※この作品はR-18です。

アルベドのお食事   作:dolph

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絶望的な戦い

 デミウルゴスは智者である。アインズ様だって頼りにしてる出来る男だ。魔導国ではこれと云った役職を持っていない以前に存在を伏せられているが、ナザリックではかなり偉い地位にある。

 アルベドの相談役もデミウルゴス自身が直々に知性を測って合格を出したほどなのだから当然出来る男だ。デミウルゴスの部下と言うわけではないが、ナザリック内の階級では階層守護者よりも下にある。

 出来る者同士。そして上下関係。これらが揃った時のみにおいて効果的に作用する言葉があった。

 

 デミウルゴスはにっこり笑って、男の肩をぽんと叩いた。

 

「うまくやりなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 『うまくやれ』とは、スペシャルオーダーである。

 上長は具体的な行動を指示しないし、望ましい結果も提示しない。うまくやることだけを求めている。

 しかし、うまくやるには往々にして不法・非道な行為を犯さなければならない。勿論、上長はそんなことを言わない。不法・非道などもってのほかだ。下の者がうまいこと忖度してうまくやるしかないのである。

 バレなければ問題ない。仮に明るみになったとしても、上長はうまくやれとしか言っていないので、責任を追及される恐れはない。

 『うまくやれ』が出来る者同士でなければ効果がないスペシャルオーダーであることがおわかりいただけただろうか。

 

 なお、出来ない者へも発令されることがある。無能を炙り出す、あるいはトカゲの尻尾切りのためだ。一番の理由は、何があっても責任を取りたくないからだ。

 出来る者同士であっても、連発するとパワハラになるので注意が必要である。

 

 ちなみにナザリックにおいて、アインズ様の深遠なるお言葉を忖度して一番うまくやってるのはデミウルゴスである。

 100レベルのデミウルゴスは忖度力がカンストしていた。

 

 

 

 

 

 

 デミウルゴスは立ち去った。魔法で移動したので、飛び去ったが正確な表現かも知れない。

 只でさえ忙しいデミウルゴスだ。下の者たちの痴話喧嘩に付き合ってる暇はないのである。

 爆薬に火種を添えてその場を後にするデミウルゴスは、カルマ極悪の悪魔であった。

 

 デミウルゴスがいなくなるや否や、応接間には殺意が満ちた。

 ソリュシャンは美しく微笑み、ルプスレギナはにへらと笑う。

 二人とも、目が笑っていなかった。

 

「それでは殺しましょうか」

「そっすね。死体の処理はソーちゃんよろしくっす」

「任せて。存在の痕跡すら溶かし尽くすわ」

 

 二人の殺意が向かうのは、図々しくもアルベド様の相談役にすがりつく人間の女である。

 連れてきたのが階層守護者であるデミウルゴス様でなければ、ふざけるなと怒鳴り散らしていた。

 

 お兄様と結婚するのはこのソリュシャン・イプシロンである、とソリュシャンは決定している。

 ルプスレギナも、おにーさんは自分のお婿さんにすると決めている。

 この場にいないユリとナーベラルも、彼の男との結婚を望んでいる。

 それなのにぽっと出のよくわからない見てくれしか取り柄がない人間の女が妻になるなど許されない。許せない。許していいものではない。断罪しなければならない。つまり、殺処分である。

 

「っ!」

 

 カルカは、反射的に男の服を掴んだ。

 地獄から安寧の地に連れてこられたと思ったのに、そこもまた敵地。

 一度死んだのだから二度目も、とはとても思えない。僥倖にも生き返ることが出来たのだから、何としても二度目は回避したい。

 しかし、どうやって回避すればよいのか。カルカに出来るのは、初めて会った男にすがりつくことだけだった。

 

「お兄様どいて。そいつ殺せない」

 

 ソリュシャンが距離を詰める。ルプスレギナは回り込む。

 カルカを背に庇う形になった男は、大きくため息を吐いた。

 

「バカかお前ら」

「バカ!?」

「お前ら!?」

 

 真っ直ぐな罵声に激高しかけた二人は、凍てつく視線に晒され一瞬で鎮火した。

 

(な……なんて目をするんすか!)

(いやっ! そんな目で私を見ないで!)

 

 男が二人を見る目は、議論しているアルベドとデミウルゴスから発生する斥力によって近付くことが出来ず離れたところから見ることしかできないシャルティアを見るアウラのようであった。

 

 バカを見る目である!

 

 ソリュシャンであれ、ルプスレギナであれ、カルカを殺すのは簡単だ。

 カルカは中々の信仰系魔法の使い手である。しかし現在、死亡からの復活に伴って弱体化していた。弱体化していなくとも、プレアデスなら多少手間取ることはあっても問題なく処分できる相手でしかない。

 しかし、それをやってしまうと、カルカを手に掛けた者は現在の任務から外されて異動になり、カルカは再度復活させられる可能性が非常に高い。デミウルゴス様がわざわざ連れてきた人間なのだ。

 それを回避するためには、この男の同意を得る必要がある。

 デミウルゴス様が持ってきたお土産だけれど、もらった当人がいらないというのだから仕方なく殺処分した、と言うストーリーにしなければならない。

 

 この男を説き伏せなければならない。

 守護者統括であるアルベド様の相談役であり、デミウルゴス様が頭脳を認め、パンドラズ・アクター様に師事しているこの男を、論戦で破らなければならない。

 

 やる前からわかっている。

 絶対無理だ、と。

 たとえ無理だとわかっていようと、乙女には戦わなければならない時がある。

 今がその時であった。

 

 

 

「確かにその女はデミウルゴス様がお連れになった者です。ですが、聖王国の元女王と言うではありませんか。そんな者を取り込んでしまえば、後々災いの種になるかも知れません。今の内に処分するのが賢明です。そんな女は必要ありません。ここに置いても何の利益にもなりません。お兄様が新しい女を侍らせたいだけと仰るのなら断固阻止させていただきます」

 

 ソリュシャンのターン。

 嫉妬を正論に絡めて押し通した。

 

(ソーちゃんナイスっす! 殺してはいけない理由から殺さない理由にすり替えたっすね。殺しちゃいけないなら仕方ないっすけど、わざわざ生かしとく理由がないなら殺すべきっすからね。スケベなおにーさんが新しい女が欲しいって理由なら絶対に却下っす。今はいきなり増えてうええって感じなんすから)

 

 ソリュシャン決死の猛攻を、男は余裕で受け止めた。

 

「その心配はないよ。二人は知らないかも知れないけど、聖王国の王はバカの代名詞だ。何かする能力なんてないから獅子身中の虫にはなりようがない」

「ば……バカの代名詞……」

 

 庇われているのに、馬鹿呼ばわりされたカルカは心中穏やかでいられなかった。

 男はくるりと振り向き、カルカに向き直った。

 

「聖王国は、遠く離れた帝国でも南北で分断されてると聞こえている。どうして統一しなかった?」

「それは……、地理的な要因で……、軋轢がありまして……。けっして分断されているわけではありません」

 

 聖王国は巨大な湾によって南北に分けられている。距離が離れていれば心も離れるものである。

 そして南部は、聖王国では代々男子が王だったのに初めての女子の王となったカルカを軽んじている。

 カルカは十年も王位にあったというのに、南北の軋轢を全く是正しなかった。性格的に出来なかったわけだが、やらなくてよい理由にはならない。

 

「聖王国は亜人たちが住まうアベリオン丘陵と緊張状態にあった。普通に考えれば力を合わせて事に当たるべきだろう。どうしてしなかった? それだけじゃない。どうして女子を王にした。太平の世ならそれでもいいが、子供でも孕めば動けなくなる。そこだけ取り上げても王にするべきじゃない」

「私から望んで王になったわけではありません!」

「聞いたか? 不適格な上に望んでない者を王位につけるのが聖王国だ。馬鹿しかいないんだから王が馬鹿なのは当然の帰結だ」

「うぅ……」

 

 馬鹿だ馬鹿だと言われることより、子供でも孕むようなことが一度もなかった事実がカルカの心を打ちのめしていた。

 

「バカじゃしょうがないっすね」

「そうね、バカはどうしようもないわね」

 

 カルカが庇われているわけだが、ソリュシャンとルプスレギナは楽しそうである。

 

 カルカの無能が明かされ、内憂の種にはなり得ないと証明された。

 ただし、これは殺さない理由。殺してはいけない理由ではない。

 次の一手がプレアデスの姉妹に襲いかかった。

 

「一つ問題を出そう。これは魔導国の戦略にも関わるから、ソリュシャンとルプーもよく考えるように」

 

 美女姉妹は真面目な顔で頷いた。

 

「では問題です。魔皇ヤルダバオトはどこから来たでしょうか?」

「そんなのナザリックに決まってるじゃないっすか。………………あれ?」

 

 ルプスレギナが答えたと同時に、室内の空気が一変した。

 

 カルカが驚愕しているのはルプスレギナ的にはどうでもいい。

 何故かソリュシャンが痛ましいものでも見るかのような目でこちらを見てくる。

 肝心のおにーさんは、優しい目をしていた。ルプスレギナは総毛立った。

 

 あの目はまるで、議論しているアルベドとデミウルゴスから発生する斥力によって近付くことが出来ず離れたところから見ることしかできないシャルティアを見るアインズ様のようであった。

 

 アホの子を見る目である!

 

 このままでは、ルプスレギナはカテゴリー「シャルティア」に入れられてしまう。その場しのぎの適当な言葉で誤魔化され、気分良く騙される日々が始まってしまうのだ。

 そこまで墜ちるわけにはいかない。

 

「そうだね、ルプーはよく知ってるね。これからの話はルプーにはつまらないと思うから……」

「ちょっと待つっす! 今のなし! ちゃんと考えるからちょっと待って欲しいっす!」

「だからよく考えるようにって言っただろう」

「うっ!」

 

 考えが足りないとか目の前のことに飛びつきすぎだとか、いろいろと注意されてきたのに、ルプーは未だにルプーだった。

 けども、ちゃんと考え始めればけして馬鹿ではないルプスレギナである。

 

「ヤルダバオトが初めて現れたのは王国の王都っす。それ以前の目撃情報はゼロっすね。ってことは王都にいきなり現れたか、どこかに現れてから王都に移動したかのどっちかっす」

「その時の王都にはモモン様がいらっしゃったわ。ヤルダバオトはモモン様に撃退されて聖王国へ下がった。モモン様が狙いだった?」

「……ヤルダバオトがどこから来たのか結論は出ていません。太古の封印が破られたのではと推測している者はおりましたが…………」

 

 ヤルダバオトがデミウルゴスの名で呼ばれているのを聞き、そのデミウルゴスからこの場に連れてこられ、ヤルダバオトはナザリックから来たとルプスレギナに聞かされて、そのルプスレギナとソリュシャンが恐ろしい存在であるのではと薄々感づき、だけれどもこの美しい殿方は紛れもなく人間の男性であり自分を妻としてくださる方で恐ろしい存在たちから自分を守ってくださり、それでもヤルダバオト側の人間らしいとの恐れもあり、かつてないほどの混乱と困惑の最中にあるカルカだったが、ここを乗り越えなければ命はないと思い極めている。

 

「突然ヤルダバオトほどの存在が発生するとは思えない。封印が破られたと考えよう。自然に破れたなら最初に王国へ行くのは不自然だ。誰かが目的を持って破ったに違いない。誰が破ったと思う?」

「何かヒントはないっすか?」

「王国はヤルダバオトがわざわざ攻める価値はないよ。俺だったら帝国から落とす。こっちの方が法国や評議国からも遠いしね」

「王国に敵対している者が封印を破ったと仰るのですか?」

「でも帝国にそんなことが出来るとは思えないっすけどねー。封印を破ったら自分たちが喰われるのが目に見えてるっすよ」

「付け加えると、王国自身が破った可能性もないよ。王国で言う魔法とは、道具を使わずに火をつけることだけなんだ。封印を解く魔法なんて難しすぎて理解できるわけがない」

「リ・エスティーゼ王国は魔法を軽視しているとは聞いておりましたが……、そんな程度だったなんて……」

 

 誤解を増やし、話は続いていく。

 

「王国と考えるから引っかかる。最初からモモン様が狙いだったとしたらどうだろう? ヤルダバオトはモモン様の命を狙っていた。どうしてモモン様を敵視するのか。アインズ様はそこを考慮に入れて、モモン様を聖王国に派遣しないと決められた。ご自身が打って出るそうだよ」

 

 聖王国と魔導国に国交はない。そのため、王国所属の冒険者である蒼の薔薇がモモン様への紹介状を書き、聖王国の使節団は魔導国へ。魔導王はモモンを派遣しない代わりに魔導王自身が聖王国に協力することを約束した。

 決定したのだが、その直前にアインズ様へついとキラーパスが届き、(アインズ様だけが)とても大変なことになってしまったのはここでは関係ない話である。

 

「モモン様を疎ましく思うのはどこか? 竜王国にそんな余裕はない。むしろモモン様を自国に招聘してビーストマンに当たって欲しいだろう。ならば聖王国は」

「ありえません! 私たちがモモン様を厭うわけがありません。ヤルダバオトのせいで私たちは、わたしは……」

「とすると、残りは二つだ」

 

 カルカの悲哀をあっさり流した。

 

「法国、っすか?」

 

 法国は後方の安定のため、王国が帝国に飲み込まれるよう画策していた。

 得体の知れないところがあり、他と隔絶した強者であるモモンを疎ましく思わないとは限らない。

 

「可能性はある。しかし、もしも法国がヤルダバオトの封印を手に入れていたのならとっくに使っていたはずだ。使えなかった理由があると考えるべきだ」

 

 エルフの国と戦争中の法国である。

 状況を打破するために、ヤルダバオトを解放する理由があった。今までそれが為されていなかったのだから、王国を滅ぼすため、あるいはモモンを追いつめるためにヤルダバオトを使うとは思えない。

 

「まさか……評議国と仰るのですか!?」

 

 評議国は王国に隣接する竜王が治める都市国家群だ。亜人が多く、それゆえに亜人を排斥する聖王国とは友好と言えない関係である。

 評議国にモモンを排除する理由があるかどうかは不明だ。聖王国が好かれてはいないとわかっているが、ヤルダバオトを送られて滅ぼされるとまでは思いたくない。

 

「現状を考察すると、ヤルダバオトの封印を破ったのは評議国としか考えられない。評議国以外には不可能と言うべきかな」

「そんな……」

 

 カルカの驚愕と悲哀はまたも流され、ソリュシャンとルプスレギナは感心していた。

 まるきり嘘なわけだが、思考の過程を説明されるとなんとなくそれっぽいと思えてしまう。

 

「ところが、評議国は自分たちがヤルダバオトの封印を破ったわけではないと知っている。ここで話が最初に戻る。果たしてヤルダバオトはどこから来たのか?」

 

 ここまでの説明をひっくり返され、ソリュシャンとルプスレギナはシャルティアのような顔になった。

 

「今は禍中だから誰も気付かない。10年後はまだ復興途中だからそんな余裕がない。でも20年経てば誰かが気付く。どうしてアインズ様、モモン様、ヤルダバオトの三名が同時期に現れたのか。色んな理由がこじつけられるだろうけど、同じところから来た、もしくは誰かが他の二名を呼んだ。これ以上のしっくり来る理由はないだろうね」

「あー、言っちゃったっすね」

「20年後は気付かれてもいいんだよ。その時になればアインズ様の偉大さとお優しさが知れ渡ってる。ヤルダバオトのことは深い理由がおありだったのだと納得するさ」

「20年後は。ですが、今はまずい。そう仰るわけですね?」

「その通り」

「お聞かせください。どういうことなのでしょうか?」

 

 ソリュシャンは、ちらとカルカを見た。

 

「今は気付かれるわけにいかない。だけど、気付いて欲しい者もいると言うことだよ。カルカ自身も周囲もカルカ・ベサーレスであることを否定し、状況的にもここにいるのはあり得ないと知った上で、カルカがカルカ・ベサーレスであると確信するのは帝国にどれほどいる?」

「…………ジルクニフ陛下と側近の四騎士の方は。パラダイン翁も確信されると思われます」

 

 帝国の重鎮であるフールーダ・パラダインはアインズ様を信奉していたりするので、特に問題ない。

 

「皇帝にはカルカがカルカだと気付いて欲しい。するとどうなる?」

「ソーちゃんわかったっすか?」

「皇帝は聖王国を窮地に陥れたのが魔導国と知ることになります。ですが、それは誰にも言えません。言ったが最後、聖王国と同じ道を辿ることになるでしょう。そう仰るわけですね?」

「それで正解。つまりカルカは、帝国の軽挙を抑える抑止になるわけだ。デミウルゴス様が立てた戦略の一環だよ。だから殺してはいけないんだ」

「………………ちぇっ」

「ルプー、舌打ちしないの」

「……はぁい」

 

 渋々と納得させられた二人。

 ところが、二人がどうでもよいと思っているカルカはそれどころではなかった。

 

 ヤルダバオトはデミウルゴスと呼ばれ、魔導国のアインズ陛下と同じ場所から来た。漆黒の英雄であるモモン様も同じ。

 おそらくは、ルプスレギナが口を滑らせたナザリックと言う地から来たと思われる。

 アインズ陛下が聖王国を滅ぼし支配するためにヤルダバオトを遣わしたのだろうか。

 この場にいる三人も同じなのか。

 自分は一体どこにいるのか。何を前にしているのか。

 終わったと思った地獄は地続きで、今もなお続いている。

 知らずに体が震え始めた。

 

「カルカはアインズ様に感謝するといい。聖王国は外敵を排除出来た上で発展していくんだから」

「………………え?」

「魔導国が聖王国に干渉する際、国民を皆殺しにする案も出た。それはアインズ様直々に却下されている」

 

 なお、聖王国鏖殺を提案したのはこの男だけである。デミウルゴスだってそこまでは考えもしなかった。

 

「今のエ・ランテルがどうなってるか知らないだろう。魔導国の下に入って、以前とは比べものにならないほどの発展を遂げつつある。アインズ様は聖王国も同じように導くおつもりだ」

「ですが!」

「ヤルダバオトは聖王国の目を覚ますために必要だった。言ったじゃないか、馬鹿しかいないって。今は禍中だ。それが過ぎれば繁栄が約束されている。それとも、災禍を避けるためなら衰退の果てに滅んでもいいと思ってるのか?」

「………………」

 

 そこを決断できないがために人心をまとめられなかったカルカだった。

 

「聖王国はアインズ様にお任せすればいい。お前はもう聖王じゃない。今のお前は、今の務めを果たせ」

「………………はい。……あっ♡」

 

 今の務めを思い出した。

 この男の妻になるよう言われたのだ。

 確かに、聖王国は大きな危機に晒されている。しかし、その後は繁栄が約束されているようだ。

 民の苦しみを思う気持ちはなくならないが、苦しみからの解放が約束されているのなら。自分は為すべきを為さなければならないのではないだろうか。

 

 結婚を夢見ていたカルカである。

 いつか等身大の自分を愛してくれる殿方が現れるのではないかと、ずっと夢見ていた。

 ここにいたり、それは大きな間違いであったとようやく悟った。

 逆である。

 愛されるのではなく愛するのが先。

 自分が愛せる殿方を探すべきだったのだ。

 

 いまだ、詳しいことはわからない。

 この方はどのようなお方なのか。

 ナザリックとは、魔導国とは、アインズ陛下にモモン様にヤルダバオトにデミウルゴス。わからないことだらけだ。

 しかし、この方は自分を守ってくださる。

 自分を守るために、金髪と赤毛の美女二人を説き伏せてくれた。

 もう、楽になっていいのではないだろうか。

 力及ばずとも、聖王国の聖王として長く務めを果たしてきた。今の聖王国は大禍に見舞われていても、いずれの繁栄が約束されているらしい。自分が出来ることは何もない。

 一人の女になってよいのではないだろうか。

 抱き寄せられ、間近で見る顔はとても美しい。

 悲しみも苦しみも何もかもが吸い取られ、ただただ見入ってしまう魔性。美しい夢の世界に入り込んでしまったのではないだろうか。

 この方の妻になれる幸運が、今までの苦しみの対価なのかも知れない。

 

 

 

 

 

 

 二人の世界に入りつつある若旦那様とぽっと出の女を横目に、ソリュシャンとルプスレギナは顔を見合わせて固く頷きました。

 姉妹の絆は言葉に依らない意志疎通を可能とするのです。

 

「きゃっ!?」

「おっと」

 

 ルプスレギナはカルカを引き剥がして、床へ乱暴に突き飛ばしました。

 ソリュシャンは愛しのお兄様をソファの上に押し倒します。

 魔改造メイド服のルプスレギナと違ってお嬢様ルックのソリュシャンは、今日も上乳と深い谷間を見せるセクシードレスです。

 襟をちょっと引っ張れば、大きなおっぱいがぽろりとこぼれました。

 

「あんな処女臭い行き遅れの女に妻の務めが果たせるわけがありません。再考なさるべきですわ」

「そうっすよ。私たちならあんな顔だけの貧相な女より色んな事を出来ちゃうっすよー?」

 

 ルプスレギナは、スカートに深く入ったスリットへ手を入れました。

 もぞもぞしてから出てきた手には、黒くて小さな布切れが摘ままれています。引っ張るだけで簡単に脱げてしまう紐パンです。

 一発逆転を目指して、二人は色仕掛けを始めたのです。

 

 カルカは今し方の危機も忘れて真っ赤になりました。




いろいろ錯綜してるのでどっかで時空が歪んでるかも知れません
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