※この作品はR-18です。

アルベドのお食事   作:dolph

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色々詰めて約18k字
分割したほうが良かったかもです


女たちの逆襲 ▽イビルアイ♯2

 エ・ランテルの大きなお屋敷のエントランスに二頭の馬が牽く豪奢な馬車が停まっています。本来は六頭立ての馬車ですが、市中を廻るのに六頭では過剰なのです。

 若旦那様が先に馬車へ乗り込み、ステップに足を掛けたイビルアイへ手を伸ばすところを、お屋敷の二階の窓から見下ろしている女たちがいました。

 

「おにーさんに接待されちゃっていい気なもんすねー」

「お兄様のお優しさに付け込む品のない女よ」

「エンちゃんはよく平気っすね?」

「んー?」

「エントマ、あなた何食べてるのよ!」

「おにぃちゃんがくれたのぉ。これ食べて頑張りなさいって」

「朝早くから回復頼むってなんのことかと思ったらこれっすかぁ……」

「自分でスパってやっててすごかったよぉ!」

「ここにもお兄様のお優しさに付け込む女が……」

「そんなんじゃないもん! それより二人共暇なら手伝ってよぉ」

 

 お食事部屋のコックローチを全て駆除したエントマですが、続きが待っていました。お食事部屋の隅から隅まで綺麗にしなければならないのです。床はもちろん、壁も天井も、ソファやテーブルなどの調度品も、全てを入念に拭き掃除しなければなりません。コックローチが這ったお部屋なのですから当然です。アルベド様からの厳命です。

 床や調度品だけならまだしも、壁に天井もとなると難易度も労力もかなりのものを必要とします。

 

「残念だけどそんな時間はないわ」

「えぇえええ! 手伝ってよぉ! 一人じゃむりぃ!」

「こっちはこっちで仕事があるんすよ。おにーさんが一時間仕事すると二人掛かりで半日掛かるんすから」

 

 帝国で収集した一次資料の整理が待っているのです。

 ソリュシャンとルプスレギナが書類を広げるのを見て、エントマは肩を落としながらお食事部屋のお掃除に向かいました。

 

「どうかなさいましたか?」

「いや、何でもない」

 

 イビルアイはお屋敷の二階の窓を一瞥してから、若旦那様の手を取って馬車に乗り込みました。

 

 

 

 イビルアイを魔導国に取り込むのが大方針です。そのためには魔導国の良い面を知ってもらうのが一番なのです。

 この日は馬車を流しながらエ・ランテルの案内をして市民の活力を実際に見てもらいます。尤も、蒼の薔薇一行はしばらく前からエ・ランテルに滞在しているそうなので不要だったかも知れません。

 一応の目的地として冒険者ギルドがありました。不在のモモン様について教えてもらうのです。蒼の薔薇一行には守秘を盾に何も語りませんでしたが、お屋敷の若旦那様へ同じ対応は出来ません。若旦那様へ熱い視線を送る受付嬢を後にして奥へ通され、ギルド長と面会することが出来ました。

 ギルド長は、モモン様はアインズ様のご要望でトブの大森林へ行っているらしい、としか知らないようでした。それ以上のことはお城の方へ問い合わせて欲しいとのこと。

 

 モモン様の目的地がわかったので早速追いかけよう、とはさすがのイビルアイでもなりません。

 トブの大森林は滅茶苦茶広いのです。しかも名のごとく「大森林」ですから、鬱蒼とした木々に視界が遮られとても見通しが悪いのです。トブの大森林の何処かにいる誰かを探すなんて、王国全土を捜索するより大変です。

 

 お城の然るべき方にお会いしたいとの要請書を作って一日が終わりました。

 

 

 

「昨夜は来なかったな」

 

 翌日、開口一番に飛び出した皮肉に一番ビックリしたのは、皮肉を飛ばしたイビルアイ自身でした。それでは来てくれなかった事に恨み言を言っているようではありませんか。

 昨夜の若旦那様はイビルアイの元を訪れず、ミラだけを向かわせたのです。吸血鬼同士でしか話せない事もあるのではと気を利かせたのです。が、イビルアイもミラも口が上手い方ではありません。夜が更けてから夜が明けるまで、静寂の支配する時間が八割でした。逆を言えば、二割はそこそこ実のある話が出来たのです。若旦那様の話ばかりでしたが。

 

「それでは今夜も先日のようにイビルアイ様の慰撫をさせていただきます」

「して欲しかったわけではなくて……」

 

 モゴモゴと言葉を濁すイビルアイは拒否まではしないようです。若旦那様はイビルアイの様子に気にせず話を続けます。

 

「今朝早く返書がありました。アインズ様の居城を訪問できるのは明日以降となります。本日は屋敷でお過ごしください。ご希望があれば伺います」

「……特にない」

 

 イビルアイは「この男が吸血鬼をどう思っているのか聞いてみたい」と思いましたが、夜に時間を作ってくれるのならその時で良いと判断しました。

 

「それでは私から一つお願いがございます」

「なんだ?」

 

 柔らかな雰囲気の若旦那様が瞬時にピシッとなりました。何を言われるのもか、イビルアイは警戒しつつも鷹揚に言葉を待ちます。

 

「イビルアイ様のお召し物についてです」

「………………は?」

「赤い外套の下に着ている服はとてもお似合いでした。ですが、それは戦闘服ではございませんか? お言葉ですが、屋敷の中で相応しい装いとは思えません。正体を隠したいお気持ちはわかります。それでも、せめてこの部屋にいる間は着替えていただけないでしょうか?」

「うっ……」

 

 至極尤もな意見でした。真っ赤な外套を脱げば可愛い衣装ですが、可愛くてもところどころに金属部がある武張った戦闘服です。華やかでいながらぎりぎり華美にならない上品なお部屋には相応しくありません。

 

「この部屋には私の許可なく誰も立ち入らないよう命令してあります。昨日の外出中にそこのクローゼットに衣服を用意させておきました。ご自由にお召しください。ミラはイビルアイ様のお手伝いを」

「かしこまりました」

 

 若旦那様は、正直に言うとミラに手伝わせるのはちょっと不安があったりします。こういう事はジュネの方が得意と思うのですが、いないのですから仕方ありません。

 イビルアイに反論の機会を与えず、若旦那様は行ってしまいました。

 

(これが服!? 透けてるだろう!)

(インナーですから)

(同じことだ! それもダメだ! 丈が短すぎる!)

(それならこちらは?)

(派手過ぎる。もっと落ち着いた色彩がいい)

(黒がお好きですね。反対に白は如何ですか?)

(だから透けるだろう!)

(これなら透けません)

(ぶっ! これは服じゃない。紐と言うんだ!!)

 

 ドアの向こうから言い争いを聞いたような気がする若旦那様ですが気にしないことにしました。ソリュシャンとルプスレギナのお仕事をチェックして、新たなお仕事を振らなければならないのです。

 

 

 

 夜半、若旦那様がミラを伴ってイビルアイの部屋を訪問します。お部屋の中はあちこちに色とりどりの衣服が散らかっていました。奮闘の跡が窺えます。明日の日中は外出予定ですので、メイドたちに片付けを命じなければなりません。

 ベッドに突っ伏していましたイビルアイはうっそりと起き上がって先日と同じソファに座ります。

 

「とてもよくお似合いです」

「世辞はいい」

 

 お着替えしたイビルアイは真っ白でした。

 肩から吊るすキャミソールワンピースです。シンプルな衣装は素材が全てです。首から下は無垢で清純なお嬢様に見えました。

 仮面を外して整った顔立ちは隠していないものの、確かな実力が裏打ちする自信が表に出ています。言い方を変えると、やや勝ち気なようにも見えてしまいます。

 どことなく疲れているように見えるのは、慣れない服を着ているからでしょうか。

 若旦那様の後ろで、ミラが密かに拳を作って軽く振りました。渋るイビルアイを着換えさせた事だけは評価しても良いでしょう。

 

 先日と同じように茶器とグラスを用意して血を垂らします。

 切った指をミラに舐めさせ、イビルアイへグラスを差し出します。

 

 グラスを手にしたイビルアイは、すぐには口をつけません。

 若旦那様はソファに座るイビルアイの後ろに回り、失礼しますと断ってから肩揉みを始めました。イビルアイが着ているのはキャミソールワンピースなので、肩には細い肩紐が掛かっているだけで細い首筋も肩もむき出しです。

 素肌に触れられ、んぅと艶めかしい声を上げたイビルアイは、小さく首を振って口を開きました。

 

「お前は吸血鬼に血を振る舞う事をどう思ってるんだ?」

「健康に害が出たり吸血鬼に転化させられるのは困りますが、そうでないのならお喜びいただけて幸いと思っております」

 

 吸血鬼からの吸血による吸血鬼への転化の条件を事細かに調べた若旦那様ですので、たとえ牙を突き立てられても吸われる前に抜けば大丈夫とわかっています。いっそ吸血箇所を切断するのもありでしょう。

 首の場合は色々と覚悟が必要になるでしょうが、敵意ある吸血鬼に首を晒すほど呑気な若旦那様ではありません。

 

「吸血鬼が恐ろしくないのか?」

 

 イビルアイ的には覚悟を要する質問でしたが、この類の問いかけは些か辟易としている若旦那様です。

 

「イビルアイ様が仰るのは、吸血鬼に危険を感じないのかという事でしょうか? 少し例え話をさせていただきます。恥ずかしながら、私は一度眠ってしまうと中々起きられません。一定時間眠らないと、外部の刺激では簡単に目が覚めないようなのです」

 

 ソリュシャンに寝フェラされるかシクススにビンタされるかしないと起きない男です。

 

「もしも眠っている間にメイドたちから包丁を突き立てられたら死んでしまいます。ですが、彼女たちはそんな事を出来てもしません。社会性があるからです。それと全く同じことですよ」

「……そうか」

 

 イビルアイは、言外に「あなたを信頼している」と言われたように感じました。

 冷めてきたグラスに舌をつけます。

 口福に酔いしれながら、心地よい肩揉みに身を委ねました。

 

 

 

 

 

 

「前回のマッサージがお気に召したご様子ですので、今回も同じようにさせていただきます。こちらの椅子にお座りください」

 

 イビルアイがマッサージを希望していると聞いて、ミラに運ばせた椅子である。

 幅が広くて背もたれが高く、座面の下に脚を乗せる部分が伸びている。肘掛けはない。ベッドを椅子の形に折り曲げたような形状である。

 

「倒しますよ」

 

 イビルアイが椅子に座ってから背もたれを後ろへ倒す。同時に足置きが上がっていく。簡易なベッドになるリクライニングチェアベッドなのだ。

 

「それでは失礼します」

「待て! どうして椅子に上る? 足からするんじゃないのか?」

 

 イビルアイの想定では、一昨日のように足から揉まれていくのだと思った。キャミソールワンピースは膝まである上にゆったりとしているので、脚を上げたり開いたりしてもスカート部分の生地が股間を隠してくれるはずである。

 しかし、男は椅子に上がってきた。イビルアイの細い腰を跨いで椅子の座面に両膝をついた。

 

「そちらも施術しますが、まずはお顔から取り掛かります。普段のイビルアイ様は仮面をつけておりますので、表情をあまり意識しないのではありませんか?」

「うっ……」

 

 図星である。顔を隠してこっそりせせら笑う、などと性根の悪いことはしないが、意識して表情を作ることはない。使わない能力はなんであれ衰えるものである。一言で言って表情筋が死んでいた。

 

「私から見られたくないと仰るなら前回のように目隠しをいたしましょう」

「そうは言っても、だな……」

 

 二半世紀を生きてもイビルアイは女の子。見た目だけで心を動かされるほど初心ではないが、間近に男の美顔が迫るのはなんとも面映い。

 

「ミラに見られるのがよろしくないのでしょうか?」

「そうではなくて……」

 

 お前の顔が恥ずかしい、と言ってしまったら誤解を招くのをイビルアイはわかっている。しかし他に言いようがない。綺麗な顔が近くに来て恥ずかしい、とは口が裂けても言えない。

 

「お顔に触れられるのがお嫌というわけではありませんね?」

「それは違う」

 

 女の顔は大切なものだが、それと同じくらい大切な所の近くを触れられている。もしかしたら唇が触れたかも知れない。それに比べたら堪えられないでもないことである。

 

「わかりました。イビルアイ様にも目隠しをしていただきましょう。見ているから気になるのです。見なければ問題ありません。寝台に横たわってマッサージを行う場合、被術者が明かりに目を眩まさないよう目隠しをすることは間々あることです。ミラ、ソファに置いた俺のジャケットのポケットに白いリボンが入ってるから、それでイビルアイ様の目を覆ってくれ」

「かしこまりました」

 

 イビルアイが口を挟む間もなく話が進んでいく。

 見ているから恥ずかしいのは確かだ。見ていないとおかしな事をされるかも知れないとは思うが、前回の様子から大丈夫と信じたい。男の方は既に白いハンカチで目隠しをしている。

 イビルアイがうーとかあーとか言ってる間に、白いリボンを手にしたミラが近付いてくる。

 

「失礼いたします」

 

 白いレースのリボンだ。目を開ければ、多分透けて見える。

 閉じた目の上に優しく巻きつけられる。男が着ていたジャケットの内ポケットに入っていたからか、男の体臭が薄く鼻孔をくすぐる。

 体の力が抜けたのは、不快な匂いではないと思ったからか、視界を閉じてマッサージを受けるためにリラックスしてきたのか。

 

「それでは始めさせていただきます」

 

 

 

 

 

 

 イビルアイの目に巻きつけたのはアルベド様から下賜されたエンゲージリボンである。女の自由を奪い、開放されるには男の精液が必要となる。とは言え、イビルアイの何処かへ何かを突っ込む予定はない。

 エンゲージリボンの効果として、体の力が抜けるのだ。前回のマッサージでは警戒されていたらしく、体が強張っていた。マッサージをするなら心身の力が抜けたほうが良いに決まっている。そのためのエンゲージリボンである。

 

 女心検定の八級にすら落第する男では、緊張と警戒と照れ隠しの区別が出来なかった。女心は未だにさっぱりでも、要望をはっきりと伝えれば誠意をもって応えるところをそれなりに評価されているのは余談である。

 

「失礼いたします」

「ん…………」

 

 吸血鬼の白い頬を男の手が包み込む。

 イビルアイには久しい人肌だ。蒼の薔薇の仲間たちに仮面の下を見せることはあっても、触れさせることはない。手を取り合うことくらいはあっても、素肌を晒さないためにいつもは二の腕まであるロンググローブを着けている。

 手のひらから伝わる温かさが気持ち良い。たったこれだけで癒やしの効果があるのではと思わされる。

 

「医療処置を手当てと呼ぶことがあります。このように手を当てるわけですね」

 

 心を読んだような事を言う。イビルアイの冷たい頬にじんわりと熱が移ってくる。

 

「これからお顔のマッサージを始めます。唇に触れるかも知れませんのでご了承ください」

「わかった」

 

 頬を包むだけだった手が動き出した。

 目の周りを軽く圧したり眉間を摘んで上下に動かしたりはいいが、頬に手を当ててゆっくり回したり圧されたりすると変顔になってしまっているのではないかと気になるが、向こうも目隠しをしているはずなのでイビルアイは気にしないことにした。ミラはこの前と同じように近くに立っているのだろうが、昨夜一晩話したことで真面目な女だとわかっている。まさか笑ったりしないだろう。

 男の指が何度か唇に触れる。

 最初の数度は頬を撫でる拍子に触れてしまったのだろうが、唇の端をほぐされている時はずっと触れている。どうやら中指が唇の端を圧しているようで、二本の人差し指が下唇に触れたままでいる。

 左の人差し指は、さっき血を流した指だ。微かな血臭が残っている。イビルアイの赤い唇を割って、小さな舌がちろと伸びた。

 

「あっ! いや、今のはその……」

「もう一度お召し上がりください」

「そういうつもりでは……。んうっ!」

 

 男の指が口の中に入ってきた。

 舌が小さな切り傷を見つける。舐めても血の味はない。歯を立てるのは憚られる。強く吸うと少しだけ滲んできた。

 ちゅうちゅう吸っても一滴あるかないかの微かな量。それでもグラスからではなく、男の肌からの直飲みだ。男の指を舐めてしゃぶる実感も合わさって何かが高ぶってくる。

 

「そろそろ続けてよろしいでしょうか?」

「んんっ!? …………ちゅぷ……。たのむ…………」

 

 無心で指をしゃぶっていた。

 ちゅぷんと音を立てて引き抜かれた指は、イビルアイの唾液に濡れ光っている。

 

「肩周りをほぐしてからご要望通りに脚の付け根を施術します。そこから徐々に上へ移る予定です」

 

 触れるか触れないかの絶妙な加減で顎から首を撫でる。鎖骨をなぞり、肩を押さえた。

 二の腕を掴んで上へ下へ。右にも左にも。肩を回して肘も曲げる。最後は脇と肩の付け根をぐっと圧す。

 

「痛みますか?」

「いや。だがそこを変にくすぐったりするな」

「わかっております。左も同じようにしますが、腕に疲労は溜まっていないようです」

「それは、な」

 

 イビルアイは吸血鬼なので肉体的疲労とは無縁なのだ。

 左腕にも同じマッサージを受けてから、男が脚の方へ下がっていくのを感じた。

 また昨日と同じことをされるのかとときめいていたら違和感に気付いた。上半身に開放感がある。

 イビルアイが着ているのはゆったりしたキャミワンピ。涼しい服装ではあるものの、こうも外気を感じるものではない。

 

(ま、まさか……。胸が出ちゃってる!?)

 

 鎖骨や肩にマッサージをされてる時に肩紐がずれてしまったのだろうか。脱げてしまったら気付きそうなものだが、注意が肩に集中して気付かなかった。

 目隠しをされているので脱げてしまっているとは思うも確信はない。

 本当に肩紐がずれてしまったのなら直せばよい。しかし、手を動かすと目の前にいる男にぶつかってしまう。あちらも目隠しをしているので見えないはずだ。

 この場で見えているのはただ一人である。

 

「ミラ……、私の格好はおかしくないか?」

「イビルアイ様におかしいところはございません」

「そ、そうか……」

 

 とても疑わしいが大丈夫であるらしい。

 大丈夫でなくとも、見られているのが同性のミラだけなら良しとする。日中、着替えの手伝いで半裸を見せてしまっている。

 

「続けますよ?」

「あ、ああ。すまなかった」

 

 男が膝に触れ、スカートの中に忍び込んでくるのを感じた。

 

 

 

(実年齢は知らないが肉体年齢はシャルティア様と同じくらいか? そう考えると年の割に大きい方かも知れない。シズさんよりは確実に大きいな)

 

 ぺったんこなシャルティアや、仰向けになると真っ平らになってしまうシズに比べると、確実に大きい。

 イビルアイが背を預ける背もたれの角度は120度ほど。重力に負けて薄く広がってしまうほどではないのもある。

 男の目には、白いキャミワンピを胸の下までずり下げられ少女の膨らみを晒しているイビルアイがはっきりと見えていた。

 

 目隠しのハンカチは、イビルアイが目隠ししたと同時に外している。

 エンゲージリボンは薄いレースだが、その上から真っ赤な包帯を巻きつけているのでイビルアイが目を開こうとも見えることはないだろう。赤い包帯はデミウルゴス様からカルカをプレゼントされた時のラッピングである。視界と聴力を完全に封じるマジックアイテムだ。耳までは覆っていないので聞くのは問題ない。

 見られることを気にしているのはイビルアイであり、そのイビルアイの目を封じて見られることを気付かせなければ、こちらが目隠しする必要はないのである。

 キャミワンピをずり下げたのは単純に邪魔だったからだ。マッサージをするなら全裸のほうが望ましい。しかし、イビルアイは脱ぐことに抵抗があるだろう。それ故の妥協である。

 

 なお、胸のサイズ的にブラジャーを着けて乳房を包んでも良かったろうが、部屋でくつろぐのに締め付けるものは適さないようで、インナーにはスリップを着けていた。

 キャミソールもスリップも似たようなものだ。キャミソールはアウター用もインナー用もあるのに対し、スリップはインナー専用である。他にも丈の長さや素材に違いがある。

 イビルアイが着けていたスリップはキャミワンピとは反対の黒。ミラのセレクトである。

 

 男はミラへ向かって拳を突き出し、親指を立てた。

 ミラは恭しく一礼した。

 

 

 

「んぅ…………。いきなりか……」

「脚に疲労は溜まっていないとわかりましたから、前回の続きからいたします。脚を少し広げますよ」

「ああ……」

 

 スカートの中に差し込んだ手が、柔らかな内股に触れる。そろりそろりと這い進み、脚の付け根に届いたら太ももを持ち上げた。

 少しと言ったくせして、股の開かせ具合はとても大きい。股関節の可動域を攻めているような開き方だ。

 股を開かされると上へと持ち上げられ、自然と膝が曲がった。その状態で足置きに足の裏がつく。

 太ももと脛でMの字を作る開脚方法を、イビルアイは知らない。

 

(脚をそんなに持ち上げられるとまたパンツが……。見えてないから大丈夫のはずだ。胸も大丈夫だよな? ミラは大丈夫と言ってたし大丈夫だ見られてない! こいつも目隠ししてるんだから)

 

 膝丈のキャミワンピなので、膝を立てるとスカートの中が見えてしまう。

 目隠しをしていない男にはばっちり見えた。今日は白だった。

 余計な装飾がない光沢ある白いパンツ。太ももと太ももの間を包む生地が柔らかそうに膨らんでいる。

 両太ももの裏側を掴んだ男はゆっくりと手を下げていき、親指がパンツの縁に触れた。頼りない薄布を押しやることなく、親指はパンツの下へ潜り込んだ。

 

「そこは……!」

「この前も同じように揉んだのをお忘れですか?」

「忘れてないが……」

「この前の続きです。お気付きの点がございましたら仰ってください。こちらからお聞きすることもあると思われます。どうか気を楽にして私にお任せください」

「わ、わかった……。んっ……」

 

 イビルアイは世紀を超えた処女で、肉体も未成熟な少女のもの。秘部は無毛の一本筋となっている。

 パンツの中に入った親指は互いに触れ合うところまで近付いて、指と指の僅かな隙間にイビルアイの女が隠れている。

 親指が触れているのはイビルアイの大陰唇だ。柔らかな肉を抑えつけ、上下に動き始めた。

 

「前回の最後はここをほぐしている時にイビルアイ様の脚がぶつかってしまって驚きました。イビルアイ様は大丈夫でしたか?」

「私も驚いたがそれだけだ」

「それではもう一度同じことになっても問題ありませんね」

「え…………? なななっなにをっ!?」

 

 目隠しされていても、自分の体にされていることははっきりとわかる。

 パンツの中に潜り込み柔肌を圧していた親指が、左右へ引かれた。

 パンツの中で、筋に過ぎなかった幼い割れ目が開かれた。

 

 前回も同じことをされてしまったが、あれは事故だったとイビルアイの中では納得している。

 それがいまや、意識的に割れ目を開かれている。これは間違いなくいやらしい事だ。

 

(見えてないからってこんな事を……。くうううぅぅううう! 顔から火が出るとはこの事か!? だが……、体が動かない。いやなら突き飛ばせば済むことなのに。私はされてもいいと思っていると言う事か? こんないやらしいことを……。いやらしいけど、こいつには見えてないし。本当にダメな時はダメと言ってやればいいわけだし……)

 

 男にはばっちり見えている。白い薄布を通して、薄っすらと肉色が見えている。

 大陰唇を押し広げて割れ目を開かせ、そのまま上下に指を動かす。

 顔を近づけて目を凝らすと、開いた内側の上端にほんの小さな突起があるように思えた。割れ目を閉じると突起は消え、開けば現れる。とは言っても僅かなもので、パンツの皺がそう見えていると言われたらそうかも知れない。

 脱がせば話は早いが、そこまでするつもりはない。

 

「あっ! なん、だ? やめろ……」

 

 太ももに添えているだけだった四本の指を滑らせた。

 指はパンツのサイドから内側へ入り込み、パンツを巻き込んで上がっていく。釣られてイビルアイの股間を覆う部分が食い込んでしまう。

 下着を食い込ませたまま、男はイビルアイの割れ目を広げてやった。

 薄布が張り付いた股間には、小さな突起が現れている。パンツの皺は伸ばされて、突起はイビルアイのものだと確信できた。

 イビルアイは、クリトリスを勃起させていた。

 

 イビルアイに目隠しをしてから時計の長針が半周以上回っている。エンゲージリボンのもう一つの効果が出てきたのだ。

 覚醒サキュバスの祝福を受けたリボンである。女を拘束する以外に、発情させる効果があった。

 イビルアイはそれと知らず、体を反応させている。

 女以前の少女であり、かつては人間であったが吸血鬼に転化してからは人を捨て女を捨て孤独な吸血鬼として生きてきた。自分の中に淫らな女を見つけたことは一度もないのだ。

 

「失礼しました。下着を引っ張ってしまったようですね。少し下げてよろしいでしょうか?」

「……少しだけだからな」

 

 引っ張られても生地が伸びたり傷んだりしない丈夫なパンツである。ナザリック製の魔法が掛かったパンツなのだ。

 男の手が、引っ張られたパンツの位置を元に戻す。

 やや行き過ぎて、後ろの方はパンツのゴムが尻の丸みの方にまで来てしまったし、前の方は恥丘が見えてしまって秘部がぎりぎり隠れるところまで下がってしまった。

 イビルアイはパンツの履き心地に違和感があっても体を動かせないので自分では直せないし、見えないし、男からも見えないはずと思って、言及しないことにした。

 

「先程申し上げたように上へ移ります。お腹から下腹部に掛けてですね」

 

 男の指が元あったところに戻らないのを、イビルアイは安堵したのか残念に思ったのか、自分でもわからない。

 男の手はパンツから更に進み、触れたのはへその上だった。

 五指を伸ばして手の平をあてられている。頬を包まれていた時のように、手に平から熱が移ってくる。心地よい暖かさ。

 お腹を直に触れられているが、性器周りを揉まれるのに比べたらいやらしいことではない。

 嫌なら跳ね除ければいいのだから、恥ずかしくは感じても体が動こうとしないのは、本心では嫌ではないと思っているということか。

 

 エンゲージリボンの効果を知らないイビルアイは、体が動かない理由を自分に納得させている。

 本当に嫌ならそうと言えば止める男なので、勘違いとは言い切れない。

 

「あぁ……。さっきのは少し……恥ずかしかったが……。今度のは体が安らぐようだ」

「そう仰っていただけると幸いです。少し力を入れますので驚かれないようにご注意ください」

「ああ……。んっ」

 

 両手を重ねて腹を圧しているようだ。押しながら大きく円を描いている。

 手の平から移る熱が皮下に染み込み、イビルアイの体を熱していく。

 

「ふぅ……、はぁ…………。んんっ……」

 

 手の平は徐々に下がっていく。へその上だったのが下腹に来た。

 そこが子宮の真上だと、イビルアイが気付くわけがない。

 吐息に艶が混じり、イビルアイが長く眠らせていた女が呼び起こされていく。

 手の平の下端がずり下がったパンツの縁に触れるところまで来ると、そこはもう恥丘の上。下腹から恥丘までを執拗に撫で続ける。

 

 適度に下げられたパンツだが一度食い込むまで引っ張られたため、クロッチ部は股間に張り付いたままでいる。

 食い込んだのとは別の要因で張り付いているのを、イビルアイは気付かない。

 固く結んでいた唇が薄く開いている。

 あぁと漏れる少女の声はイビルアイが意識してのものではない。目覚めつつある女が勝手に漏らしている。

 

(さすがはアルベド様から頂いたリボンだな。かなりほぐれてきてる)

 

 それに加えて魂にすら直接触れ得る男の愛撫である。

 鬼に金棒、あるいはドラゴニオにティーゲルハッチ。つまりは絶対無敵なのだ。

 

 重ねていた両手を広げてぬめる下腹に押し当て、上へと滑らせる。

 キャミワンピの裾が捲られ、パンツはもとよりへそまで露わになった。

 ずり下げられたキャミワンピの襟の下から手の平が現れ、乳房に触れる手前で戻っていく。

 白い膨らみに色づく愛らしい乳首は、吸血鬼の常で赤みが濃い。シャルティアたちと比べればやや薄めの色で、ピンクのシズと真っ赤なシャルティアを足して割った色合いだ。

 ふぅと息を吹きかけてみた。

 

「ひゃああぁ!? なななにをした!?」

「息をしただけです。また息をするななどと仰らないでくださいね」

「言わないが……、ひゃっ! ……そこに掛けるのは止せ」

「そことはどこの事でしょう?」

「どこって……」

 

 聞かれて答えられたら困っていない。

 

「ミラ! 私はおかしな格好じゃないって言っただろう!」

「はい、申しました。私はおかしな格好だとは思っておりません」

「思ってないって……!」

 

 こうも敏感に感じるのだから、胸がはだけてしまっているのは確実だ。

 それを、ミラはおかしな事ではないと言っている。

 問い詰めてやりたいが、それをしてしまうと目の前にいる男に「おっぱいが出てしまっている」と伝えるのも同然だ。

 乳首に息を吹きかけられて驚いてしまったなんて言えるわけがない。

 

(うぅ……、なんだか張り詰めてるような。これは……あれか? 立ってるとか言うやつか? 凄く敏感になってる。息を掛けられただけであんななのに、もしも触られたら……)

 

 イビルアイが口中に湧いた唾を飲み込む音は、静かな室内で大きく響いた。

 

「はぁっ……。んっ……、くすぐったい……」

「強めに押してると思うのですがくすぐったいのですか?」

「そうじゃなくて……、息がくすぐったい……」

「それは失礼しました」

 

 勿論、わざと吹きかけたのだ。

 何度も息を掛けていく内に、小さな乳首がむくむくと膨らんでくるのは見ものだった。

 両方にするとさすがに不自然を感じるだろうから、右にだけ息を吹きかけていた。左は小さいままで、右は勃起している。前後の対比を見ることが出来、こんなに変わるものなのかと感心してしまう。

 

「もっとしっかりすればくすぐったくない」

 

 意外なことを聞いたように思った。

 

「吐息だとくすぐったいのなら直に触れば良いでしょうか? 私からは見えませんので誘導してくださいますか?」

「あっ……、いやそのそれは、だな……」

 

 思ってもみないことだとは言い切れない。内心で少しだけ考えたが、して欲しいと言うつもりは全くなかった。

 それなのに、反射的に口をついてしまった。

 

「どこでしょう? またくすぐってしまうのは心苦しいので、イビルアイ様のお望みに沿いたいのです」

「それは……、ひゃっ!」

「また失礼を。私の口の先なのでしょうか?」

「う………………。そう…………だ。ひゃうっ」

 

 確かめるように息を吹きかけてから、男の顔が近付いていく。

 吐息が温かく感じる距離まで近付いて、イビルアイはとても重要なことに気付いた。

 男の両手は下腹をまさぐっている。

 くすぐったのは吐息で、息とは口から吐かれるものだ。

 吐息が当たる部分を目指して近付いてくるのは、男の口に他ならない。

 

「はぁあっ!? あっ、そんなぁ……。んんっ……、あぁっ……!」

 

 だらりと下がった両手が椅子の座面を搔く。

 勃起した乳首に触れたのは、男の唇だった。

 

「ここでよろしかったようですね。手が塞がっておりますので、口で失礼します」

「あっ、んっ……。やぁ、なめるなぁ……。はうぅっ!? だからって、あんっ……。かむなぁ……。ああんっ!!」

 

 唇で挟んだ乳首に、舌で触れた。

 舐めるな噛むなと言うイビルアイの言葉を無視して、れろれろと尖った乳首を舐め回す。

 成熟した女達に比べれば小さな乳首だが、勃起した弾力は大きさに反比例して力強い。舌で転がすと跳ね返ってくるようだ。

 ちゅうと強く吸ってこれまた小さめの乳輪まで口に含み、根本を歯で甘く囚える。弾力を楽しみつつ、リズムをつけて先端をねぶってやると良い声で鳴き始めた。

 

「お腹の方も段々と下げていきます。触れて欲しくない場所がございましたらそこまでと仰ってください」

「だめなばしょ? んう……、じんじんして……。あつくなってる? ちくび、なめるなんて……」

 

 性的な愛撫は初めてのイビルアイだ。

 自分の手で触ってみるならまだしも、触っているのは異性だ。男だ。

 心も体も焦がす熱が一体何なのか、イビルアイにはわからない。

 いけない事なのでは、と思う。いやらしい事だと思う。男の口が乳首に吸い付いた瞬間、こんな事をさせてしまってよいのだろうかと疑問が過ぎった。

 乳首を舐められて自分の口から聞いたこともない声が上がっているのを聞いても、これはいやらしくて本当はいけないことなのだと思う。

 だけれども拒めない。体が動こうとしない。拒否の言葉を上げてるつもりでも、大きな声ではない。心の奥底では止めて欲しくないと思っている。

 

 だから今になってもイビルアイは気付かない。乳首を吸いながら下腹を撫でていた男の手が手首を返したのを。

 上を向いていた指先が下を向いている。

 宣言通り、男の手が下がっていく。

 指先が恥丘を撫で、パンツの縁に届き、パンツの上ではなく中に入ったのを、イビルアイは気付いた。

 気付いて、何も言わなかった。

 口から溢れるのは荒い息と、弱々しい懇願だけ。

 懇願は「やれ」と言っているのか「やめろ」と言っているのか、どちらであっても同じ意味だと思われた。

 

「そこはぁ……。あっ、あっ……。声……、でちゃう。あぁん……」

 

 下着越しでも触れなかったイビルアイの秘部に、男の手が届いていた。

 長い中指を筋の上に乗せ、人差し指と薬指で大陰唇に触れている。

 三本の指は小さく円を描いて、中指だけが割れ目の内側へ沈んでいく。

 中指の腹は当然として、背にも湿り気を感じた。

 イビルアイがパンツに染みを作っていたのは、イビルアイ本人は気付いていた。

 

 イビルアイは濡らしていた。

 執拗な愛撫によって膣から愛液を分泌し、幼い割れ目の内側を潤わせ、肌に張り付く下着に滲ませていた。

 

「はぁ……はぁ……。あんっ……、あんっ♡ そんなとこ、さわるなんてぇ……。ひゃぁああん♡」

 

 甲高く甘い声。

 イビルアイのぬめりをまとった中指は、膣口を狭める薄い肉ひだに触れた。

 入らないではないだろうが入れるつもりはない。イビルアイは初心な処女なのだ。初心者にはまだ早い。初心者向けのところがちゃんとある。

 中指が探り当てたのは、陰唇を揉んでいた時から勃起させていたクリトリスだ。

 

「あっ、あっ、あっ、そんな……、こんなのってぇ♡ だめなのにぃ♡ あぁん……、つまむなぁ……♡」

 

 指先で弾いていた肉芽を、人差し指と薬指で捕えた。

 肉芽の茎を上下に扱き、敏感な部分へは中指をあてがっている。

 

 イビルアイの股間で右手が働いていれば、左手もサボっていない。

 右の乳首をしゃぶっていた口が、イビルアイの柔肌に唾液の筋を残しながら左の乳首に移った。

 舌で触れた瞬間こそ柔らかかった乳首は、ひと舐めふた舐めする内に固く尖ってくる。

 空いた乳房へは左手が伸びた。

 慎ましくとも背格好の割に大きな乳房。シャルティアやシズと違って揉むくらいはある。

 ふにふにと乳肉を揉み、物欲し気な乳首を摘んでやった。

 

「イビルアイ様が摘んで欲しいのはどちらですか?」

「言うなぁ……。あっあっ、きもちいほう……♡」

「どちらも悦んでいるようですよ?」

「どっちもきもちぃ……。んっ……、あぁっ!」

 

 胸も股間も溶けているようで、波打っている。

 押し寄せる波は体中を荒らしまわって、理性を押し流そうとしてくる。

 とっくに押し流されているのかも知れない。性器をなぶられてよがっているのだから。

 快感に身を委ねていると、波の予兆がわかるようになってきた。

 ずっと気持ち良いのは確かだ。それでも浅いのと深いのがある。

 深いのが重なると、叫んでいるような声になってしまう。

 

「イビルアイ様は愛液の量が多いですね。終わったら下着を替える必要があります」

「そんなの……、わからない……。あ……、だめ…………、くる…………んぅ……!」

 

 イビルアイもまた、シャルティアたちと同じように汁気が多い。小さな膣口から溢れる愛液が男の手を濡らし、パンツでは吸いきれず、尻の方まで湿らせている。

 その時、エンゲージリボンで拘束されているのにイビルアイの体が強張った。つま先をきゅっと折り曲げ、歯を食いしばる。

 無駄な抵抗だった。

 男は同じリズムでクリトリスを弾き、右の乳首に歯を立て、左の乳首はきつく抓った。

 イビルアイは決壊した。

 

「あっ、くぅ…………。ああぁぁあああぁぁぁああああああーーーーーーっ♡」

 

 精神が肉体から弾き飛ばされたようだった。

 真っ暗だった視界に光が明滅し、真っ白になる。

 

 尖りきった乳首はそのままに胸を大きく上下させ、立てた太ももがぷるぷると震え、尻が断続的に痙攣している。

 男の手が引き抜かれたパンツは新しい染みを滲ませ、表にまで出てきてしまった汁が光沢ある生地の上をぬるりと流れていく。

 イビルアイの意識が現世に戻ってようやく、自分は絶頂したのだと知った。

 全身に心地よい余韻と気だるさがある。

 体の深いところに熱が宿っている。

 すごかったとしか言えない経験だった。もう一度と思ってしまい、愕然とした

 本当はいけないいやらしい事だと思っているのに、初めての性的快感でとても気持ちよくなって叫んでしまったのにまだ欲しがるのか。

 自分はそんなにも淫らなのか。

 そんな事を思っている間にも体は反応して、外気の僅かな動きにも勃起した乳首が反応する。膣からとろりと溢れてしまっているのを感じる。

 もう一度と思う心は飢えのようで、気付いてしまったら際限なく湧いてくる。

 

 

 

「んぷっ!?」

 

 はしたないことを言おうとした時、口に何かを突っ込まれた。

 さっきもしゃぶってしまった指であるらしい。

 ほんの一瞬だったので舐めるまではいかなかった。爪が長いように感じたのは気のせいだったのだろうか。

 

「そろそろ私の目隠しを外しても良いでしょうか?」

「ダメだ!」

 

 イビルアイの目隠しをミラが解く。

 視界に光が戻ると、イビルアイが座る椅子の前に目元をハンカチで縛った男が跪いていた。

 

 自分の体を見下ろす。

 服がずり下がって胸がはだけているのを見て、改めて頬に熱が戻ってくる。

 スリップとキャミソールワンピースの肩紐を直してからミラを睨みつけた。この女は一部始終を見ていたはずなのだ。

 ミラは左手で口を押さえている。

 手指の動きであちらを向くよう指図して、指示通りにミラが背を向けてから男を立ち上がらせた。

 

 目が隠れているので表情がよくわからない。

 マッサージと言っていたのにあんなことをされてしまって、怒りと凄まじい羞恥と、心身に刻み込まれた快感がこみ上げてくる。

 

「如何でしたでしょうか?」

「うるさい!」

 

 間違いなく絶頂に導いたはずだが、イビルアイの声も態度もとても厳しい。

 何が拙かったのか聞きたいのだが、うるさいと言われたからには黙らなければならない。

 無言で立っていると、シャツの襟を掴まれた。

 ほんの一瞬だけ、唇に何かが触れたように思った。

 

「目隠しは部屋を出てから外せ!」

「かしこまりました」

 

 散らばった衣服を踏まないよう、ミラに手を引かれて退室する。

 部屋を出て、何が拙かったのだろうと首を傾げた。

 

 この男には照れ隠しがわからないのだ。

 

 

 

 

 

 

「今日もお姫様気取りっすねー。おにーさんが嫌々付き合ってるのがわかりそうなもんすけどねー」

「お兄様はお優しいから本心ではお嫌でもアルベド様への貢献を無視出来ないのよ」

「そんな事より手伝ってよぉ! 昨日頑張ったけど半分の半分も終わらないよぉ!」

「半分の半分なら同じこと四回繰り返せばオッケーっすよ?」

「思ったより早く終わりそうで良かったわね」

「二人のいじわるうぅぅ!! 昨日と一昨日の二日で半分の半分なんだからああ!」

 

 イビルアイは屋敷の二階の窓を見上げてから、男に手を引かれて屋敷の門を出た。

 

 今日の目的地はエ・ランテルにてアインズ様が居を構えるお城である。然るべき方からモモン様の予定をお聞きするのだ。

 話は通っているので、お城では速やかにセバス様と会うことが出来た。

 モモン様は春になって活発になったモンスターの調査に赴いているようである。期間は不定とのこと。

 

 エ・ランテルからトブの大森林まで、片道徒歩で二日は掛かる。帰ってくるのに更に二日。

 多少はモンスターの駆除を行うだろうし、わざわざエ・ランテルに戻ってこなくても、拠点としてカルネ村が使える。モモン様がお戻りになる時期はやはり読めない。

 魔導王の抑止としてエ・ランテルにいらっしゃるモモン様なので、長期間不在となるとは思えない。しかし、モモン様と魔導王の仲が良好なのは知られていることで、エ・ランテルの住民たちも魔導王の支配を受け入れている。

 お戻りの時期はやはりわからない。

 

 必要な話を終えた後、少しだけ王都の話になった。

 セバス様は王都に滞在したことがある。蒼の薔薇が拠点としているのは王都だ。

 セバス様は苦笑混じりに王都の治安について語り、イビルアイは仮面の下で苦々しく顔を歪めた。

 そこへセバス様の直属メイドのツアレが訪れたのは大変間が悪いことだった。

 今でこそ健康な姿でメイドを頑張っているツアレだが、王都にいた頃は苦痛を与えられることだけが存在意義と言って過言ではない境遇だったのだ。

 真っ青になったツアレにイビルアイは事情を察し、王国の冒険者として頭を下げた。

 ツアレの代わりにセバス様が謝罪を受け入れ、それとなく二人へ退室を促した。

 

 

 

 

 

 

 屋敷に戻り、夜が来る。

 

「毎日ではイビルアイ様にご負担があります。今夜は私にも所用がありますので話し相手をご所望でしたらミラをお使いください」

「……一人でいい」

 

 昨夜と同じ服装に着替えたイビルアイは、あてがわれた客室のベッドに突っ伏した。

 睡眠が不要なアンデッドだ。ベッドに埋まっても眠気はやってこない。

 冴えた頭の中では目まぐるしく昨夜の体験が駆け回っている。

 期待してなかったと言ったら嘘になる。

 

 イビルアイが頼もしく思って恋慕っているのはモモン様だ。しかし、モモン様へは己が吸血鬼だと知らせていない。

 対してあの男は、自分が吸血鬼だと知っている。知った上で血を振る舞い、あんな事をされてしまった。受け入れてしまった。

 一生で一度の恋と思っていたのに、揺れ動いてしまっている。

 どうすればいいのか答えは出ない。

 堂々巡りする内に昨夜のことを思い出す。

 体の深いところが疼き、飢えにも似た何かが首をもたげる。

 

 目覚めてしまった女を慰めようと手が伸びようとして、ドアが叩かれた。

 

「誰だ?」

 

 返事はない。

 ドアはなおも叩かれる。

 

 もしや、あの男が忍んできたのだろうか。

 期待に胸が高鳴り、それでも一応は仮面をつけてドアを開いた。

 ドアの向こうには、誰もいなかった。

 

 外は月すら薄い夜だろうと、お屋敷の廊下には魔法の明かりが灯っている。

 右を見ても左を見ても誰もいない。

 耳を澄ませば、幽かな足音を捉えた。

 

 コックローチの駆除をした際、屋敷の廊下は一通り歩いている。

 足音が聞こえたのは、屋敷の主要な者たちの私室がある方向だ。

 なんとはなしに廊下へ踏み出し、足を進めた。

 

 同じ形のドアを幾つも通り過ぎる。害虫駆除時には閉まっていたドアなので、中がどうなっているのかまでは知らない。

 無断で入らないよう注意は受けている。

 深夜の散歩のつもりで歩き続け、開きかかったドアを見つけた。

 

「誰かいるのか?」

 

 廊下から声を掛けても返事はない。

 しばし逡巡し、開いているのだからいいだろうとドアを開けて中に入った。

 部屋の中は暗かった。

 使われていない部屋なのか、魔法の明かりが機能していない。

 暗かろうと吸血鬼には関係ない。

 イビルアイの部屋と同じように並んでいるテーブルや椅子を避け、室内を歩き回る。

 

「明るい?」

 

 どこからか光が差し込んでいるようだ。

 窓にはカーテンが閉められているので、星月の明かりではない。

 部屋を見回せばすぐにわかった。壁の一点から光が漏れている。

 イビルアイは火中へ飛び込む夏の夜の虫のように明かりに近付いた。

 顔を近付け、壁に空いた小さな穴を覗き込んだ。

 

 大きな寝台の上で、二つの裸体が絡み合っていた。

 

(ああ、お兄様……♡ ソリュシャンをもっと可愛がってくださいませ♡)

(わかってるよ。ソリュシャンも随分と感じやすくなったな?)

(お兄様がソリュシャンを愛してくださるからですわ。愛しています。ソリュシャンの心も体もお兄様のものです)

(俺も愛してるよ)

(ああ、おにいさまぁ……。もう一度言ってください)

(愛してる。お前は俺の女だ)

(ソリュシャンはその言葉だけで……もう♡)

 

 イビルアイは、わなわなと全身を震わせて後退った。

 尻に椅子がぶつかり、我に返った。

 部屋を飛び出し、自分の部屋に駆け戻った。

 

 ベッドに飛び込み頭までシーツに潜る。

 

 胸中に湧き出る熱いものは、裏切りへの熱い怒りだった。




アンケートがどうしてこうなったと頭を抱えるレベルで拮抗しつつ捻れてる
そのうちどっちかに傾くんだろうか?
反映するにせよ大分先と思うのでしばらく置いときます

エントマは

  • 可愛いので癒やし枠
  • きっとぴゅあなので癒やし枠
  • 肉食なので(性的に)食べに来る
  • 可愛いので(性的に)食べられる
  • まかせる
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