次と方向がかなり違うので分割しました
エ・ランテルのお屋敷では色々あっても、帝都のお屋敷では平和な時間が流れていた。あちらでも若旦那様な若旦那様が始めた事業、美容品の製造販売は順調である。
新製品のアイデア出しと製造にあたるメイドたちの指揮と品質管理と一部営業と販売はカルカが担っている。とても負担が大きいように思えて、曲がりなりにも一国の元首であったカルカは難なく熟す。事業の規模が小さい事も大きい。現状では事業を拡大する予定はない。なお、カルカの友人となった公爵家令嬢のフリアーネは、カルカから直接美容品を購入出来るのが結構な利権に成長しつつあった。
レイナースはカルカとは別ルートの営業と販売及び容器の仕入れ等を担う。事業が始まったのはレイナースの要望が発端だったので、レイナースなりに責任を感じて付き合い始めたらずるずるときてしまった。近々帝国から魔導国に移ることになっているが、住まいは帝都のままにしておいた方が色々な方面にとって都合が良い。
ジュネは数学の演習を兼ねて帳簿付けである。数学というより簿記である。一緒にあれやこれやの講義を受け続けているソフィーに比べると計算は遅いが正確だ。また、思考の方向性がソフィーより鋭い。確実に穴を埋めて次に進むのは、性格が大きいのだろう。
残るソフィーは友軍である。まだまだお子様なソフィーに責任ある仕事を任せるのは酷と云うもの、と若旦那様が告げたところ「出来るもん!」と豪語するだけで実際の作業に当たるとすぐに飽きてしまうのは間違いなく父の血である。
以前、ソフィーが家出した事もあって、男は帝都への日参を続けている。ソフィーが家出しようとあれでもとても強いので、放置してもソフィーに危険はない。ソフィーが危険をばら撒く可能性の方が高い。そして、問題を起こされると困る。それでシャルティアからの意味不明な抱っこ耐久に繋がった。
日中、時間が合えばレイナースと。定期的にシクススと。二人とも明るい時間だろうと気にしないようになった。
週に一度のお泊りでは、ソフィーのお食事が絶対である。
ソフィーは一度のお食事で気持ちよくなってふらふらしてしまうため、その後はジュネが搾る。搾りつくす。ジュネは乱れに乱れ、息も絶え絶えな有様になっても、
『マイスターがお望みでしたら、どうぞジュネの体をお使いください♡』
妖艶な笑みを見せた。
男がジュネを完全に征服したと思えた時は血を使ったり、ルプスレギナに回復魔法を掛けてもらったりした。覚醒サキュバスの転生体であるのは伊達ではない。底の知れない女である。
カルカはその後になる。
男はジュネに絞られた後なので、なかなかその気になれない。凄く頑張れば出来ないでもないだろうが、そこまで頑張りたくない。手や口でしてやるのがほとんどだ。
折角なので、処女のまま色々開発しようと考えている。中でも外でもイケるようになってきたので、次は胸だけでイケることを目指している。なお、ベッドの隅では双子幼女が眠っている。カルカの羞恥を煽る小道具として寝かせているのだ。二人がこっそり目を覚ましてこっそり覗くことがあるのを、二人は知らない。
「お父様! 今日は夜までいるんですよね? 私がちょっと出かけてる間に帰っちゃったりしないですよね?」
「しないよ。昨日は来るのが遅かったからな。アルベド様にもその旨をお伝えしてある」
朝からの講義が一段落付き、ジュネが参考資料や筆記具を片付ける。
ソフィーは男に詰め寄って予定を再確認しながら、夜に思いを馳せた。
狩場直行君の使用制限の関係で、父は日付が変わる前に帰らなければならない。日付が変わるまでは帝都にいる。夕食の後で夜のお食事をする時間は十分ある。
昨夜も夜食を取ったので二日連続だ。想像し、顔をほころばせた。
「あっそうだ! お父様も一緒に行く? レイナースも使ったことがある仕立て屋で、ナザリックで作ったドレスの方がずっといいけど見るだけなら面白いかなって思って。別に作るわけじゃないからうちに呼んでもあれでしょ? その後は市場をぶらぶらして。あ、だいじょぶ大丈夫! お小遣いばっちりだから。この前闘技場でちょっと大儲けしちゃって」
「ちょっと待て。出たわけじゃないだろうな?」
「賭ける方で儲けたの! 出ても私が一番強いって決まってるんだから出ても仕方ないでしょ?」
そう言いつつも、レイナースから必死に出場を止められた事があるソフィーである。
「遊びに使う金くらいあるだろう?」
美容品事業で出た利益の一割はソフィーのポケットに入っても構わない。そのあたりは帳簿を管理するジュネの差配でどうとでもなるはずだ。
「わかってないなあ。賭けて勝つのがいいの!」
ソフィーは、力強く言い切った。
男はジュネを見る。
ジュネはにっこり笑った。男の懸念は伝わったのだろうか。
「まあ……、賭け事で身を持ち崩すのは王道だから、そこだけは気を付けるように」
「お財布はジュネに持たせてるから大丈夫です」
そのジュネと結託されて裏金を作られては面倒である。
提供した原料の量から各種製品の製造量、販売個数、在庫、利益等を一瞬で計算できる男なので、何かが起こったら気付ける、はずだ、おそらく。
何かが起こってしまったら謹慎させることになるだろう。それだって、ソフィーは下手なところに閉じ込めておけない。余剰次元の住人であるため、大抵のものはすり抜けてしまえる。
「ジュネ、ソフィーを頼むぞ」
「私に命じられるよりもマイスターが同行為された方が確実でございますし、ソフィー様もお喜びなります」
「シクススもカルカもいるから今日は止めておくよ。ソフィーが羽目を外し過ぎないようによく見ていてくれ」
「賜りました。ご安心ください。ソフィー様が目に余るほどに賭け事へのめり込む事態になってしまわれましたら一瞬で飽きさせて御覧に入れます」
「……そうか」
一体何をして飽きさせるつもりなのか。
自信満々に言い切るジュネに、男は何も言えなかった。聞くことを躊躇わせ理解を諦めさせるその気持ちこそが、男が周囲へ頻繁に味合わせている気持ちである。
ソフィーは相変わらず壁をすり抜けて自室に戻り、ジュネに手伝ってもらって着替えた姿を父に見せて可愛いと綺麗を両方言わせてから出かけていった。
男が書斎の窓からソフィーたちが乗った馬車を見送っている時である。予定通りにメッセージの魔法が届いた。
『そろそろ時間だ。そっちは大丈夫か?』
「問題ありません。たったいまソフィーがジュネを連れて帝都の街へ向かったところです。書斎には私とシクススだけがおります」
『わかった』
若旦那様が突然の独り言。
奇行が多い若旦那様でも、今のはメッセージの魔法へ答えていたのだと察したシクススである。
「今のはメッセージの魔法ですか? どちらから届いたのでしょうか?」
「すぐにわかるよ」
男はシクススの手を引いて、書斎の壁際に移動した。
それに合わせて、中央に闇色の球形が現れる。ゲートの魔法だ。扉の大きさから、小柄なシャルティアではない。姿を現したのは、豪奢なローブに身を包む我らが偉大な主である。
「ようこそおいで下さいました」
「よい。楽にせよ」
少しの間呆けてしまったシクススは、男の隣で慌てて頭を下げた。
アインズ様がいらしたことに驚きはしても、帝都にお越し下さることはとても有難いことに稀ではない。アインズ様はナザリックから離れた帝都にいる自分たちを機に掛けてくださっているのだと歓喜に包まれる。
ああアインズ様アインズ様なんとお優しいアインズ様、御方のお優しさはまさに海よりも深く天よりも高く、御方の優しさに包まれ我らは安らぎを得る、御心に従い、全ての者を救済する御方。シクススの脳裏にアインズ様賛歌第九番が流れるのはいつもの事だ。
アインズ様賛歌は12番まで出来ている。
アインズ様のお優しさはさておき、シクススが思わず呆けてしまったのは、アインズ様に同行者がいたからである。
「シクススに話は通っていたか? フィースがシクススの力になりたいというので連れてきたのだ。シクススには帝都で慣れない仕事を任せしまっているからな。何でもとは言えんが、希望があれば出来るだけ叶えよう」
「いいえ、とんでもないことでございます! こうしてアインズ様にいらしていただける以上に私が望むことは何もございません」
「そうか。いつまでと決めているわけではないが、フィースと協力してこれからもここの管理を頼む」
「かしこまりました」
「そう言えば、フィースもシクススと同じで創造主はホワイトブリムさんだったな」
「はい、覚えていてくださって光栄です! 帝都へ出張しているシクススを以前から気になっておりました。今回はわたくしめの我儘のために帝都までお連れ頂き誠にありがとうございます!」
「仲間を思う事を我儘と言うのか? そんな我儘なら幾らでも言うと良い」
「アインズ様のお言葉を励みに全力で頑張ります!」
亜麻色の髪の乙女、フィースはとても元気が良い。
赤い目を輝かせて意気込みを語り、アインズに仄かな喜びを、シクススに仄かな疑念を抱かせた。
フィースとの取引が上手くいった若旦那様は一安心である。
「シクススはフィースに屋敷を案内してくれ。アインズ様のお相手は私が務めさせていただくから」
「うむ、世上の話を耳に入れるのも割と重要でな。私たちの事は構わん。帰る時には声を掛ける」
「「かしこまりました」」
アインズ様にそう言われてしまっては居座るわけにいかない。二人は丁重に礼をして書斎を出た。
鼻唄を歌ってスキップしそうなフィースに、シクススは袖を引っ張った。
「若旦那様から聞いてたけど、どうしてこっちに来たの? 若旦那様と何かあったわけじゃないんでしょ?」
「ん-、あったと言えばあったかな。でも秘密にしてって言われてるから」
「えっ」
シクススの頭の中で秘密の事柄が幾つも過る。
最早秘密でもなんでもないかも知れないが、若旦那様との関係は秘密だ。頭に公然の、と付くが。子猫ちゃんになるのは本当に秘密だ。ルプスレギナから覗いていた事を教えられたが。ディルドを使って、あまつさえ若旦那様の前で使用したことがあるのも絶対に秘密だ。ソフィーに見られたかもしれないが。ディルドを新しく作ってもらってベッドの上で腰を振る事が稀によくあるのは本当に絶対に秘密だ。ソフィーには絶対に覗いたりしないようにと強く言ってある。
フィースと若旦那様との秘密は一体どれなのだろうか。
「秘密って何? フィースが秘密にしたい事? まさか若旦那様が秘密にしてくれって言ったわけじゃないでしょうね?」
「こっちじゃ相談役殿じゃなくて若旦那様って呼んだ方がいい?」
「それよりも秘密って何? フィースが知られたくないのよね?」
「私にそんな秘密はないよ! 向こうから秘密にしてくれって言ってきたんだから。そんな事よりお屋敷を案内してくれるんじゃないの?」
「そんな事、じゃないわ! 若旦那様はフィースに秘密な事をしたの!? どんな事!?」
「ちょ、ちょっと……、シクススどうしたの? 顔が怖いんだけど?」
「何を隠してるか聞いてるだけでしょ? 何? 答えられないの?」
「だから秘密なんだって」
「その秘密を聞いてるの!」
若旦那様がシャルティアに課せられた抱っこ耐久で、ヴァンパイア・ブライドたちを買収した件についてである。若旦那様は、その場に同席していたフィースに、買収した件を黙ってもらうために、アインズ様との接点が多い帝都勤めを提案したのだ。シクススが思う秘密とは掠ってもいない。
二人はやんややんやとやりあい続け、それでも屋敷のメイドたちとすれ違えば完璧で一流のメイドに戻る。
エ・ランテルのメイド見習いと違って、帝都のお屋敷で使っているメイドたちは全員が貴族の子女であり、きちんと教育済みなのだ。恥ずかしいところを見せるわけにいかなかった。
二人が抱える秘密は重さが違いすぎる。重い方が先に潰れるのは自明の理であろう。
次話は今書いてるとこです
本話投稿時点で10kちょい書きました
あと何字増えるかは未定