※この作品はR-18です。

アルベドのお食事   作:dolph

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決戦準備

「いやぁ、頑張ったっすよー。必死で工夫して連携して全力を振り絞って死線をかい潜った末に繰り出した必死の一撃をぺちっと叩き落とすのって………………、もう超最高っす♡」

 

 ルプスレギナがご機嫌であればあるほど双子忍者の憔悴が際立つ。

 

「手がもげました」

 「足は飛びました」

「お腹に風穴が空きました」

 「最大で同時に三つ」

「四つ行ってたら即死です」

 「むしろ死にました」

「ティナ死んだ? それなら私も死んでた?」

 「やっぱり二人とも本当は死んでる?」

 

 王都をヤルダバオトが襲撃した際、防衛に回ったティアとティナはあっさりと殺されてしまった。

 ルプスレギナとの訓練では一度も死ななかったが、何度も死にかけた。その都度回復されていなければ、それぞれ十回以上死んでいる。

 

 一撃で死ぬのと、死にかける度に回復して更に殺されかけるのとでは、どちらがいいとも言えない。後に復活させることを前提とすれば、苦痛が短いだけ前者の方が遙かにマシと言える。

 

「でもでもそのおかげでちょびーーーーっとだけレベルアップしたんすよ?」

 

 ルプスレギナがいくら弁解しても、二人の表情は死んだまま。

 目が虚ろで表情は抜けており、視界の中で何かが動くとピクッと体を震わせる。

 野生に戻れず、かと言って人の社会にも馴染めない野良猫のようである。

 

「明日の昼前にシャルティア様がお前たちを王都に送ってくれる。それまでは自由にゆっくりと休んでくれ。希望があったら聞こう」

 

 ティアとティナは顔を見合わせ、無言で相談することしばし。

 ティアが口を開いた。

 

「それなら……」

 

 

 

▼ ▼

 

 

 

 うあーとかほあーとか奇怪な声を上げつつ、二人はベッドに身を投げた。

 数日前からティアが寝起きしている客室だ。ティナも同室でよいと言うので、二人で一室を使うことになった。

 

 ティアは直ぐに顔を上げてティナを向くのだが、ティナはベッドに埋もれたまま動けない。初めてのベッドの感触に驚愕している。何このベッドふかふかのくせに寝転がるとスゴいフィット感、毛布ふわふわシーツさらさら。

 シーツの海をひとしきり泳いでから、ようやっとティアへ顔を向けた。

 

 向き合った双子は互いの胸を見ている。正確には胸の前で蠢く相手の手指。

 

(拍子抜けするくらい上手くいった)

 (スケベなだけかも)

(スケベでエロエロなのは確か。でも、「だけ」じゃない)

 (向こうの肩を持つ? 惚れた?)

(そんなんじゃない)

 (とりあえずそう言うことにしとく。それより監視や盗聴は?)

(この部屋に入った日から毎日調べてる。見つからない。多分ない。でも魔法でされてたらアウト)

 (わかった。それじゃ一応このままで)

 

 二人の会話は言葉を伴わない。高速で動く手指の動きで意志を伝達している。

 二人だけに通じる手話を使えば、仮に覗き見されていても問題ない。

 

「今日は神官様とミラだけだったけど、この前は帝国四騎士のレイナースが来た」

 「強かった?」

「強かったけど噛み合わない。向こうは一撃重視。こっちは奇襲と手数が売りだから」

 「実戦と練習は別ってことね」

「そう言うこと。それより若旦那様が強かった」

 「それマ?」

「マ。本気を出すとあれだから手加減したけど、避けたはずなのに何度か斬られた。鍔迫り合いしてるのに投げられるとか意味がわからない」

 「本気出したら?」

「多分なんとか」

 「多分?」

「少なくともクライム程度じゃ相手にならない。スキルと武技なしにすればガガーランとタイマン出来るレベル」

 「そう言えば初めて会った時の抜刀は滅茶苦茶早かった。ナイフ投げも一流の上。戦士より暗殺者向き」

「イジャニーヤで一線張れそう」

 「あの顔じゃ無理。目立ちすぎ。頭領の婿にするならいいかも」

「……ティラには勿体ない」

 

 ティアが言うティラとは暗殺者集団イジャニーヤの女頭領のこと。ティアとティナとは三つ子の姉妹だ。実は双子ではなく三つ子だったティアとティナである。

 

(でも二人掛かりなら問題ないはず)

 (これって信頼されてる? それとも舐められてる?)

(どっちも。私たちには何も出来ないと思われてる)

 (油断大敵ってね)

 

 二人は半月にわたって教育を受けてきたわけだが、それによって魔導王へ真の忠誠を捧げたわけではない。

 先の調教バトルの一幕は、あくまでも忠誠をどのように表すかを競ったに過ぎない。つまりは演技である。

 戦力的に、二人に出来ることはたかが知れている。しかし、何も出来ないではない。

 自分たちに出来る僅かな事で、屋敷の急所を抑えるつもりなのだ。

 

「ミラの相手をしてるのが一番楽しかった」

 「背の高い方の吸血鬼?」

「今日の訓練に参加してきた方」

 「神官様の相手より千倍マシだった」

「教育中も世話になった。感謝はしてる」

 「恩返し完了?」

「そんなつもりはない。本当に疑問だった」

 

 

 

■ ■ ■

 

 

 

 書斎でティアが希望を述べた後に起こったこと。

 

『シャルティア様との勝負に勝てたのはミラのおかげだな。褒美代わりに礼がしたい。俺にして欲しいことはあるか?』

 

 ミラが戦闘訓練を提案しなければ、こちらもシャルティア同様に手段を目的化してしまい、ティアの仕上がりがティナと似たり寄ったりになった可能性は高かった。ミラがお叱りを恐れず声を上げたからこそ勝利できたのだ。

 ミラは恐れ多いことですと二度固辞してから、再度請われて望みを口にした。

 

『ご主人様の閨に招いていただけないでしょうか?』

『冗談だろう? 無理を言うな』

『……申し訳ございません。つまらないことを申し上げました』

 

 粘って聞き出したにも関わらず言下に却下。

 ミラはそのまま後ろへ下がればいいものを、わざわざ背を向けてから一歩進み、それから振り返った。

 

 その時、ティアは見るともなしに見てしまった。

 背を向けたミラは顔を俯け、右手を顔の高さにまで持って行く。右手は数度左右に動き、下がったときは手の甲が何かの液体に濡れていた。

 ティアは反射的に手を挙げた。

 

『私の教育中にミラとも何度もしてた。それなのに閨に呼ばない理由は?』

 

 ミラを哀れに思ったのと、純粋に疑問だった。口にするには勇気が必要だったが。

 もしもソリュシャンが同席していたら余計な口を、と厳しい叱責があったかも知れない。

 

『だって今は冬だぞ。ミラを抱いて寝たら絶対寒い。暖かくなってからだな。暑くなったら離さないかも知れないが、ご褒美に欲しがるくらいなんだからいいだろ?』

『は、はい! もちろんでございます!』

 

 ミラが喜色満面になったのはいいが、犬なのに猫のように男に甘えていたルプスレギナは大きなため息を吐いた。

 

 その後、ティアとティナが書斎を後にして客室へ移動する道すがら、そっと耳打ちされた。

 

『感謝はしません』

 

 抑揚のない声で告げ、立ち去った。

 感謝をしないと言っても、有り難くは思っているようだった。

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

「それに美人。おっぱいおっきい」

 「もう一人も美人。向こうでも美人ばっかだった」

「女の良さがわかった?」

 「割と。そっちは男の良さがわかった?」

「かなり。ティナも昨日教えられてた?」

 「すごく教えられた」

「…………」

 「…………」

「ティナの顔って私そっくり」

 「そう言うティアこそ私の顔そっくり」

「実は……私の顔って結構イケてると思ってる」

 「奇遇。実は私もそう思ってた」

 

 男の良さを教えられたが元々女が好きなティア。

 男でもショタが好きだったが女の良さを教えられたティナ。

 二人は顔も体も、蒼の薔薇のメンバーでさえ区別が出来ないレベルの瓜二つ。

 相手の頬へ手を伸ばしたのはどちらが先か。

 

「……とりあえず汗を流そう」

 「体も埃だらけ。寝る前にベッドメイク頼もう」

 

(決戦は今夜)

 (情け無用。今度はこっちが攻める番)

 

 

 

 ひとまずの密談を終えた二人は風呂を使うことにした。

 驚くべき事に、客室に浴室が備えられている。貴族の屋敷であってもありえない。せいぜいがバスタブを運ばせて湯を注ぐ程度だ。

 浴室は広さが十分。湯が注がれっ放しになってるバスタブは二人が同時に入れる大きさ。掃除中以外、二十四時間いつでも入れる。

 注目点は白い石鹸と幾つもの綺麗な小瓶。

 若旦那様が趣味で作った副産物の入浴剤などである。品質は極上。帝国の皇帝が常用している物より上。ナザリックの大浴場に置いても良いと言えば質の高さが知れるだろう。但し、趣味で作ったものであるため生産量は極僅か。生産性が高くなって大量生産できれば巨万の富が築ける。

 

 これで髪を洗う。こっちは入浴剤。これは香油でバスタブに入れる。これも入浴剤で保湿ばっちり。仕上げにこれを使うとお肌つるつる。

 

 自分の手柄であるかのように、ティアが一つ一つ説明していく。

 お土産に持って帰っていいか聞いてみることにして、二人は衣服を脱いだ。

 

 訓練で受けた傷や肉体的疲労は回復魔法で消え去ったが、精神的疲労はそうでもない。汗を流したいのは本当。それ以外にも、寝室より密談がし易い。

 寝室では聞かせて良い会話と不味い会話で手話を使い分けていた。

 浴室なら監視の目が届かないのでは、との願望があった。無論、願望に身を委ねるほど呆けた二人ではない。所詮は気休めだ。

 

 実を言えば、監視も盗聴も為されていない。

 魔導国の公館でそのような非礼は行われないのだ。する場合はストレートに魔法を掛けて情報全てをぶっこ抜くのである。

 

 浴室へは先にティアが入り、続けてティナが入る。

 ティアがティナへ、バスタブに浸かる前にシャワーを浴びるよう注意しようとして、事件が発生した。

 

「それどうした!?」

 「ティアこそ何それ!?」

 

 二人は姉妹の裸身を見るなり、驚愕に目を見開いた。

 

 戦闘スタイルが同じなら食べ物の好みも生活習慣も同じ二人だ。違うのは性的嗜好くらい。

 そのために筋肉の付き方まで一緒で、顔だけでなくスタイルもそっくりな二人である。

 しかし、今。明らかに違う部分があった。

 

「下が……つるつる!」

 「乳首……ピンク!」

 

 ティアはティナの股間を、ティナはティアの胸を見て目を見張った。

 

 ティアの乳首は色素吸着剤によってキレイキレイされ、生まれたばかりの赤子のようなソフトピンクになっている。

 ティナの股間は、ティアと同じく髪より色濃い陰毛があった。装備の関係ではみ出る部分は剃っていた。それが全部ツルツルになっている。剃り跡はない。本当にツルツルである。

 

「乳首が茶色いとか言われて……、色素を抜かれた」

 「舐めるのに邪魔とか言われて脱毛された。毛根が閉じてもう生えないとか言ってた」

 

 アルベド様のふさふさした繁みを根こそぎ刈り取った脱毛薬である。

 ついでとばかりに、ティナは脇まで綺麗にされた。

 

「近くで見ていい? ダメって言われても見るけど」

 「だったら聞くな。……さすがに恥ずかしい」

 

 浴槽の縁に座ったのは良いと言うことなのか。

 ティアは、脚を開いたティナの前で屈んだ。

 

「すごい。ホントにツルツル」

 「触るな!」

 

 ティアが顔を上げると、同じ顔が怒った顔で見下ろしている。

 自分は怒ってないので構わず続けた。

 

「周りも綺麗になってる。……ここ、舐められた?」

 「……起きてる時間の三分の一は舐められてた」

「……私も結構舐めてきた」

 「しなくていい。交代。乳首見せて」

「わかった」

 

 その場ですっくと立ち上がる。

 ティナの顔の高さにティアの胸が来た。

 

「お触り禁止」

 「そっちは触ったくせに。でもすごい綺麗。立たせていい?」

「んぅっ……、聞く前にするな!」

 「立ってきた。赤くて綺麗。さくらんぼみたい」

「チェリーが好きなのはガガーラン」

 「……私が知ってるティアは死んだ。ここにいるティアはどっかの親父が変装してる」

「今のは口が滑っただけだから本当はもっとセンスあるから」

 「そう言うことに……、待って足開いて!」

「ふふん、気付いた? こっちも綺麗にしてもらった」

 「ずるい。羨ましい。嫉ましい。私もしてもらいたい。でも私は脇もツルツルだから」

「ホントに? ちょっと触らせて」

 「うひゃあっ!? バカッ!」

「うわっと」

 

 呑気な声を挙げて、二人ともバスタブの中に落っこちた。

 バシャンと水しぶきが上がり、二人仲良くぶはっと水面から顔を出す。

 もつれて落ちたため、抱き合った形になった。

 互いの顔が至近にある。長い金髪が頬に張り付いている。

 手櫛で髪を直してやった。

 

「…………」

 「…………」

 

 互いに知らないところはない姉妹。

 割とイケてると思ってる顔が湯に濡れて艶めかしい。

 どちらも女の良さを知っている。半月の教育で、タブーも何も知ったことではない。

 

「ここで盛ってる場合じゃない」

 「決戦にとっておかないと」

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 夕食は屋敷の主立った面々と共にした。

 二人は今や、不埒な侵入者から客人に格上げされている。王国のアダマンタイト冒険者がお忍びでご機嫌伺いに来た、と云う形になっている。

 

 食事の席でも二人は絶句した。

 今日までの食事は、ナザリック製レーションだった。美味しくて栄養たっぷりだがそればかりでは飽きると云うもの。

 お屋敷の夕食でそんなものが出るわけがない。王都で一等高級なレストランでも食べられない美味である。

 

 二人は言葉少なく食事を楽しみ、その他の面々は今日あったことを簡単に報告しあっている。

 食事に熱中しながらも何とか会話に耳を澄ませる二人だが、書類を作っていたとか訓練をしていたとか、具体的な内容に乏しく、大したことは話されなかった。

 本当ならもう一人いるはずだが、気分が優れないとかで席を外していた。ティアとティナは、彼女の泣き崩れている姿しか見ていないため、誰であるか知らないでいる。

 

「少し休んだら二人の部屋に行くよ。それともそっちが来るか?」

「来てもらうのは申し訳ない。こっちから行く」

 「いつ行ったらいいか具体的な時間を教えて欲しい」

「二時間後を目安にしてくれ。多分いるから」

「お待ちください。何の話ですか?」

「メンタルケア。ルプーがかなり扱いたから疲れをとる手伝いだよ」

 

 お嬢様は若旦那様を見て、神官を見て、ティアとティナへ視線を滑らせ、最後に若旦那様を見た。

 

「わかりました。その前にお時間をいただきたく存じますわ♡」

「……わかったよ。ルプー、その後で頼む」

「はーい。じゃ、私はその時に」

「待て。もう十分だろう!」

「冗談っすよ」

 

 三人の会話が何を意味しているのかわからない双子改め三つ子の姉妹忍者は、わけがわからない会話より食後のデザートに夢中だった。

 わけがわかってる金髪のメイドはちょっとだけ頬を膨らませた。最近は色々あってご無沙汰なのだ。

 

 

 

▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 

 

 

 そしてその時が来た。

 目指す部屋は昼間の内に案内されている。それでも一応と云うことなのか、ミラが二人を先導していた。

 表情を殺して勤めをこなすミラの胸中はわからない。夏までお預けのご褒美をぽっと出の二人が先んじることに思うことがあるかも知れない。

 

「こちらがご主人様の寝室となります」

「案内感謝。ミラは入らない?」

「私は招かれておりませんので」

 「私たち二人だけ?」

「ソリュシャン様とルプスレギナ様がどう為さるかは伺っておりません」

 

 聞いてはいないが察してはいるミラだ。

 ルプスレギナは、訓練頑張ったご褒美と言うことで書斎でねだっていた。

 ソリュシャンは、書類仕事を頑張ったご褒美と言うことで食後にちゅぱちゅぱしていた。

 その後のルプスレギナは精力回復のための回復魔法である。若旦那様の精力的に連戦でも問題ないだろうが念のためと言う奴だ。ポーションと違って、ルプスレギナに何度回復魔法を使わせても減らない。減るかも知れない物は寝たら回復する。

 どちらも満足して、乱入することはないと思われた。

 

「私はこれで失礼いたします。くれぐれもご主人様に失礼がないように」

 

 ミラが廊下の向こうに消えたのを確認してから、二人は扉を開いた。

 中は誰もいない広い部屋。部屋にはもう一つドアがある。

 もう一つのドアを開ける。

 部屋の半分を占める大きなベッド。

 窓際にテーブルとソファが二脚。

 一番に目に付くのは、ソファに座る艶やかな男。薄暗い部屋で光を放ち、グラスを傾けている。

 

「飲むかい?」

「遠慮しておく」

 「早速始めたい」

 

 昼間、訓練を終えたティアが精神的疲労を癒すのに望んだのは、

 

『教育を受けてる間はされるばかりだった。技には自信がある。こっちからもしてあげたい。恩返しのつもりで』

 『私も一緒にしたい。ティアと一緒なら倍以上好く出来る』

 

 男と二人と、三人きりになることだった。

 

 邪魔がいない場所で男の命を、とは考えもしていない。そんなことをしても全く意味がないからだ。

 仮に男を痛めつけて脅迫しようも、覗かれていたらその時点でアウト。したにせよ、脅迫して強要したいことは何もない。

 暗殺者として活動した過去があるティアとティナは、非常に現実的だった。

 

 

 

 そもそもとして、魔導国と王国は緊張状態にあっても敵対しているわけではない。

 王国と敵対関係にあるのは帝国であって、魔導国の魔導王が王国軍を蹂躙したのは帝国に手を貸したからだ。その一事をもって王国と魔導国が戦争状態にあるとは言えない。

 第一、二人は王国ではない。王国の冒険者だ。そして、王国の冒険者は国家の大事に関与しないとの決まりがある。

 お屋敷の若旦那様とて魔導国ではない。魔導国宰相閣下の相談役だ。

 個人を指して王国というなら国王。個人を指して魔導国と言うなら魔導王。

 この場の三者はそのいずれでもない。

 ここでの友誼を切っ掛けに両国の関係が改善する可能性はけしてゼロではないかも知れないが、それは自分たちの領分ではないとして、ティアとティナの二人はとうに匙を投げている。

 

 そして二人にそのような危険性がないことは、パンドラズ・アクターが魔法を掛けて確認した。忠誠云々ではなく、魔導国への叛意の有無である。結果、二人は自らの無力を自覚しており、魔導国への敵意など百害あって一利なしと理解していた。

 

 二人の目的は全く別のこと。

 

 

 

「ベッド大きい」

 「私たちとボスが暴れても十分」

「ボスって俺か?」

「ラキュースはリーダー」

 「で、こっちがボス」

 

 蒼の薔薇のリーダーであるラキュースを、リーダーとかボスとか呼んでいた二人だ。

 この度、あちらがリーダー。こちらがボスに統一された。

 リーダーが前に立って皆を引っ張るのに対し、ボスは偉そうにふんぞり返っている。言い得て妙な呼称である。

 

「ボスも準備万端?」

 「期待してた?」

 

 ティアがグラスを取り上げる。

 ティナは男が着るバスローブの前を開いた。華奢に見えのに、逞しい胸板が覗く。

 

「これお酒じゃない?」

「炭酸にレモンを搾ったものだよ」

 「後でまた飲ませてあげる。それよりこっち」

「早く来て」

 

 ティアが右腕を、ティナが左腕を引いて三人はベッドに上った。

 

 二人が着ているのは男と同じ。二人ともピンク色のバスローブ。

 焦らすことなく腰紐を解いて前を開き、放り投げたバスローブは男が座っていたソファに重なった。

 しなやかな裸身を晒しながら、二人とも髪をまとめる。戦闘時は激しい動きで邪魔にならないよう上に立たせる。今は口を使うのに邪魔にならなければいい。後頭部で緩く結んだ。

 どちらも同じピンク色のリボンである。

 

「それじゃあ……」

 「いっぱいしてあげる」

「私にしてくれたのと同じくらい好くしてあげるから」

 「昨日は私に、五回? 六回? 数えられなかったけど、その倍はいけそう?」

 

 お屋敷における急所。

 それすなわち、お屋敷の責任者である若旦那様である。

 二人は技の限りを尽くして、若旦那様を自分たちの体の虜にしてしまうつもりだった。

 

 ティアもティナも、男から調教を施されてアダマンタイト冒険者から只の女に堕とされた。

 しかしそれは、拘束されて一方的な陵辱を受けたからだ。

 同じ土俵に上がれば、そして以心伝心の姉妹と力を合わせれば、スゴく顔が良くてスゴいテクニックを持つ男であろうと必ずや打ち勝つことが出来るはずである。

 

 王国に戻ったら、二人が男へ会いに行くのではなく、男から会いに来させるのだ。

 

 

 

 二人は知らない。

 男の真の役目は魔導国宰相閣下の相談役ではなく、美の化身たる大淫魔のお食事であることを。

 さながら、ナメクジがファナティックドラゴンに挑むようなもの。勝負は最初から見えている。

 しかし、ナメクジがファナティックドラゴンに挑んではならないとの法はない。結果がどうであれ、挑むのは自由である。

 

「それは楽しみだ」

 

 男は朗らかに笑う。

 本当に楽しみなのだ。

 二人同時に、とは経験があるが、双子とは一度もない。さぞや息のあったプレイをしてくれることだろう。

 

「出したくなったらいつでも出して」

 「全部飲んであげる」

「好きな穴使っていいから」

 「それって後ろも?」

「後ろも。ボスに開発されちゃった」

 「……私にするときは慣らしてからにして」

 

 二人が男のバスローブを脱がせる。

 放り投げたバスローブは、二人のバスローブの上に重なった。

 

 二人の挑戦が始まった。




双子(本当は三つ子ですが)なのにこれがなければ嘘だと思います
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