※この作品はR-18です。

アルベドのお食事   作:dolph

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最弱

 私は名もなきヴァンパイアブライドの一個体です。名が無いと申しますのは、一々名付ける必要がないからです。

 例えば日々消費されるポーションに、これはアリス、これはビアンカ、これはチェルノ、などと名付ける必要があるでしょうか。必要がなければ意味もありません。ポーションはポーションです。私どももそれと同じ。ヴァンパイアブライドはヴァンパイアブライドです。

 ヴァンパイアブライドは地下大墳墓ナザリックの力で幾らでも生み出されるモンスターでありますので、個体毎に名付ける必要がないのです。偉大なるナザリックのシモベであることに変わりはありませんが、位置づけとしてはアイテムに近い消耗品です。

 そのため、私どもに創造主はございません。

 見方によっては、偉大なる至高の御方々がナザリックを支配なさらなければ私どもが知恵と知識を携えて生まれることはなかったでしょうから、至高の御方々が私どもの創造主と言えなくもないかも知れません。

 

 ヴァンパイアブライドは名前通りに吸血鬼型のモンスターです。ナザリックでは上層部にあたる第一から第三階層『墳墓』に配置されています。墳墓に配置されているモンスターは墳墓の名に相応しく、私どもを含めアンデッドばかりとなっております。

 墳墓に配置されたモンスターの中では肉ある女の姿をしているのはヴァンパイアブライドのみでありますので、墳墓の階層守護者であられるシャルティア・ブラッドフォールン様は私どもに身の回りの世話をお命じになります。その他にも、シャルティア様は同性愛とネクロフィリアの嗜好がございますので、夜伽をお命じになることも多々あります。私もシャルティア様の寝所に招かれた事が数度。ヴァンパイアブライドでシャルティア様からお声が掛かっていない個体は一つもないことでしょう。

 

 私どもの仕事はナザリック上層部の守りです。外部から侵入者があった時には身を賭して阻まなければなりません。ですが、私が生まれて以降は侵入者があったことは一度もありません。私が生まれる少し前から、具体的にはナザリックがこの地へ転移してから今日まで、侵入者はたったの一度しかなかったと聞いております。

 そのため、現在の私どもの役割は戦闘を伴わない墳墓の警邏。そしてシャルティア様のお世話となります。

 

 シャルティア様は私どもとは格も地位も力も美しさも次元違いのお方です。至高の御方の一柱、ペロロンチーノ様が創造なさったお方なのですから当然でございましょう。私どもなどと比較するのは大変に非礼なことです。

 シャルティア様はご自身のお力に相応しく、気高い振る舞いをなさります。シャルティア様の勘気によってヴァンパイアブライドが殺傷されることはよくあることでしたが、これは私どもに非があるのです。私どもが気高く美しいシャルティア様の御気分を害してしまったのですから当然の報い、あるいはシャルティア様のご厚情による教育や躾と申し上げてもよろしいことではないでしょうか。

 先に申し上げましたとおり、私どもヴァンパイアブライドはナザリックの力によって幾らでも生まれてくる一モンスターに過ぎません。私どもが命を散らすことによってシャルティア様の気晴らしになるのであれば、私どもが生まれた甲斐もあったと言うものです。

 

 ですがある時期から、シャルティア様が私どもを殺傷することがなくなりました。

 私どもの不手際には厳しい叱責が飛んできますが、シャルティア様の美しくも鋭いお爪が私どもを引き裂くまでには至りません。

 特にその時期は、シャルティア様は憎き者共の卑劣な罠に掛けられてしまい、その結果アインズ様から謹慎を言い渡されておりました。謹慎期間の始めのうちは私どもの首が飛ばない日はなかったほどです。

 だと言うのにある日からさっぱりと。これにつきましては、私どもも困惑してしまいました。

 もしもアインズ様から謹慎を解いて頂いたのでしたらわかるのですが、そのような話は聞いておりません。シャルティア様がアインズ様からお言葉を頂いたのでしたら、私どもにお話がないはずがございません。シャルティア様は私どものようなシモベたちへ、アインズ様のお言葉をお伝えくださるお優しい方なのです。

 もしもシャルティア様がアインズ様からお褒めの言葉を授かった時には、十も二十も何度でも私どもへお話くださります。

 シャルティア様はアインズ様からお言葉を授かったわけではないようでしたが、御気分がよろしい日が多くなりました。

 どうして御気分がよろしいのでしょうか。私どもの働きをシャルティア様が満足なさっているからではないと言うことだけはわかっております。

 理由がわからないことが不思議であり不安であり、私どもの働きによることではないことが悔しくもありました。

 

 そうした日々を送っていたところ、朗報がありました。シャルティア様の謹慎を解かれる日がついと来たのです。

 それだけではありません。

 アインズ様がアゼルリシア山脈へ遠征なさる随伴にシャルティア様が選ばれたのです。なんと栄誉な事でしょうか。シャルティア様にお仕えする私どもも、シャルティア様の栄誉に一通りの喜びではありませんでした。

 ここまではシャルティア様ご自身のお力で得られた名誉です。私どもはシャルティア様への尊敬を深くするばかりでありましたが、お優しいシャルティア様は私どもへも栄誉の機会をお与えくださったのです。

 アインズ様の遠征に、私どもへも付き従うようにと仰ってくださったのです。ナザリックに残ってくださった偉大なるアインズ・ウール・ゴウン様のお側に侍ることを、私どもにもお許しになったのです。

 

 勿論の事、誰もがこの幸運と栄誉にあやかろうとしましたが、同伴出来るのは六名のみ。選抜しなければなりません。アインズ様の遠征に随伴するのですから、私どもの中でも優れた個体を選ぶ必要があるのです。

 シャルティア様直々に選んでいただければ話は早いのですが、残念ながらそうはいきません。私どもとは次元違いのシャルティア様ですので、シャルティア様から見た私どもはドングリの背比べ。ドラゴンから見たナメクジとカタツムリのようなもの。

 選抜は私どもで行いました。

 同一種族であっても個体差はあります。シャルティア様からすれば誤差のようなものですが、私どもにとっては大きな違いになってしまうのです。

 過度な殺傷は厳禁としてトーナメント戦を行い、上位六名が遠征に随伴する栄誉を得ました。

 急な話ではございましたが、私どもは睡眠も休息も不要ですので対応が可能だった次第です。

 

 その六名から、最近のシャルティア様はご機嫌がよろしい理由を聞かされました。

 人間の男がシャルティア様の無聊を慰めていたようなのです。人間の男です。下等な存在です。小突けば砕ける脆弱な生き物です。だと言うのに。

 筋違いではあるとわかってはいるのですが、未だ見知らぬ人間の男へ恨みに近いものを抱く者が出てくるのは当然の話でした。

 

 ですが、それ以降の話です。

 シャルティア様は今までとまるで変わってしまわれました。

 私どもを気に掛けるようになってくださったのです。使い捨てのアイテム同様の消耗品である私どもへです。いいえ、私どもはアイテムよりも下かも知れません。何せ死んでも代わりが自然と生まれてくるのですから。

 その私どもを気に掛けてくださるのです。以前からお優しいシャルティア様でしたが、それからのシャルティア様と来たら背後から満月の光が差しているかのようです。

 大変に良い方向へお変わりになられました。

 

 それがアインズ様の遠征の成功へつながったとと聞かされました。シャルティア様はアインズ様からお褒めの言葉を授かったと聞かされました。随伴したヴァンパイアブライドの選抜個体たちも、恐れ多くもアインズ様直々にお褒めの言葉を授かったと聞かされました。

 私どもヴァンパイアブライドがアインズ様からお褒めの言葉を授かったのです。何と言う栄誉でしょうか。百度、千度、それが万や億に届こうとも、歓喜に包まれた無数の死を捧げられるであろう栄誉です。

 話はそこに留まりません。

 私どもは名も無きヴァンパイアブライドでしたが、遠征に随伴した者たちはシャルティア様直々に個体毎の名を与えられたのです。

 私どもは我がことのように喜びました。選抜個体、エリートたちの栄誉を羨ましくないと言ったら嘘になってしまいます。ですがそれ以上に喜ばしいことなのです。

 

 シャルティア様のお優しさは留まることを知りません。

 ある日のこと、私どもへ恐れ多くもお土産を持ってきてくださりました。お土産とは、渡す相手のことを気に掛けているからこそのものです。何と言うことでしょうか。

 まさかシャルティア様が私どもへお土産を持ってきてくださる日が来ようとは思ってもみなかったことを告白いたします。

 

 お土産は保存の魔法が掛かった小瓶。小瓶の中身は血液でした。ここでもエリートとそれ以外とは区別があります。

 エリートは一体に付き一瓶。それ以外は五体で一瓶です。あからさまな区別に不満が出そうなところでしたが、小瓶の中身を一舐めして身の程を知ることになりました。

 大変美味な血液です。幸福感と陶酔感と強い酩酊と、様々なものが津波の如く心身をかき乱します。気付けば気を失っておりました。たった一舐めです。私どもは吸血鬼であるのに、血液をたった一舐めしただけで気を失ったのです。恐ろしくなりました。

 このようなものは二度と口にしないと固く決意します。ですのに、数日もすればもう一度と思ってしまうのです。

 人間の血液にこのような効果があるのでしょうか。聞けば、この血液はシャルティア様へ忠言し、良い方向へ変えた人間の男のものであるようなのです。

 その人間の男とは、階層守護者であられるシャルティア様も時によっては命令に従わなければならない守護者統括であられるアルベド様直属の配下であるそうなのです。

 アルベド様はサキュバスであられます。人間の男であっても、アルベド様直属ともなればただの人間とは違うのでしょうか。どのような人間であるのか興味と関心が湧いてきます。他の者たちは好意に近いものを抱いているようです。

 

 アルベド様直属であることから隔意を抱くわけには参りません。その者がシャルティア様の無聊をお慰めしてきました。その者の進言によりシャルティア様はご自身のなさりようを省みられました。その者の血液は例えようのない至上の美味です。

 中でも、その者と直接対面したことがあるエリートたちは好意を隠そうとしませんでした。その者が発端となり至高の栄誉を得られたのですから無理もないことと言えましょう。

 その他にも、閨での技が絶技であるとか。

 

 私どもはシャルティア様の寝所に招かれ、シャルティア様をお慰めする事があります。

 恥ずかしながらも拙い技でありまして、必ずしもシャルティア様にご満足いただいているわけではありません。己の未熟を恥じ、互いに技を磨きあう日々です。

 エリートたちもそこへ加わります。彼の者の絶技を直接味わったエリートたちの技は、私どもとは一味違いました。違うのはわかるのですが、どのように違うのかまではわからないのです。

 

 話が少し前後します。

 エリートたちの一体。先の選抜トーナメントで優勝したヴァンパイアブライドの最強の者が左遷されました。

 栄光のナザリックから遠く離れた帝国へ追いやられると言うのに、ミラの名を授けられたその者は悲壮感などどこにもなく、大変な名誉を授かったような様子でありました。

 どうやら、何度か話に上がった人間の男の近くへ仕えるようなのです。

 

 その者へ興味を抱く者、好感を持つ者、エリートたちの感情は更に強いものとなり、ミラに至っては尊崇の域にあるように思えました。

 最早疑念を持つ者は一体もおりません。たとえ人間の男であっても、ナザリックのシモベであることに変わりはなく、私どもへも恩恵をもたらしてくれるのですから。

 嫉妬を胸に秘めるのは私だけでございましょう。

 

 忸怩たる思いで告白します。

 私は弱いから嫉妬するのです。

 

 同じヴァンパイアブライドであっても個体差はあります。最強がいれば最弱もいるのが道理です。

 単なる最弱であれば救いがありましたがその程度ではありません。

 力が強い者がいれば弱い者も。速い者がいれば遅い者も。背の高い者がいれば低い者も。肉付きが良い者がいればそうでもない者も。

 致命的なのは爪の硬さです。私どもヴァンパイアブライドの主武装は、尖った爪なのです。爪によって敵を引き裂くのですから、爪が弱い者はもうお話になりません。

 ヴァンパイアブライドたちが持つ個体間のゆらぎ。それぞれの全てで下限に近い弱さを持つのが私なのです。

 私のような弱いヴァンパイアブライドは率先して命を散らし、新しい個体に役割を譲るべきなのですが、幸か不幸か、そのような機会は全くありません。戦闘の機会がないので弱さを見せることがないことを幸いと思ってしまう軟弱なヴァンパイアブライドが、私なのです。

 

 

 

 

 

 

 ある時、ナザリックの外へお仕事へ向かわれるシャルティア様から厳命がありました。

 何度か話に上がった人間の男がナザリックを訪問しているので、確保して屍蝋玄室に留めておくようにとのことでした。シャルティア様にはエリートの者たちが付き従うことが常でありましたから、残った私どもが果たさなければなりません。

 私どもは何班かにわかれて行動しました。

 男がいると思われるのはナザリック第九階層ロイヤルスイートです。仲間たちが重点的にロイヤルスイートを捜査する一方、私はいつものように上層部の警邏に回っておりました。今日に限らず、私は率先して警邏に回ることが多いのです。

 もしも侵入者があればこの命を使ってでも打ち倒す。敵わなければ命を果たして最弱の生き恥を終えることが出来る。そのように浅薄な思いが私を動かしていました。

 

 数刻して、男が確保されたと聞きました。

 シャルティア様はその者を持て成しておくように言い置かれましたので、数名が付ききりで応対しているようです。私は疲れ知らずのヴァンパイアブライドですから、夜が更けて夜が明けるまで警邏を続けます。

 

 更に数刻してシャルティア様がお帰りになりました。

 それからしばらくして、ヴァンパイアブライド全員に屍蝋玄室のシャルティア様の寝所に集まるよう命令が下されました。 

 そこで私は、彼の者を初めて見ました。

 シャルティア様の御前だと言うのに破れたスーツを着ているのはどう言うことでしょうか。大変に無礼なことです。もしもシャルティア様のお言葉があればひと思いに首を跳ねてやりますのに。

 ですが、どのような言葉にすればいいのか愚かな私にはわかりません。

 

 バンパイアの術に美顔縛りと言うものがあると聞きます。私どもは勿論の事、近接戦闘を得手とするシャルティア様も収得しておられない術です。

 どのような術であるかは名前から察していただけるのではと思います。この術に掛かった相手は美しい顔に見惚れて魂を抜かれたようになってしまい、指一本動かすことが出来なくなるのです。

 もしもこの男がバンパイアに転化するのであれば、きっと美顔縛りを会得するに違いありません。

 浅ましくも、この男へ嫉妬を抱く私ですらそのように思ってしまう美貌なのです。

 

 気配は人間であるのですが、本当にただの人間であるのか疑わしく思える美貌です。

 サキュバスであるアルベド様の直属ですから、何かしらの魅了の術を使っているのかも知れません。ですがそうなりますと、シャルティア様も魅了の術に掛かっているという事になってしまいます。まさかシャルティア様が人間の術に掛かるわけがありません。

 何も用いていない素の魅力、と言うことなのでしょうか。

 

 シャルティア様の寝所にヴァンパイアブライドの全員が整列しています。

 帝都にいるミラを除く全員です。総数48。正しく整列した後は、エリートの5名はシャルティア様のベッドに向かいました。

 シャルティア様が仰います。

 

『お前のおちんぽでこいつらの処女膜を破ってあげなんし。もちろん全員でありんすよ♡』

 

 大変興味深いお話です。

 シャルティア様をお慰めすることが私どもの勤めの一つでありますから、性技に関心がないヴァンパイアブライドは一体もおりません。

 性交は何度となく経験があります。ただし、全て同性同士によるものでした。

 

 シャルティア様の階層であるナザリック上層部にはきちんとした肉を持つ男がいないのです。

 骨の者たちからは失われておりますし、肉を持っていたとしても溶けていたり干からびていたり。シャルティア様からのご命令であればそのような者たちと交わることは厭いませんが、今日まで一度たりともなかったことなのでこれからもないことと思われます。

 

 ナザリックには肉を持つ殿方はいらっしゃいます。

 代表としてデミウルゴス様配下の男性悪魔、セバス・チャン様配下の男性使用人。ですが、どちらも私どもとは縁遠い方々です。加えて、ナザリックのシモベである同士でもありますので、淫らな目を向けることが躊躇われてしまうのです。

 私どもの主であるシャルティア様は同じく階層守護者であられるアウラ様と懇意にされていらっしゃいます。アウラ様には双子の弟君であられるマーレ様がいらっしゃいますが、マーレ様をそのような対象を思うだけで懲罰、否、刑罰の対象です。言語道断でありましょう。

 アウラ様の配下には多数の魔獣がありますが、さすがのシャルティア様も獣姦の嗜好は持っておられません。

 巡り合わせがなかったため、私どもは全員が未通なのです。

 

 人間の男ではあっても、処女膜を破ってもらえるのなら身を任せるのはやぶさかではありません。

 嫉妬を秘める私ですらこうなのですから、シャルティア様のお言葉に目を輝かせる者はけっして少なくありませんでした。




なんでか本作はヴァンパイアブライドのヒロイン度が高い気がします
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