※この作品はR-18です。

アルベドのお食事   作:dolph

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本話10k
暑くなってきました
これからもっと熱くなると思うと_(:3 」∠)_


オーダーメイド

 アインズ様に毛皮を献上するのは少し先の話。

 毛皮収穫に行ってからの男は、珍しい事に不機嫌な日が多くなっていた。思いがけず露呈した致命的な弱点を克服するための特別訓練が始まってしまったのだ。

 

「それでこっちに来てるんですか? お父様がいるのは嬉しいけど、イヤなことから逃げるのって子供みたいですよ?」

 

 子供に子供と言われる父である。

 

「違うそうじゃない。自分のことだからこそよくわかっている。俺には休憩が必要なんだ」

 

 そして子供の純粋な意見を屁理屈でねじ伏せる父である。

 

「ふーん。今日の課題は終わったから出かけてきまーす!」

 

 そして父がいるのが嬉しいと言いながら早速出かける娘である。

 ソフィーは机の上に広げたテキストとノートを閉じて重ねると、ドアからではなく壁をすり抜けて部屋から出て行った。何度も注意されているのに改めようとしないのは一体誰が悪いのか、はたまた甘いのか。

 

「今日のソフィー様はレイナースとお約束がありますので馬車を駆るために私にも同行を求められました。マイスターと一緒に過ごしたいのは山々なのですが断腸の思いでソフィー様のお供をいたします」

 

 一緒に講義を受けていたジュネがソフィーの勉強道具も片付ける。ジュネはテキストやノート以外にも、筆記具を一つにまとめる。

 ソフィーにもジュネにもこだわりがなく、筆記具は共用だ。書ければなんでもいいらしい。

 

「ソフィー様はレイナースに多大な恩を感じているご様子ですので機会がある毎に一緒にお出かけになっていらっしゃいます」

 

 ソフィーも極悪集団ナザリックの一員である。実の父が人間でありナザリック生まれではないため人間蔑視とまではいかないが、人間だから無条件で仲間とは思ってない。自分たちと姿かたちは似ているけれど見た目いまいちが多くて基本的に弱っちい不思議な生き物だと思っている。が、レイナースは別だった。

 レイナースは絶世の美女とまではいかなくもソリュシャンのお眼鏡に適うくらいには整った容姿を誇り、帝国四騎士の一なのだから弱いには弱いけど弱すぎるとまではいかない。

 そこへ加えてジュネが口にしたように、ソフィーはレイナースに大きな恩があるのだ。

 

 ソフィーがナザリック守護者統括相談役である男を父と呼ぶのは、自身の名付け親であるからであるのは周知である。だけどもその男、ネーミングセンスが死んでいた。

 

 この男が友人の名付けの相談をレイナースにした時、男ならゲンキ、女ならゲンキ子、と挙げたのをレイナースは強固に否定した。

 そしてこの男にそんな友人がいないのも周知である。であるならば誰の名付けか。アルベド様が創造した娘の名付けであるとの想像は容易だった。

 何かの間違いが起こっていれば、ソフィーはゲンキ子と名付けられてしまったかも知れないのだ。

 というようなことを先日の毛皮収穫の際にルプスレギナから聞かされたソフィーである。ソフィーがレイナースに深く感謝するのは当然だった。

 

「ここのところこっちでレイナースを見てないのはソフィーが引っ張り回してるからか」

 

 ジュネは男の疑問には真っすぐ答えず、真理を告げた。

 

「ソフィー様はとても自由なお方です。何物にも縛られず心の赴くままに為さりたいことを為さっております」

「いやそれはダメだろう」

「そうは仰りますが、為すべきは為されておりますので問題はないと愚考します。現にマイスターから与えられた課題の進捗は私よりもソフィー様の方が進みが早く、さすがはアルベド様のご息女であられると様々なところで痛切に認識いたします。そのようなソフィー様ですのでマイスターの為さりように憂慮を抱くことがございません」

 

 聞きようによっては考えなしのおバカに思えてしまう。ジュネの話は続きそうなので男は口を挟まず続きを待った。

 

「ですが、私は違います。浅学非才にしてヴァンパイア・ブライドの恥と言えるほどに無力な私に自由な振る舞いは叶わずあらゆるものに縛られ己の心すら自由にならない有様となっております」

 

 ナザリックのシモベだから自由がないと言ってるわけではないことはわかる。それ以外ではジュネも十分すぎるほどに自由だと思えたが、本人がそう思っているのならそうなのだと思うことにした。

 ではそれが何を意味するのか。ジュネは解説することなく、退室の礼をすると部屋から出て行ってしまった。

 

「……何だったんだ?」

「わからない若旦那様がバカなんです」

「バカって言う方がバカなんだぞ?」

「でしたら鈍感と言い換えて差し上げます。若旦那様の鈍感。ずっと鈍感のままでいてください」

 

 シクススまでよくわからない事を言う。

 誰も解説してくれず、そのままでいいと言うのだから男は考えるのを止めた。

 

 

 

 なお、この男のネーミングセンスは遺憾なく発揮され続けている。先の毛皮収穫で連れ帰った一体のビーストマンに名付けたのだ。

 そのビーストマンは体が大きい個体で毛並みも見事だったが、男が少々責めたら不思議なことに体が縮み、毛皮も色あせて艶がなくなってしまった。商品価値が激減である。

 その場で処分しても良かったし、当のビーストマンもそう望んでいるようだった。けれども、ビーストマンの社会を知るためにまともに口が利ける個体を持って帰ることを決めたばかり。その個体はどういうわけかとても素直になって反抗心がなくなったので都合がよく、他の個体から探すのが面倒だったのもある。

 そうして付けようとした名前は、ビーストマンだから略してビーマン。

 ビーマンの名は一同を爆笑の渦に叩き込んだ。

 

 非常に釈然としない男はビーマンを取り消し、毛むくじゃらなのでケムとした。しかしそれでは単純が過ぎる。

 同じ毛むくじゃらの先輩であるハムスケさんリスペクトでケムスケとしようと思ったが、名前が似すぎているので却下。ケムキチに決定した。

 

 エ・ランテルは亜人や異形種が多々暮らす街であるが、人間の天敵として知れ渡るビーストマンのケムキチが飼うには少々問題があった。

 まず、住民を傷つけるのは絶対禁止。禁を破ったら飼い主である男に連絡がいく。

 破ろうにも、ケムキチが飼われるお屋敷は陰に陽にケムキチを歯牙にもかけない者たちが警護している。迂闊なことをしたらギリギリ死なないくらいに痛めつけられてから飼い主である男に連絡がいく。

 ケムキチはビーストマンなので爪が長く、お屋敷のメイドたちは怯える者があった。よって爪を隠す手袋の着用を厳命された。外しているところを誰かが見かけたら飼い主である男に連絡がいく。

 ケムキチの住むところはお屋敷の敷地内にある厩舎、にしたかったところだが、現在はハムスケさんが占拠している。ハムスケさんに迷惑を掛けたくないと考えた男は、敷地内にケムキチ用の天幕を張ってやった。寝具もきちんと用意して、とても思いやりがあると当の男は自画自賛したのだが、天幕も寝具も丁寧に加工するまでもないと判断したビーストマンの毛皮から出来ている。

 おにーさん半端ないっすねとルプスレギナはいたく感心した。

 

 ビーストマンの社会について情報を吐き出すためだけのケムキチだった。が、男には全くの想定外の用途が出来てしまった。冒頭に挙げた特別訓練である。

 毛皮収穫からエ・ランテルに戻った男は、おかしな文脈でアルベド様のお名前を挙げたルプスレギナを叱ろうとしたら、

 

『せっかく不老不死になったのにこのままじゃその内死んじゃうっすよ?』

 

 ルプスレギナには珍しく真剣な顔で突き付けられた。

 曰く、アルベド様の悪口を言われただけで失明するのは忠誠心の深さの証明と言えるが、もしも戦闘中だったら重大な隙となる。それどころか悪口を言われただけで憤死しかねない。何としても克服する必要がある。

 しかし、戦場に行く予定はなく、荒事は護衛のミラが片付ける。男はエ・ランテルでアルベド様を侮辱する愚か者がいるわけがないと抗弁したのだが、

 

『おにーさんはアルベド様を侮辱した奴に罰を与える前に死んじゃってもいいんすか?』

 

 男は特別訓練を受けることを決意した。

 悪口を言うのに選ばれたのがケムキチである。ケムキチはアルベド様の偉大さと美しさを思い知ったようで泣いて嫌がったのだが、飼い主にやれと言われたらやらざるを得ない。

 

 特別訓練はとても過酷だった。

 

 訓練後のケムキチは魂が薄れて昇天しそうになるのをミラにぶっ飛ばされて活を入れられ、男の方は精神が荒れに荒れルプスレギナを犯しに犯しぬいて翌日は使い物にならないくらいに狂いよがらせ何とか落ち着きを取り戻す。

 犯されるローテーションは、ルプスレギナ・ソリュシャン・ミラ・ラキュース・シェーダである。ただし、メイドとしてのお仕事があるラキュースとシェーダが使い物にならなくなるのは困るので、足りない分はソリュシャンが肩代わりしてとても満足していたりする。

 

 訓練の成果は少しずつ見え始め、今では失明することはなく、血涙も流さず、視界が真っ赤に染まるだけになったのでもう十分と思うのだが、毎日訓練させられる。

 そこにはハードプレイに味を占めた誰かの意図があったりする。遠からず訓練は終了しなければならないと決まっているので、今の内というやつなのだ。何が起こっているのか知らないのはこの男だけである。

 

 

 

 賑やかなソフィーがいなくなり、静けさが戻った書斎で男は机に突っ伏した。

 今日は朝早くから帝都のお屋敷に転移し、このまま泊まっていく予定だ。今日は特別訓練をしなくて済むのである。なんと心が安らぐことであるか。しかし、僅かな安らぎを許さない者がいた。

 

「いてっ」

 

 安らいでいたところを、シクススにポカリとやられた。

 

「いつも申し上げていることですが、私がお仕事を頑張っている時にだらしない姿を見せないでください」

 

 横暴である。しかし、シクススはお屋敷のメイド長であり、つまりは権力者である。ついでに弱みを握られていたりする。あれをソフィーに知られたら絶対に揶揄われる。逆らってよいことはない。

 男が姿勢を正したのを見てシクススは一つ頷き、窓辺に移動した。窓の外では豪華な馬車が門を潜るところだった。ソフィーが出かけたのを見届け、全ての窓のカーテンを閉める。

 男が首を傾げて見守る中で、シクススは書斎のドアに鍵を掛けた。掛けたはいいがドアの方を向いたままで、こちらには背を見せている。

 ややあって振り向いたシクススは、顔を赤くしていた。

 

 シクススを抱くのは稀ではなく、そういう時は薄っすらと頬を染め、可愛らしい子猫ちゃんになる。

 わざわざ密室にしたのだからそういうことなのだろうと思ったが、いつもより緊張感が漂っていた。

 

「若旦那様は、以前私から相談したいことがあると申し上げたのを覚えていらっしゃいますか?」

「覚えてるよ」

 

 その時はご主人様と呼ばれたのでそちらの事だと思っていたのだが、今は若旦那様と呼ぶ。

 

「相談内容は絶対に誰にも秘密にして欲しいんです。もしも誰かに話したりしたら、私は手段を選びませんからね!」

「話すなと言われたことを話したりしないよ」

 

 聞かれてないことまで話しちゃう口が軽い男である。しかし、約束事は守る男でもある。絶対に秘密と念を押されたのだから、アルベド様に聞かれない限りは秘密を守ることが出来るだろう。アルベド様に聞かれたら致し方なし。その結果、シクススの最終手段が発動したら誰も幸せにならない。

 そこまで考えた男は、心苦しくもアルベド様に聞かれても言葉を濁す決意を固めた。

 

 男の決意を感じたシクススは、赤い顔のまま男に近付いた。

 カーテンを閉めドアには施錠して密室にしたのに、キョロキョロと周囲を窺い、書斎には二人きりであることをこれでもかと確認してから、エプロンのポケットからある物を取り出した。

 

 ナザリックのメイドであるシクススが着るメイド服は、雇っているメイドたちが着るメイド服より遥かに高品質である。防御力は男が着るナザリック製ジャケットほどにあるし、丈夫で汚れにくく耐久性抜群である。魔法が掛かっているため着用者に合わせてサイズが変わるが、シクススのメイド服はシクスス専用で、スタイルに気を遣っているシクススの体形が変わったりしないので余り役には立っていない。

 重要なのは、男が着るジャケット同様にエプロンポケットの中に見た目よりいっぱい入ることだ。ポケットにいっぱい入れても膨らんで見えないのも重要な機能である。

 シクススのエプロンポケットは真っ平で、中に何かが入っているようには見えなかった。

 

 シクススが取り出したものを見て、男は目を丸くした。

 

「まさかいつも持ち歩いてるのか?」

「そんなわけないに決まってるでしょ若旦那様のバカ! これの相談だから持ってきただけです!」

 

 それは白い円柱だった。一端は平坦で、もう一端には球を潰して斜めに付けたような形。表面はツルツルのピカピカで滑らかな触り心地。

 男が作った試作品をシクススが処分するという名目で引き取ったものである。

 ディルドであった。

 

 

 

 

 

 

 ディルドについての相談なら誰かに知られなくないだろうと思えるくらいにはデリカシーが備わってきた男である。尤も、食事の席で駅弁の話題を出すのだから及第点には程遠い。

 

「見たところ傷はなさそうだ。ああ、これは象牙製だからちょっと重いかな? 軽いのが良ければこれの芯をくり抜いてもいいし、材料はこっちに置いてあるから新しく作ってもいい」

「いえ、重くはないです。でも新しく作ってくれるならもう少し細い方が。これってご主人様と同じくらい大きいので一人でするときはちょっときついかなって」

 

 可愛い女の子に見えてもホムンクルスであるシクススはちょっと力持ちである。少々重いくらいなら問題ない。試作品であっても仕上げはアルベド様に献上した完成品と同等なので使い心地は上々のようだ。

 

「少し軽くなるが素材は別のにしていいか? そうすれば今日にも新しいのが完成するよ」

「そこは大丈夫です」

 

 シクススをソファの隣に座らせる。メイドとしての遠慮なのか少しだけ離れた位置に座ったので距離を詰め、肩を触れ合わせた。

 呼び方がご主人様に変わったのもきちんと気付いている。シクススがご主人様と呼ぶということは、凛としたメイド長から甘えたがりでちょっぴり意地悪をされるのが好きな子猫ちゃんになってますよアピールである。

 ちょっぴり意地悪してあげないといけないのだ。

 受け取ったディルドを返し、シクススの肩を抱き寄せた。

 

「シクススが愛用してるようで良かったよ。作った甲斐があった」

 

 シクススの目がキラリと光った。

 

「いてっ!」

 

 この男、痛みにはめっぽう強いが痛みを感じないわけではない。ビックリさせる要領で意識外からやればきちんと痛がる。

 シクススは肩に乗った男の手を抓ろうと見せかけて足を踏みつけたのだ。

 

「愛用してるわけじゃありません! それに私からの話はまだ終わってませんから」

 

 男は少しだけ思い違いをしていた。シクススがご主人様と呼ぶ時は、必ずしも子猫ちゃんモードになってるわけではない。意識的に切り替えるためである。

 先ほどは約束を順守して欲しいので、真面目な話アピールで若旦那様と呼んだ。

 次にご主人様と呼び分けたのは、自分を守るためである。

 シクススは帝都のお屋敷のメイド長だ。メイド長は一時的な役割だとしても、栄光に包まれたナザリックのメイドである。いかがわしい話に耽ったりしないのだ。第一、そんな話をするのも聞くのも恥ずかしい。

 だけれども、本当はそんな話に興味津々であった。

 ナザリックにいた頃は冒涜的な異本に魅入られていた。エ・ランテルのお屋敷に来てからは若旦那様が現地で雇い入れたメイドたちにいかがわしいことをしないよう、夢精をして恥ずかしい思いをしないよう、積極的に手伝ってあげた。帝都のお屋敷に来てからというもの、当初はルプスレギナとシクススとミラの三名しかいなかったため、日に何度もお手伝いをして、週に一度以上は自分の体を満たしてもらっていた。男がエ・ランテルに戻ってからはお手伝いの頻度が激減しているが、満たしてもらう頻度は変わっていない。

 けども先述したように、そちら方面の話を自分から振るのは恥ずかしい。こちらの雰囲気を察して向こうから持ち掛けてくれればいいのだが、この男にそのような事を期待するのは無理である。

 そこで思い付いたのがご主人様呼び。シクススがさり気なくおねだりする時はご主人様と呼ぶのが暗黙の了解となった。ただし、ご主人様呼びしたからおねだりというわけではない。

 普段の自分と切り替えて、今の自分はいつもと違うんですよ、いつもはこんな事を話したりしないんですよ、と主張するためである。誰に主張してるかと言えば、自分自身だ。

 つまりはシクススなりの自己防衛。誰にもわかってもらえないかも知れないが、シクススが自分で納得しているからこれでよいのである。

 

 そして、話は戻る。

 シクススは愛用してるディルドを新調してもらうために相談を持ち掛けたわけではなかった。

 

「愛用してるわけじゃありませんが、こうなったらいいなっていう希望があって……」

 

 いつもの自分と切り替えても、恥ずかしいものは恥ずかしいらしい。

 凛としたメイド長だったシクススが、頬を染めて言い淀むのはとても可愛らしい。

 

「これって使う時は自分の手で動かさないといけないんです」

「まあ、ディルドだからね」

 

 ディルドとは、勃起した男性器の形を模した張り型である。

 覚醒したサキュバスであるアルベドなら、サキュバススキルの淫具創造によってうねうねと動くバイブや小さく震えるローターを作り出せるが、この男にそんな事は出来ない。動力を組み込むのは不可能ではなくも少々面倒だ。

 

「動くようにしろというなら少なくとも一か月は見て欲しい。動かす方法は幾つか思い付いたけど動力源をどうするかが問題だ。アルベド様にお願いすれば作ってくださるかも知れないが」

「い、いえ! そこまでしていただくわけには……。それに動いて欲しいわけじゃありませんから」

「それなら何だろう?」

「そこまで難しいことじゃないと思うんですけど……。固定できるようにして欲しいんです」

 

 ディルドは動かない。刺激を得るには自分の手で動かす必要がある。それはそれで手だけでは得られない刺激を得られる。だけども、例えば立てて固定することが出来れば、腰を振れば刺激が得られる。手を動かすのと違ってしている感があると思われるのだ。きっとその時と変わらない盛り上がりが得られる、ような気がする。

 ということを思いついたシクススは、自分なりに縛ってみたり吸盤をくっつけようとしたりとあれこれ工夫したが、ディルドを傷付けずには上手く出来そうになかった。ならば開発元にお願いするのが一番である。

 

「それくらいなら簡単だ。固定する場所は平らで硬いものを想定してるがそれでいいかな?」

「はい、十分です」

 

 シクススの想定は、例えばお風呂のタイル。お風呂なら壁にくっつけるのも良さそう。床の上はちょっとあれなので却下。他には持ち運びできるプレートに固定して、そのプレートを丸めた毛布などに縛り付けてさらに固定することまで考えている。それは上になっているのと変わらないのではないだろうか。

 考えていることがちょっとだけ顔に出た。

 

「あっ!? ちょ、ちょっとご主人様!」

 

 その隙を突かれ、今度は肩ではなく腰に男の腕が回ってきた。

 強い力で抱き寄せられ、シクススは男の胸にもたれてしまった。

 

「私はこの後も仕事が残ってるんです! ご主人様とそんな事をしてる時間は――」

「ご主人様のために体を使うのも立派な仕事だろう? 俺の可愛いシクススはご主人様の言うことが聞けないのかな?」

「そんなことは…………ない、ですけど…………。でも……」

「シクススのためでもあるんだ。どんな形ならシクススにピッタリ合うのか。折角新しく作るんだから丁寧に調べる必要がある」

「そんな……」

「シクススはこれを愛用してるんだろう?」

 

 シクススは白いディルドを握ったままでいる。何度も使ってきたディルドだ。

 そんなものを見続けているのは恥ずかしく、しかし、顔を上げてしまえば男と目が合ってしまう。至近距離で見つめられると飲まれてしまうのは何度も経験している。

 

「あ…………愛用、してます……」

「使う頻度は?」

「その……。毎日というわけじゃなくて……。三日に一度くらい、です」

「それなら三日に一度と言えばいいのに毎日を否定するのは、使う日は何度も使うのか?」

「うぅ…………そう、です……」

 

 完成品と同等の仕上げを施された試作品は、何度使おうと未使用時と変わらない艶を放っている。シクススが綺麗に磨いてから持ってきたからだろう。使用時にはシクススの汁に塗れて、シクススの中に埋まるのだろう。

 最善を期すために、使用時の風景を見る必要があった。

 

「どう使うのか見せてもらおうか」

 

 シクススの顔が跳ね上がった。

 話の内容が内容なので顔は真っ赤だが、艶めいた雰囲気はなく必死さを感じさせる。

 

「どうか! どうか、それだけは……許してください!」

 

 体を何度も重ねてきて、体の隅から隅まで見られて触られて舐められて。

 それでも見せたくないものはある。

 例えば朝から夜まで一日中ずっと着けていた下着。手鏡を持ってムダ毛をチェックしてる時。自分で慰めているところはその中でも上位に位置する。

 性欲があると知られるのは恥ずかしい。性欲を密かに発散してると知られるのはもっと恥ずかしい。誰にも知られず一人でこっそりすることを見せるのはもっともっと恥ずかしい。

 

 しかし、秘密にされれば暴きたくなるのが人の性。ソリュシャンとルプスレギナから人の心がないと言われる男は、好奇心がとても旺盛だった。

 

「シクスス、俺の可愛い子猫ちゃん。シクススはご主人様に隠し事なんてしないだろう?」

「…………はぃ…………」

 

 シクススは、はらりと涙を落とした。

 

 なお、シクススは本当に見せたくないわけではなく、見せたくない振りをして興奮を煽っているのだと思っている男である。見せたくなかったら凛としたメイド長に戻って跳ねのければいい話なのだ。

 

 シクススは、ぐすっと鼻をすすり、エプロンドレスの紐を解いた。

 

 

 

 

 

 

 一方その頃、エ・ランテルの大きなお屋敷で一番豪華な部屋に、女たちが整列していた。

 

「今日中に終わらせるのよ。私が少しずつ進めていたから問題ないでしょう」

「「「かしこまりました」」」

「エントマはこの部屋を隅々まで掃除したことがあったわね。どこに何があるかわかっているかしら?」

「はい、承知しております」

「それなら小物はエントマにお願いするわ。大きなものは……ミラと言ったわね」

「名前を覚えていただき光栄でございます」

「シャルティアにしてはセンスがある名前ね。ミラはルプスレギナと一緒に重いものを運びなさい」

「かしこまりました」

「ソリュシャンはメイドたちと一緒に整えて。今日の夕方にはナザリックからリファラとキャレットが来るわ。私の専属になるから以前のようにシェーダと同じ仕事というわけにはいかなくなるけれど」

「……かしこまりました。後ほど話し合いの時間を儲けようと存じます」

「私はいないことが多いと思うからそのあたりは任せるわ」

「承知いたしました」

「私はナザリックに戻るわ。こっちに来れるのは、やっぱり明日の夜になるかしら? 後の事は頼んだわよ」

「「「はっ!」」」

 

 眩い転移の光が消えて数秒後、ルプスレギナが深い息を吐いた。

 

「あーーーーー、いつかこんな日が来るんじゃないかと思ってたっすけどついに来ちゃったっすねぇ」

「無駄口叩かないで始めるわよ。私たちに気を遣ってくださって前から話し合いの場を設けてくださったじゃない」

「それはそうっすけどー。ソーちゃんはそれでいいんすか?」

「……私はお兄様を信じてるわ」

「露骨に雑にはなんないと思いたいっすけど。おにーさんって言わないとわかんないところがあるっすからねー」

「…………私はお兄様を信じてるわ」

「じゃ、ソーちゃんはそれでいいっすよ。私はおにーさんへの注意をまとめとくっすから」

「………………念のために私の事も入れておいて」

「はいはい」

「もう二人ともちゃんと働いてよぉ。今日中って言われてるんだしぃ」

「アルベド様が来るのは明日っすから余裕っすよ。それよりおにーさんの足止めの方が重要っす。アルベド様は驚かせたいみたいっすから」

「交代で誰かが見張りに出る必要があるわね。今日のお兄様は帝都で過ごすと仰っていたから多分大丈夫とは思うのだけれど」

「それじゃ最初は私が」

「ルプスレギナ様、こちらを運ぶのを手伝っていただけませんか? 私一人では傾けてしまいますので」

「仕方ないっすね。でもやっぱアルベド様はお優しいっす。ユリ姉やナーちゃんは当然としても、あいつらにまで声掛けるんすから」

「……………………それだけお兄様が魅力的なのよ」

「それだけとは思えないっすけど。ま、ともかくテキパキやっちゃおうっすかね!」




色々先送りしたり後回しにしてもきっと誰も困らない、書いてる自分がややこしく思うだけ
そろそろクライムイベント1を出さねばと思うのだが
とりあえずキーノとカルカの開通が遠いです
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