関係上で僕も会うことが多いために、世間話をしたりすることもあったりする関係だ。

 なのでまあ……表(・)面(・)上(・)は(・)仲(・)の(・)良(・)い(・)関(・)係(・)なのだと思う。 表面上と表現するのは、彼の本質を知っている身としては断言が出来ないからだ。

 

 

「拙者としてはそうやってジャンヌ氏とかいう超絶美少女に愛されているだけで羨ましい限りなのでそのまま自害してもらいたいのですがなぁ……。 いやぁ、ほんとリア充爆発しろ。

 まあ拙者愛の重い女性はノーサンキューなんですがな!」

 

 

「……ジャンヌの愛って重い部類なんですかね、やっぱり」

 

 

「あ、聞いてくるのそこなのね……。

 大分麻痺してますなぁ、オーナー殿……しかしそこを差し引いても、やはりリア充だと思われますのでタヒんでくだちぃ」

 

 

「いつになく辛辣ですね」

 

 

「えー、別にお姉ちゃんは可愛い弟くんを愛してるだけですよー。 普通ですよ、普通」

 

 

「姉弟間で恋愛に発展するのは二次元の中だけですぞジャンヌ殿」

 

 

「弟くんだけど、愛さえあれば関係ないのです!」

 

 

「その愛が重いって話なんですがなぁ……ねぇ、オーナー殿?はよ死ね」

 

 

「小声で死ねって言ってるの聞こえてますからね?」

 

 

 ……こんな風にお互いに気心の知ったような会話をしていても、僕は黒ひげさんに対する警戒をどうしても緩めることが出来ずにいる。

 なんせ、彼はかつて部下と酒を飲んでいる最中に唐突に銃を部下へと向けて撃ち抜き、その残忍さを知らしめて自分が何者であるのかを部下たちに再認識させた。 即ち、大悪党であり大海賊、エドワード・ティーチ、悪魔の化身と恐れられている者であると。

 ふざけながらでも、笑いながらでも人を殺せる人格の持ち主。 ニヨニヨとした笑顔を浮かべている彼がその笑顔の裏で何を考えているのか僕には全く分からずにいた。

 しかし、この疑念と警戒を相手に知られるのも良くないだろうと思い、あくまで平常心を保つように心がけて彼と話をする。

 

 

「そう言えば、今日のショーでのクライマックスで黒ひげさん派手に爆発していましたけど、あれ大丈夫だったんですか?」

 

 

「ああ、あれですかな? まあ事前にかなり派手な演出で締めるとはあのスポンサーより聞いておりました故、海賊の誉れ(ガッツ)スキル仕込んでましたし、問題ありませんぞ」

 

 

「演出のためにそこまでやらせるのかギルさん……」

 

 

「まあ流石に無条件でそんなことを請け負ったりはしませんので、こちらから1つお願いをさせて頂きました。 拙者耐久のランクはAですが、痛いものは痛いですしなぁ……」

 

 

「お願いって、何をですか?」

 

 

「デュフフ、それはオーナー殿にも秘密ですぞー。 まあすぐにわかるでしょうしなー」

 

 

「……?」

 

 

「まあまあそれはさておきオーナー殿。 貴殿のショーでの戦いぶりも素晴らしかったですぞー。

 演技故に加減をし、フックも壊れやすい素材にしていたとは言え、サーヴァント相手にあそこまで拮抗するとは、この黒ひげ素直に感服致しました……なんつってw」

 

 

「あはは……えっと、ありがとうございます」

 

 

 黒ひげさんの、恐らくは……いや、確実にお世辞や冗談の類であろう言葉にとりあえず礼を言っておく。

 ジャンヌに洗脳された時と同様に、マスク・ド・ルカンとしてショーに参加していた時の記憶ははっきりと覚えている。 黒ひげさん、いやブラックバードと戦闘と言うパフォーマンスをしていた際の事を。

 ショーでのこととはいえ、普段ならば必死に距離を置いて相手の懐に入らないように立ち回っていたであろう状況で、最後のブラックスカル号による砲撃以外は余裕を持ってブラックバードのハイラッシュを捌き、最低限の動きで回避していた。

 普段であれば残像ばかりが目に付くであろうブラックバードのハイラッシュが、あの時の僕にははっきりと見えてていて、どう対処しどう動けばいいのか何となく分かっていたのだが、今思うと中々不気味ではある。

 この崩壊した世界で、僕は多くの怪物に襲われて生き残ってきたけど、それは全てジャンヌのおかげであり、戦闘で僕の役割と言えばジャンヌのサポート。 護身程度には戦えるが、基本的に直接戦闘はできないし、サーヴァントと戦うなんてのは以ての外だ。

 だと言うのに、手加減をしていたとはいえ、サーヴァント相手にあの立ち回りが出来ていたのは、普通に考えてあの仮面のおかげなのだろうが……

 

 

「……」

 

 

 ちらりと、ベッド脇の机の上に置かれているマスク・ド・ルカンの仮面に視線を向ける。

 ショーを終えた後から、心なしかスポンサーに手渡された時よりはあの禍々しいようなオーラが弱く感じられるが……まさか、本当に呪いの仮面の類なんじゃ……

 

 

「失礼します。 ああ、やっぱりこちらにいらしてましたか」

 

 

 と、僕がマスク・ド・ルカンの仮面に疑惑を向けていると部屋の外からノックの音が三度鳴り、ちょうど良いのか悪いのかマスク・ド・ルカンの仮面の提供者である子どもスポンサーがこの場に現れた。

 来てくれたのならタイミングを見失わないうちに聞いておくかと口を開こうとするも、消耗しきっている体が口を動かす力にすら少し重くのしかかっているせいか、話しかけるタイミングが一拍遅れてしまい、さきに黒ひげさんがギルさんに話しかけると言う結果になってしまった。

 

 

「おお、これはスポンサー殿。 貴殿がわざわざこの場にまで足を運ぶとは、余程オーナー殿のことを気に入っているんですなー」

 

 

「いえいえ黒ひげさん。 彼のことを気に入っているのは事実ですが、アナタにも用があってここにきたのですよ」

 

 

「お、と言うことは……?」

 

 

「商品と出演料はアナタの部下に預けましたのでそちらからお受けとりください。

 ボクがここに来たのは、アナタの今回のヒーローショー出演の際に求めた報酬の件です。 アナタの要求通りの方を連れてきましたので、その報告に」

 

 

「いやっほぉぉぉおおう! さっすがスポンサー殿! 仕事がはっやーい!!」

 

 

 ベッドから上半身を上げて狂喜するように叫ぶ黒ひげさん。 話の流れからして黒ひげさんが今回のヒーローショーにおけるクライマックスの演出に当たっての追加報酬の件なのだろうが、その具体的な内容は見当もつかないので直接聞いてみる。

 

 

「あの、結局黒ひげさんの要求したものって一体……?」

 

 

「デュフフ、ここまできたらもう隠す必要もないですなぁ!

 実は拙者ここ最近諸事情で働き詰めでして、この疲れはただ休暇を取って趣味に没頭しても治らないような気がしましてなー。 こうなってくると、癒しが必要と拙者思った次第。

 そこで今回、ダメ元で多くのコネを持つスポンサーの子ギル氏に【綺麗系のお姉さんに存分に癒されたい】とお願いしたのですが、なんと子ギル氏は快く承諾してくれたのです!

 いやー、今回のショーで負った怪我の療養中は勿論、アフターケアもしっかりとしてくださるそうですので、ホント子ギル殿さまさまですぞ!」

 

 

 終始本当に嬉しそうにニヨニヨした笑みを浮かべる黒ひげさんに、ああなるほどなと彼らしい回答に納得がいく。

 いやしかし、こう言っては難だが黒ひげさんはその一般受けはしないであろう言動と悪方面でのネームバリューから避けられがちだと思う。 ましてや、今黒ひげさんの述べた条件の女性なんてモロに黒ひげなんて反英雄には近づきたがらないと思うのだが、ギルさんは一体どんな人物を連れてきたのだろうか?

 

 

「そんな称賛する必要もありませんよ、偶々彼女たちにもこの場に来てもらっていましたし、ちょうど良かったです。

 ではどうぞお入りください」

 

 

「患者はここですか!!」

 

 

「チェンジィィィィイイ!!」

 

 

 黒ひげさん渾身の叫びであった。 下手すればショー最後の断末魔よりもデカかったかもしれない。

 まあ無理もないとは思う。 自分だって似たような状況に陥ったら叫ぶ自身がある。

 なんせギルさんが入るように促し、入口から現れたのはFGOにおいて、言語が通じても会話が成立しない系バーサーカーの中でも過激派の1人として知られる、殺してでも絶対治療するウーマンこと、フローレンス・ナイチンゲールさんがいたのだから。

 

 

 言い方は失礼ではあるが、そんな歩く地雷にも等しい方を連れてきた子どもスポンサー、ギルさんは明らかに分かっている笑みを浮かべておどけるように言う。

 

 

「おや、何か不満が?」

 

 

「いや不満ってレベルじゃないのですが!? こちらの要求何一つ満たしてないですぞこの人選は!

 拙者が求めたのは綺麗系のお姉さんであって、狂人系鋼の看護婦なんて求めていないですぞ!」

 

 

「いやいや、しっかりと満たしてますよ。 綺麗系のお姉さんで、アナタの負傷を親身に癒してくれる方、ぴったり当てはまっていますよね?」

 

 

「前半はともかく、拙者が求めた癒しは精神面のものであって、身体面の方の癒しを、それもよりにもよってこの御方に求めた訳ではないのですが!?

 とにかく、拙者はチェンジを所望しますぞ! チェンジチェンジチェンジ、ノーセンキュー!!」

 

 

「そう言われましても、チェンジしようにもですね……」

 

 

 必死に抗議する黒ひげさんに、困ったような笑みを恐らくは意図的にしながらナイチンゲールさんのいる入口の方へと視線を向ける。

 その動作に続くように僕も、入口の方へと視線を向け、凍りつく。

 

 

「ここにいる全員、同じ方ですよ」

 

 

「「「「患者を確認、治療を開始します!」」」」

 

 

「」

 

 

 既に中に入っているナイチンゲールさんの背後で横に整然と並ぶ4人のナイチンゲールさんの姿に、黒ひげさんは開いた口が塞がらない状態で、その顔色はショーの最中に見せた、魔力の切れかかった顔色を遥かに超え、いっそ色などないとばかりに真っ白になっていた。

 僕もその予想などできよう筈もない状況に硬直し、驚愕を隠せないでいた。 特に大きな反応をしていないのは、この場にナイチンゲールさんたちを呼んだギルさんとマイペースなジャンヌのみであった。

 

 

 そんな僕たちの反応をよそに、後から現れた5人のナイチンゲールさんは素早く黒ひげさんのいるベッドへと詰め寄り、上体を起こしていた黒ひげさんをベッドへと沈めて診察を始めていた。

 字面と状況だけ見れば、黒ひげさんの喜びそうな美人ハーレムによる手厚い看護であるのだが、如何せん鋼の看護婦の行う治療はかなり乱暴であり、彼女たちが黒ひげさんに触れるたびに悲鳴があがっていた。

 

 

「イテッ! ちょ、拙者一応怪我人なんですが、あ、アタタタタタッ!?」

 

 

「ええ、把握しております。 ですからこうして診察と応急処置をしているのです」

 

 

「じゃあもう少し患者の事を労わってくれてもよいと思うのですが―!?」

 

 

「診察は迅速に行うべきものです。 治る病も発見が遅れては手遅れになる可能性もある。 それを防ぐためにも、患者には協力していただかなくてはなりません。 傷口を広げるような愚かなことはしませんので、ご容赦を」

 

 

「ぐへぁ!? い、今何か折れたような音が響いたのですが!? 傷口広げるのを超えて傷口を切り開いていません!?

い、嫌ぁ助けてオーナー殿ぉ! 拙者こんな詐欺めいた仕打ちで死にたくないでござる!」

 

 

 口調がいつものふざけたものであっても、若干瞳から涙が出ているあたり割とガチな命乞いなのであろうが、僕はこの通り全くもって動けないのでどうしようもない。 出来ることと言えば、まあ彼の無事を祈ることと、彼の代わりの悪役(ヴィラン)ポジはどうしようかなと考えることくらいである。

 そしてナイチンゲールさんの前でそんな事を口にすれば、彼女たちの琴線に触れて鋼の看護コースが確定してしまうのは最早既定路線なのである。

 

 

「何を言っているのです。 全ての苦しむ患者を救うために、私はここに立っているのです」

 

 

「どこにいようと、私のすべきことは何一つ変わらない」

 

 

「今も苦しんでいる患者、その全てを救うために治療を続ける」

 

 

「そう、たとえ全ての命を奪ってでも、必ずそうします」

 

 

「「「「命を救うためなら、私は、私たちは、何でもするのです!!」」」」

 

 

「【ん? 今、なんでもするって言ったよね?】なんてテンプレを返す余裕すらないんですがぁ!?

 やめろー!死にたくなーい!死にたくなーい!死にたく───」

 

 

 黒ひげさんのどこかで聞いたような必死の叫びは突如鳴り響いた銃声に掻き消され……いや、掻き消されたのではなく、銃弾を受けてそのまま眠ってしまったようである。

 

 

「精神の錯乱を確認したため、麻酔処置を」

 

 

 最初にこの部屋に入り入口で待機していたナイチンゲールさんが自動拳銃片手に事後報告でそう言うと、了承の意を返して眠っている黒ひげを担架にのせ、さっさと部屋の外へと運び出していってしまった。

 それを黙って見送った僕はとてもイイ笑顔を浮かべている下手人であるギルさんへと問う。

 

 

「……あの、ギルさん。 今のナイチンゲールさんの集団は一体……?」

 

 

「彼女たちは立川病院……今は【ナイチンゲール24時間病棟】と言う名で有名ですが、そこの看護婦の方たちですよ。

 なんでも、近々この江東区付近に新たな病院を展開するようでして、その援助の話を今日たまたまこちらでしていたのですよ。

 いやぁ、彼の願いに応えることが出来て僕も嬉しいです」

 

 

 笑顔でそう言うギルさんであるが、半年も付き合いがあると今の発言が白々しいことなどすぐに分かってしまう。 同時に、ナイチンゲールさんが今日来ていたのも本当に偶然の出来事だったのかと疑ってしまう。

 

 

 

「あぁなるほど、彼女たちはそこに所属するサーヴァントの方たちでしたか。

 SNSで知ってはいたのですけど、全く同じ顔で同じ服装でしたので流石にお姉ちゃんもちょっとビックリしちゃいました」

 

 

 ……僕から見ると対して驚いていなさそうだったのだが、多少驚いてはいて表情に出なかっただけなのだろうか?

 ジャンヌとの付き合いもギルさん同様にそれなりに経つが、未だによく分からないことが多いのが本音である。

 

 

 ちなみに、ナイチンゲール24時間病棟はSNSではそこそこ有名な病院だ。 と言うのも、この病院は名前にもある通り、看護婦がサーヴァントのフローレンス・ナイチンゲールのみで構成されているのである。

 その数、なんと100人以上であり、今もなお全国から話を聞きつけたナイチンゲールとそのマスターが集まり人数は増え続けているんだとか。

 主治医には一般人もいるそうだが、薬剤師などを担うサーヴァントも少なくない数在籍し、医神の異名を持つ【アスクレピオス】が中心となって診察や手術を担当しているんだとか。

 

 

 とまあ、そんな地獄と言っても差し支えないような場所へと強制連行されてしまった黒ひげさんは果たして平穏無事に帰って来られるのだろうか? 確か彼の持つスキル、【海賊の誉れ】は軽度の精神汚染も含まれていた。 下手すれば黒ひげさんは海賊の誉れのスキルをナイチンゲールさんに悪性腫瘍扱いされて治療されてしまい、黒ひげさんは海賊ではなくなって、ただのオタクになってしまうのかもしれない。

 ……いや、エドワード・ティーチと言う大悪党であり大海賊より、ただのオタクの方がよほど健全だとは思うのだが……なんだろう、すごくコレジャナイ感がある。

 ……とりあえず、黒ひげさんの無事を祈っておこう。南無。

 

 

「…………」

 

 

 その時心中で合掌する僕へと視線を向けているナイチンゲールさんの表情に、僕は気づけずにいた。

 




次の話は近いうちに投稿します。まあお盆明けあたりですかねぇ……あと、多少シリアスになります。


Q1.このヒーローショーの発端となった葛城財団とか来てないん?

A.次の次の話辺りで書きます。


Q2.ナイチンゲール24時間病棟って……

A.詳細は本ssの番外編である掲示板ネタを参照してください↓
 余談ですが、ナイチンゲールが提唱した、【ナイチンゲール病棟】と言う近代的な病院病棟の建築様式が実際にあるそうです。

https://syosetu.org/novel/201236/1.html


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