男の膝上に陣取って、シズはひとまず満足した。
何を言うでもなく、男の腕が腹に回って後ろから抱き締められる。シズは背筋を伸ばし、背中を男の体に密着させた。肌と肌が触れ合うのは心地良い。はふうと声が漏れてしまったのは、温泉が気持ち良かったからだ。
何かを勘違いしたらしい男が含み笑いした気配を感じて振り返った。侮辱を与えた男は何もわかってない顔で微笑んでいる。
然るべき報いを与えてやるべきであったが、折角のお風呂を台無しにするのは勿体ない。露天風呂に入るのはシズも初めてなのだ。寛大な心で許してやることにした。
「聖王国での作戦は大成功を収めたそうですね」
「知ってた?」
シズが一番話したかったことだ。
自分の活躍を知っててもらえるのは嬉しいが、自分が話したかったことでもある。
「シズさんが聖王国で単独行動すると言うことだけは聞いていました。アインズ様は見事に魔皇を討ち取りましたので、シズさんは上手くやったのだろうと思った次第ですよ」
聖王国での前半戦。つまりはアインズ様が一度魔皇に破れるまでは、アインズ様とアインズ様役をしていたパンドラズ・アクターと密に情報共有していたのだ。シズの行動予定くらいは聞いていた。
「……難しい事もあった。でも頑張りました。……頑張った」
敬語になってしまったのを咄嗟に言い直す。またも含み笑い。
むっと頬を膨らませるが、頬を擦り合わされてぷしゅうと空気が抜ける。下腹で合わされてた手がほどけ、シズの右手を両手で包む。シズは何とはなしに、左手を重ねた。
「デミウルゴス様のご命令で誰とは言えないのですが、私の傍に元聖王国の民がおります。その者に代わってお礼申し上げます。聖王国を救っていただき、誠にありがとうございます。またナザリックの一員として申し上げます。シズさんはアインズ様の威光を知らしめる一助となった大役を見事に果たされました。これは大変な成果です。お疲れ様でした。これからもお忙しい日々が続くとは思われますが、今はゆっくりとおくつろぎください」
「…………うん。……ありがとう」
頬ずりされているのとは反対の方へ顔を向ける。
ほっぺたが少し熱くなってきたのは温泉が温かくてのぼせてきたからだ。
またも含み笑いの気配を感じたが、今度は反感を覚えなかった。
「………………ん?」
男の手がまたもほぐれた。手のひらを開いて下腹に当てられる。伝わる熱は湯より熱い。
ゆっくりと下へ滑ってシズの太股まで来た。内股へするりと落ちる。そして上に戻ってくる。
大きな手が内股をさすって脚の付け根にまで来ると、水着の境目をなぞり始めた。
(………………リファラとキャレットがいる)
そんな事をしたりされたりはシズの望むところであったが、リファラとキャレットがすぐそばで湯に浸かっている。
こんな事していたら気付かれてしまう。
(大丈夫ですよ。二人ともあんなに緩んだ顔をして風呂に夢中になっています)
リファラもキャレットも、ほにゃーと言い出しそうな顔でぷかぷか浮いている。こちらより下流と言うことは深いところなわけで、少しずつ遠くへ流されているようだ。
(二人の方を見てください。お湯の中は見えないでしょう? どんな事をしていても二人からは見えませんよ。シズさんが大きな声を出さない限りは問題ありません)
(…………でも)
(どうしてもお嫌なら仕方ありません。ですが、シズさんに悦んで欲しいんです。私も、ではありますけどね)
ちらと向こうの二人をみる。
リファラもキャレットも蕩けそうな顔で、何事かを話しているようだった。
シズが初めての露天風呂なら二人にとっても初めてなようで、今度は皆で、と聞こえてくる。
シズが迷っている間も男の指は蠢き続ける。
内股を押さえるようにして、脚の付け根を上下にさすっている。そんな事をされてしまうと体の力が抜けてくる。
「……あっ」
股間をほぐしていた指が離れた時、シズは思わず小さな声を上げた。
もっと続けて欲しかったのに、中断されてしまったのを惜しむ声だった。
(続けますよ?)
シズは小さく頷いた。
▽
背中を倒し、改めてシズを抱き寄せる。
後ろから抱き締めると包み込めてしまう小さな体は、劣情よりも庇護欲を誘う。
なのに食指をそそられるのは、アルベド様からお預けをもらったのが一つ。シズとは何度となくしているのが一つ。それ以外に幾つもあるが、わざわざ名前を挙げたくない。
「水着がだいぶ締め付けているようですね」
「そんな事はない」
「……そうですか」
そう言われてしまうと何も言えない。
シズが着ているのはナザリック製のサイズを自動調整する魔法の水着だろうから、着用者が不快に感じることはないのだろう。しかし、水着の上からシズの慎ましい膨らみに触れると、魅惑の曲線は前回より明らかになだらかであった。
手触りも、つるつるでふにふにの素肌に比べればざらついている。どこかにスリットが空いているようなこともなく、泳ぐための機能だけを追求した水泳用水着と察せられた。
水着の上から愛撫してシズを高めることは出来るが、触る楽しさはいまいちだ。
それでも手付きに淀みはない。小さな膨らみを下から包み乳房の形に沿ってさすり始める。
シズの肩越しに覗いても、湯の中の像は歪んでよく見えない。遠くの水音と、シズの吐息だけが聞こえている。
人差し指だけ伸ばして乳房を撫でた。水着に締め付けられていても、柔らかな乳肉で主張する部分があった。
「んっ!」
あまやかな愛撫だったのに不意打ちだった。水着越しでも、立ってしまった乳首を擦られるのは刺激が強い。
思わずあげてしまった声は、男を調子に乗らせてしまった。
胸をさすっていた手が肩にまで来る。指が水着のストラップの内側に差し込まれ、引っ掛けたまま右へ左へ。
ストラップが肩から外れても男の手は離れない。そのまま下へ引いていった。
湯の中とは言え、濃紺から肌色へ変わればはっきりとわかる。へそまで水着をずり下ろされた。
そして同じ所を触ってくる。水着はない。大きな手が間に何も挟まず、直に乳房に触れてきた。
(逃げちゃダメですよ。ほら、二人が何かと思ってこっちを見てる)
(だって、むね……。触ってる)
(小さくても可愛らしいおっぱいですよ)
(む、小さいは余計)
(それは失礼を)
水着の上から触るよりも、シズの肌へ直接触れる方がずっと良い。太股と同じように滑らかで肌に吸いつき、太股より柔らかく頼りない。
慎ましくても揉めるくらいにはある。さするしかないシャルティアやアウラとは違う。手のひら全体で柔らかな肉を感じている。
むにむにとちっぱいを揉んでいる内に、シズが帰ってきた。体を丸めて離れてしまった背中を、こちらの胸に預けてくる。
(さっきみたいに突然触ると驚かせてしまうようですから、あらかじめ言っておきます。摘まみますよ?)
どこを、と言われなくてもシズにはわかった。
さっき人差し指が滑っていった小さな突起。赤く色づいてピンと尖って、お湯の中でもそこだけはわかってしまう。
そこを触られる刺激はくすぐったくてもどかしくて、それなのに体の奥へピリッと来るのを知っている。甘い刺激は鋭くて、心構えを整えておかないと声が出てしまうかも知れない。
「くぅっ……!」
湯が波打つ。
きゅうと乳首を摘まんで引っ張り、乳頭を指先でこすってくる。
体の中に腕を突っ込まれて快感を引きずり出されているようで、魔法を掛けられて敏感にされてしまっているようで。
「っ……、っ……!」
声を抑えるには口を両手で塞がなければならなかった。
胸だけでこうなってしまっているのに、下を触られてしまったら。
シズとは回数が少ない反面、一回一回が濃密で長時間だった。それが成長速度を補っているのだろうか。胸への愛撫だけで体を跳ねさせるほどに感じている。
こうも悦ばれれば嬉しくなり、もっと乱れさせたくなるのは男の性。
シズの股を開かせて、触りやすいように膝を立てさせる。右手の中指でシズに触れ、ほんの少しだけ押し込んだ。沈んだのは水着の奥で開いているから。
(ふーむ……)
シズは感じないではないようだが、胸を触ったときと一緒で手触りが固い。どうやらお腹の部分と違って胸と股間は生地が厚くなっているようだ。
ゆらゆらと揺れる水着を見下ろせば、胸の部分の内側に裏地が付けられている。
水着の隙間から指を忍ばせようにも下着ほど伸縮性がないようで、いささかきつい。行為のための水着ではないのだ。
焦らしてやるのもそそられるが、じっとこちらを見つめる二人を忘れてはいけない。時間は有限である。
シズの胸を揉んでいる内に血が通ってきたのもある。ナーベラルの生乳を揉んでも勃たせなかったが、あれはそのつもりがなかったからだ。今はそのつもりでいるし、ちっぱいが嫌いではないのを否定出来ないのだから仕方ない。
へそまで下ろした水着を掴むと、シズが振り向いて睨んできた。
(少しでいいのでお尻を上げてください)
睨んでいたのは数秒。
シズが体を少しだけ持ち上げたのは、男に言われた事よりも尻で感じるものがあったから。
自分の体で興奮させた確たる証拠が自尊心を回復させる。女の魅力は胸の大きさだけではない。
上げた尻から水着が抜かれる。
脱がし易いようにシズは足を揃えて膝を曲げ、脱がした水着はゆらゆらと流れてメイドたちの所へ。
シズは男の腹に尻を押しつけてから太股の上に座り直す。開いていた股を閉じて、ぎゅっと太股を合わせた。尻の割れ目に感じていたものが、太股と太股の間から顔を覗かせた。
(おちんこが立ってる)
(……シズさんの体が魅力的なんですよ)
太股で感じる逸物は湯より熱い。反り返っているから割れ目に竿が押しつけられる。
扱い方を心得ているシズだ。基本は一回目の時に教えられ、二回目に監禁した際に色々なことを実践した。
弾力ある亀頭を指で包んで柔らかく揉みながら、裏筋をさわさわと撫でる。時々尿道口を撫でてやると湯の中にぬめり気を感じた。
されるばかりの男ではない。
可愛い乳房への愛撫を続け、シズの細い肩や首筋へ口付けを送る。ちゅうと吸ってやると甘い声を上げ、リファラとキャレットの口をぽかんと開けさせた。
華奢なシズとこうしているのはデザートを食べている気分にさせられる。
風呂に入っているので匂いが流れてしまうのが残念だが、シズの爽やかに甘い体臭も気に入っている。それを言うならソリュシャンの味も匂いも甘いが、あれはこちらが食べられる方だ。
デザートとは言え、いっぱい食べればお腹に溜まるのが道理。今日はそこまで食べさせられないよう注意しなければならない。
シズは亀頭を揉むだけでなく、湯が波打たない程度に体を上下させている。
太股で挟んだ逸物が扱かれているが、素股をするなら体の向きが逆だ。快感を与えるのではなく得るための動き。自身の割れ目に逸物を擦り付けている。
閉じていた割れ目は開き始めて、内側の媚肉が逸物に触れていた。
「シズさん、そろそろどうですか?」
「入れて欲しいのはそっち。私はこのままで結構きもちい」
「入れたいです」
「それなら入れてあげる」
小声ではあるのだが、二人の会話は手の届く距離にまで近付いた二人にも聞こえている。会話の意味がわからない二人ではない。まさかと思いながら真剣な顔で凝視する。
シズはこちらを見つめる二人へちらと視線を送る。見られているのは気付いていた。オートマトンであるからか、羞恥心が薄いシズだ。しているのを見られるのは恥ずかしくないではないが、快感への期待が勝る。
二人より先に出来る優越感もある。この男と一緒にお風呂なのだから、二人だって期待しているのに決まっているのだ。
シズの肩が湯面から出る。細い肩が露わになって、水着のストラップはどこにもない。リファラの手で畳まれたのだからあるわけがない。自分が裸でいることを隠そうとしていない。
「んんっ……、やっぱり、おっきぃ……。でも、ぜんぶ……。んっふぅ……♡」
華奢で体も小さいが、男の逸物で膣内を成形したシズだ。
腰を下ろしきって、自身を形作ったものを一番奥まで迎え入れる。
奥に触れるの感じてから、ゆるゆると上下に動き始めた。
「リファラ、キャレット」
む、とシズが眉間に皺を寄せる。自分とこうなっているのに他の女を呼ぶのはどういう了見か。
何かしらの反撃をしてやろうと思ったら、リファラとキャレットが勢いよく立ち上がった。
「あら?」
声が美しいのは美しい形から発せられるから。
振り向く事は出来ない。しかし、声だけでわかる。
彼方の天上で鳴る鐘の如き美しい響きは、アルベド様のお声であった。
▼
アルベドがスパリゾートナザリックを利用するのは初めてではない。
自室の風呂より広くて開放感があり、気分転換に入る事があった。その際、女湯は使わない。女湯に設置されているゴーレムに襲われたのはアルベドなのだ。
アインズ様とのニアミスも期待していた。偶然お風呂をご一緒してしまったらこれはもう何が起こっても不可抗力で仕方ない。結局そんな事は一度も起こらず、期待していたのは過去のこと。
尚、アインズ様はアルベドの考えを読み切り、絶対に混浴露天風呂に近付かないのは余談である。
「あなた達がいるなんて珍しいのね。アインズ様がお許しになっているのだから畏まる必要はないわ。お風呂なんだし立ち上がったりしないで入っていなさい。冷えるわよ」
アルベドは風呂に入るに相応しい格好。長い黒髪をアップにしてタオルで包み、手には風呂桶。当然、服は着ていない。
水着着用の二人を疑問に思わないではなかったが、それよりも気にすべき事がある。
「立ち上がらなくていいと言ったけれど、顔も見せないのはどうなのかしら?」
銀髪の後頭部が見えている。
声に苛立ちが乗った。
あそこがあれになって立ち上がれず、振り向こうにも上にシズが乗っている。
(シズさんどいてくださいアルベド様がいらっしゃいました!)
(後で埋め合わせ)
(!?)
秒を争っているのにこのちびっこは一体何を言っているのか。しかし、問答する時間はない。全面降伏が唯一の選択肢。
(わかりました後で幾らでも!)
(ん、約束)
男の陰から現れる小柄な姿。赤金の髪をアルベド同様にまとめている。
「私も一緒に入っていました」
二人とは違って、シズは水着を着ていない。
近くで見ても気付かなかったのは男に抱えられていたからのようだ。
シズを抱えていた男は立ち上がる事なく、風呂の中で体の向きを変えた。
「お先に風呂をいただいております。私どもも入ったばかりですのでご一緒させていただけないでしょうか?」
「構わないわ」
アインズ様に呼び出されていたので、今日はもう会えないと思っていた。
三人の前で色々するのは難しいかも知れないが、先程たっぷりと精気を吸ったので一先ず満足している。偶には互いの立場を忘れ、皆で一緒に風呂を楽しむのも良いだろう。
そう思って先ずは掛け湯をしようとしたところ、二つの風呂桶が目に入った。
「どうしてポーションを持ち込んでいるのかしら?」
男とシズは首を傾げる。リファラとキャレットは顔色を変えた。
アルベドは疑問を口にしたものの答えは求めてないようで、両膝をついて体を屈め手桶に汲んだ湯を体に掛ける。掛け湯もせずに風呂に飛び込んではいけないと学ばされたのだ。
一旦風呂の縁に腰を下ろしてから、脚を伸ばして湯の中に入る。男の目線が自分の下半身に釘付けになっているのを確認して、アルベドは婉然と微笑んだ。
わざと股を開いた。男の位置からは、アルベドの股間がよく見えた。内側も、小さな穴も見えてしまった。
その様子をシズが見ている。男の隣で肩まで浸かったアルベドへ問い掛けた。
「アルベド様の相談役殿でもアルベド様がお体を見せるのは良くないのではないですか?」
豊かな胸も尻も隠す事なく見せている。
脱衣場で見えてしまったリファラとキャレットの股間には髪と同色の陰毛が生えていた。アルベドは意外な事にシズと同じ無毛。代わりに股間から下腹へかけて神秘的な紋様がある。手には桶とタオルを持っていたのに股間も隠してない。
湯に浸かる時はわざわざ股を開いた。角度的に、男の位置からは間違いなく性器が見えたはず。
守護者統括として、アインズ様の正妃に立候補してる身の上として、奔放過ぎる振る舞いではないだろうか。
アルベドは思ってもみない事を聞かされたかのようにパチパチと二度瞬きした。
「シズは私の種族を知っているでしょう?」
「はい。サキュバスです」
「それならこの子の役職は?」
「アルベド様の相談役です」
「他には?」
「え……」
シズが言葉に詰まり、アルベドは空気になろうと努めていた二人のメイドに目を向ける。二人は目配せをして、キャレットが答えた。
「アルベド様の給仕係と伺っております」
「それならサキュバスの食事は?」
「え……、失礼いたしました! ですが、それは…………」
キャレットもリファラも、そしてシズも。サキュバスの食事を知らないではないようだ。
アルベドは男の背後に移動して、後ろから抱きついた。
「そう言う事よ。この子の役職はアインズ様も承認済み。アインズ様もご存知でいらっしゃるわ」
御前で実演したこともあるし、と続いた言葉を三人は衝撃と共に受け取った。さすがのアインズ様は高レベルが過ぎた。
事の実態を知って認めているのは事実であるが、御前で実演は誤解である。あれは非接触の吸精だった。
「私からも聞きたいことがあるわ」
以前聞かされた話を思い出した。
さっきのシズは、後ろから男に抱えられていた。シズは背が低いので沈まないよう男の膝上に乗っていたのかと思ったが、アルベドのサキュバス的第六感が気配を感じた。
傍証はここにも。男の背中にしなだれかかっているアルベドは、湯の中で男の股間をまさぐっている。目当てのものは触る前から屹立していた。ぬるめの湯より熱い逸物は、握っているだけで体に熱が移ってくる。
「さっきのシズはこの子とセックスしていたの?」
「?!」
シズは男の股に座っていた。おそらくは、その時から勃起している。
入っていたのに違いなかった。
「隠さなくてもいいのよ? 責めているわけでもないし。シズがこの子とセックスした事があるのは知っているもの」
「!!」
アルベド様に話したのかと、シズが男へ向ける視線は鋭い。
リファラとキャレットがシズを見る目は驚愕そのもの。なんだか怪しい雰囲気ではあったが、本当に入っているかどうかは半信半疑だった。アルベド様が嘘を言うとは思わないが、小柄なシズにあれが入ってしまうとは想像しがたい。
強ばるシズへ、アルベドはふと相好を崩した。
「私も女ですもの。気持ちはわかるわ。我慢しなくていいのよ? ナザリックにはそういう対象になる男が少ないし」
「それは……、いいのですか?」
「ええ、もちろんよ。ついでに聞きたいのだけど、そこにあるポーションは何に使うつもり?」
「もしかすると」
「あなたは何か知ってるの?」
「持ち込んだのがリファラとキャレットなら察するものがあります」
アルベドは視線でシズに問う。シズは頭を左右に振った。
とすれば、必然的に残る二人になる。
「破瓜の傷を癒すためでしょう」
「破瓜ぁ?」
シズには意味がわからない。けどもアルベドと、当の二人は知っている。
アルベドが知っているのは当然として、二人が知っているのは異本に書かれていた記述だからである。
二人はあわあわと手を振るが、逃げ場はどこにもない。
「私のは大きいようで、経験がないと痛みが強いようなのです」
二人ともレベルで言えばたったの1。1レベルが比べるのもおこがましいが、カルネ村のエンリ大将軍より低レベルである。戦闘に関するクラスを持っているわけがなく、痛みに耐性がない。
「破瓜の際にポーションを使ったことが何度かありますので、そうではないかと推測しました」
シクススとシェーダ。どちらもナザリックのメイドである。
「そうなの?」
「…………はい、相談役殿の推測された通りです」
「裂けてしまうと聞きましたので、そのために持ち込みました」
「裂けるようなことをするつもりだったのね」
「「………………」」
「シズにも言ったけど責めるつもりはないわ。我慢する必要はないのよ? 折角用意したんだからちゃんと使わないといけないわね」
そんな事を言われても、アルベド様の御前で頷けよう筈がない。
「そんな顔しなくていいわ。無理強いするつもりはないのだから。でも、こんな機会はもうないとは思うけれど」
リファラとキャレットは、今を逃せばもう二度と経験をする機会がなくなるのだと思った。
ところがアルベドの真意は、今は偶然一緒にお風呂に入っているから初体験を手伝うことが出来る、である。
追い詰められている二人のメイドにそこまで察するのは無理だった。
「それなら……お願いします」
「キャレット!? …………あの、私も……、お願いします」
アルベドはにっこりと笑みを浮かべて、深く頷いた。
「それなら私は途中でした。私もいいでしょうか?」
「もちろんよ。あなたもそれくらい大丈夫でしょう?」
「はい」
「それなら順番はシズからかしら? ここで見させてもらうわ」
話を聞いたときから、シズの小さな体に男のあれがきちんと入るのか、機会があったら見てみたいと思っていた。
「それならマットを敷こうと思います」
「こんな事もあろうかと色々用意しておりました」
リファラとキャレットが湯から上がり、足早に脱衣場へ向かう。
手伝おうかと立ち上がった男は、後ろからアルベドに抱き留められた。
「っ!」
アルベドの両手が逸物を扱く。
シズに挿入したものの出してはいないので、激しくはないあまやかな刺激が辛くもあった。
男の股間をシズがじっと見つめている。立ち上がらずに湯の中を進んで男の前に。
アルベドが気を利かせて、反り返っている逸物をシズの方へ向けてやる。シズは男の顔を見上げながら、先端をぺろと舐めた。
二人から焦らされている男は、濡れた体で冷たい風に吹かれているのに全く寒くないのを意外に感じていた。それどころか涼しくて気持ちいいくらいである。長時間入っていたわけでもなし、そもそもぬるい湯だ。お湯に特殊な効果があるのだろうと考えた。
それも当然のこと、スパリゾートナザリックの温泉は、人工温泉もとい神造温泉である。簡単に湯冷めしない。なんならコキュートスの守護階層に全裸で突入しても大丈夫。ただし湯中りは別なので、そこは注意しないといけない。
シズと話す内に、アルベドへサキュバス的天啓が降りていた。
愛しい男が己を深く愛し、深い忠誠を捧げているのは疑いようがない事実。
では、愛と忠誠の源泉はどこにあるのか?
己が罪深いほど美しいと知っているアルベドだ。比類する者はどこにもない。
しかし、追いすがる者はいる。この場にいるシズは自分とはタイプが大分違うが美しい少女であるし、マットを取りに行った二人のメイドも肉惑的な美女だ。ナザリックには美しい女が幾人もいる。彼を捕らえていたあの女も、認めざるを得ない美貌を持っている。
美しいから愛され忠誠を得ているわけではない。外見だけしか見れない愚者は御免だ。
ならば知性か。
ナザリックにて知を誇るデミウルゴスとパンドラズ・アクターは、この男と相性が良い。アルベドとて見通せぬ端倪すべからざる深き叡智をお持ちであるアインズ様も、度々時間を作ってこの男との会話を楽しんでおられる。今となっては忌々しいが、あの女の知性は己に匹敵しうる。
知性は必要であっても絶対ではない。
豊かな生活は大いに関係があるだろう。
狭い石の部屋に囚われ、空さえ見えない生活だったと聞く。しかし、これも絶対とは言えない。豊かな生活は己でなくても与えられるからだ。現に帝国の皇帝はこの男を厚遇して引き込もうとしている節がある。
唯一とも言える源泉は、火傷を癒したから。
ゆえにこの男は自分へ忠誠を捧げた。
しかしそれは、ラナーがこの男を焼いたからこそ出来たこと。それではまるでラナーに恵まれたようではないか。
そこをラナーに突かれたら答えに窮する予感があった。
子供まで産んだのだ。裏切られることは絶対にない、させない。
だけども自分を納得させたい。自分が愛されているのはラナーの施しではなく、偶然でもなく、必然だと確信したい。
自分から自発的に仕掛けたことで男が離れないようにしなければならない。
そのためにシズたちへ許した。
自分が与える快楽は極上であるとの認識があっても、持っていないものもある。どう頑張っても自分はシズのような慎ましい体にはなれない。
そこを補うために、他の女たちの体も使って男の心身を捕らえるのだ。
まさにサキュバス的発想である。
実に珍しいことに、アルベドの言葉を男は誤解することなく受け取った。
アルベド様からの公認セックスである。一番がアルベド様であるのは当然として、他の女達に食指が動くのは事実。今までは黙認されていたが、言葉に出して公認されたのだ。
サキュバスが「女だから気持ちはわかる。我慢しなくていい」と言えばセックスの事に決まっている。
しかし、サキュバスではない女たちはそのように受け取るか否か。
「持ってきました」
「お湯に浮かないマットですので、ここに敷いてよろしいでしょうか?」
リファラが風呂の隣に丸めたマットを広げ、キャレットがその上に大きなバスタオルを敷く。
「行ってらっしゃい」
アルベドが男を離す。
男は全身から水滴をしたたらせながらマットに上がった。
シズはアルベドへ一礼してから男に続く。心中には寛大なアルベドへの感謝がある。しかしそこには、僅かな敵愾心があった。
大海に一匙だけ垂らしたような、ゼロに等しい僅かなもの。だけれどもゼロではない。
我慢しなくていい、と言われた女はどう受け止めるか。
シズだけでなく、リファラとキャレットも同じ。
それは、好きになっていい、と言うことだった。
文字数が嵩む割に話が進まないのは今更なのでまあいっかの精神でお願いします
あと10話。出来れば5話以内にエントマを出したいです
エントマ登場予告は54話(二年前!)で100話以上前と言うのが目眩を感じる