本話12k
何故か負債が増え続ける父と違って、娘は順調に謹慎期間を消化していた。偉大な母の指導による賜物である。最早謹慎と言うより研修と言うべきだが、総責任者である母が為すのだからこれでいいのである。
その母はエ・ランテルに行っていた。本日はナザリックに戻らず、明朝の始業時間に戻るらしい。
謹慎期間最終日、娘は父と二人きりで夜を過ごせる事になった。ソフィーはドキドキわくわくしながら謹慎部屋に戻った。
父はソファに座り、テーブルにどんと積まれた書物を消化している真っ最中である。毎晩見られた光景だ。書物はどれもこれも大判で分厚く、肩越しに覗き見れば虫眼鏡が必要と思われるほどに字が小さい。
日中は母に付き添って様々な書類仕事に必要となる知識を叩き込まれた。夜になったらなったで、夕食後にお勉強タイムが設けられて両親から色々指導された。今夜は、明日には晴れて自由になれる謹慎期間最終日の夜である上に母が不在のため、お勉強はなし。折角自由を満喫出来る時間に活字なんて見たくない。
活字を見てるのは父であるが、父は自分を見るべきである。早速言葉と行動に移した。
「ねえねえ、お父さまぁ。本なんていつでも読めるんですから、今はソフィーの相手をしてください」
背もたれ越しに父の肩に抱き着き、読書の中断を要求する。しかし、答えは非情で連れないものであった。
「後でな」
この男は読書中、外部を忘れる。返事があっただけマシであるのだが、ソフィーはその事を知らない。とても可愛い実の娘が甘えているのになんと雑な言葉であることか。少女の胸は怒りに燃えた。
「後ってなんですか! ソフィーと二人きりなのは今だけなのに、いつでも出来る読書を優先するんですか!?」
日中の研修が終わって謹慎部屋に戻ると、父以外に母もいた。それはそれで嬉しいが、父と二人きりにもなりたい。
帝都に戻ればジュネがいる。今やソフィー専属の従者のようになったジュネであり、一緒にいる累計時間は父や母より長い。相性もよく、とても仲良しだ。しかし、最後には美味しいところをかっさらっていくジュネである。色々ずるい。
今夜はどちらもいない。正真正銘の二人きりである。本当の意味で父と二人きりになるのはソフィーにとって初めてであるため、母がエ・ランテルに向かうと聞いた時から夜を楽しみにしていた。それが何という事だろう。これは明らかに悪い事だ。母やアインズ様に言い付けたら絶対叱られるに決まってる。
心優しいソフィーは父の悪行を誰かに言い付けようとは思わず、自分の力でやってやると決意した。
「お父様はお母様が来ない限りずっと本を読んでるじゃないですか! 本ばっかり読んでちゃダメです! 実践してください!」
「その実践に至るための知識を仕入れてるんだよ。大体何の実践だ」
「入力だけじゃダメだって言ってるんです。知識を本当に自分のものにするには出力が必要なんですよ? お父様はため込むばっかりです」
流石はこの父とあの母の娘である。ソフィーの言葉は尤もである。尤も、日中の研修中に母から言われた事を受け売りしているだけでもある。
「そのために回帰がある。故に極大も極小も、無限も扱える」
「え……っと……?」
回帰を簡単に言えば、出力を入力に差し戻す事。フィードバックと言い換える事も出来る。数学でも重要な概念だ。出力を入力に繰り返して差し戻す操作で、極小や極大を得られる。
ソフィーは生まれた時から知恵や知識を自身の内に眠らせていた。母から受け継いだものだ。成長によって、それらを万全とは言わないまでもある程度扱えるようになった。また、聡明な頭脳も受け継いだ。このまま順調に成長していけば、いずれ母と肩を並べるくらいの知謀を誇るようになれるかも知れない。
しかし、現時点では蓄積も研鑽も圧倒的に足りてない。父の言葉がわからず、きょとんと目を瞬かせた。数秒して、けむに巻かれたと思った。母ほどではないが、割とある胸に怒りの炎が再燃した。
「そんな事言ってるんじゃないです! 読書なんていつでも出来るじゃないですか!」
「あっ、こら!」
ソフィーは、父が広げる本をぱっと取り上げた。
漫然と読書するだけであったら、読みかけの本を取り上げられようと内に潜って考察を始める男である。しかし、今は違う。目的をもって必要な情報を取り入れてるところだ。内容の理解や考察は後回しにして、兎にも角にも借りてきた本を読みきらなければならない。
ソフィーの謹慎期間最終日と云う事は、明日には借りた本を全て返さなければならないのだ。読んでない本がテーブルの上にどんと積んである。今夜は徹夜を覚悟していた。
当初の予定では、ここまでギリギリにならないはずだった。
しかし、シャルティアに捕まりシズに捕まりアウラに怒られセシルはご機嫌斜めである。シズの手伝いはありがたかったが動物性たんぱく質の提供を強いられ、上の口だけでなく下の口からも要請され、上下の上達に舌を巻いた。
そうして大胆に時間を削られた結果がテーブルの上に鎮座している。
「俺だってソフィーの相手をしてやりたいと思ってるよ。だけど、いつでも出来る読書じゃないから優先してる。明日には全部返さなきゃならないんだ」
「……お父様って本当はバカじゃないですか?」
「なんだと!?」
バカバカ言われるのは慣れてる男だ。いつもなら聞き流したが、言葉を発したのは実の娘。威厳ある父でいようとはこれしきも思ってないが、娘からバカ呼ばわりされるのは聞き捨てならない。そんな娘に育ってしまった事をお母様に知られたら、父娘共々怒られるに決まってる。
これはバカ呼ばわりが頭に来たからではない。ソフィーのためだ。
ソフィーのために礼節が如何に大切か説いてやろうと振り向けば、娘は深く息を吐いて顔を横に振った。
「返したら借りなおせばいいじゃないですか」
「…………あっ」
「テーブルのが全部ですか? 二十ちょっとならお父様と私とお母様の名義で全部借りられます」
「俺は特例で二十冊まで借りられる。俺とソフィーで足りる。お母様に面倒を掛ける必要はない」
「借りなおせば大丈夫ですよね?」
「……そうなる」
「お父様ってちょっとこう……、時々視野が狭いですよね」
「くっ!」
ソフィーの指摘は父の急所を射抜いてしまった。
基本的には視野が広い男であるが、時々視野が狭くなるのはソフィーの指摘通りである。その時々は、アルベドが僅かでも関わっている時だ。
「解決しましたよね?」
「……したな」
「お父様はソフィーに何か言うことないですか?」
「ソフィーのおかげで余裕が出来たよ。ありがとう」
「どういたしまして。えへへ♪」
ソフィーはパッチリした目を嬉しそうに細めて、もう一度父の肩に抱き着いた。父はこちらを向いたので今度は正面からだ。そのまま背もたれを飛び越えて、父の膝の上にふわりと着地した。
こーいう時には角も翼も邪魔になるので、どちらも仕舞っている。仕舞えない母は大変そうだと思わなくもないが、上手くやってるのをその目で見ているため気にしても意味がない。
今夜は上手くやってる母のポジションに自分がいるのだ!
「それじゃあ……、今日の夜はソフィーの相手をしてくれますよね?」
「ほどほどに、な」
「いっぱいがいいです♡」
「それはソフィー次第だよ」
「頑張ります!」
謹慎期間中は、母が上手くやってるのを見てきたソフィーである。
ソフィーがミルクを飲むとふらふらしてしまうのは変わらないが、毎日摂取し続けた成果か、意識を失うまではいかないようになった。昨夜はベッドに沈んでぐったりしながらも、母が上手くやってるのを最後まで見ることが出来た。
最後まではジュネとの約束もあるし、母が同伴してくれると言ってくれた。それはまだお預けである。
しかし、そこに至るまでも色々あると、母がしているのを見て学んできた。思い出すとキュンとくる。
「今夜はソフィーだけですから、お母様やジュネにしてあげてるみたいに……」
ソフィーが母から受けてきた研修は、業務に関わる事だけでなくサキュバス的なものも含まれていた。
ソフィーは心をるんるんとさせながらもミルクの歌を口ずさむことなく、サキュバス的に舌なめずりした。
ソフィーは父の娘である前に、覚醒した大淫魔の娘であり、立派なサキュバスだ。父の精液が大好きである
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夕ご飯を食べてお風呂も済ませて、後はもう寝るだけだが夜はまだ早い。
母と共に謹慎部屋に戻ったソフィーは、父のすぐ後ろで服を脱いで夜着に着替えた。
父は母を送るとすぐに読書に戻ったため、ソフィーが着替えた事を知らない。
ソフィーが選んだのはベビードール。キャミソールに似たちょぴりエッチなランジェリーだ。ベビードール自体が下着なので、その下にわざわざブラジャーは着けない。ブラジャーやパンツなどとは違ってゆったりしている。ナザリック製のベビードールは非常に滑らかで柔らかいため、擦れて痛くなる事はない。着心地抜群であり、ソフィーは普段着の一つにしてもいいかなと思った。さすがにちょっとあれかなと思ったので止める事にしたが。
日本語の「ちょっと」は逆説的に「かなり」を意味する時もあるが、この場合の「ちょっと」は「ほんの少し」の方の「ちょっと」である。
ベビードールの下にパンツは穿いてもいいが、ソフィーは穿いてない。穿いてなくとも、ベビードールの丈は膝まである。ちゃんと隠れているので問題ない。
ただし、透けてる。曇りガラスより透けてる。濡らした曇りガラスくらいには透けてる。バスト部には刺繍があり、裾はレースになってお洒落だが、ほとんど全裸と言ってよい。
ソフィーはそんなベビードールを、普段着にしても良いと思ったのだ。覚醒した大淫魔を母に持ち、覚醒サキュバスの転生体らしきヴァンパイアブライドを従者に持つサキュバスなだけはあった。
もしも普段着にしたら、それじゃソリュシャンと変わらないと、父は盛大に呆れた事だろう。従者は他意なく讃えただろうが。
「お父さまぁ、今夜のソフィーはかわいいですか?」
「ああ、とっても可愛いよ」
お父様はちょっぴり苦笑交じりである。可愛いし煽情的な衣装だと思うが、子供が甘えてるように思えてしまう。
エッチな下着をつけてるのに、その気にならない父にソフィーは唇を尖らせた。父の脚の上に横向きに座って、太ももに股間が触れているのに感じられないのも大いに不満。
しかし、ここで不満を表してしまうようでは母から教えられた事が何もわかってないも同然である。ソフィーは色々学んだのだ。
尖らせた唇は父の耳に触れさせる。
「お父様のために、ソフィーはエッチな格好になったんですよ? お父様はソフィーにいっぱいエッチなことしていいんですから。お母様やジュネにしてあげてるみたいに、ソフィーにもいっぱいしてください♡」
父の耳に唇を近付け、耳朶に吐息を浴びせながら甘えた声で囁いた。
偉大な母に薫陶を受けただけはある、実に堂々たる誘惑であった。並みの男なら獣に回帰すること間違いなしである。
しかし、誘惑された相手はその偉大な母と夜毎愛し合ってきた。昨夜もだ。今日の日中は搾精人形に絞られている。ソフィーが如何に頑張ろうと、今は勝算が薄い。
けれども、頑張ってる娘には応えようとする情が、この男にもあった。実際、ソフィーはとても可愛い。
「ソフィーが良く眠れるようにね」
「あっ♡」
ソフィーの腰に回った男の腕に力が入る。もう一方の手はソフィーの頬を撫で、鼻先を触れ合わせた。
「えへへ♪ おとうさまだーいすき♡」
ソフィーはふにゃりと笑い、艶やかな唇を押し付けた。
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一方その頃、お母様はエ・ランテルの大きなお屋敷にいた。
書斎に呼び出したのは、ソリュシャンとルプスレギナ、たまたまエ・ランテルに来ていたエントマ、シェーダとリファラにキャレット、一応ミラも。ユリは孤児院で、ナーベラルは冒険者としてお出かけ中である。
ラキュースとクレマンティーヌは若旦那様の玩具なので呼んでない。
皆、どことなく苦い顔をしていた。
これがナザリックにて守護者統括からの言葉であれば、感情を顔に出すことなく粛々と受け入れる。しかし、エ・ランテルの大きなお屋敷は特別な事がない限り公的な場所になり得ない。プライベートでは自分の前であろうと崩してよいと言ったのはアルベド自身である。
アルベドは自らの言葉を彼女らが苦く感じるとわかっていた。アルベドにとっても面白くない話なのだ。
「お兄様は週に一日はシャルティア様の手伝いに駆り出されると仰るのですね?」
「そうなるわね」
ソリュシャンは表情を凍らせ、アルベドの顔は苦々しい。あのシャルティアに、事もあろうかあのシャルティアに言い包められてしまったのだ。敗北感は深い。
「そのついででギター教室なんですかぁ? すっごく上手だったのにまだ練習するんだぁ」
「そう聞いてるわ。セシルにはシズが引き合わせたようね」
「はい。私もシズと一緒にセシルに会いましたぁ」
氷の悪魔でありナザリックオーケストラのヴァイオリニストであるセシルは、この場の全員が面識はあっても為人まではよく知らない。但し、シズの事は良く知ってる。
情報管理の観点からナザリックを離れられないシズなのだが、どうやら伏兵であったらしい。さすがはプレアデスの一員である。油断ならない。
「そこらへんはおにーさんがギターにハマってるの見ればわかるんすけど、アウラ様が来るのはどーしてっすか? 帝都じゃ時々来てたっすけどエ・ランテルじゃさっぱりっすから、用は終わったんだと思ってたっす」
アウラが週に一日はエ・ランテルのお屋敷に泊まる事になったらしい。アウラは階層守護者だ。お屋敷の若旦那様は、ソリュシャンたちよりアウラを優先しなければならない。実質一夜減ったようなものである。
「その事だけど、マーレが女を覚えたらしいのよ」
「「「「えっ!?」」」」
アルベドから飛び出た衝撃情報。
話し合いはプレアデスの三人に任せて黙していた一同も、これには驚きの声を上げた。
色々とちっちゃくて可愛いマーレでは不可能ではあるまいか。よしんばマーレが女体に興味を覚えたとしても、それを指して女を覚えたと云うのは聊か。
言葉通りであるとしたら、マーレ様のマーレ君はマーレさんなのだろうか。これまた衝撃である。
努めて冷静であろうとしたソリュシャンだけが気付いた。
「アウラ様は一時的に大人の姿になれる赤いキャンディーをお持ちと聞いております。それをお使いになったのでしょうか?」
「そうらしいわ。これはあの子だけじゃなくてシャルティアも絡んだらしいのだけど」
女の体を覚えてしまったマーレは、欲望と興味が赴くままに連夜エルフメイドたちの体を貪ってしまったが、お兄ちゃんから注意されてしまった。
注意したのはアウラからの激しい要望があったためだが、マーレのためでもあった。
マーレは幼い。肉体的に成熟しておらず、精液は作られない。キャンディーを舐めて大人の体になっても精液は充填されない。作られないので達しても続けて出来るわけだが、溜まったものを放出する必要があるわけではない。
なのに続けてやってしまうと、遠からず飽きが来ると思われた。それはマーレにとっても、ひいてはナザリックにとっても望ましい結果にならないだろう。
よって、お楽しみは週に一日と固く約束した。
その一日を、アウラは精神の安寧のためにエ・ランテルへ避難することにした。
「話をまとめますと、一日はシャルティア様、一日はギター教室とシズ、一日はアウラ様。お兄様は週に三日を拘束される。そうなるわけでございますね?」
「……そうね。アウラは夜に来て朝には帰るでしょうけど」
アルベドは顔こそ逸らさないが表情はやや苦い。
アウラの件には関わっていないが、シャルティアと、ギター教室とシズはアルベドの不手際によって生じたようなもの。
これまで、若旦那様がエ・ランテルにいたのは週に六日。一日は帝都で過ごす事になっている。
そこから三日を引くと週に三日。半減である。皆の顔が苦くなるのは仕方ない。
彼はナザリック守護者統括相談役であり、サキュバスであるアルベドの給仕係にして美味しいお食餌で愛しい男だ。アルベド直属と言える。
命令権があるのはアルベドだけだ。アルベドが自由にして良い。本来ならソリュシャンたちにアルベドが気を遣う必要はない。
しかし、アルベドは彼女たちが彼に向ける想いを知っている。そしてそれだけではない。
彼を強力に引き留める重しとして、彼女たちにも頑張ってもらわなければならない。まさか彼が妹の元へ戻る事は絶対ないだろうが、保険は幾らあっても良いのだ。彼女らに幸せのお裾分けをしたいとの思いもある。
そのためなら少々手を掛けることなど大した苦労ではない。
「あなたたちの考えてる事はわかるわ。あの子との時間が半分になるわけだから、寂しく思うのは当然よね」
誰も言葉にも動作にも表さないが、アルベドの言葉を肯定していた。
そう思うであろうことをアルベドは予測していた。問題が生じるとわかっているなら、予め解決策を用意するのがアルベドである。
アルベドは虚空から小瓶を取り出し、テーブルの上にコトリと置いた。
ガラス製の小瓶である。装飾はなく、細くなった首にガラス製の蓋が嵌め込まれているだけ。容量はコップ一杯あるかないか。中身は温かみのある白い液体に満たされている。
「週に一度、これをあなたたちに提供するわ。どう使うかは自由よ。但し、独り占めは止めておきなさい。間違いなく体が持たないから」
「それなんすか?」
ルプスレギナが物怖じすることなく口を開いた。
中身は価値あるものなのだろうが、容器が簡素過ぎる。アルベドが取り出すには相応しくないものに思われた。
「私のスキルで作り出した強壮剤よ。これを彼に飲ませたら一度や二度では治まらなくなるわ」
「あっ! それもしかして、帝都でもおにーさんに飲ませた事あるっすか?」
「一度あるわね」
「やっぱり! いやー、あれは本当に凄かったっす。アルベド様がしてくれてたんすね!」
その時を思い出し、不機嫌そうだったルプスレギナは笑み崩れた。涎を垂らしそうなほどだらしない顔である。
「本当に凄かったんすよ。あの時のおにーさんて三十回はしてたんじゃないっすかね? 六人はいたのに全員どろっどろにされちゃって、ソーちゃんも全部吸い切れなかったっす」
「ルプー! あの時の事は言わないで!」
帝都でアインズ様がヤルダバオトを討伐された祝勝会を開く少し前の事である。
アルベドは男へ件の秘薬を飲ませはしたものの、アインズがヤルダバオトを討伐したとの連絡を受け、急遽ナザリックに帰還。いきり立った男はソリュシャンらが六人がかりで鎮めたのだ。
回数が多いのは時々ルプスレギナが回復魔法を掛けて精液を充填させたわけだが、単に回復しただけなら余力があろうと二桁は出来ない。途中で飽きる。それを飽きさせず欲望をぎらつかせ続けたのも秘薬の効果のである。
共同戦線を張ったシェーダとミラは顔を赤らめ、リファラとキャレットは余りの数字にぽかんと口を開け、一拍遅れて両手で隠した。
エントマは小さく震えた。三十回もされたら死んじゃうと思った。
「さ、三十回……」
アルベドはたらりと冷たい汗を流した。
アルベドも彼に秘薬を飲ませた事はあったが、そこまでの回数はなかった。もしもそんなにされてしまったら、間違いなく吸収しきれない。それ以前にどうにかなってしまう。使わなくても、入れられなくても、口と手指だけで失神に追い込まれた過去があるのだ。
今やそのような無様は晒さないと思うが、三十回は絶対無理だと確信があった。
「それを週に一回もらえるんすね! いやー、すっごい楽しみっす♡ その時はここにいる全員一緒でもいいんじゃないっすかね?」
ソリュシャンは急性精液中毒になってしまった事を恥ずかしく思い、アルベドとて想像も出来ない回数に恐れおののいていると云うのに、ルプスレギナは来る夜を楽しみにしていた。
アルベドを含む全員が、ルプスレギナへ畏怖の念を抱いた。
無論のこと、ルプスレギナも三十回は無理である。その半分の半分も厳しい。あの夜、それだけの数を唯一こなしたのはこの場にいないジュネだけだ。
皆で一緒に気持ち良くなって、一休みしてしたくなったらすぐにしてもらえて、疲れたら回復魔法を使えばよいとルプスレギナは考えている。
そもそも三十回とは、ルプスレギナが何度か回復魔法を使って達成した数字である。
コントロール出来るのは自分、との余裕がルプスレギナにはあった。
「ま、まあ、どう使うかは任せるわ。」
「はいっす! アウラ様がいる時でもいいっすね。大人になったアウラ様ってどんな感じなんすかねー?」
「勝手に決めないでちょうだい。アルベド様からいただいた秘薬は相談して使うのよ」
「週に一個くれるって言うんだから一回くらいいいじゃないっすか」
「それは、そうだけど」
話が一先ずまとまり、性悪姉妹がこれからの事を考え始めた頃になって、アルベドははたと気付いた。
「なんですかぁ?」
視線を向けられたエントマが、こてんと首を傾げた。
性悪姉妹もメイドたちも吸血鬼も、実に今更になってエントマが同席している事に思い至った。
アルベドがお屋敷に滞在しているナザリック出身の者を集めたのでエントマがいるのは自然だが、内容が内容である。本題は彼が様々な理由で時間を取られる事ではあるけれど、重要なのは同じ時間を過ごす時の過ごし方である。
エントマには早いのではと思われた。
「エントマも彼としているのかしら?」
「えぇとぉ、セックスの事でしょうか? シズと一緒にしてもらいましたぁ」
プレアデスでシズと末妹争いをしているエントマである。シズは色々と小さく、エントマもそれに倣う。その二人にしてやったのか。
性悪姉妹には驚きのような納得のような。
シズと5Pをした事があるアルベドにリファラとキャレットは納得が深い。あの時のシズはアルベドでさえ息を飲むほどに妖艶だった。
「シズは凄かったわね。あんなに小さいのにおちんぽが全部入っちゃうんですもの」
「私は半分ちょっとでした。でもすごかったですぅ♡」
「おぉーー……、エンちゃんに入っちゃったんすか……」
「温泉だったからぁ、お湯で回復してもらったのぉ。でも入った時はすっごいいたかったよぉ!」
「リファラとキャレットも温泉で癒しながらだったわね」
「は、はい……」
「あの時は御助力頂きありがとうございます」
聞くだけだったリファラとキャレットだが、アルベドから水を向けられては黙ったままでいられない。
そうして始まるガールズトーク、もとい猥談。
感性が普通寄りのつもりでいるシェーダは大変居心地の悪い時間を過ごす羽目になった。
ところで、言うまでもないがアルベドが提供した秘薬はアルベドが搾った母乳である。
効果はアルベド自身が確認済みだ。
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その母乳を飲んで育ったソフィーは、父の膝の上に横たわっていた。
ベビードールはとっくに床の上。全裸で仰向けとなり、背を父の太ももに乗せている。
片脚はソファの上から床に落ち、股を開く。
背中だけが父の脚に乗っているので形良い乳房が上に突き出され、尖った先端がいつもより高い。
白い歯は自身の左手の人差し指を噛み、声を殺しているのか内から襲う波に耐えているのか。
全身が汗ばみ、肌をうっすらと上気させ、閉じ切らない唇からは涎が垂れ、開いた股からは雌の匂いが濃く、無毛の割れ目も薄く開いて溢れていた。
「あぁ……、おとうさまぁ……♡」
首は反って頭をソファの座面に落とし、長い黒髪が乱れている。
甘えた声で父を呼び、優しく撫でてもらった。
左手は頭を、右手は乳房を。
左手は自分の涎で濡れて、右手は自分の淫液で濡れている。そんな事は全く気にならない。
「ジュネよりずっと、すごいですぅ♡」
「ジュネに教えたのは俺だからな。ソフィーはもっと欲しいかい?」
「欲しいなぁ♡ でも、次にほしいのはぁ……」
優しい指使いで何度も気持ちよくしてもらった。
母やジュネがされてるのはもっと激しいと思ったが、十分すぎるほど良くなれている。あんなにされるのは、きっと全部してもらってからと思うのだ。
それはいずれと約束している。今ではない。
今欲しいのは違うもの。
ソフィーはサキュバスなのだから、答えは一つである。
「お父さまのミルクが飲みたいです♡ 今度はソフィーがお父さまに……!?」
父の上に横たわりながら、ソフィーは右手を蠢かせた。目当てはミルクが出てくるところ。スラックスを穿いたままの父の股間をまさぐって、ソフィーは目を見開いた。
心地よい快感に蕩けていたのに一瞬で真顔に戻った。
「なんで大きくなってないんですか!? ソフィーにこんなにエッチなことしたのに小さいまま!? どういうわけですか!!」
ソフィーはサキュバスでもまだ処女で、まだまだ幼い。性欲はあっても食欲が先に来る。食欲を満たすのが精液だ。それには男性器の勃起が必要なのだが出来てない。自分の体をあんなに色々したと云うのに小さいまま。サキュバス以前に女のプライドが許さない。大好きな父が相手とは言え、屈辱である。
「準備するから少し待って――」
「準備!? お母様とする時は最初からずっとおっきいのにソフィーの時は準備!? 準備しないと大きくならないんですか!? なんで!?」
「いや……、なんでも何も……」
男は少々バツが悪かった。しまったと言わんばかりに頬を引き攣らせた。油断していた。
アルベドが相手であったら最初から臨戦態勢。むしろ内なる獣を抑えるのに苦労する。
ソリュシャンたちだったらあちらが望むことをわかっているし、あちらからも適切な刺激を与えてくれる。
そこでソフィーである。ミルクの提供は何度もしてきた。帝都ではジュネが手伝い、謹慎期間中はアルベドが手伝った。ソフィー単独では初めてである。ソフィーだけを可愛がるのも初めてだ。
ソフィーは偉大な母の血を継ぎ、大変魅力的な肢体を誇っているが、やはり娘、と云うよりも気安い相手と思えてしまう。色々可愛がっても、それだけでその気にはなれなかった。あえて言うならば、カルカを開発してる時に似ている。性的な行為ではなく、マッサージの延長のように感じてしまったらしい。
「ソフィーだって俺にしてくれてる最中に濡らしたりしないだろ?」
「すっごくします。お父様にしながら自分でしたりもしてました」
ジュネに実地で教わった事である。優秀な生徒であるソフィーは、教師の言葉を疑わず実行してきた。
「それは、ほら、あれだ。俺の両手はソフィーに夢中だったから自分で準備できなかったんだよ」
「ソフィーが言ってるのはそーゆーんじゃありません。お父様がソフィーの体に興奮してなかったってことなんです!」
「いや、けっして興奮しないわけじゃないんだが……」
昨夜アルベドとたっぷりしていなかったり、日中シズへ動物性たんぱく質の提供をしていなければ興奮していたと思われる。残念ながら、今夜は条件を満たさなかった。
「いつもソフィーがしてくれる時はこうだっただろ? ソフィーにじっくりして欲しくて我慢してたんだ」
「……すっごく嘘くさいです」
「うっ」
父の膝上から下りたソフィーは、眉間に皺をよせ半目になって見下ろした。
立ってないのを屈辱に感じれば、自分だけ盛り上がっていたようで悔しくも悲しくもあった。
娘からもデリカシーがないと言われる男には、ソフィーが何を思っているかわからない。怒っている事はわかる。望んでいた事もわかる。正解かどうかは不明だが、出来るのは自分が望ましい事を告げるだけだ。
「ソフィーにして欲しいと思ってるのは本当だよ」
「…………」
ソフィーを愛撫していた時は、手指の動きとソフィーの反応を観察するのに集中して、行為の意味を忘れていた。しかし集中を解いて何をしていたか思い出し、目の前に全裸の美少女が体を潤わせていればそんな気になってくる。
ソフィーが険しい目で見守る間にも、男の股間は膨らんできた。スラックスの黒い生地を大いに盛り上げ窮屈そうだ。
ぷんぷんしていたソフィーもこれには相好をくずし、怒っていたのを思い出して厳しい表情を繕うも期待に赤らんだ頬に潤んだ目は隠せない。
「し……仕方ないですね。お父様にはいっぱいしてもらったし、今度はソフィーがいっぱいしてあげます。ソフィー一人でもちゃんと大きく出来て、ミルクを出せるんですよ?」
ソフィーは座ったままの男の前に跪き、スラックスのベルトを外す。ゴクリと湧いた唾を飲み込んでジッパーを下ろし、えいっと手を掛けた所で厳しかった顔が恍惚と緩み、
「………………ソフィー?」
「はにゃぁ……、いいにおいするぅ……♡」
「ソフィー!?」
男の股間に顔を近付け止まってしまった。
この男、就寝時は全裸かナイトガウンとなる。着替えるタイミングは入浴後だ。スラックスを穿いてると云う事は、入浴前を意味する。
日中にシズから綺麗にされてるので、けっして臭くはないはずである。ソフィーもいい匂いと口にした。サキュバスだけが感じる匂いなのだろう。洗ってない逸物の臭いは、アルベドもじっくり嗅いで堪能した事があった。
ソフィーには刺激が強かったのだ。
さあこれからしてもらうぞ、と意気込んだところだ。なのに肝心のソフィーはうっとりと頬ずりをして、鼻先で先端をくすぐる。時々唇が竿に触れて絶妙な刺激となり、萎えそうにない。
なんなのだこれは、と男は頭を抱えた。
とりあえず、ソフィーにしてもらう前は入浴必須と判明した。ジュネかアルベドの手伝いがいるのも確認できた。
読書に戻る気にはなれず、さりとてソフィーが今しがた見せた剣幕を思うと下手な事を言っては著しくプライドを傷つけると思われ、優しく声掛けをしてソフィーの口や手を誘導し、ぼんやりとしているソフィーに始めてもらったのは十分後。
サキュバスの本能だけで行われる口淫は、いつもより時間が掛かった。
その分焦らされ快感も深く、シズにしてもらった時より量が多かった。
そしていつものように眠ってしまったソフィーの体を綺麗にしてベッドに寝かしつけるのは男の仕事である。
ソフィーと二人きりの時にしてもらうのは、当分の間止めた方が賢明であると思った。
今日もまだ暑いです
明日も暑いらしいですね
この先一週間は暑いぽいです
どこに通報すればいいのだ_(:3 」∠)_