※この作品はR-18です。

アルベドのお食事   作:dolph

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ハムスケのことを忘れていませんでしたか?
私は綺麗に忘れてたので忘れない内に突っ込みました


ハムスケもふもふ大作戦

 若旦那様が窓から外を眺めています。

 ぼうっと眺めているのではありません。しっかりと目的を持って眺めています。その証拠に、数秒確認すると眺めるのを止めるのです。

 最近は空を眺める頻度が高くなりました。特にモモン様とナーベ様の滞在期間が残り少なくなってからは日に何度も眺めています。時には外に出て眺めることもありました。

 一体何を見ているのでしょう。

 

「いらした!」

 

 空に何かを発見したようです。

 若旦那様は叫ぶや否や、外に飛び出しました。

 

 

 

「あれ? 随分歓迎されてるじゃん」

「アウラ様がいらっしゃるのを今か今かとお待ちしておりました」

 

 若旦那様が待っていたのは、ドラゴンに乗ってやってくるアウラ様でした。

 お屋敷の広い広い敷地に着陸したドラゴンからアウラ様が飛び降ります。大きなドラゴンなのでそれなりの高さがあります。以前は空中から飛び降りたこともあるアウラ様ですので、着地に何の問題もありません。

 

「おっと、お怪我はありませんか?」

「……ないよ。別に受け止めてくれなくても良かったんだけど」

 

 飛び降りたアウラ様を若旦那様が見事にキャッチ。

 

「手が届く範囲でしたので。差し出がましいことをいたしました」

「……別にいいけど…………。それより何で私を待ってたの? 何かあった?」

 

 アウラ様は夕日の残光に染まる顔を背けて問いただしました。

 帝都のお屋敷には何度も来ているのですが、外で出迎えを受けるのは初めてです。

 

「今はモモン様とナーベ様が滞在していらっしゃいます」

「知ってる。この前会ったし。そう言えばこの前は」

「そこはどうかご内密に」

 

 アウラ様は、若旦那様がアインズ様との内緒の修行期間の間にお屋敷を訪れていました。その時の若旦那様はドッペルゲンガーだったのです。アウラ様は一発ですり替えを見抜きました。

 すり替わっていたのはナザリックの一部の者たちしか知らないことですので、大きな声で話されると困ってしまうのです。

 

「わけあってそのような事になっておりました。子細はどうかご容赦を」

「私にも内緒ってわけ?」

「では……、後ほど」

 

 後ほど、アインズ様のご下命で、と打ち明けられ、アウラ様はそれ以上追求出来なくなるのですが、今は関係ない話です。

 

「今はモモン様とナーベ様がいらっしゃいます。すなわち、ハムスケさんもここにいるのですよ」

「それが?」

「ハムスケさんをもふもふにする日がついに来たのです!」

「………………ああ」

 

 アウラ様は綺麗さっぱり忘れている話でした。

 若旦那様は、アウラ様がいらっしゃる時にハムスケさんをもふもふにしてやろうと思って、アウラ様がいらっしゃるのを心待ちにしていたのです。

 

 

 

 

 

 

 アウラ様がいらっしゃったのは夕刻です。

 時節は冬。日没が早く、空には明るい星が見え始めました。

 

 敷地の一画に、大きな篝火が焚かれました。

 アウラ様がドラゴンを着陸させたり待機させたりと、開けている広い場所です。

 

「本当にやるでござるか? そもそもそんなことが出来るのでござるか?」

「出来ます! 私が保証します!」

「お前に保証されても……」

「もふもふになればモモンさんがお喜びになるわ」

 

 アインズ様が大福にもたとえた丸くて白いハムスケさんは、体高が人の身長よりもあります。見た目は大きなハムスターですので、体長は体高に応じた長さに。すごく丸くてふわっとしたおっきな可愛い生き物です。

 その実、森の賢王と称えられる凄い魔獣だったりするのです。

 

 ナーベ様の言葉にモモン様が頷いているのですが、中身はドッペルゲンガーの偽モモン様です。

 ハムスケさんは半目でナーベ様を見返しました。

 

「本当でござるか~? ……ぎゃふんっ!!」

 

 ナーベ様がハムスケさんを蹴りつけました。

 ここにいるモモン様はダミーですが、ダミーとばらされるのは大変困ることなのです。ハムスケさんの言葉はいささか迂闊でありました。

 

「本当だって。私はハムスケがもふもふになったらすっごく嬉しいよ!」

「アウラ殿がそう言うのなら…………、わかったでござる!」

 

 ハムスケさんはアウラ様の援護射撃で陥落しました。

 

「人間! 拙者の毛をもふもふにするでござる!」

「勿論です。準備は既に整えておりますから」

 

 ハムスケさんは、ちょっとだけ悪寒を感じてぶるりとしました。

 ハムスケさんにとっての若旦那様は、ひ弱な人間だけどナザリックの下っ端に取り上げられた、と言う認識でしかないのです。ハムスケさんに人間の美醜はよくわからないし、若旦那様の役割を詳しく聞かされたこともないので当然と言えば当然の認識です。

 ハムスケさんがぶるりとしたのは、幾名が鋭い視線を投げたからなのですが、もしかしたら野に生きる魔獣の第六感が未来を警告したからなのかも知れませんでした。

 

 

 

「アウラ様に以前説明しました薬液を使用します」

 

 使用する薬液は二種類あります。

 薬液Aが、剛毛をふわふわにします。

 薬液Bは、人肌を始めとする動物の肉体に親和性があります。

 AとBを混ぜることによって、大きなハムスケさんの全身に効率よく薬液を塗布することが出来るのです。

 

「では行きますよ」

 

 薬液の用意はたっぷりと。大瓶が何十本も並んでいます。

 若旦那様は瓶の中身を桶に撒け、もう一種類の瓶の中身も撒け、ガラス棒を使って中身を一混ぜ。

 桶の中身をハムスケさんのおっきな体にぶちまけました。

 

「ひょえぇっ!? つめたっ! 冷たいでござる!」

 

 ハムスケさんのでかい図体に比べればとても小さな桶の中身が、ハムスケさんの全身を包む込んでしまいます。これが薬液Bの効果なのです。

 

「ミラ、ジュネ!」

 

 若旦那様が呼びかけたのは助手のヴァンパイアブライドたち。

 日が落ちてるけれど、ヴァンパイアブライド標準装備の白い衣装はエロ衣装と勘違いされるのが確定なので、日中も着ているドレス姿です。

 白と黒のドレスを身にまとった美しい手弱女たちが、容量が500リットルもある大きなバスタブを持ち上げているのを見て、使用人たちの何人かが度肝を抜かれました。若旦那様の愛人と思っていたのです。

 

「ぶっっっっひぇええぇぇえぇえっぇぇぇえぇええぇ!?!?!?」

 

 ハムスケさんが絶叫しました。

 

 ミラとジュネは、二人掛かりで大きなバスタブを持ち上げると、中身をハムスケさんにぶちまけたのです。

 中身は水です。

 薬液Aは、たった一度の塗布で効果を発揮してくれないのです。ハムスケさんの毛をもふもふにするには、塗布した薬液を大量の水で洗い流し、再度薬液を塗布してからまたも洗い流し、と言うことを何度も何度も繰り返さなければならないのです。

 

「何するでござるか冷たいでござる……よ」

 

 この人間めぶっ飛ばしてやる! と意気込んだハムスケさんは、若旦那様に忠実な最強のヴァンパイアブライドが、その目はなに殺すぞボケ、の目で睨み返してきたので言葉尻が締まりませんでした。

 

「冷たかったですか? ハムスケさんは森の賢王とも呼ばれる偉大な魔獣ですから、水を被るくらい大したことないと思っていました」

「季節を考えるでござる!」

 

 今は冬です。間違っても屋外で水浴びをする季節ではありません。

 しかも夜です。空気は冷え冷えとして、ハムスケさんの大きな吐息が真っ白に濁っています。

 

「ハムスケさんなら大丈夫と思っていたのですが……」

 

 若旦那様は考えました。

 寒いなら暖かくなるのを待つか、洗い流す水をお湯に変えるかの二択です。

 ですが、前者は却下。水浴びに適した季節まで待ってられません。

 そして後者も却下。時間を掛ければ可能なのですが、既に掛水は汲んであるのです。これらを一々沸かしてたら夜が明けてしまいます。

 若旦那様は考え抜いて、名案を思いつきました。

 

「わかりました!」

 

 遠くで見ているメイドたちから黄色い悲鳴があがりました。

 若旦那様はババッと上着を脱ぎ捨てシャツも脱ぎ捨て、上半身裸の半裸の姿になったのです。一見細身なのに、脱ぐと意外に逞しい若旦那様です。腹筋も割れています。

 

「ハムスケさんだけに寒い思いをさせるわけにはいきません。私も寒さに耐えましょう! ウオオオオオオオッ!!」

 

 若旦那様は、何故か用意してあった氷水入りのバケツを掲げると、頭の上からジャバアッと被ったのです。

 水も滴る若旦那様です。

 

「ハムスケさんが水を被る度に私も水を被りましょう!」

「に、人間…………。オヌシの覚悟、しかとそれがしに届いたでござる! さあ幾らでもぶっかけるでござるよ!」

 

 一幕を見ていた者たちは、ハムスケさんと同じく若旦那様の心意気に胸を打たれました。

 しかし他方、若旦那様の左手首に輝くブレスレットに目を留めた者たちは違います。

 

 お前は寒くねーだろ。

 

 赤と青の宝石を抱く魔法のブレスレットは、耐炎と耐氷の効果があるのです。氷水を被るくらい全く問題ありません。

 みんな薄々感づいていたことですが、若旦那様には人の心がありませんでした。

 

 

 

 ヒェッ ジャバーー ブッヒェエエェェ! ウオオオオ! ジャバァ。ヒェッ ジャバーー ブッヒェエエェェ! ウオオオオ! ジャバァ。ヒェッ ジャバーー ブッヒェエエェェ! ウオオオオ! ジャバァ。ヒェッ ジャバーー ブッヒェエエェェ! ウオオオオ! ジャバァ。ヒェッ ジャバーー ブッヒェエエェェ! ウオオオオ! ジャバァ。ヒェッ ジャバーー ブッヒェエエェェ! ウオオオオ! ジャバァ。ヒェッ ジャバーー ブッヒェエエェェ! ウオオオオ! ジャバァ。

 

 ………………………………………………………………………

 

 …………………………………………………

 

 ……………………………

 

 

 

 そして夜が明けた!

 

 辺りには空になった瓶が無数に転がっています。

 水浸しではありますが、予め排水のために掘った溝がそこそこの仕事をしていました。

 

 そして、ハムスケさん。

 プルプルプルプルプルプルしております。

 

「ふわぁ……、どう? 終わった?」

 

 お泊まりしたアウラ様が窓から飛び降りてきます。

 

「あ……あうらどのぉ…………」

「この丸いの……。やっぱりハムスケなの?」

 

 ハムスケさんは、白い毛玉になっておりました。

 元々大きなハムスケさんです。体毛もそれなりに長いです。針金のように固い毛がふわふわになった結果、ハムスケさんの体積は5割り増しに。大きな大きな白い毛玉の怪と化してしまったのです。

 身体中の毛がふわふわになってしまい、つぶらなお目めが毛並みの奥に隠れてしまっています。

 蛇みたいに鱗が生えてる長い尻尾があるのでどっちが後ろなのかくらいはわかりますが、逆を言えばそれしかわかりません。まさに白い毛玉です。

 本当は頭の上の毛は茶色っぽくなっていたのですが、若旦那様がハムスケさんに何の断りもなく漂白してしまったのです。人の心がない男です。

 

「如何でしょう? 宣言通りにもふもふハムスケさんの誕生です! 乾燥を終えてありますので、どうぞ毛並みを確かめてください」

 

 乾燥とか、まるきり毛皮扱いです。

 

「それじゃ早速」

 

 アウラ様は、プルプルしてるハムスケさんの背中にぴょんと飛び乗りました。

 もふもふの毛皮に埋もれて、アウラ様は見えなくなりました。

 

「…………なんか……、思ってたのと違う」

「…………………………えっ?」

「もふもふって言うよりふわふわって感じで、なんて言うの? 柔らかくなりすぎ」

「!?」

 

 まさかのダメ出しです。

 

「それにこれじゃハムスケも前が見えないでしょ?」

「見えないでござる。毛が鼻をくすぐってむずむずするでござる~」

 

 ハムスケさんはブヒェンと大きなくしゃみをしました。

 白い毛玉の一部がなびいたので、その奥に口があるとわかります。

 

「ご飯も食べれないでござるよー」

 

 どこに顔があるかわからないレベルのもふもふ毛玉っぷりですので、食事など到底とれないことでしょう。

 

「今回はちょっと失敗だね」

「次こそはアウラ様の思う通りのもふもふにしてみせます」

「もういやでござる」

 

 

 

 

 

 

 ハムスケさんは丸刈りにされました。

 肌の色は意外なことにピンクでした。寒空の下にピンクの肌がむき出しですと、いかにも寒そうです。

 しかし、そこは偉大な魔獣、森のハムスケ。

 申し訳程度の毛生え薬にルプスレギナが回復魔法を掛けますと、短く刈られた毛がモリモリと長くなって、元の針金みたいな毛皮ハムスケに戻ったのです。

 若旦那様は早速リトライを申し出たのですが、

 

「もういやでござる」

 

 アウラ様もナザリックに帰ってしまわれました。

 

 そうこうしている内に時間が流れ、モモン様とナーベ様がエ・ランテルに帰る日がやってきてしまいました。

 モモン様の中身はパンドラズ・アクター様に戻っています。

 

「ハムスケの様子が少し変だな?」

「モモンさん、その話は道すがらに」

「散々な目にあったでござる……」

 

 お屋敷の人員総出でお三方を見送りました。

 

 なお、刈り取られたハムスケさんの毛は、綺麗に洗った後に脱脂処理をされ、糸車で紡いで毛糸になりました。

 若旦那様が鋼の剣を使って切り込んでも断ち切れない凄い毛糸です。そのくせ手触りはふわふわ極上。

 おっきなハムスケさんなので、セーターが100着くらい出来そうです。

 

 若旦那様は毛糸をナザリックに卸して服飾品に加工して貰おうかとちょっとだけ考えたのですが、ナザリックでハムスケさんの毛糸が評判になってしまいますと、これからのハムスケさんが毛糸製造機になってしまうかも知れないので止めておきました。少しは人の心が残っているようです。

 

 毛糸は手のひら大の毛玉にしてから屋敷に務めるメイドたちに配ったりしましたが、量が量なのでまだまだいっぱいあります。

 その内に編み物でもやってみようと思いました。

 

 余談になりますが、メイドたちが毛玉を毛織り商へ鑑定に持って行ったところ、一財産になることが判明してしまいました。

 鋼の剣で切りつけても物ともしない耐久性。ふわふわ手触りの極上品質。森の賢王の毛糸と言うネームバリューと希少性。当然の結果でした。

 しかし残念ながら、次の供給予定は皆無。

 

 もしかすると、夏になったらハムスケさんの気分が変わるかも知れません。

 夏になる頃にはエ・ランテルに戻りたいなあと思ってる若旦那様でした。




 名前を決めてください

 ニア _ _ _ _

本当に必要になったらたぶんおそらく

優先して欲しいのは

  • アルベド
  • シャルティア
  • アウラ
  • ユリ
  • ルプスレギナ
  • シクスス
  • シェーダ
  • カルカ
  • 帝国のチョロイン
  • その他
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