※この作品はR-18です。

崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話   作:アルテマ

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投稿がとっっっっても遅れてすいません! 言い訳させていただくと、先月から先週までずっと土曜出勤+残業+喘息+花粉症とかっていうとんでもないコンボくらって碌に書けなかったです!

特に花粉症と喘息のコンボが笑えるほどワーストマッチすぎてほんと辛い。薬3カ月続けてたのにまだせき込むんだよなぁ

とにかく、なんとか書き上がったので投稿します。


前回までのあらすじ!


天草「演出指導ですので、特に気負うことなくリラックスして臨みましょう」


ジャガー「そうだぞ少年リラックスして臨みたまえよニャハハハハ」


弟(嘘つけ隙あらば殺すって目してるよこの肉食獣!)




不穏な空気は突然に

 ……なんてことだろう。

 自分の記憶を探ってみても、こんな事態になっている訳は分かっても、ここまでのことをされる理由が全く分からない。

 

 

 黒鍵とアスファルトの欠片が雨霰の如く襲い来る中、脳裏で見えた光景は自身が探り当てたものなのか、それとも走馬灯のようなものなのかは分からないが、どうあれ今自分が晒されている状況の原因と彼らの目的が微妙に、いや確実にかみ合っていないということはよくわかった。

 

 

 だって普通に考えて、ヒーローショーの演出指導及び訓練がこんな実戦じみたトレーニングだなんてどう考えてもおかしい。

 仮によりリアルを追及するために僕の身体能力を鍛えるって言うのなら一理あるかもしれないけど、その身体能力に関しては例の仮面のおかげで身体能力の底上げは出来るし、この前のヒーローショーで実演をしたおかげでサーヴァントたちの身体能力を観客に魅せる相手くらいにはなれるとは分かっているのだ。

 

 

 ……あ、でもあの仮面はちょっと外した後の筋肉痛が酷いし、出来ることならあまりつけたくないと言うのが本音でもある。

 今後あの仮面を頼らないようにするために、この演出指導の皮を被った地獄のブートキャンプを耐えることにはある程度の意義が───

 

 

「ククルんの力を借りて、今必殺の、ジャガー・キック!!」

 

 

「うおぁあああああああ!!?」

 

 

 やっぱりやりすぎだと思います!

 

 

 太陽を背にし、右足を突き出した真上からの攻撃を大きく横っ飛びで躱す。

 一見すると大味すぎる攻撃であるのだが、威力・速度共に凄まじく洒落にならない威力のソレは直撃は勿論のこと、余波である粉砕されて辺りに飛散する破片でもまともに受ければ危うい。

 僕の避け方は大袈裟すぎるかもしれないが、それくらい必死になって避けなければ何かしら傷をおっていた可能性があるのだ。 ……まあ避けてる最中も叫んでいたことから分かる通り、ジャガーマンさんの絶対に殺すと言わんばかりのギラギラとした殺意に気圧されているのもあるのだが。

 

 

「よーし、良く避けたぞ少年! その調子で回避タンク役の如く避け続けるがいい!

 少しでも油断したらその瞬間にぶっ〇してやるから覚悟しておけ!」

 

 

「油断してなくても殺す気じゃありませんか!?

 今のキック、避けられてなかったらかなりマズイことになってましたよね!?」

 

 

「ハ! 気にするな、致命傷だ!」

 

 

「スポンサーの未来の姿な人の名言を台無しにしないで!!」

 

 

 この場合致命傷を負うのが僕なあたりセリフ選びに悪意を感じる。

 

 

 それはさておき、ジャガーマンさんはさっきからこんな調子で僕に手加減しているとは思えない威力の攻撃を殺意マシマシで行ってくるのだ。

 僕は今やっていることが文字通りのヒーローショーの演技指導であると思ってはいないが、少なくとも建前上そうなっているのなら、指導する側であり尚且つ人間を遥かに超える身体能力を持つサーヴァントであるジャガーマンさんが僕に合わせて力の出力を調整するのは普通であると思うのだが……

 

 

 まあジャガーマンさんは普通ではないし、なんなら多方面からイロモノ扱いされているけど。

 

 

「ジャガーを珍獣扱いすんなやぁあああ!!」

 

 

「のわぁあああああ!!?

 す、すみませんでしたぁあああああ!!」

 

 

 どうして僕の周りの人たちはこうも読心術に長けている方が多いのだろうか?

 失礼なことを毎回考える僕も大概かもしれないけど、口には出していないのだからもう少し手心とか加減とかして欲しい。 ふと思ったことを咄嗟に思考停止して考えないようにするなんてのは常に意識していれば出来るのかもしれないけども、そこまで集中できないのだし……。

 

 

 閑話休題。 言い訳を募るのはここまでにし、ジャガーマンさんの方へと向き直り問う。

 

 

「と言うかですね、ちょっとさっきから僕に対しての殺意が強すぎないですかね!?

 さっきも僕に恨みがどうとか言ってましたし、確かに僕も失礼なこと考えたりしてはいましたけど、いくらなんでもここまでされるようなことなんですかね!?」

 

 

 この地獄が始まってからと言うものの、ジャガーマンさんは僕に殺意に近しいオーラのような何かを向けている。 天草さんがきちんと加減をしているのは黒鍵の投擲数から何となく分かるのだが、ことジャガーマンさんには限ってはよく分からず、寧ろそのオーラを僕への攻撃に乗せているようにしか見えない。

 ジャガーマンさんが出しているそのオーラの原因は、現在進行形で僕へと向けられているあたり当人である僕にあるとは思うし、心当たりがない訳では無い。 だがいくらなんでもここまで過激な攻撃をされるほどのことをした覚えはない。 それゆえの問いであるのだが……

 

 

「なに、分からない? そんなことも分からないのか!?

 私をヒロインショーのオーディションで落としておきながら、なんて言い草だこの人でなしぃ!」

 

 

「え……? いや、あの……ヒロインショーのオーディションって僕は担当していないんですけど……?

 と言うか、ジャガーマンさんを解説役として雇ったのってギルさんじゃ……」

 

 

「細かいことは気にするな! 私も時々自分がジャガーなのかタイガーなのか分からなくなる時があるが特に気にしてはいない!

 とりあえず今は私からの八つ当たりを甘んじて受け入れるのだ少年よ!」

 

 

「八つ当たりって思いっきり言ってるじゃないですかー!?」

 

 

 先端が巨大な肉球である棍棒をブンブン振り回し、こちらへと容赦なく振り下ろしてくるジャガーマンさん。

 先ほどのキックと同じく、大振りで次に続く攻撃までのスパンもそれほど短くないために回避はそれほど難しくはない。 だがその棍棒に孕んだ威力は回避した後に響く風切り音から想像はつく。 まともに受ければ一撃で僕は戦闘不能になるだろう。

 そう、一撃でも受ければ気絶は免れない。 訓練であることは分かってはいても、相手は普通の人間の力を遥かに超える力を振るうサーヴァント。 その身から放たれた攻撃が自身を捉えた時に伝わる衝撃は、きっと僕がこれまでに相対してきたモンスターたちの攻撃とは比較にならないだろう。

 少なからずそれがプレッシャーとなり、普段よりも回避に力が入る。 当たればタダではすまないであろうと言う懸念が恐れとなり、冷や汗が激しく動いていることによる発汗と混じりあう。

 

 

(近づかれても回避は出来るけど、体力の消耗が激しい! いったん距離をとらないと……!)

 

 

 振り下ろされた棍棒を一歩下がることで避け、そのまま足を止めずに後退し距離を取る。 この時、ジャガーマンさんは僕に追撃をしかけようと距離を詰めてくると思っていたのだが、彼女は地面に棍棒を深々と刺したまま動かなかった。

 それを怪訝に思うも、すぐにその思考は打ち切られることになる。 右方より迫りくる2本の黒鍵を、屈んで滑り込むようにしてやり過ごす。 頭上を横切っていった黒鍵は廃墟の壁に突き刺さり、刀身を振るわせ、鈍い反動音を鳴らしていた。

 

 

『相手の間合いから逃れる選択は悪くはありませんが、今回の場合後衛の攻撃役がいることをお忘れなきよう。

 相手の前衛から距離を取ると、相手の後衛の攻撃役は誤射を気にする必要がなくなり必然的に弾幕も濃くなりますので』

 

 

「ッ……!?」

 

 

 片耳のイヤホンから聞こえてきた天草さんの助言が終わるや否や、2本の黒鍵を背にした僕の左右から挟み込むようにして黒鍵が飛来する。 計6本の黒鍵の多角攻撃に、屈んで避けられるような空間はない。 回避しようとなると背後に壁がある以上、避けられる方向はかなり限られてくるが……

 

 

「ニャッハッハッハッハー! このジャガーから逃れようなど笑止千万!

 肉食獣は食らいついた獲物を逃さないように、ジャガーもまた生贄要因は逃さないこれ即ち弱肉強食世界の常識ィ!」

 

 

 避けられる方向の1つ、正面からはジャガーマンさんが棍棒をひっさげて迫ってきていた。 せっかく距離を取ったのに、向こうに避けては元の木阿弥だ。

 背後は壁、左右は黒鍵、正面からはジャガーマンさん。 僕を追い詰めるこの包囲網から逃れる道は、もう一つしかなった。

 

 

「くっ……【瞬間強化】!」

 

 

 ここまで温存していた魔術礼装のスキルを起動し、地面を強く蹴り出して空中へと跳び上がる。 自身に迫る飛び道具を防ぐような技術や、猛進してくるサーヴァントを出し抜いてやり過ごせるような瞬発力や敏捷性もない以上、明らかに誘導されていると分かっていても、身動きの取れない空中へと回避するしかなかった。

 

 

『その選択は短絡的すぎます。 誘導をされたとは言え、身動きの取りにくい空中へ跳び出しては相手の思うつぼですよ。

 では安易に選んだその回避行動の代償は、ご自身の体で払っていただきましょう』

 

 

 跳び上がった僕の軌道上に向けて放たれる3本の黒鍵。 空中において自力で動くことの出来ない僕では、正確無比に放たれたその黒鍵らを避けるのは無理だ。

 武器ではなくても、せめて鉄製の板切れでもあれば防ぐことは出来たかもしれないが、あいにくと今手持ちに黒鍵を防げるような物はなかった。

 回避も防御も自力では不可能な中、迫りくる黒鍵に対応するために最後の札を切る。

 

 

「【緊急回避】!」

 

 

 自力で避けられないのなら、無理矢理避けるまで。 続けざまに魔術礼装のスキルを発動し、自身の全神経に魔力を注ぎ込む。 常であれば身動き1つも出来ない空中であるが、今この一瞬だけは違う。

 身を捩ることで全身を回転させ、空中での軌道を変える。 偏差射撃の要領で放たれ直進していた黒鍵は僕が軌道を変えたことにより、僕の体を捉えることなく飛び去って行った。

 

 

「ッツ゛ウウゥッ!?」

 

 

 しかし全ての黒鍵を回避することは叶わず、1本だけ命中してしまう。

 幸い突き刺ささるようなことはなく、ただ刃がわき腹を掠めていっただけなのだが、かすり傷と言うには深く肉を抉られ、魔術礼装ごと千切られた傷から血が滲み、白い魔術礼装を赤く染めた。

 この崩壊世界において戦闘に出ることこそあっても、ジャンヌに終始守られ続けてきた僕は、たった1人でモンスターたちと相対し戦闘をするといった経験は殆どしてこなかった。 故に、痛みに対しての耐性が殆どない。

 

 

(ぐぅぅぅううううううう!?

 い、痛いと言うよりッ……熱い、切り裂かれた部分が、燃えるように熱い……!)

 

 

 黒鍵によって抉られたわき腹を抑え、痛みにうめき声が漏れる。 今僕が負った傷は一般的に見れば軽傷であるのだろう。 多少鍛え、この崩壊した世界に発生した神秘の恩恵を受けているとは言え、ただの人間でしかない僕がサーヴァント相手にここまで立ち回り、今飛来してきた3本の黒鍵のうち2本を避け、命中してしまった1本も軽傷で抑えたのだから上々だろう。 正直奇跡と言ってもいい。

 

 

 それでも、痛いものは痛い。 騎士や戦士ではない僕には、こんな軽傷でさえ辛い。

 痛くて痛くて熱くて痛くて、あまりの痛みに思考が乱れて集中が出来ない。 そしてそんな隙を、あちらが見逃す筈もない。

 

 

「さあ覚悟しろ少年よ!

 この一撃に色々と溜まっていた鬱憤とか恨みとか嫉妬とか、いつまでたっても私がヒロインの崩壊世界シリーズが書かれないことへの悲しみを詰め込んでぶつけてくれるわぁぁああああ!!」

 

 

 いつの間にか僕と同様に空中へと跳び上がり、棍棒を地面へと置き去って目の前にまで迫っていたジャガーマンさんの伏字込みでツッコミどころ満載の発言に何か返す余裕もない。

 

 

 最早今の僕には迫りくるジャガーマンさんの攻撃を、ただ見ていることしか───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───触るな!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 廃墟一帯に地響きが伝わり、ほぼ同時にその地響きに見合った重い衝突音が発せられる。 崩れかけの廃墟の所々を揺らしたそれらの原因のいる廃墟の一角は土煙を上げ、中にいるであろう少年とジャガーマンの様子を見通すことは出来ない。

 

 

「……ここまでですね」

 

 

 少年とジャガーマンの白兵戦の様子を見守っていた天草は、今の一撃で決着がついたことを察し、片手に構えていた3本の黒鍵を収納しながら未だ土煙の上がる場所へと歩み寄る。

 舞う土埃に目もくれず、彼が歩を進めて目的地に着くころには土煙も晴れていき、その中心地にいる2人の姿もはっきりと見えるようになった。

 

 

 天草の視線の先にいた少年とジャガーマンの状態は、天草の予想通り……と言うよりは、誰もが同じ予想をするであろうことから、完全に意識を失っている少年とそれを支えて介抱している様子のジャガーマンの姿は予定調和と言えよう。

 

 

「彼(・)に(・)残(・)さ(・)れ(・)た(・)時(・)間(・)が(・)少(・)な(・)い(・)と(・)は(・)言(・)え(・)、訓練でそこまでするのは流石にやりすぎでは?」

 

 

「……」

 

 

 しかし少年に先ほどの訓練を課していた天草としては、最初に黒鍵が命中した段階で少年の戦闘能力を見極めることも兼ねた訓練を終了する予定であったのだ。

 事前に細かな打ち合わせをしていなかったとは言え、不要と言える追撃をしたジャガーマンに天草は苦言を呈したのだが、ジャガーマンは黙りこくっている

 返答内容は常人には解読が難解ではあるものの、ジャガーマンは話しかければ何かしらの反応を返すことを知っている天草は、そんなジャガーマンの態度をみて不審に……いや、心配になり再度言葉をかける。

 

 

「あの、どうかしましたか?」

 

 

「……し」

 

 

「し?」

 

 

「死ぬかと思った!!」

 

 

「……はい?」

 

 

 心底安堵したように叫び、大袈裟と言える程に大きなため息を吐くジャガーマンと、ジャガーマンの言葉の意味を理解できずに呆然とする天草。

 ジャガーマンの今の発言には、正に九死に一生を得たかのような感情が籠っており、嘘を言っているとはとても思えない。 それを感じ取っているからこそ、天草はほんの少し混乱してしまう。

 

 

「それはどういった意味でしょうか?

 最後の空中での彼と貴方の戦闘は、貴方が陰となって見えなかったのですが、こと白兵戦において優位に立てるランサークラスである貴方が、そこまで追い詰められる程に彼の最後の抵抗は凄まじかったのですか?」

 

 

「え? ……あーうん、その、ある意味ではその通りなんだけど、そうじゃないって言うか、この嬉しくはないけれど言葉に出来ない感じ……うーん、どう説明すべきかニャー?」

 

 

 言葉通りの意味であるのかを天草が問うが、ジャガーマンは珍しく歯切れの悪い返事をする。 それが殊更に天草の疑念を深めることになってしまい、詳細を話すようにジャガーマンへと求める。

 

 

「多少長くなっても構わないので、先ほど彼と何があったのか順を追って説明していただけませんか?」

 

「えー、おねーさん長々と喋るのって苦手なんだけどー。

 んー……超要約すると、肉体的に死にそうになったのはジャンヌちゃんの弟くん。 精神的に死にそうになったのは私ってので納得してくれませんコトミネさん?」

 

 

「無理ですね。

 要約の1つ目はともかく、2つ目の方は特に理解ができませんので、面倒でも最初から説明してください」

 

 

「だが断る!

 ……あ、ちなみにこの【だが断る!】の使い方は間違っているので、みんなはこんな風に名言を乱用して間違った日本語を使用してはいけないぞ! ジャガー先生との約束だニャー!」

 

 

「……」

 

 

「え、どしたの急に腕を捲って……え、令呪? え、なんで? なんでコトミネさんの左腕にそんなに令呪がびっちり? いくらルーラーだからってカルデア式の召喚だと、神明決裁はスキルの一種でしかないから令呪ってないはずですよねー?

 え、ジャガーの首輪代わりにギルくんから大量に私にしか効かない令呪を貰った? はっはっは、もうそんな冗談ばっかり―。 いくらギルくんでも、そんな某猫型ロボ並にピンポイントで都合のいいものある訳が───」

 

 

「“令呪を以て命ずる。 ジャガーマン、先ほど彼と貴方の間に何があったのかを詳細に説明せよ”」

 

 

「ゴッハァァーー!? ホントに令呪だったー!?」

 

 

 割と重要そうな要素であろうともやたら勿体ぶり、通常運転運行中なジャガーマンに対して躊躇いなく左腕に宿った令呪を行使する天草。 おのれギルえもん!とこの場にいない子ども愉悦王を呪い、のたうち回るジャガーマン。

 その漫才めいたやり取りの後に、さしものジャガーマンも令呪の強制力には勝てないのか、普段はやたら軽い口を重々し気に開けて、少年の傍に近寄り治癒魔術の行使を始めた天草に語り始めた。

 

 

「グギギギギギギギ……ま、まあ順を追って説明するけど、コトミネさんはどこまで見えてた?」

 

 

「貴方が空中で動きが鈍くなった彼へと詰め寄るところまでは」

 

 

「じゃあそこから説明入れるわ。 あの時私は少年に組み付いて、そのまま地面に落下して訓練終了としようかなーって思ってたんだよねー。

 流石に地面にたたき落とすとか初回の訓練じゃやりすぎだし、安全面考えたらそっちの方がいいかなって思って。

 空中で組み付いた相手に受け身を取らせるやり方はククルんに(物理的に)教え込まれていたから自信はあったし」

 

 

 常人であればまず不可能と言える行為を、これくらいのハードルなら跳べるだろうとでも言うように気軽に、寧ろそちらの方が安全とばかりに告げるジャガーマン。

 しかしジャガーマンは出来なかった場合に惨事が起きてしまうような物事には過敏なのか、このような場面で嘘をついたり見栄を張ったりはしない。 知り合いのルチャ大好きな女神に教え込まれているあたり、確実に受け身を取らせる算段をつけていたのだろう。

 だが、受け身を取らせたのであれば今の少年の状態はおかしいのだ。 天草はそこを追及しようと口を開く。

 

 

「それでは今のこの少年の状態と矛盾してしまいます。

 受け身を取らせていたのなら、気絶などしている筈がありません」

 

 

 人差し指を立てて、1つ1つ説明していくジャガーマンに対し、すかさず論破する天草。

 彼の腕の中にいる少年の傷は天草が完治したが、未だに意識は戻らぬまま気絶している状態にある。

 しかしジャガーマンはその反論を予測していたのか、澱みなく天草に言葉を返す。

 

 

「ちょっと予想外の出来事が起きちゃってさー。

 コトミネさんの黒鍵がその子に当たった後だったから、特に抵抗なく組み付けるかなって思ったんだけど。いざ組み付こうとしたら払われちゃったんだよね。 組み付こうとして伸ばした両手を」

 

 

「……なんと。 それは意外ですね。

 あの状況でこの少年が、防御行動を取れるだけの集中力を保っていたとは」

 

 

 少年の戦闘能力について大まかに計っていた天草からすると、黒鍵が1つでも命中した時点でまともに動けなくなるだろうとあたりをつけていた天草にとって、ジャガーマンの組み付こうとした手を往なしたと言うのは意外だったのだ。

 そう素直に感心する天草ではあったが、その天草の反応にジャガーマンは何か気難し気に眉を顰めるが、話を続けた。

 

 

「あー……まあ、その辺は後でまとめて説明するからいいかニャー。

 その後なんだけども、ちょっと組み付くのはこれは無理だニャーって思って急遽作戦変更。

 ジャガー・パンチで顎にフックをお見舞いして気絶させた後、その子が地面に激突する前にキャッチしたのは良かったんだけど、結構ギリギリだったから勢いを殺しきれずに廃墟にコロニー作っちゃったぜ☆、ってのが大まかな流れって感じ」

 

 

 空中で相手の顎に的確に攻撃を加え、そうして気絶させた相手に先回りして受け止めると言う離れ業をやってのけたジャガーマン。 一見イロモノに見えて実際にイロモノであるのだが、こんなでも戦闘系神霊サーヴァントであり、戦闘能力は数多くいるサーヴァントたちの中でもピカイチなのである。

 そんな彼女でも少年を受け止めるのがギリギリになったのは、偏に人間である彼の体を気遣っての事だった。

 

 

「なるほど、それで彼が死ぬかと思ったと……ですがジャガーマン、貴方が精神的に死ぬかと思ったと言うことに関して、今の話からではどこが理由なのか読み取れないのですが」

 

 

 ジャガーマンが最初に要約した内容の半分は理解した天草ではあったが、肝心の後半部分のジャガーマンが精神的に死にそうになったと言う要因が出てきたようには思えなかった。

 ジャガーマンはその質問が来ることも予測してはいたようだが、今度はすぐに返答をすることができずに首を傾げて何やら考え込むポーズをとっていた。

 

 

「まあそこ聞いてくるよね……どの場面でそう感じたのかっていうのは、少年が私の両手を払った時のことなんだけど……んーなんて表現すべきなのかニャー……?

 あの手を払われた瞬間、その子回避をしたと言うよりは拒(・)絶(・)を(・)し(・)て(・)き(・)た(・)、って言うのが適切な表現な気がしてならないのよねー。 ちょっと私のキャラが未来行き過ぎて対応しきれずウザがったのか、それともATフィー〇ドでも展開したかったのか……。

 まあ結局のところメンタル面に思わぬダメージがあったってことなんだけど……うーむ」

 

 

「考えるのは構いませんが、壁に頭を打ちつけるのはやめましょうか。

 貴方の頭の方が強度強すぎて壁が崩れそうです」

 

 

 唸り声を上げながら首を傾げる体を傾け、コンクリートの壁に頭を預けるジャガーマン。

 天草にも分かりやすいようにする言葉が思いつかないことに多少苛立っているためか、考え事をするポーズを維持したままズガンズガンと壁に頭を打ちつけ、コンクリートにヒビを入れている。

 癖か何かは知らないが、はた迷惑な挙動である。

 

 

 それはさて、天草の注意を無視してジャガーマンが廃墟の壁を揺らして数分の後、やっと思いついたかのような声を上げながら壁にひと際強く頭を揺らして頭突きをかました。

 ガラガラとコンクリートの壁が粉塵と破片を散らしながら崩れゆく中で、スッキリした表情のジャガーマンは嬉しそうに口にする。

 

 

「あー!『スキンシップのつもりが相手に本気で嫌がられてこっちがもの凄い罪悪感を感じた』ってやつ!

 多分これが1番近いと思う!」

 

 

「……そうですか」

 

 

 如何にも分かりやすい例だろうと言いたげなジャガーマンに、天草の反応は淡泊なものである。

 少しだけ考えるように口に手を当てるしかしない天草に、思っていたのと違う反応であったことが気に食わなかったのか、怒り出すジャガーマン。

 

 

「ちょ、その『そうですか』は絶対に納得してないでしょコトミネさん!? 絶対に右から左に流しているでしょ!?

 なんで!? これ以上ないほどに適切な表現でしょ!?

 と言うか前述したようにこう見えて割と精神的にダメージ来てるから慰めて欲しいんですけどー!

 前に罰ゲームでスカサハ氏にセクハラした時でさえ、これほどまでに精神的なダメージを受けたことはないんですけどー!」

 

 

「貴方それ良く生きてましたね」

 

 

「精神的には問題なかったけど、霊基的には割と死にかけましたけどねー!

 『殺したらサーヴァントとは言え死んじゃうでしょ!?』なんてセリフをまた言うことになるとは、このジャガー・アイをもってしても読めなんだ……ぬ?」

 

 

「……これは」

 

 

 若干呆れた様子の天草と、自身のペースを取り戻していくジャガーマン。 お互いの間に流れていた空気が重いものから柔らかくなっていたなか、急激に不穏な空気が流れ始めた。

 気配からして何者かが現れたのは間違いないが、気の抜ける会話をしつつも、2人は決して周囲への警戒を疎かにしていた訳では無い。 そんな2人でも一切関知の出来なかった何者かは、正に急にその場に現れたと言っても差し支えない。

 天草の額に一筋の汗が滴る中、2人はほぼ同時に同じ方向へと振り返る。

 

 

「……」

 

 

 彼らが同時に振り返った先にいた人物は、2人が良く知っている人物だった。

 美しく長い金髪を三つ編みで結び、赤いカチューシャと黒いビキニの上にパーカーを羽織った姿が特徴的な少女のサーヴァント、ジャンヌ・ダルク。

 彼らが訓練を課し、気絶してしまい介抱している少年の姉を名乗るその人であった。

 





ヤンデレ「待たせたな」






Q1.加減されてるだろうけど、なんで弟くん攻撃を見てから回避なんて出来るん?

A.後日、天草氏が同様の質問をしたところ……


弟「……その、ジャンヌって嫌がる僕をしょっちゅう追っかけ回してくるんですよ。
  しかもイルカをバンバン飛ばしてくるし、かなり容赦ないからそれから必死に逃げるようにしていたら、いつの間にかそう言う気配に敏感になって……」


天草「……そうですか」


 ちょっと気まずい空気になったそうです。



Q2.ジャガーマン、マジでククルんの力貸してもらったの?

A.???「そんな訳ないのデース! 後で神権侵害の罰として、気が済むまでルチャりマース!」


Q3.もし弟くんがマスク・ド・ルカンの仮面をつけて訓練してたらどうなった?

A.黒鍵に囲まれて緊急回避をしたシーンで、緊急回避ではなくアトラス院制服の魔術礼装を起動し、オシリスの塵で凌ぎました。
 ですがそれでも彼我の差は大きいので、いずれ無力化されていたでしょう。
 


Q4.最後ちょっと不穏なんだが

A.最近ヤンデレタグをニートさせすぎたかなって思って
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