崩壊した世界で水着ジャンヌに弟にされるだけの話 作:アルテマ
イベントとか仕事とか、今回文字数が20000文字になってしまったとか重なってしまい投稿に一ケ月かかってしまいました。申し訳ございません。
さて、今回のお話でいったんは、本家であるKEY(ドS)さんとのコラボは終了です。
KEY(ドS)さんありがとうございました! また機会があればよろしくお願いいたします!
前述した通り、今回文字数約20000文字と、掲示板を除いて最も長くなってしまったのでその辺留意して呼んでいただくと幸いです。
それではどうぞ
「すんすん……えへへ、やっぱり弟くんの匂いはいつ嗅いでも良い香りですね……深呼吸しちゃうと、トリップしてしまいそうです♡」
「……ジャ、ジャンヌ、嗅ぐのはいいけど顎とか首を撫で回すのはちょっとやめて、くすぐったい」
豪奢な作りをしたソファやテーブルが並ぶ空間、その区切られた席の1つで僕はジャンヌの膝の上に乗せられていた。
ジャンヌが僕の髪の毛に頭を埋めて匂いを嗅いでくる行為にはいい加減慣れたのだが、いかんせん背中に当たる胸の柔らかさは勿論、愛猫の如く僕の事を撫で回す彼女の手つきには油断すれば恍惚のため息を吐いてしまいそうなほどで、耐性がつくどころか病みつきになってしまいそうな程である。
それを悟られぬようにくぐもった声にならぬようにジャンヌにお願いをすると、意外なことにジャンヌは素直に応じて僕を可愛がる手を止めてくれた。
「むむ、そうですか? それはごめんなさい、撫でる場所を変えますね」
「ああ、うん、ごめんぁあっ!? ちょ、ふとももはもっとダメ!!」
「えー、なんでですかー?」
何故か僕の太ももどころかそれを超えて股関節を優しく……と言うか、どこかねっとりといやらしく焦らすような感じで撫でまわしてきたジャンヌの手を掴み制止。 このまま膝の上にいては気が休まらないと思い、ジャンヌの膝から降りて隣に座り直した。
むー、と可愛らしく不満ですと抗議するジャンヌに対し、こう言うあざとい仕草はアストルフォさん辺りの影響なんではないだろうか? とすると妙にいがみ合っている割には仲が良かったりするのだろうか? などと考えていると、席の外より歩み寄ってきた人物が僕たちへと声を掛けてきた。
「ふふ、仲睦まじい様子でなによりです」
凛としていてかつ、どこか威厳を含めているような声音の聞こえた方へと目を向けつつ、苦手意識が表に出ないようにしながら声の主へと無難な挨拶を返そうと口を開いた。
「……ああどうも女神サマ、お久しぶりです」
「ええ、お久しぶりです。
彼女とは何度か顔を合わせてはいましたが、あなたと最後に会ったのはいつでしたっけ?」
「2ヶ月前ですよ。 あなたが唐突にジャンヌと僕の
「ああ、そう言えばそうですね。
確かあの時、あなたは彼女とお楽しみの最中でしたか。 あの時もそうですが、今もややあなたが不機嫌なのは愛しの彼女との逢瀬を邪魔されたからでしょうか?」
「……」
極力そう言った感情を顔に出さないようにしていたのだが、あっさりとそれは看破されてしまう。
直前に楽しい時間に水を差され、水を差した本人は悪びれていなかった時の事を思い出してしまったのもあるのだろうが、あまりにも容易に抑え込んでいた感情について直球で指摘されてしまい、図星であったために弁解する余裕はなくそのまま黙りこくってしまう。
「沈黙は肯定と受け取ります。
余程アポイントなしで来たことが気に入らないようですが、あなたたちの領域の維持をしているのは
「……いえ、重々理解しておりますよ、その点は」
「ふふ、ちょっとした冗談ですので、そう畏まらなくても理解しているのでしたら結構。
……ああ、そう言えばこれも聞かなければなりませんでした。
あれから
その問いは一見すればただのあいさつに近しい世間話であり、久方ぶりに顔を合わせる者に問いかける言葉としてはごく普通の物と言える。
だがこの女神サマが僕にそう問いかけるのであれば、大分意味は違ってくる。 なにせこの女神サマは数多の神話や英雄譚における、テンプレめいた神々の振る舞いの1つを僕のような凡人にしたのだから。
そのことを理解しつつ、自分自身それほど嫌悪しているようなものでもなく、大して答えることを躊躇うような内容でもないのですぐに言葉を返した。
「それでしたら頗る好調ですよ。
あの日から1ヶ月は
「それは重畳。 あなた方には有事の際の為にも、万全の状態でいてもらわなければ困りますからね」
「……そうですか」
そんなこと、微塵も思っていなさそうだけども
そんな言葉が思い浮かぶが、決して口にしないように心中でだけで思いとどまらせて適当な返事を返す。
この世界で絶対と言える強力な力を有する女神が、そうそう危機を迎えるとは思えず、またそんな状況が思いつかない。
スポンサーの話をそっくりそのまま信じるなら、目の前にいる女神サマの力は口にするのも馬鹿らしい程に理不尽な力を持っており、その力は未だに神話復権を諦めない各神話の神々たちをまとめて相手をしても尚余裕がある絶対強者なのだから。
改めて自身から見て目上である存在の余りのスケールの大きさに、畏怖に近しい感情を女神サマに抱いていると、急に頭に鋭い衝撃が伝わり思考が明後日の方角へと飛んで行ってしまった。
「こら弟くん、女神さまにそんな生返事しちゃダメです!
弟くんが女神さまをどう思っているのかは知りませんが、私たちの恩人であることに変わりはないんですから!」
「痛っ!? ちょ、そんなチョップしないで、そこのところはよく分かってるし感謝自体はしているから!」
衝撃の原因であるジャンヌは怒ってますとばかりに僕の肩から顔を出し、頬を膨らませる顔を見せてきた。
それを受けて急ぎ弁明の言葉を並べ立てる。 実際、ジャンヌと僕を引き合わせてくれた件についても含めて感謝はしている。
ただ、感謝していることに連なって、色々な感情がごちゃまぜになったような言い表しようのない複雑な思いも抱いているために、積極的に関わりたいとは思えないのだ。
「感謝など結構です。
あなた方は
それが守られている限り、私はあなた方を見捨てるようなことはしません」
こちらに話しかけてから変わらぬ表情でそう告げる女神サマに、思うところがないなんてのは嘘になる。
果たして、この女神サマは僕たちに何を求めているのか、そしてその真意がなんであるのか。 それについて追及したい気持ちは尽きない。
それでも、少なくともこの場でこれ以上この女神サマの考えていることについて思考したり、直接問うようなことはやめておこう。
なんであれ、彼女が僕たちの未来への道筋を作った者であることに変わりはないのだから。
「……あの、ところでこの店は何なのですか?
素人目で見ても相当のお金がかかっているのはわかるのですけど、まさか田中さんを嵌めるためだけにお店を建てるなんて大仰なことをしたのですか?」
話題転換を図ろうと辺りを見回しつつ、店の中に入ってから思っていた疑問をぶつける。
改めて見てみても、まず一般家庭は勿論、普通の店ではまず見ないであろうシャンデリアや天井近くに飾られた本物と見間違いそうになる造花などなど、見れば見る程手の込んでいる店だと思った。
これほどのものを、ただ1人のためにするのかと言われれば普通はしないと思うのだが、この女神サマの愛の重さを考えればやりかねないとも思ったのだ。
しかしその予想は外れていたようである。
「ええそうです……と言いたいところですが、実際は違います。
ここは私が以前から経営している店です。
運命に愛された者たちの理想郷、【Affection of Avalon】。 ごく普通の会員制の高級クラブですよ」
「……ごく普通……」
田中さん1人のためだけの店ではないと聞いて意外に思うも、最後の謙遜めいた言葉に引っかかりを覚え再び視線を周りの席へと向ける。
確かに僕と田中さん以外にお客さんはいることにはいるのだが……
「学生たちの希望担いし焼きそばパン、キシナミ!」
「世の女性の救世主たるプレミアムロールケーキ、はくのん!」
「「2人揃って、フランシスコ・ザビィズ!!」」
「キャーー!! 素敵ですキシナミ先輩ーー!!」
「はくのん可愛いよはくのんーー!!」
大量の空いたワイングラスをテーブルに積み、意味不明な口上とポーズを決める2人組の男女へと狂ったようにシャッターを切らすこれまた2人組の男女。
「ほらあなた、グラスが空いてるわ」
「ありがとうマリー。 ところでこのワイン甘くて飲みやすいけど、何てワインなんだ?」
「ふふ、気に入って貰って嬉しいわ、あなた。
それは【ロゼ・ド・マリー・アントワネット】というスパークリングワインで、ヴェルサイユ宮殿のバラとりんごを使っているのよ。
わたしはこのワインが大好きなの」
「そうなのか……ねぇマリー」
「なにかしら、あなた?」
「……ワインのマリー飲んでたら、今度は隣にいるマリーを飲みたくなっちゃったんだけど……いい?」
「もう、あなたったら……♡」
周りに他の客がいると言うのに、2人だけの固有結界を張って見てるこちらが胸焼けしそうなほどイチャつきだす男女。
「ステンノ様、あの流石にもうこれ以上は……」
「あら、私の振る舞うお酒が飲めないというのかしら?
私を愛しているあなたが、まさかそんなことは言わないわよね?」
「はい、喜んで飲ませていただきます!……うぅ……」
「クスクス、その調子よマスター。
泥酔した後は勿論近くの色宿で……♡」
そして前のペアとは裏腹に、酒を飲まされ続ける男性と怪しい微笑みを浮かべる女性。
「もきゅもきゅもきゅもっきゅ……ふむ、偶には和菓子以外の甘味と言うのも悪くはないですね。
オルトリアクターの魔力変換もそこそこ効率が良さそうです」
「まあそうだろうね。
だって今えっちゃんが食べてるの抹茶ババロアだもん……和菓子ではなくても、和スイーツだもの……」
「……あー、あれは何でしょうかマスターさん?」
「え、なに?……別に何もないじゃンムゥッ!!??」
「んちゅっ……♡んっ……ぷぁ……まるで私が和菓子しか味の分からないお子ちゃまのように扱われて、少しばかりむっとしてしまいました。
おかげで無駄な感情を抑えるのにエネルギーを浪費しましたので、この場でマスターさんから魔力を徴収しちゃいます……んっ……♡」
またまた人目を憚らずにキスをしまくる(但し捕食者と被捕食者の関係)男女ペア。
「うーむ、厨房でニンジンを切り刻むのではなく、他の者に料理は任せてご主人の隣でニンジンを摘まむのもまた一興……ご主人とともに豪奢な宴をするこの瞬間は正に酒池肉林。
そんな満腹キャットがこたつネコの如く、ご主人の膝の上で丸くなるのもまた自明の理なのだワン!」
「はいはい、そんなこと言わなくても膝くらいならいつでも貸すさ。
俺はキャットのご主人なんだからな」
「な、なぁマスター。
このワインなんだが、結構飲みやすくて美味いぞ。 汝も飲んでみないか?」
「ん、ああ。じゃあ貰おうかな」
「ねぇ、こっちのカムイトノトも飲んでみない?
アイヌ伝統のお酒なのだけど、甘くて美味しいわよ」
「……何か仕込んでないよな?」
「わたしに対して未だに信用が薄いのはどうしてかしら!?」
周りを女性で固められ、甘えられたり酒を勧められたりとしているグループ。
おかしいな、見る限りこの場にいる客全員に見覚えがある。
と言うか全員知人だ。
「それは当然でしょう。
先ほども述べましたが、ここ 【Affection of Avalon】 は運命に愛された者たちの理想郷。
故にこの理想郷へ立ち入る資格がある者は、私が認めた愛を胸に抱き、相思相愛で結ばれた者たちのみなのですから」
「ナチュラルに僕の思考読むのやめてくれませんか?」
「いいえ、読んではいませんよ。
あなたが分かりやすいだけです」
僕ってそんなに表情に思考が浮かんでしまうタイプなのだろうか?
普段からなるべく心中で浮かんだことは表には出さないように心がけているつもりだし、あまり追及もされてこなかったことや目の前の女神サマの強大さや僕たちとの関係性を考えると、やはり直接思考を読んだのではと勘ぐってしまう。
だが向こうがそのことを認めようが認めまいが、対策が出来ない以上考えるだけ無駄だろう。
とりあえず浮かび上がってきた疑惑は後回しにし、今ここで聞いてもなんら不自然ではない疑問について問うてみることにする。
「ここ、一応はクラブなんですよね?
と言う割には接待をする方はともかく、従業員が見当たらないのはなんでですか?」
軽く見回しても、接待をするキャストや嬢といった人たちは見受けられず、いるのは給仕のために厨房を行ったり来たりして飲み物や食べ物を各テーブルに配っている、女神サマをそのまま幼児にしたかのような姿の眷属(に似たようなもの)、通称【ちびレオ】が数人いるだけだ。
クラブを自称する以上、接待をする者はいる筈なのだが……
そんな疑問に、女神サマはこれまた何とも言えない返答をしてきた。
「キャストがいないことはないですが、彼女たちは私のマスターとしか接待をしないので」
「高級クラブとはなんだったのか」
「そもそも、愛する者がいると言うのに、クラブで違う女性の接待を受けるのは浮気以外の何者でもないです。
そんな下種の畜生どもの行いを、私が認可するはずもありません」
「……ごもっともですけど、それじゃあなんで高級クラブなんて経営してるのですか?」
「知れたことです。
マスターと愛を確認し合うための、シチュエーションの場を形成する場が欲しかったからですよ。
勿論、あなた方のような愛をわかち合う者たちの楽園を作る目的もありましたが」
それ高級クラブと言う形に固執する必要ないのでは? 僕は訝しんだ。
「……まあもう深くはツッコミませんけど、目的の1つとして田中さんに接待をすると言うのがあるのですよね?」
「ええ、その通りです」
「じゃあ、あれも接待なんですか?」
「あぁマスター。 今日も素敵なマスターですね……♡
こうしてマスターの膝の上で、ゆったりとした時間を過ごせる私は幸せ者です……♡」
「好き……♡好き……♡
好き好き好き……♡ 大好きですマスター♡ 愛していますマスター♡」
「あっ……うぁ……♡」
僕の指さした先の別の席において広がっていたのは、魔法少女っぽい装いをしているアルトリア顔の少女2人がうわ言を呟く田中さんの膝に乗り、彼の耳元で何かを囁いていると言う、どう見ても洗脳案件な光景であった。
あの2人はFGOにおける看板ヒロインサーヴァントである、アーサー王もとい【アルトリア・ペンドラゴン】のIFの姿。
【選定の剣】ではなく、【選定の杖】と共に選ばれた彼女は【アルトリア・キャスター】。
キャスターと、真名にクラス名が含まれている通り、魔術を主な武器として戦闘を行うサーヴァントであり、【キャストリア】の愛称で以てFGOユーザーたちには慕われている。(色んな意味で)
性格はセイバーのアルトリアさんとほぼ変わらないが、サボり魔を自称したり、苦言を呈したりとセイバーのアルトリアさんよりも少女としての面影を残しているのが特徴らしい。
……らしいと言うのは、この世界でキャストリアさんが現界した人とは、田中さんを除いて会ったことはないため、ネットで調べた程度にしか情報が分からないことが1つ。
もう1つは、田中さんに仕えている彼女たちは好感度が振り切りすぎていて、元の性格が薄れているのを否めないところがあるからだ。 まあ彼女たちがどんな存在であるのかを考えれば、異様に高い好感度は当然と言えるが。
「あの2人もあなたの作り出した“再現体”なのでしょうけど、流石にあれはスキンシップの度を越えていると思うのですが。
と言うかあれは最早洗脳ですよね?」
「……? 洗脳ですが、何か問題でも?」
「えぇ……」
僕の確認に全く悪びれもせずに女神サマは肯定し、あまりにもあっさりと返答がされたために僕は困惑の声を漏らして開いた口が塞がらなかった。
いやまあ、ジャンヌの洗脳をある意味で受け入れてしまっている僕が言っても説得力皆無なのだろうが、一般的な常識で考えて、洗脳は悪しきものであるのだが……
その困惑についても女神サマはよく分からないような様子だったが、気にする必要もないかと聞いてもいないことをしゃべり出した。
「あれは私の2人の分霊でマスターの接待をする専用コース、通称【
「僕の知っているWキャストリアシステムと全く違う件について」
「それはそうでしょう。
あなたの言うWキャストリアシステムは【ダブルキャスター・アルトリアシステム】の略称ですが、マスターが受けているWキャストリアシステムは【ダブルキャスト・アルトリアシステム】の略称なのですから」
「誰が上手いこと言えなんていいました!?
略す前の名前が違うからOKって問題でもないんですけど!」
「あ、I am the the bone of my Leo……」
「なんか田中さん変な詠唱し始めちゃったし!
その詠唱のテンプレが許されるのは冬木のブラウニーとドンファンな紅茶だけですから! あなた彼らとの共通点神造兵器埋め込まれているくらいしかないですから!
と言うか体は私のレオで出来てるって意味不明なんですけどぉ!」
「そ、そんなマスター……体が私で構成されているだなんて……♡」
「なんか微妙に重い方向で解釈しているしこの女神サマ!
田中さん今すぐその詠唱やめてください!
下手しなくても【アンリミテッド アルトリア ワークス】とかそう言う系統の固有結界発動してしまいますから!」
ええぃツッコミが、ツッコミが追いつかない! 毎度のことながら、どうして僕の知り合いにはボケばかりしかいないのだ!
会う人の八割がたボケまくるために、全く休む暇もない。 と言うかなんで誰もツッコミを担当しないのだ。 おかげでいつも僕ばかりが貧乏くじを引かされている気分だ!
どうしてこんな残酷なことが出来るんだ! まともなのは僕だけか!
思考がオーバーヒートして暴走しそうになるも、どうにか深呼吸をして昂ぶる気持ちを落ち着ける。
とりあえず、話題を変えてこの混沌なツッコミどころ満載の空気を塗り替えるのだ。
「ふぅ……いくらあなたの創造した再現体とは言え、田中さんに接待をすることを、ましてや洗脳なんてよく許可しましたね。
一体どういう風の吹きまわしなのです?」
女神サマの創造する、アルトリア・ペンドラゴンと言うサーヴァントの再現体は、強さや田中さんへと向ける好意に関しては同一ではあるが、クラスやそれに伴う性格、意識のベースは再現の元となったサーヴァントのものとなっており、1人1人自我が存在するのだ。
例を挙げると、セイバーのアルトリア・ペンドラゴンの再現体は初々しい乙女のような態度で田中さんに接し、アサシンのクラスである謎のヒロインXの再現体は、夜這いや逆レイプをすることに積極的ではあるが、自身の性質からかギャグキャラの宿命なのか、いいところで雰囲気ぶち壊しになってしまう、と言ったところか。
要するに、再現体とは言っても同じクラスや霊基を元にしていても、それぞれ独立した意識を持つ存在であるのだ。
今田中さんはある意味双子のような、各々がれっきとした自我をもつ女性を侍らせている(厳密には洗脳されている訳だが)のと何ら変わりない。 それはこの再現体を想像した女神サマがよく分かっている筈なのだが……
「ああ、そんなことですか。 愚問ですね、それでしたら簡単なことです。
マスターがどれだけ私以外の女どもに愛されようが、マスターの1番がこの私であることに何ら変わりはないのです。
であるのならば、いくら足掻こうが私よりも愛される筈のない女どもに嫉妬なんてするのも馬鹿らしいでしょう? 私は女神ではありますが、だからと言って成長をしないと言う訳ではないのですよ」
表情に大きな変化は見えないが、心なしか得意げにそう言う女神サマ。
田中さん以外の人間が眼中にない基本スタンスは変わっていないのであろうが、嫉妬深すぎな点を顧みて改善する姿勢は人間性(女神だが)の成長も垣間見えたようにも思え、素直に感心する。
「……それは良いことですね。
ところで先ほどから気になっていたことがあるのですが、聞いてもよいでしょうか?」
「ええ、どうぞ。
眷属に近しい者の問いには応えねば、女神としての器の沽券にも関わってきますから」
「では遠慮なく聞きますね。
どうして今のあなたの服装は、アルトリア・キャスターさんの第2再臨のソレなのでしょう?
こう言う場ではバニースーツの方が雰囲気に合っていると思うのですが」
訂正。 服装が常と変わっていなければ感心していた。
女神サマがただいま身に纏っているのは前述した通り、アルトリア・キャスターさんの第二再臨の際の霊衣、紺色のマントに帽子、白いスカート付きの制服のようなもので構成された服装であり、ご丁寧にアルトリア・キャスターさんの装備である選定の杖まで装備していた。
ここまで細かく対象の服装の再現をしているあたり、嫉妬していないなんてのは言い訳にしか聞こえない訳なのだが、当の女神サマと言えばそういわれることを想定していなかったのか、パッと見では大きな変化こそなかったものの、あからさまに動揺しているのがよく分かった。
「……いえ別に?
いつもはバニースーツなのですが、今日この店ではコスプレイベントのキャンペーン中ですし、店長である私もコスプレをすることには何の問題もありませんし。
いえ、寧ろキャストの士気のことを考えるなら店長であるからこそ、率先してコスプレをしなければならないのです」
「それならば別にその服でなくとも構わないでしょうに。
どうして田中さんを接待しているキャストと同じ服装をしているんですかね?」
「いえ、別に深い意味はありませんが? たまたま近くにあった服がこれと言うだけであって、あの小娘たちは何ら関係ありませんし、ましてや嫉妬なんて全然していませんし」
僕にはどうしても『おのれ小娘ども私のマスターを寝取ろうとは身の程知らずめ! 所詮貴様らなど私が本気を出せば、マスターの心を取り戻すことなど訳ないのだ!』と顔に書いているような気がしてならない。 やたら『いえ、別に?』とか『してませんし』とか乱用しているせいで、図星であることを自己申告しているようなものであった。
……しかしあれだな。 姿としてはアルトリア・ランサーさんとほぼ同一の女神サマが、傍から見ると制服を魔改造したような服装を身に纏っていると、本来なら可愛らしさを際立たせるようなデザインである筈のソレが着用者の年齢を強調しているように見える。
具体的に言うと、今の女神サマはいい大人になった後で服の整理をしていたらかつて着用していた学生服を見つけ、なんとはなしに着てみたら結構キツかったと言う───
「何か言いたいことがあればどうぞ。
その口を聖槍で縫い合わせて差し上げましょう」
「い、いえなんでもありません!
と言うか聖槍なんて口に刺されたら縫い合わせる前に死ねるんですがそれは!?」
いつの間にか選定の杖から取り替えた光り輝く槍がゴウンゴウンと唸りを上げていたのを見て咄嗟に謝る。
聖槍を手にしている女神サマは表情こそ微笑みを浮かべていたのだが、目が笑っているようなことはなく激怒しているのは明白だった。 心当たりが直前まで考えていたことのみなので、やはり彼女は思考が読めるのではと思うと同時に、流石にデリカシーがなさすぎたと心中で猛省。 素直に何を思ったのか申告して謝罪することも考えたが、今この場で口にする方が失礼だと考えて思いとどまる。
僕のその心中を読み取ったのか慌てふためく僕を見て溜飲を下げたか、どちらかは分からないが女神サマは1つ息を吐き、この場の空気にそぐわないプレッシャーを放っていた聖槍をしまってくれた。
「分かれば良いのです。
今後、出過ぎた不穏な言動や所作は控えるように」
分かれば良いと言いつつも、まだ機嫌が悪いことが見て取れたために頭を下げる。
ご機嫌取りと言うつもりはないが、今のは全面的に自分が悪いのでひたすら謝るのが筋と言うものであろう。
……しかし、このまま僕が謝り通していても悪いことが起きそうな風景が視界の端で起こっていたために、女神サマへと進言をする。
「す、すみません。 以後気をつけます。
あの、ところでなのですが……」
「なんでしょうか?」
「……向こうの方、仕上げに入ってきてそろそろ取り返し付かないとこまでいきそうですけど……」
「ああ、マスターのここ、とっても硬く大きく膨らんでますね……♡
服と手袋越しなのに、ハッキリと熱が伝わってきちゃいます……♡」
「こーふん、しちゃったんですね……私、とっても嬉しいです……♡
マスターのココをこんなにしちゃった責任、しっかりととりますからね……♡」
田中さんにしなだれかかっている2人のアルトリア・キャスターさんは発情しているかのように頬を紅潮させ、両側から耳元で囁きながら片手を田中さんの股間を互い違いに撫でている光景が。
どう見てもあの2人は田中さんの城壁を一気に落とそうと仕掛け、実際に田中さんは既に陥落寸前の様子で白目を剥きかけ口を半開きにしていた。
「……僕はね、性義の味方になりたいんだ……」
なんか遂には枯れてしまった正義の味方の台詞を言っちゃってるし。
意識が朦朧としている中で紡ぐ言葉がそれでいいのか田中さん。 さっきまで正義の味方を憧憬あるいは駆けていった者たちの台詞を口にしていたのに、諦めの境地の域に至るの早すぎではないのか。 もしくは田中さんの正義の味方を名乗れる期間短すぎたのか。
と言うか、『正義の味方』の正義のとこ意味合い違うように聞こえたのですがそれは。
「……確かにあれ以上は目に余りますね。
それでは私はこれで。 この後もどうぞごゆっくりと……もっとも、あなたに余裕が出来るとは思えませんが」
「……?
ああ、ありがとうございます」
最後の言葉がどういった意味合いなのかが分からず首を傾げつつも、相手がまだゆっくりして良いと言うのであればこちらとしても素直に受け取りゆっくりしていこうと思う。
こちらの返答を待たずに飛び出していった女神サマは『私のマスターにそれ以上の狼藉は許さぬぞ小娘ども!』とか言って田中さんの上で乳繰り合っているアルトリア・キャスターさんの2人を吹き飛ばした。
『きゃあ、自分殺しー!』と悲鳴を上げ吹っ飛ぶ2人には目もくれず、解放されて尚意識がどこかにいっている田中さんへとすり寄り……と言うより体を直接擦りつけて、犬のように褒めて褒めてとアピールしているようだった。
「えへへへ、マスター♡ あなたを誑かす身の程知らずはこの私が懲らしめておきましたので安心してください。
私がいる限り、マスターの貞操は死守いたします。 ですからマスター、SEXしましょう♡ 交尾しましょう♡ 永久不滅の愛を確かめ合いましょう♡ さあさあさあ♡ハリーハリーハリー♡」
「た…………す……け………」
もう待ちきれないとばかりに田中さんの体を持ち上げ、奥のスタッフルームらしき部屋へと向かっていく女神サマ。
肩に担がれている田中さんは未だに濁った瞳ではあったが、本能的にこの後起こりうる出来事を察知したのか、震える唇を懸命に動かして助けを求めていたのだが、この店の中の客である人たちは各々のパートナーとの会話に夢中で僕以外に気づいている人はいなかった。
ふと田中さんと目が合ったような気がし、その瞳が助けて欲しいと訴えていたように見えたが、アルトリア・キャスターさんに直前まで洗脳されかけていたから、その弊害でそう見えただけなのだろうと決めつけて気のせいだったことにし、そっと視線を逸らした。 決して助けるのが面倒とか、寧ろこの店に来ることになったのは元はと言えば田中さんだし別に助けなくていいか、とか思っている訳ではないのである。
そうしてスタッフルームの奥へと消えていった2人のカップルを見送り、苦笑いしながらテーブルのオレンジジュースに口をつける。 先ほどから喋り通しだったためか思っていたよりも喉がカラカラに乾いており、濃厚な甘みと爽やかな酸味が喉を伝い潤いをもたらしてくれた。
「ふぅ……ああは言っても、なんだかんだあの2人はお互いに好き合っているんだろうなぁ……まぁ、ちょっと───」
「そうですね、あのお二方のような愛し合う関係も、理想の愛の形だと私も思いますよ、弟くん?」
一息つきながら呟いた言葉は、最後まで紡がれる前に隣から聞こえてきた声に遮られて“一方の愛が重すぎだけど”と続けることが出来なかった。
ギクリと体が無意識に飛び跳ね、ギギギと軋むように首を曲げて顔を声のした方へと向ければ、それはそれはイイ笑顔のジャンヌが、僕と同じオレンジジュースの入ったグラスをストローでグルングルンとかき混ぜていた。
「あ、えっと、その……」
明らかに怒っていると僕に意思表示しているジャンヌに僕はたじろぎ、なんと言えば良いか分からず、言葉を探すようにもごもごと口を動かしてしまう。
その間にもジャンヌのストローを回す手は躍動感を増し、彼女の口からわざとらしい調子の言葉が紡がれる。
「それにしても、あーあ。 せっかく弟くんにいっぱいサービスしてあげようと思ったのに、私をそっちのけて女神様と楽しくおしゃべりだなんて、お姉ちゃん悲しいな~。
でもでも、しょうがないですよねー。 だって女神様ですもんね。 弟くんがついつい視線を向けて、会話に花が咲いちゃうのも仕方がないですもんね~。
もう弟くんにお姉ちゃんはいらないみたいですねー、じゃあお姉ちゃんも、弟くんの事なんてしりませーん」
あざとく頬を膨らまし、つーんとわざわざ口にしてそっぽを向くジャンヌ。
最早狙ってやっているとしか思えないあざとい仕草の数々に、わざとと分かっていても可愛いなんて思ってしまうが、今はそれどころではないと頭を振り弁明をする。
「ご、ごめんジャンヌ!
別にジャンヌのことをないがしろにしていた訳じゃないんだ!
ただ、その……あの女神サマが近くにいるときは、なるべく目を離さないようにしておきたくて……」
「ふーん、やっぱり見惚れてたんですね。 お姉ちゃんと言うものがいながら、女神様と言えど他の女性に見とれるなんて、もう弟くんはお姉ちゃんなんてどうでもいいんですねー」
「う、うぅ、そんなつもりはないんだけど……」
ジャンヌの言葉がチクチクと僕の心を突き刺し、罪悪感を煽ってくる。
実際、見惚れていたなんてことは絶対にないのだが、ジャンヌがこの場で僕としたかったこと、僕に求めていたことを無視していたことに変わりはなく、これではないがしろにしていたと言われても反論は出来ない。
最初に浮かべていた笑顔さえ消え、ぶすーっとした不満顔とジト目で僕を見つめて、オレンジジュースにストローからブクブクと気泡を立たせるジャンヌ。
そんな仕草や表情でさえ場違いながらも愛おしく感じていたのだが……
「悲しいなー、悲しいなー。 お姉ちゃん弟くんが一緒にいなきゃ寂しくて寂しくて仕方がないのになー。
お姉ちゃんは弟くんの事が大好きなのに、弟くんはもうお姉ちゃんが嫌いになっちゃったのかなー?」
「っ! 違う、そんなことないっ!!」
最後に言った言葉を聞いた僕は一瞬で感情の制御が効かなくなり、周りに人がいるのも忘れて叫んでいた。
僕の唐突な行動に驚いたのか、ストローから口を離してこちらを見つめてくるジャンヌ。
驚かしてしまったことに申し訳なさを感じるが、そのまま言葉を静かに続ける。
「……ごめん、急に叫んで。
ジャンヌには悪いけどさ、僕はまだあの女神サマのことを信用しきった訳じゃないんだ。
常にあの女神サマに
だからこそ、せめて視界にいるうちは注意を向けているべきだと思ったんだ……けど、結局ジャンヌのことをないがしろにしてたよ……ごめんね。
だけど、これだけは言わせてほしい。 迷惑に思うかもしれないし、不愉快かもしれないけど、聞いて欲しいんだ」
「弟くん……」
真っ直ぐに僕のことを見つめるジャンヌに、僕もまたジャンヌの視線を真っ向から受け止め、こちらからも真っ直ぐに視線を返し、深呼吸をしてから思いを紡ぐ。
「僕がジャンヌのことを嫌いになるなんて、絶対にあり得ない。 たとえジャンヌに嫌われたって、この思いが募って大きくなることはあっても、決して小さくなったり、ましてや消えることなんてないよ。
だから、だから……どうか、僕と一緒にいてほしい。
僕と一緒に、終わりの時まで共にいて欲しいんだ……お願い……」
縋るようにしてジャンヌの体に抱き着き、そっとジャンヌの耳元で懇願する。
きっと今僕は顔をそれこそリンゴのように赤くし、耳までその色で染まっているに違いない。 それくらいに恥ずかしくて、声が掠れてしまうくらいには緊張してしまっていた。
僕の思いは何も、ここで伝えるのが初めてではない。 あの規模の大きすぎた
あの日まで、僕はジャンヌに本当の思いを伝えることに躊躇し、ジャンヌの迷惑になってしまうとか思いながら、結局ジャンヌの事を傷つけてしまった。
だからこそ、ジャンヌへの思いは伝えたいと思った時には口にするようにしようと心掛けてはいるが、やはり心のどこかでいつまでたってもこびりついて離れない疑念が付きまとってくるのだ。
それでジャンヌに迷惑を掛けないか、本当にこれでいいのか───
「あ痛ぁ!?」
そんな暗い思考に陥っていた僕の頭に、唐突に鈍い音と衝撃が伝わってきた。 そのあまりの痛みに抱き着いていた両手を離し、両手で頭を押さえてしまう。
そしてその痛みをもたらした下手人は、僕に振り下ろしたのであろう垂直に保たれた右手を上げたまま、それはそれは呆れたように嘆息し、口にする。
「30点です弟くん」
「30点!? 何の話!?
いや、と言うかなんで僕にチョップしたの!?
僕今かなり真剣にジャンヌに告白めいたこと口にしたつもりなんだけど!?」
別に初めて告げた訳でもないし、似たようなニュアンスの事はこれまで何度か口にしてきた。
けれども、恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。 正直、このような告白めいた言葉をジャンヌに伝える行為は、これから先いつまでたっても慣れるような気はしない。
それでも、やや感情に押された勢いがあったとは言え羞恥心を乗り越えて思いを伝えたと言うのに、これはあんまりではないか。
そういった非難を視線に込め、痛みが引いてないがために若干涙目になりながらも抗議する。
ジャンヌはその視線をしっかりと受けつつも、自身の不満を含めて評価について説明をする。
「ええ、よく分かりましたよ。 謝罪にしてもそうですし、冗談であろうとすぐに私の言葉に否定してくれたのは嬉しかったです。
でも“迷惑に思うかも”とか“不愉快かも”と前置きしていたのと、直接的な愛の言葉がありませんでしたのでそこで減点です」
拗ねるような仕草こそしていないが、眉を寄せて不満ですアピールをするジャンヌに、ちょっと採点基準厳しすぎないと思ってしまうも、指摘された点について客観的に考えれば、余計な付け足しと不足したものについては正鵠を得ていると思ったのだ。
もしもジャンヌから今僕が口にしたようなニュアンスの告白をしてきたのなら、真っ先に余計な前置きについては否定するだろうし、今日まで散々ジャンヌが囁いてくれた愛の言葉がなかったことに不満をもつかもしれない。
そう考えれば、ジャンヌの指摘も最もな話ではあるのだが……そうは言っても、恥ずかしいものは恥ずかしい。
そもそも、僕は普段からジャンヌのように求愛の如く好きだなんて何度も口にしたことは洗の……特定の条件下でしかしたことがないのだから、多少ハードルは下げて欲しかったと言うのが本音である。
とはいえ、一度出された点数が覆される筈もなく、途方にくれたような感覚に陥りつい弱音のような言葉が零れてしまう。
「え、えぇ、そんなぁ……じゃあ、どうすれば……」
そんな僕に対し、ジャンヌは頬に指を当てて何やら考え込むような仕草をした後に、初めからそのつもりであったかのように思える笑顔を浮かべてこう告げた。
「ん~、そうですねぇ……ああ、それじゃあ───」
「言葉だけじゃなくて、行動で証明をしてください。
私の事を、愛していると」
潤んだ瞳で僕に顔を寄せ、そっと僕の頬を撫でた後に静かに瞼を閉じたジャンヌ。
ジャンヌの体温を肌で感じられる程の距離にまで詰め寄られ、困惑を隠せない。
「え?……ええっと」
ジャンヌの意図が察せず……いや、薄々察しつつも踏み切れない僕にジャンヌが早速業を煮やしたのか、抗議するようにきゅっと閉じた唇を前に突き出す。
「んっ……んー、んー!」
いつの間に脇の下から回されていた両手で体を捕らえられ、互いの額が触れ合う。 あとほんの少し顔の角度を変えれば、触れ合うのは額から別の物へと変わる位置。 けれどジャンヌはそこから自身で動こうとはせず、あくまで最後は僕から動くことを望んでいた。
彼女は、キスをせがんでいた。
出会ったばかりの頃であれば、ジャンヌにここまでされてもヘタレて自分から動く様なことは出来なかっただろう。
けれど、それももう昔の話だ。 未だにヘタレであるとは自覚はあれど、ジャンヌにここまでされて動かないのは、逆にジャンヌを悲しませることをもう知っているから。
「んっ……むっ……んぅ……」
「んー……♡ん……ふぅ……♡」
ゆっくりと唇と唇を合わせ、舌先でジャンヌの唇を濡らしそっと口内へと滑らす。
瞳を閉じて下に神経を集中し、漏れ出るジャンヌのかすれた声を頼りに彼女が感じる箇所を探り、重点的にその位置で吸い付き、刺激を与える。
ジャンヌもまた僕の舌に合わせるように舌を絡め、抱擁する力を強める。 それに抵抗することはせずに自然と受け入れ、こちらからも抱きしめ返した。
「ん……ジャンヌ……す、……好き、だよ……。
これで、いいかな……?」
長いような短いような、そんな感想ばかり想うジャンヌとのキスを終え、たどたどしくジャンヌへと思いを伝える。
恥ずかしくて最後までジャンヌの顔を見ることが出来なかったけれども、それでも思いを告げ終えるまではジャンヌのことをしっかりと見て告げられた。 これだけでも、前よりはずっとマシになったとは思うのだ。
「……ふふ、ええ、100点ですよ、弟くん。
弟くんのお姉ちゃんへの愛がしっかりと伝わってきました」
俯き気味の僕の頭をそっと撫でられながらジャンヌにそう言われ、内心ほっと安堵する。
しかしその安堵も束の間の事であり、それを実感したのは後ろから回された両手が僕の腰を掴み、持ち上げられたからだ。
「でも、まだまだ足りません。 100点なんかじゃ、全然お姉ちゃんは満たされないのです。
そうですよね?」
「え……っ、な、なに!?」
先ほどまで抱擁していたジャンヌから告げられた言葉に呆気にとられる暇もなく、一体何が起きたのか確かめるために僕を引っ張りあげた者がいるであろう方へと振り向き、僕は思わず絶句してしまった。
「ええ、そうですね。
増えちゃったお姉ちゃんたちには、もっともっと弟くんのお姉ちゃんへの愛が必要なのです」
そこにいたのは、見間違いようのない、僕の呼び声に応えてこちらにやってきた、僕の良く知るジャンヌその人であった。
彼女はニコニコと、僕にいつも向けていてくれる笑顔を浮かべながら、ぎゅっと僕の体を抱きしめてくる。
彼女から伝わる体温にドキマギしつつも、困惑を隠せない僕はジャンヌへと問う。
「……ジャ、ジャンヌ……?
え、でも、そこにも確かにジャンヌは……まさか」
僕を背後から抱きしめているジャンヌも、先ほどまでキスをしていたジャンヌも確かにこの場にいて、ジャンヌが2人いる現象に思い当たるものが1つだけあった。
けれど、どうしてそれが今になってこのタイミングでと疑問が浮かぶ。 だって
しかし僕のそんな懸念は思い違いだったようであり、2人のジャンヌは僕が何を考えていたのかを察して否定の言葉を口にする。
「違いますよ弟くん。
ここにいる私も、弟くんを抱っこしている私も、確かに弟くんが愛情を向けていて、弟くんに愛情を向けているお姉ちゃんです」
「弟くんと運命の出会いを果たして、弟くんと一緒にイルカショーを営んで、弟くんと愛を誓い合った。
そのことを確かに記憶し、弟くんへと向ける愛も同じお姉ちゃんたちです。
違いがあるとすれば……ちょっと失礼します、弟くん」
そう言って僕を抱きしめていたジャンヌは、対面のジャンヌへと僕をそっと預け、僕を受け止めたジャンヌはそのまま僕の体をくるりと回転させ、膝の上にぽすっと乗せた。
当然の如く強く抱きしめられ、背中に伝わる柔らかな感触にドキマギしそうになるが、それよりも先に僕を先ほどまで抱きしめていた彼女の姿に驚く。
「その服装って……」
「ええ、そうですよ弟くん。
概念礼装【ミステリー・トレジャー】の霊衣です。 リボンがたくさんあしらわれてて可愛いので結構気に入っているんです。
これ、似合ってますか?」
両手を上げ、くるりと緩やかに開店した後に全身をお披露目するようなポーズを取るジャンヌの服装は、白と水色を基調とし、様々な場所に同色のリボンがあしらわれたセーラー服だ。 だが、そのセーラー服はスカートの部分とジャンヌの胸を隠しているだけであり、その部分以外は大胆に排除されていた。
ウエストどころか、脇周辺や背中でさえ丸裸で露出度の高いそれはFGOにおける概念礼装【ミステリー・トレジャー】に描かれていたジャンヌが身に纏っていたセーラー服だった。
僕がそのジャンヌの身に纏った霊衣について認識を終えた僕は、僕へ見せつけるように様々なポーズを取るジャンヌへと素直な感想を述べる。
「うん……すごく、可愛いと思う」
「えへへ……ありがとうございます、弟くん」
嬉しそうにはにかむジャンヌに、口にはしなかったがセクシーでもあるなと思ったことを少し恥ずかしく感じ、目を逸らしてしまう。
セーラー服を身に纏っているジャンヌは少し訝しげであったが、表情が見えない様子の僕を抱えているパーカービキニなジャンヌが耳元で囁いてくる。
「この通り、私たちの違いはオリジナルか否かを判別するための霊衣の違いくらいしかないんです。
当然、お姉ちゃんの弟くんへの愛も、みな優劣なく等しい思いを抱いているのですよ」
ジャンヌの説明を受けてハッとし、どうにか頭を切り替えて思考する。 大雑把に言えば、あの女神サマの再現体のように各個体のような、各々の霊基によって差異のあった自我があるのではなく、あくまでベースとなるオリジナルの人格をもコピーしたもの、と言うことなのだろう。
それを考えると、女神サマの創り出した再現体たちのような多様性はないと考えられる。
「でも、どうして急にそんなことができるように……ってこんなこと教えるのって……」
「はい、弟くんの予想通りだと思います。
先ほど女神様に“再現体”の創造が私にも出来ないのかお聞きしたところ、似たようなことであれば出来ると私に快く教えてくれました。
今はまだ1人しか増やせないのですが……弟くんのお姉ちゃんへの愛と、お姉ちゃんの弟くんへの愛があればもっともーっと増えて、もっともーっと弟くんを愛してあげられます♡」
心底嬉しそうに言うジャンヌに苦笑いしながら、頭の中で何やら意味深な笑みを浮かべている女神サマに思いっきり毒づく。 ……などと余計なお世話だと思う反面、少なからず期待のような思いも心中で浮き彫りになる。
だって、今までジャンヌ1人相手しただけでも、自分でも情けなく思うくらいにジャンヌに溺れてしまっているのに、それが2人になるって、それは……
その懸念をジャンヌが読み取ったのかは分からないが、僕を膝に乗せているジャンヌは逃がさないと言いたげに抱擁する手を強め、頬にほおずりしてくる。
「さてさて、それじゃあそろそろ行きましょう。
今日はもう遅いですし、女神様に泊まる場所を用意して頂いたのでそこで泊まりましょう」
告げられた言葉にドキリとしつつも、全く聞いていなかったこの後の予定に困惑し、期待混じりの声音でついそんな疑問をジャンヌへとぶつけてしまう。
「え……あの、泊まるとこって、どこに……?」
「ここのクラブ、上階は会員専用の宿泊施設になっているんですよ。
当然、恋人向けの設備は完備されているそうですよ。
今日はお姉ちゃんたち2人と一緒に、いーっぱい楽しみましょうね♡」
「え」
「まずは3人一緒にお風呂に入って全員で洗いっこしたり、湯船にみんなで浸かったり、それからそれから……ああどうしましょう、今夜だけじゃ時間が足りませんね♡」
次々と2人のジャンヌからたたみかけられる言葉に、困惑と同時に先ほど浅ましく頭の中で思い描いてしまった妄想が実現する期待が膨らんでいく。
このままじゃダメだと心のどこかで思い、尤もらしい帰らなければならない理由を挙げるも、既に逃げ道は塞がれていたようで……
「で、でも帰らないと、シルク・ドゥ・ルカンの領域で留守番してるみんなが心配して───」
「それでしたら私が事前に帰るのは遅くなると伝えておいたので問題ないです」
最後のそれらしい帰る理由も見事に封殺され、もう自分ではどうにもならないことを悟る。
自身の中で、もう流されたっていいじゃないかと言う諦観の思いが膨れ上がるが、それでも最後の抵抗をし周りにいる客、もとい知人たちに助けを求めようと辺りを見回す。
「あ、あれ……? あ、あの、いつの間にみなさんいなくなっているんですけど何事ですか!?」
先ほどまで確かにそこで楽しくおしゃべりをしていた知人たちはいつの間にかいなくなっていて、残っているのは各テーブルの片づけや掃除をしているちびレオたちだけであった。
急な出来事に驚いて何があったのか、近くにいたちびレオに問う。 ちびレオは片付けの邪魔をされて少し不機嫌気味だったが、質問にはきちんと答えてくれた。
「ほかの方々はとっくにうえのホテルにいどうしているのです。
むりやりれんこーされてたりするペアがふた組ほどいましたが、きほんはみなさまノリノリでした」
『俺たちから言えることはたった1つだ。 頑張れ』
その返答を聞いた瞬間、脳裏にサムズアップしてそんなことを告げる知人たちの無慈悲で無責任な助言に泣きたくなった。 一部遺影めいた姿でそれを告げる者が2名ほどいたが、自分自身も似たような状態であることを考えると笑えなかった。
ああもう、これは本格的に逃げ道がなくなってしまったな……なんて考えていた時、少し苛立たし気なちびレオが僕に残った道を突き付けるように言う。
「というか、みせをしめたいのでとっととうえのほういって、なかよくせっくしゅしてこいヘタレ」
「な、なんで君たちっていっつも僕には辛辣なの?」
僕のその問いにそのちびレオは答えることはなく、1つ鼻を鳴らしてさっさと仕事に戻っていってしまった。
初対面の時はあの女神サマのように威厳をもった言葉遣いと態度であったのに、2度目に会った後からはやたらと罵倒してくる。 幼い見た目とたどたどしい発音も相まって、心に中々来るものがあるのでもう少し手心を加えてほしいものだ。
などと、現実逃避していても目の前の問題が解決するはずもなく。
「あー、もうまたそうやってお姉ちゃんをないがしろにしてー。
そんなにお姉ちゃんにお仕置きされたいんですか?」
「まあまあ、いいじゃないですか。 そこも兼ねて、この後いっぱい弟くんと愛し合う時間はあるのですし♡」
お互いに僕の腕に抱き着き、身動きを取れぬように捕まえる2人のジャンヌはどこか楽しそうに会話し、僕の体をさすってくる。
もうとっくの昔にジャンヌに陥落してしまっている僕の体は、それだけで様々な期待があふれ出しそうになり、これから起こるであろう快楽の供宴を想像し、体中が燃え上がりそうなほど熱くなっていくような気さえした。
もうダメだ、白旗をあげよう。 最初から分かっていたけど、僕はもうジャンヌなしでは生きられないのだから、こうなってはもう仕方がないのだ。
ああでも、せめてこんな哀願が許されるのなら……
「ね、ねぇジャンヌ?……その……」
「はい?」
「なんですか?」
「……優しくで、お願い……」
「「…………」」
「……あの、なんで急に無言に、え? ちょ、ちょちょちょ、待って、なんで急に動き出したの? ね、ねえ何か返事してよ、ねぇ、ねぇってば、なんか怖いよ!? 何か言っ───」
この後めちゃくちゃ絞られました。
と言う訳で、本家であるKEY(ドS)氏執筆の【~ 崩壊世界シリーズ ~ モテない男の元にアルトリア・ランサー(ヤンヤン)が来るというテンプレチックなドロドロイチャイチャするだけの話】(https://syosetu.org/novel/149568/)とのコラボでした。 KEY(ドS)さん、コラボありがとうございました!
Q1.他のシリーズから出張しているキャラについて
A.描写順に上からざっと並べていきます
1.【崩壊世界で押しCPと家族になった】(https://syosetu.org/novel/205303/)より、主人公とBB、ザビーズたち。
本文でのテンションはうっかり酒を飲んで酔っちゃたがための羽目外しと、恋人至上主義な2人の奇行。
2.【崩壊した世界でマリーと夫婦性活する】(https://syosetu.org/novel/200085/)より、主人公とマリー・アントワネット。
愛の固有結界使い
3.【儚き女神(上)と伴に崩壊世界で…】(https://syosetu.org/novel/208568/)より、主人公とステンノ。
果たしてどっちが主人なんですかねぇ?
4.【崩壊した世界でえっちゃんに糖分補給する】(https://syosetu.org/novel/229831/)より、主人公と謎のヒロインXオルタ
お前が和菓子になるんだよぉ!
5.【崩壊世界でタマモキャットと懇ろになった件について】(https://syosetu.org/novel/201143/)より、主人公とタマモキャット、アタランテ・オルタとシトナイ
もしかして崩壊世界シリーズで一番健全な伴侶との付き合い方をしているのでは?と読んでて思ったり。
勝手にキャラを使用してしまい申し訳ございません。解釈違いや出演して欲しくない等ございましたら、お手数ですが私の方までメッセージをお願いいたします。
Q2.なんかよく分からない単語とかやり取りあったけど……
A.時系列としてはこちらの本編終了後から数ヶ月は経っておりますので、色々とネタバレめいたことを漏らしていたり……姉弟喧嘩とか……
Q3.弟くんと女神様、お互いの相手へと向ける感情について
A.弟くん→感謝はしている。 けれど尊敬はしない。
信用はしている。 けれど信頼はしない。
警戒をしている。 けれど逆らうことはできない。
女神様→自身のある証明実験のためのモルモット、あるいは戯れで作った保険
Q4.それにしたって弟くんちょいとばかり女神サマに対して態度悪くない?
A.普段はここまで態度は悪くはないのですが、本文で述べたようにジャンヌとお楽しみの最中を直で見られたので、弟くんちょっと態度悪くなってます。
ちなみに、おおまかに何があったのかと言うと……
弟くん「(……ジャンヌと思いを伝えあうことが出来たからと言って、いくらなんでも最近は乱れすぎている……少しはジャンヌの誘いを断れるようにしないと)」
お姉ちゃん「弟くん弟くん、おやつにお姉ちゃんのおっぱい飲みますか♡?」
弟くん「飲むー♡お姉ちゃんのおっぱいしゅきー♡」ギュッ
お姉ちゃん「あんっ♡ もう、弟くんは甘えん坊さんですねー♡ これじゃ弟くんじゃなくて、赤ちゃんみたいですよー♡」
弟くん「お姉ちゃんのおっぱい飲めるなら、僕もう赤ちゃんでいいよー♡ばぶー、ばぶばぶー♡」キャッキャ
お姉ちゃん「まったく、しょうがない赤ちゃんですねー♡」
女神様「お楽しみのようで何よりです」
弟くん「……!?」ビクゥ!
お姉ちゃん「あ、女神様! 今日はどういった用件でしょうか?」
女神様「ああいえ、別に大した用事ではなく、少し様子を見にきた程度なのですが……」
弟くん「…………」
女神様「ええ、ええ、あらゆる意味でお楽しみのようで」ニッコリ
弟くん「ガンドォォォォォォオオオオオオオ!!」
こんなやりとりがあったとかなかったとか。
まあこのやりとりのおかげで、いくらか気安いような関係になったとも言えます。
Q5.お前弟くんをどうしたいんだ……?
A.本編終わった後ならマニアックなプレイしてもいいかな、とか思ってる。
さて、次回のお話ですが、現在他の短編小説を執筆中ですのでこちらの投稿は遅れそうです。
短編小説の方書きおわったら、次回のお話は弟くんのトレーニングの際のお話を投稿しようかなって思ってます。
それまで気長に待ってもらえればと思います。
では、また。 KEY(ドS)さん、コラボありがとうございました!