「ご覧の通り、カタナブレイドは華奢な作りです。アインズ様がお使いになっているグレートソードとは比べるまでもありません」
アインズが使うモモンズ・グレートソードは、刀身に柄まで含めれば成人男性の身長ほどもある長大な大剣である。
カタナブレイドは、刀身の厚さや幅がモモンズ・グレートソードの半分から更にその半分。長さだけは半分強。
重量比は10倍以上にもなる。
「間違っても打ち合いには向きません。特徴は片刃であり、刀身に反りがあるところです。切ることに特化しています。実際に切れ味抜群で、セットでコキュートス様から頂いたショートカタナブレイドは包丁より切れました」
「コキュートスからもらった剣で料理したのか?」
「はい。バーベキューの下拵えに使用しました」
「……コキュートスには言うんじゃないぞ」
「? かしこまりました」
愛用しているのはいいが、まさか料理に使うとは、くれてやったコキュートスは夢にも思わないことだろう。
男は改めてカタナブレイドを構えた。
握るのは柄の下端と上端。真っ直ぐにカタナブレイドを突き出し、切っ先を少し上げる。
「これがイニシエイトカタナテックの基本となる構え、ウォータースタイルです」
別名を正眼。いわゆる中段の構えである。
「カタナブレイドによる攻撃は、兎も角先の先が肝要となります。切られる前に切る。それが全てです。一度だけアインズ様に打ち込みますので、受け太刀をお願いいたします」
「よかろう」
「参ります」
「!」
甲高い金属音が響く。
切っ先がふわりと浮いたと思ったら振り下ろされていた。切り下ろしに転じる瞬間が、アインズにはわからなかった。
狙いは手首。アインズはガントレットを装備しているため、仮に切られてもダメージはない。ガントレットを装備していなかったとしても、アインズにダメージを与えられる武装ではない。だからと言って、素直に打たれるようではモモンの沽券に関わる。
受け太刀はギリギリで間に合った。
グレートソードを寝かせるだけだったのにギリギリだ。
速くはない。受けた感触は非常に軽く、攻撃力としては論外と言っていい。
ただし、早い。
攻撃の瞬間がわからないので、奇襲を受けたように感じた。
「お見事です。今の剣撃がアインズ様に届かなかった以上、私のイニシエイトカタナテックはアインズ様に通用しないことでしょう。今度は続けて打ち込みますので、続いての受け太刀をお願いいたします。受けるだけでなく、避けてもみてください」
「……軽めに頼むぞ」
「恐れながら、それは私の言葉かと。アインズ様がカタナブレイドを弾きますと、おそらく私の腕がもげます」
二人の膂力の差はカタツムリとエンシェントドラゴン、とまでは流石にいかないが、わんわんとケルベロスくらいには隔絶している。ケルベロスが撫でるつもりでわんわんに手を伸ばせば、アウラが住んでるツリーハウスの天辺まで吹っ飛ぶだろう。
「では、参ります」
アインズは、コキュートスとの鍛錬以上に神経を使った。
身体能力が隔絶しているため、基本的には見てから動けば何とかなる。それが中々難しい。
ゆらりゆらりと切っ先が揺れる。それがいつのまにか振り下ろされている。
カタナブレイドの振り下ろし自体も目で追えるのに、攻撃に転じる瞬間だけが曖昧だ。
下段(アーススタイルと言うらしい)に構え、そこから切り上げるのかと思いきや、深く踏み込み超低姿勢からの更なる切り下げ。勿論、切り上げることもある。
シャドウスタイル、あるいはホーリィスタイルとは、カタナブレイドを立てて頭部近くに置く構えをそう呼ぶらしい。カタナブレイドが頭の右か左かでシャドウかホーリィになるんだとか。これは体力の消耗を避け、次なるスタイルに移行する前段階であるとのこと。
上述のスタイルからシフトするのが、最も攻撃的なファイアスタイル。いわゆる上段の構え。
上段からは振り下ろすしかないため、アインズとしては受けるのが一番楽だった。あくまでも、他の構えと比べるならばであるが。
決して強くはない。
一撃一撃は軽いし、見てから避けられる速さ。しかし、非常にやりにくい。
アインズは受けに専念していながら、イメージトレーニングの一環として反撃のタイミングを計っている。
呼吸は細くて捉えがたい。足捌きは滑るような摺り足、足元をよく見ていないと移動したこともわからない。カタナブレイドを握る手だけは力が入っているが、それ以外は脱力している。攻撃の予兆がさっぱり掴めない。
いつ攻めに転じるかわからないため、攻撃を終えた瞬間に隙を見いだそうとするのだが、一撃を終えた後は瞬時にウォータースタイルに戻って距離をとる。それでも、アインズの力と速さならどうにでも出来る。
しかしもしもアインズと同等の力と速さを持っているとするならば、万全の構えに飛び込むも同然。無謀としか言いようがない。
技量はコキュートス並にあると豪語するだけはあった。
「お見事です。魔法職にありながら、これほどまで剣の扱いに習熟されるとは……、アインズ様の動き一つ一つに鍛錬の積み重ねを見たように思います」
「…………いや、割とギリギリだったぞ。お前こそ凄いじゃないか」
「恐れ入ります。ただ、私の剣はどうしても軽いので、手慰みの範疇を出ないのがアインズ様と決定的に違うところであります」
十数度の攻撃を、アインズは全て受けるか避けるかした。
危うい時もあった。受けるために無理に手首を捻り、もしも生身の肉体だったら筋を痛めていた。
漆黒のヘルムから指一本分の空間を剣閃が通り過ぎたこともあった。これについては、ギリギリで避けたアインズの見切りが光ったとも言える。
「これがイニシエイトカタナテックの基本スタイルとなります。今度はイニシエイトカタナテックにラウンドムーンキリングテックのエッセンスを取り入れたものをお見せいたします。続けての受け太刀をお願いいたしますが、おそらくイニシエイトカタナテックよりも容易いものと思われます」
「それなんだがな。そもそもラウンドムーンキリングテックとは何のことだ?」
男がぽかんと口を開ける。
アインズは初めて見る顔だった。
「失礼しました。アインズ様はお読みではなかったのですね。長編ですので、お忙しいアインズ様が読むには不適かも知れません。それでは簡単に説明いたします」
▼
「ラウンドムーンキリングテックとは、超長編ダークカタナテックジェノサイドノワール小説「グレート・モンド・ダウンヒル」の主人公デスク・ドラゴニオが使うカタナテックのことです。」
「なんだそのジャンルは」
私も初めて目にしたジャンルです。
ノワール小説は悪役が主人公と言うこと。
ジェノサイドは文字通りに皆殺し。主人公以外の登場人物は9割9分以上が主人公に斬殺されます。
ダークカタナテックは、主人公がカタナブレイドで殺人を行うから付けたものと思われます。
「……全員斬り殺すのか? 小説とは、もっとこう色々な登場人物が出るものじゃないのか?」
友や想いを通じた女性、カタナテックのマイスターも登場します。
ですが主人公はラウンドムーンキリングテックを披露することを好意の証と考えておりますので。
また、師匠殺しが弟子に出来る最大の恩返しと考えています。
(滅茶苦茶物騒な小説だな)
ラウンドムーンキリングテックとは、カタナブレイドにラウンドムーンの力を宿して敵を斬る技を指します。
ラウンドムーンの力を宿したカタナブレイドは万物を切り裂く、と言う設定になっております。
「そこだけ聞くとファンタジー剣術のようだが?」
仰るとおりです。
ただし、力の宿し方が実際の剣術の理に適っているのです。コキュートス様が愛読なさっている理由もそこにあるのでしょう。
カタナブレイドの軌跡がラウンドムーンを辿る時、すなわち真円を描くときにラウンドムーンの力が宿るのです。
剣を振るう際は必ず関節を基点にします。必然的に円を描くことになるのです。そこで真円を描くように振るうと言うことは、体の捻りから生じる力を余すことなく剣に注ぐことに他なりません。
ラウンドムーンキリングテックとは、カタナブレイドの威力と速度を最大限に活かすカタナテックなのです。
それでは実際にご覧に入れます。
私のカタナブレイドにラウンドムーンの力は宿りませんが、ラウンドムーンキリングテックのアトモスフィアは感じられるかと思います」
二人は再度剣を構える。
アインズは最初と同じ構え。イニシエイトカタナテックで言うところのウォータースタイル。切っ先がやや上がっている。
対する男は、今までの構えとは違うものだった。
「ラウンドムーンキリングテックの要点は威力と速度になります。そのため、どうしてもカタナブレイドの移動距離が長くなりがちです。そこをフォローするためにこのようなスタイルになるのです」
アーススタイルに構えたカタナブレイドを寝かせ、脇に取る。左足を前に出して半身の形。カタナブレイドは体に隠れて見えなくなった。
type-ブルーである。いわゆる脇構え。
カタナブレイドの位置によって名前が変わり、中段ではホワイト。上段ではシルバーとなる。
「それでは参ります」
剣が隠れているため、どこから飛んでくるのかアインズからはわからない。
しかし、基本的には見てから避けられるし受けられる。
響き渡る金属音から、威力だけはさっきよりも上らしい。アインズからすれば誤差も同然。
威力重視の正統派剣術。それが、アインズが抱いたラウンドムーンキリングテックの印象だ。
何度かstyle(構えではなくstyleと言うらしい)を変えて剣撃が飛んでくる。
男が言った通り、イニシエイトカタナテックよりも受けやすい。
初見なら剣の間合いがつかめなかったかも知れないが、先の受け太刀で間合いを把握している。今度は危うさを感じることなく、全てを受け、あるいは避けた。
「コキュートス様であれば一層の威力を込めた一撃を放てるのでしょうが、残念ながら私には不向きなカタナテックです」
「……剣術ではなくカタナテックなのか?」
「? はい。仰るとおりです」
カタナテックをどうして剣術と呼ぶのか。カタナテックはカタナテックである。
「イニシエイトカタナテックもラウンドムーンキリングテックも、あらゆるカタナテックは対人用ブレイドアーツです」
(ブレイドアーツ……、カタナテックよりかっこいいな)
「カタナブレイドを用いることによって可能な速攻即斬であるため、アインズ様がお使いになるグレートソードには不適な用法となります」
「しかし、グレートソードでも可能な技がある。そう言うことだな?」
「その通りでございます。これからお見せいたしますのはラウンドムーンキリングテックを越えたカタナテックの妙技。カタナブレイドのみならず、あらゆる武装に適用できることでしょう」
再度カタナブレイドを構えた。形はウォータースタイル。攻守ともに優れた型である。
「先ほどと同じように何度か打ち込みますので、アインズ様にはもう一度受け太刀をお願いいたします」
「ふむ……来るが良い」
アインズもウォータースタイル、ではなくて正眼の構え。
アインズは男の剣撃を難なく捌いていく。
カタナブレイドの間合いとブレイドスピードに慣れたのもあるが、最初に披露した型と全く同じ攻撃が飛んできている。
間合いが同じならリズムも同じ、カタナブレイドが描く軌跡も同じ。剣がかち合う音の高さから、威力は少しだけ上と推測。ラウンドムーンキリングテックのエッセンスを取り入れている、らしい。
こうも全く同じ攻撃が続くと、一連の動きは一つの型なのではないかと思う。
思う通りに動くのは癪なので、攻撃をしない代わりに距離を取ったり、反対に詰めたりもしてみる。それなのにすっと詰められ、すっと引かれる。
総合的な強さなら比べるまでもなく圧倒的にアインズの剣が勝っているが、こと技量となるとあちらが上と認めざるを得ない。
カタナブレイドを避け、あるいは受け止めながら、どこでこんな技術を覚えたのかと考えるくらいに、アインズには余裕がある。鋭い剣でも、同じ攻撃に苦戦するほどアインズが積み重ねた研鑽はぬるいものではない。
しかし、一体何がラウンドなんとかを越えたのか。
確かに見事な剣である。コキュートスだって誉めるだろう。後方勤務の文官が使う剣と言う意味において。
実戦で剣を使うアインズにとっては、コキュートスとは違ったカタナブレイドの戦法を知る、と言う以上の意味を見いだせない。
ここまでであるならば、であるが。
最初の焼き直しのような打ち込みが終わり、最後に正面から切りかかってきた。
アインズはすでにグレートソードを構えている。金属音が鳴り響き、長大なグレートソードと細いカタナブレイドが噛み合った。
「ふっ……」
真っ向からのつばぜり合い。アインズが思わず鼻で笑ってしまうのは無理もない。
アインズからは攻撃しない。受けたカタナブレイドを弾かない。と言う制約があるが、押し負けてやるのはそこに含まれていない。
膂力はわんことケルベロスほどに隔絶している。つばぜり合いになった以上、グレートソードで受け止めたアインズは不動の要塞めいて、人の力で押し勝つのは絶対に不可能、であるはずだった。
「なに!?」
膝が沈む。
優男の力で押し込まれている。
その事実に驚愕した瞬間、カタナブレイドが優美な弧を描いて飛んできた。
つばぜり合いを外されたため、剣で受け止めるのは不可能。
体勢を崩されているので飛び退くことも出来ない。
銀光が目指しているのはヘルムだ。最初の披露で危うく当たりそうになった一撃と全く同じ。
間合いはわかっている。体を反らせばギリギリ当たらなかった。
今度も同じように避けられるはず。
瞬時の判断でアインズは回避を選択し、カァンと良い音が虚空に響き渡った。
カタナブレイドは、アインズのヘルムに届いた。
▼
「今のは何だ? 魔法、ではないよな。お前は使えないし。スキルか? いつの間にか剣士のクラスを取得したのか? いやしかし、瞬間的に剣の間合いが伸びるスキルはなかったはず。そんなの地味過ぎるし。その前に俺を押し込んだのがわからん。どう考えても力は俺の方が上のはずだ。ノックバックを発生させるスキルやアイテムは幾つもあるが、どれとも効果が違うように思える……。まさかタレントと言うわけではあるまいな?」
アイテムコレクターであるアインズには探求者の側面がある。早速、不可解な現象の原因究明に乗り出した。
ナザリックのシモベたちのみならず、知的生命体はアインズの態度を見習うべきである。
「ご存知の通り、私は魔法を使えません」
アインズが太鼓判を押すくらい魔法の才がない男だ。
「クラス取得につきましてはわかりかねますが、スキルは使っておりません。そもそも使えません」
攻撃の軽さから、剣士クラスは取得していないだろうと判断したアインズだ。一応言ってみただけで、それはないだろうと思っていた。
「私が装備しているマジックアイテムは、アインズ様からお借りした指輪と、ペストーニャ様からいただいた防寒のブレスレットのみです」
防寒ではなくて、耐炎と耐氷のブレスレットなのだが、先を促すためにアインズは突っ込まなかった。
ちなみに、指輪は左手の中指に填めている。指輪とはつける場所によって意味が変わり、左手の中指は人間関係の改善等を望むときにつける。空気を読めない人がつける場所である。つけてる当人はそのことを知らない。左手の中指にしたのは偶々である。
「使用したカタナブレイドにもそのような効果はないと思われます」
鞘ごと腰から引き抜いてアインズへ手渡した。
見た目は豪華で頑丈なカタナブレイドだが特殊効果はない。ナザリック的には装飾品にしか使えないレベルだ。
「タレントでもありません。純然たる技術に依るものです」
「そうは言うがな。私がお前に押し負けるとはとても思えん」
「仰るとおりです。先のつばぜり合いで、私はアインズ様を押したわけではありません」
「どういう事だ?」
「その部分だけ実演いたします。これからアインズ様を思い切り押しやるので、押されないよう踏みとどまっていただけますか?」
「いいだろう」
グレートソードを地に突き立て、足を前後に置く。腰も落として万全の構え。
男はアインズの両肩に手を置いた。
「それでは、行きますよ?」
「来い!」
「鋭!」
「うおっ!?」
またも、アインズの膝がガクリと沈んだ。
押し負けたのなら後ろへ下がるはず。後ろではなく、下へ沈んだ。
「横方向へ押したのではないのです。私が加えた力は下方向のものでした。アインズ様は後ろへ押されまいとしていらしたので、それ以外の方向への警戒が薄かったのです」
アインズの膂力はケルベロス並。しかし体重までケルベロスではない。不意を突けばバランスを崩すくらい出来るのだ。
▼
「私がこの技を発見したのは、ラウンドムーンキリングテックの不備をどうにか出来ないかと考えたのが切っ掛けです」
語りが始まってしまった。
新たな発見をしたとき、得意げに語りたくなってしまう気持ちがアインズにはとてもよくわかる。
「先に申し上げました通り、剣を振るう際は関節を基点にするため、剣の軌道は円を辿ります。ですが、円よりも直線を辿った方が対象へ早く届きます」
かつてユリに語ったことである。
「円よりも直線。ですが、無理に剣の軌道を変えると威力と速度を損なうだけとなります。双方を損なわずに軌道を変えるにはどうすればよいか検討を続けたところ、胸郭のコントロールに行き着きました」
胸郭、すなわち胴体は、動かないものとして扱われる。しかし腕を広げれば開き、腕を閉じればやはり閉じる。動くものなのだ。
「動く範囲は精々が指一本か二本分です。ですがそれだけの距離が違えば届かないはずのブレイドが届きます。横方向へ全力で押す中で、下方向への力を合わせることも出来ます。四隅が解放されているひし形を思い浮かべてください。ひし形を左右から押せば*1、真ん中が潰れる代わりに上下へ伸びます。私はこの術理をブレッヒェン・ロンブス*2と名付けました。アインズ様を押したのがこれになります」
(ぐふっ……! ここでそう来たか。ええとブレッヒェンは確か「壊す」で、ロンブスは……わからん! 後で調べとこう)
ブレッヒェンもロンブスもドイツ語。ブレッヒェンは「壊す」で正解。ロンブスはまんま「菱形」のことである。
「そ、そうか。だが修得難易度が高いんじゃないか?」
「コキュートス様は修得出来ないと思われます。胸郭の動きが肝要なのですが、コキュートス様は外骨格ですから」
蟲王であるコキュートスは、大きな昆虫なのだ。
「反対にアインズ様が修得するのは容易かと。胸郭の動きをしっかりと確認出来ますし、私が指導するからです」
漆黒の甲冑の下はお骨である。
「指導の対価、と申し上げるのは烏滸がましいと存じておりますが、一つだけお願いがあります」
「なんだ?」
アインズにとって、見たことも聞いたこともない技術だ。これを修得出来ればコキュートスを驚かすことが出来る。生憎コキュートスは修得不可であるようだがそれはそれ。
部下の部下とは言え、指導の対価を求めるのは正当な権利だ。ナザリックのシモベたちが聞いたらいつぞやのアルベドがしたように上下で真っ二つにされるかも知れないが。
果たして求められた対価は、意外なものだった。
「アインズ様がブレッヒェン・ロンブスを修得し、剣技にも応用できるようになりましたら、一連の剣術にモモンズ・ブレイドアーツの名を与えていただけないでしょうか?」
「………………何故だ? お前が編み出した技術だろう」
「私が持っていても使いようがない技術です。アインズ様が感じました通り、私が剣を振っても大した威力を出せません。手慰みの曲芸の域を出ないのです。カタナテックドージョーを開く暇はありませんし、需要もありません」
「大した技だと思うぞ。需要が皆無と言うこともないだろう」
「恐れ入ります。確かに皆無ではないかも知れませんが、この地の戦士たちはこのような術理を会得するよりも威力の向上を目指しておりますので」
モンスターのせいである。
応用が利きはしても対人用の精妙な術理よりも、モンスター退治のために一撃の威力が求められる。
「同様のブレイドアーツは、帝国と王国には、また近隣諸国にも存在しません。帝国四騎士から聞いた話ですので間違いはないでしょう」
帝国四騎士の一人に練習相手になってもらうこともあった。
今日のアインズと同じように受け太刀を頼むのが主である。ルプスレギナは面倒くさがって付き合ってくれなかった。ミラはバッチ来いなのだが、昼間の屋外で吸血鬼をこき使うのは心情的に躊躇われた。真っ白な肌なので日焼けも気になる。どちらも大丈夫らしいが気分の問題である。
「私のものとしますと、名を与えられずに私の代で終わりです。ですがアインズ様と共にあれば、永く栄誉に輝くのが約束されております」
当初は円より直線と言うことでスクエアホライゾンキリングテックの名を便宜上与えたのだが、直線の域にまで届かなかった。実が名に届かない。名前負けである。
「そしてなによりも、私が考案した術理をアインズ様にお使いいただければこの上なく名誉なことでございます」
割と本心である。
あえてうがった見方をすると、完成したものへの興味が薄いとも言えた。
「ふむ………………。そこまで言うのなら」
「では!?」
「うむ。私がブレッヒェン・ロンブスを修得した際にはモモンの名を与え、モモンズ・ブレイドアーツとして使わせてもらおう」
「おお! ありがとうございます、光栄です!」
▼
(上の者があんまり固辞するのはちょっとなんだろう。他にないオリジナルな剣術で広める予定もないことであるし、そうまで言うのならモモンズ・ブレイドアーツとするのは、まあ、やぶさかではなかろう)
と言うのは建前である。
アインズの本心はと言うと、
(ヤバいな。俺のオリジナル剣術か。モモンズ・ブレイドアーツ! ヤバいなこれカッコいいじゃないか! ブレッヒェン・ロンブス、だったかな? これだけならまあ許容範囲だ。それにしてもモモンズ・ブレイドアーツか…………。うん。いいな!)
中二病は治らない。
症状が和らぐことはあっても、完治することは絶対にあり得ない。
アインズはかつての全盛期を取り戻した。
アンケートがこうも偏るとは
大勢は決したぽいですがもうしばらく置いておきます
R18Gは考えた末もしもやるなら別作でします
アルベドのお腹は大きく
-
なる
-
ならない
-
任せる