男は王都に一週間滞在してからエ・ランテルに戻った。
ティアとティナが戻ったのはそこから一週間後。ヒルマは更にその二週間後。
男が王都にいる間、クライムは毎晩会いに来た。色々と話をして、色々飲ませて仮の屋敷に泊まらせた。
色々は以前作った強壮剤の効果を弱めたものである。
自分で試してもよくわからなかったので、何種類も試作してヒルマに試させた。秘薬のお店で大好評だったらしい。
そんなものに需要があるのかと、男は不思議でならなかった。むしろ三日で夢精しなくなる薬が欲しい。今は必要なくとも、いつか必要になるかも知れない。必要になっても手元になかったら、シクススだけでなくシェーダたちにも命を握られる羽目になる。
順々に帰ってきたティアとティナとヒルマから報告を受けた。クライムは自分がいなくなってからも仮屋敷を訪れたそうだ。
体を鍛えている若くて健康な男が女を知ったのだ。通いたくなるのは無理もない。
ドラゴニオは「楽しみは貪るものではない」と言っていたが、あえて貪らせる。貪れば貪るほどなくなった時の飢えが激しくなるのは間違いない。
そしてその時、クライムの傍に居るのは誰か。
妹への心を込めた贈り物である。どうか心行くまで受け取って封印されて欲しい。
クライムを用いたラナー封じ込め作戦は順調に進み、遂に発動した。
帰ってきたヒルマは使い切らなかった活動資金の返還を申し出たが、そのまま受け取らせている。元より使い切って惜しい金ではない。準備のための金であって報酬ではなかった。
ヒルマはそれ以上受け取りたがらなかったので、報酬代わりに口を滑らせた。残った金は散財しても取っておいても良い、と。
ヒルマが気付くかどうかはわからない。詳細はまだ秘密なのだ。
王国攻略が成った暁には、八本指の構成員に土地を与えて集落を作ってやる事が決まっている。余った金はそこへ注げばよい。幾らあっても多すぎることはないだろう。
と言う事を、男はアインズから直接聞いていた。無論、誰であっても口外出来ない秘中の秘である。
アインズ様は物事を多角的に捉えるため、アルベド様やデミウルゴス様とは独立した見解をお求めなのだ。己があれこれ話してしまうと独立性がなくなってしまう。
時折帝都のお屋敷で時間を合わせ、魔導国の戦略について語る機会を設けてくださった。
アインズ様にとっては戯れの暇潰しに過ぎないだろうが、学んだ事を死蔵する事無く披露させて頂くのはとても楽しく、大変光栄な事であった。
と、男は思っているが全く違う。
言わばアインズのカンニングペーパーである。
アルベドやデミウルゴスが何言ってるかわかんない状態に陥らないよう、男を使って予習しているのだ。
こうしてアインズがアルベドとデミウルゴスから「流石はアインズ様」と尊崇の思いを強くされるのは自業自得である。
上げてしまったハードルを下げられないため、アインズはあの男を絶対に手放せなくなった。
一応はアルベドの相談役であるが、アインズの秘密の相談役になったのだ。
アルベドにとっては、最早公然であるが秘密のお食事である。
▼
週に一度のお休みにしてアインズ様から許されたお食事の日。
アルベドは書斎のソファーに優雅に腰掛け、向き合う男に言ってやった。
「もうじき王国の攻略が始まるわね。アインズ様の戦略は完璧よ。王国が潰えるのも秒読みになったわ」
「例えアインズ様が為さらなくとも王国の滅亡は必至。苦しみから解き放つのはアインズ様の御慈悲でございましょう」
「そうなったらあなたの妹はナザリックで暮らす事になるわ。あなたはいつでも妹に会えるようになるの。嬉しいかしら?」
男の顔から微笑が消え、左の頬が引き攣った。右目の青は冷え切って、左目の赤は火を吹くようだ。
ケムキチが見たら即座に土下座し、ルプスレギナが見たら素早く距離を取り、ソリュシャンが見たらうっとり見惚れる形相である。
愛しき美神に向けて良い目ではない。しかし如何に主神であろうと言って良い事と悪い事がある。
アルベドはそうと知りながら踏み込んだ。剣呑極まる視線にゾクリとしながら微笑を深めた。
この男が妹に複雑な感情を持っているのを知っている。しかし、名前を聞くのも嫌がる妹。会える事を喜ぶわけがない。そんな事を言ったら怒らせるだけだ。感情の起伏が少なく、怒りを見せるのは稀なこの男を確実に怒らせる事が出来る。
それこそがアルベドの狙いであった。
今までは出来なかった。
彼が妹に会いたがる事は絶対にない。頭ではわかっていても感情は別だ。心の深いところが二人の繋がりを疑った。
血を分けた兄と妹であり、十余年を妹のためだけに生き続け、体の相性は良かったと言い切ったのだ。
彼を信頼出来ないわけではない。信じ切れないのは自分の心。絶対に何があろうと離れたくない男が、他の女に心を向ける。あり得ない事を恐れる自分は余りにも愚かしい。
しかし今、憂いは晴れた。
アルベドも賛同したラナー封じ込め作戦が発動したのだ。
若く飢えた男が思いを寄せる女を前に耐えられる道理はない。
ラナーのクライムへの執着は、ナザリックに協力する条件として挙げるほど強いもの。
これはもう合体待ったなしである。ラナーがクライムで満足すれば兄を求める事はないだろう。
故に禁を破った。
「はい、とても喜ばしく思っております。これも全てはアインズ様のお優しさによるもの。私如きにお優しさを向けてくださるのですから、アインズ様の寛大なお心に敬服するばかりでございますよ」
頬の震えを噛み殺す男が吐いた言葉に、アルベドの瞳孔が縦に裂けた。豊かな黒髪が風もないのに波打ち、美顔からは常の微笑が消え去った。
「……そう。良かったわね。あなたが喜んでくれるなら私も嬉しいわ。アインズ様のご慈悲に感謝しなさい」
「勿論でございます」
二人とも微笑を戻す。しかし、内心ではどちらも荒れ狂っていた。
アインズと定期的に言葉を交わせるようになった男である。これがアルベド以外であったらナザリック追放を画策していた。たとえアルベドが相手でも売られた喧嘩は買ってやる、でもない。アルベドの真意に気付いたからである。
アルベドは、喧嘩の後の仲直りセックスを仕掛けてきたのだ!
かつて二度、機会があった。
一度目はラナーが妹であるとアルベドが知った時。アルベドは途中から演技が入ったが、昔の女と切っても切れない縁があった事に凄まじく頭に来たのは事実だった。激しい言い争いを繰り広げ、アルベドが女の武器を使ったところで互いの想いを確かめ合った。
そのまま激しく求めあえば素晴らしい一時になったのは間違いなかったが、男はアインズに呼び出されてしまったし、アルベドはまだお仕事の時間であった。
二度目は予め打ち合わせをした。些細な言い争いをヒートアップさせて盛り上がり、アルベドは拒みながらも堕ちてしまう台本であった。台本通りに事は進み、男は主神に手を挙げる背徳感に支配欲と獣欲を大いに煽られ、アルベドは快楽に屈服する己を感じて男に支配される悦びに堕ちる。
一度目と違って邪魔は入らず、とてもいいところまで行ったのだが男が脱いだところでアルベドが素に戻ってしまった。ソフィーがお食事の際に匂いで酔ってしまうというので、男は下の毛を全部剃られた直後だったのだ。
攻守が交代し、アルベドは母性を見せつつも男を責め、最後はサキュバススキルの制御が甘くなり共に果てた。
あれはあれで良かったと思うアルベドだが、喧嘩をしてから互いを激しく求め合うセックスもしてみたかったのだ。
「妹はナザリックから出られなくなるわ。でもあなたがいるのはエ・ランテル。あなたにも立場があるし、ずっとエ・ランテルから離しておくわけにはいかないのよ。今は週に一度シャルティアが連れて行ってるようだけど、もっと会いたいでしょう?」
「お心遣いに感謝いたします。それはもう血を分けたたった一人の妹ですから。美しく育ったとの評判も聞き、再会を心から楽しみにしております」
アルベドの仕掛けに男が乗ったのは、自分が高ぶるだけでは駄目だとわかっているからである。
どうしてあんなものを気にするのかわからなくても、「あなたをあの女にとられたくないからに決まってるでしょう!!」と涙ながらに叫ばれた事があった。一度目の言い争いで出てきた言葉だ。妹を気にする素振りを見せれば、アルベドもまた高ぶってくると予想できた。予想は見事に的中し、アルベドが想像以上に高ぶってきたのを感じている。
「あなたの実の妹でしょう? 美しく育つのは当然よ。何度か会ったけれど、黄金と讃えられるのもわかる気がするわね。ナザリックに迎えても見劣りしない美貌だったわ」
「さようでございますか。アルベド様がそこまで仰られるとは、妹は誇りに思うに違いありません」
互いに微笑を湛え、和やかに言葉を交わす。離れたところから見ればそう見える。しかし二人がいる書斎に同席すれば、熱く凍えた悪寒に全身を震わせたことだろう。
微笑の下に激情を隠すアルベドと向き合うのは、ナザリックの誰であっても避けたいものだ。アインズだって支配者ロールを投げ捨て鎮静化を図った。
怒りを押し殺して微笑を見せる男なら、アルベドとは強さが段違いであるため逃げ出すまではいかない。しかし、100レベルの階層守護者であるのにアウラはマーレの陰に隠れ、シャルティアは全力で顔を逸らした。
今のアルベドと向き合えるのは、精神が化け物と指差されるこの男しかいない。
この男の激情を知りつつ正面から受け止められるのは、男の真意を知るアルベドだけ。ソリュシャンなら何でも受け止めてしまうかも知れないが、それでは対等から程遠い。
アルベドとこの男だからこそ成立している。
そしてどちらも理性的だ。心を荒れさせつつも激情に任せて行動することはない。言葉の応酬を重ねながら互いの高ぶりを感じ取り、そろそろ落としどころを探ろうと無言の同意を取り付けて、アルベドが舵を切ろうとしたその時である。
「そうか!」
「「へ?」」
二人だけだった書斎に、突然第三者の声が響いた。
屋敷の者たちには立ち入り厳禁を言い渡してある。アインズが設計して加護の魔法まで掛けたのだから、覗き見も盗み聞きも絶対に不可能。入室はドアを開けるか窓を開けるかしなければ叶わず、転移の魔法で書斎内に移動することは出来ない。
しかし、例外があった。
アインズは自分が設計した書斎に、自分専用のバックドアを仕掛けておいたのだ。
「お前がそこまで妹を思っていたとはな。うむ、うむ。やはり兄妹は仲良くあるべきだ。喜ばしく思うぞ」
「は……、はっ!?」
絶対の支配者を前に不届き極まる間抜けな声を出した男だが、やたらと上機嫌なアインズは気付かない。
「安心するが良い。今のお前は狩場直行君でエ・ランテルと帝都を移動出来るだけだが、移動先を増やすアイテムもある。それを与えよう」
「ほあっ!?」
うんうんと一人頷くアインズは、男が目と口を限界まで開くのを見ていなかった。アルベドが絶句して何も言えないのも当然見てない。
実はアルベドの相談役をずっと気に掛けていたアインズ様である。
重大な情報をもたらした褒美に不老不死を与えた事になっているが、男が不老不死を得たのは隠しクラスの効果である。隠しクラスの特性を隠したままにしたいアインズはそれを教えず、「とても美味しいドリンク」を不死の秘薬と偽って与えた。アイテム名に「とても美味しい」と付くくらいなのだから本当にとても美味しいのは間違いない。それが不老不死と釣り合うかと言ったら無理である。カルマ極悪であるのに、騙した事実はアインズの良心をちょっぴりつついた。
妹の件も気になっていた。兄と妹なのだから仲良しで当然。いがみ合うことがあってもきっと分かり合えると思っているが、例外があるかも知れない。男が妹と暮らせるようにと言ってしまったが、もしも例外であったら負担を押し付けるだけとなる。あの時、アルベドが口を挟んだのもちょっぴり気にしていた。
そこに加えて秘密の相談役である。
金銭欲がなければ物欲もない男だ。そもそも帝都で始めた事業が上手く進み、給金を遥かに超える金貨を手に入れている。それらは全て黄金の輝き亭再建費用に回ったり、人を動かすのに使ったりで、男個人が散財する気配はまるでない。例外と言えるのが子供用のクラシックギターを求めた事と、上質な小麦粉の配給くらい。
男のクラス構成は隠れるものばかりであるためか、名誉も称賛も不要としている。先だってアウラが献上してきた地図も、この男が作ったものをアウラに譲ったのだ。
かつて悩みを打ち明け晴らされた時は、何を欲しがるかと思ったらスーツの新調。そんな物でいいのかと拍子抜けした。
男の貢献に何かを与えたいと常々思っていた。しかし、現状に満足しており、何が欲しいのかさっぱりわからない。
それがようやく欲するものを見付けたのだ。
「生憎、王女をナザリックに迎えるのは王国を滅ぼしてからだ。もうじきとは言え年を跨ぐ。それまでに会っておきたいだろう?」
「それは…………、その通りでございます」
何故かアインズがとても上機嫌で以前の話を繰り返す。
それは違うと叫びたい男であるし、否と言いたいアルベドである。
しかし、こうも機嫌が良いアインズに水を差せようものか。アインズは決定している話を確認しているのに過ぎないのだから。
「よろしい。許可しよう。王女の動向は全て掴んである。王女の部屋に転移することも可能だ。その気になったらいつでも言うと良い」
「…………ありがたく、存じます」
「……アインズ様のお優しさに、この者も感激に打ち震えておりましょう」
「うむ!」
アインズは大きく頷くと、転移が出来ないはずの書斎の真ん中でゲートの魔法を発動し、姿を消した。
熱く凍えた書斎は嵐の前の凪のように静まり返った。
そして嵐が吹き荒れた。
「あなたは何で返事をしちゃったのよ! まさか本当にあの女に会いたいわけじゃないでしょうね!!」
「アインズ様にそんなものは要らないなんて言えると思ってるんですか!? アルベド様は私の考えをご存知のはずです。アルベド様が仰って下さればよかったではありませんか!」
「アインズ様はあんなにご機嫌がよろしかったのよ!? 出来るわけないでしょ!!」
「ご自分が出来ない事を私にさせるおつもりですか!?」
「私に出来なくてもあなたなら出来るかも知れないじゃない!」
「同じ言葉を送らせていただきます!」
「なによ! 私のせいだって言うの!?」
「私には出来ないと言ってるだけです!」
打ち合わせがなければ演技でもない。
突如訪れた想定外の事態に二人とも常の冷静を忘れ、顔を真っ赤にして責任を押し付け合った。
第三者が見れば痴話喧嘩にしか見えないだろうが、本人たちは自身の未来が大きく左右され奈落に突き落とされるとすら思った。
「元はと言えばあなたがあの女が妹なのを秘密にしてたからよ!」
「アルベド様は私もあれもご存知だったのですよ? 知っていて当然と思うではありませんか!」
「そんなのわかるわけないじゃない! 私が何でも知ってるなんて思わないで!」
「でしたらお尋ねになってくださればよかったのですよ!」
「あなたは妹がいる? なんてピンポイントなこと聞くわけないでしょ!」
そうは言うが、アルベドに非があった。或いはナザリックで生まれたため、想像出来なかったと言って良い。
アルベドの執着は、あくまでもこの男個人に限る。触れられる男しか見ていなかった。触れ得ぬ過去には興味が向かない。もっと言えば、男にはかつて家族がいた事を全く失念していた。
ラナーが男の妹であると判明したのは、かつて人間であったアインズが「家族」の存在を思い出したからである。
「欲しかった妹ではありません!」
「ずっと飼われてたじゃない! 私はあなたがあの女とセックスしてるのをこの目で見てるのよ!?」
「したくてしたわけじゃありません! 他に選択肢がないと言ったじゃないですか!」
「体の相性は良かったと言ったわ! だから抜かずに三回も出来たのね!!」
「アルベド様とは一晩で十回もしたじゃないですか!」
「し、したけれど……それとこれとは話が別よ!」
「いいえ、同じです! アルベド様とはあれの三倍以上相性がいいのです!」
「私だって気持ちいいわよ! あなたとセックスする以上の幸せがあるわけないわ!」
「でしたら是非にも改めて確認していただきます!」
「あっ♡」
男の手が、アルベドの大きな乳房を鷲掴みした。
今日のアルベドはお休みであるため、ヴァンパイアブライドのお仕着せに似たエロ衣装。ドレスの前は大きく開き、形のよいへそまで見せた。スカート部のスリットは腰まで届く。全裸にスカーフを掛けただけのような有様だ。
掴まれた乳房は生乳であるし、脚の間に男が膝を差し込めばスリットが開いて太ももが覗く。
喧嘩の後の仲直りセックス再びであった。
「あんっ、だめぇ♡ ……私は怒ってるのよ!? セックスは気持ちいいけれど、そんな事で誤魔化せるなんて思わないで!」
「一体何を誤魔化すのですか! 私が抱きたいのはアルベド様であると知って頂くだけです」
「そんなこと言って話を逸らさないで! んんっ!! んっ……、んぅ…………♡」
指が柔肉に食い込むほど強く掴まれたと思ったら、そのままドレスを引っ張られた。それだけで上半身は裸になり、支えられなくても崩れない大きな乳房がさらけ出る。
腰のベルトを外されれば、ドレスは重力に従ってひらひらと床に舞い降りた。
ショーツは穿いてない。おつゆを床に垂らしてしまっても、ソリュシャンが完璧に証拠隠滅してくれる。
今日は最初からそのつもりだったのだ。下腹を飾るサキュバスエンブレムが妖しいピンク色に輝いた。
▽
書斎のプレイはソファーが定位置。必要に駆られて背もたれが倒れる物に交換した。
「あんっ♡ いやぁ…………、そんなのダメよ♡ アルベドのおっぱいちゅうちゅうしないでぇ♡ 乳首が立ってミルクが出ちゃうわ♡」
「飲んで欲しいのでしょう? そうして私のちんこを立たせて突っ込んで欲しいのでしょう?」
「違うわ! あなたのおちんぽはミルクじゃなくて私が大きくしてあげるの!」
ソファーの背もたれを倒せば簡易なベッドに早変わり。アルベドはベッドに押し倒された。重力で緩く潰れる大きな乳房は、吸われる前から乳首を立たせた。
男の口付けは触れるだけでなく強く吸って、白い乳房に鮮やかな朱を残す。乳房へのキスマークだ。この乳房は自分のものだとマーキングする。
そんな事をしなくても愛しい男だけのもの。実の娘だっておっぱいは卒業した。なのに心も体も歓喜する。
目に見える形で自分は彼のものであると示されるのだ。白い肌に刻む朱を見れば、口元が緩めば下腹の奥が熱くなる。尖り気味だった乳首は張り詰めて、スキルを使ったわけでもないのに母乳が滲んだ。
女としての本能が男を求めれば、サキュバスとしての本能が男を捉えて離すなと厳命する。
虜にして虜にされて、離れようにも離れられない。
「あなたのおちんぽはもう大きくなってるけど、アルベドのお口でもっと気持ちよくしてあげる♡ あーんっ♡」
サキュバススキル「脱衣」を使えば脱がせるのは瞬きの間。黒翼を羽ばたかせてふわりと浮いて、男が下でアルベドが上に。
あーんと開いた口は男の大きさ。膣でも手でも胸でも口でも、全身が男の大きさを覚えている。刷り込まれたと言うのか、それとも染み込ませたとでも言うのか。
「あむうっ♡ んーーーーっ♡ …………ふふっ♡」
何度もしゃぶった逸物だ。回数は比喩ではなく数えきれない。男の体で初めて触れたところがここだった。
硬くて太くてとっても長くて熱い逸物。根元まで頬張れば喉奥を突き更に奥へ。
初めて咥えた時は吐き出される精液だけが目当てだった。あの女とのセックスを盗み見した時は、臭いにあてられ何度も生唾を飲み込んだ。実際に味わえばとても美味しい。シャルティアたちは血に酔うらしいが、こちらが遥かに美味に決まってる。そうと確信出来なければ、如何に美しい男だろうと人間の逸物を咥えられるわけがない。
今は違う。
とっても美味しい精液を上の口でも下の口でもたっぷり味わいたいのはその通りでも、彼に気持ち良くなってもらいたい。
「んっんっ、ちゅぷ、じゅぷ、ちゅるるるっ……。うふふ♡」
口を窄めて頬の内側の粘膜を熱い逸物に隙間なく密着させる。
そのまま頭を振ってやれば、口の中を男が往復した。
上目遣いで男の顔を盗み見ると、苦しいような耐えるような。アルベドが大好きな顔を見せた。
(私のお口でおちんぽが気持ち良くなってるのね♡ アルベドのお口まんこですもの。気持ち良くならないわけがないわ! 彼のおちんぽのいいところは全部知ってるんだから! 私より気持ちよくさせる女なんて存在しないのよ!)
頭の動きを止めれば舌を使う。
咥えたまま絡みつかせ、口から出せば根元を指で押さえて亀頭を舐め回す。
凶悪なのに可愛らしくて、れろれろと舐める内に早くも汁が滲み出る。
ちゅるると吸ったら期待以上の甘露。何度も何度も舐めてきたが、確実に今までで一番美味しい。
高ぶった心が激しく男を求めている。
全部欲しい。全部あげたい奪われたい。
精液も、心も体も命も未来も。
全てを奪って全てを奪われ、永劫に混ぜ合わせた末に一つになりたい。
なのに二つに分かれてる。
だから心も体も求めてしまう。
二つに分かれたものが戻りたがる。
「あっ、あるべど、さまっ!」
呻く男を、アルベドはにっこりと見下ろした。
逸物から口が離れても、繊手がシュッシュと扱き、もう一方で根元を押さえる。
「苦しいの? おちんぽからミルクを出したいの? でもまだダァメ♡ あなたは私に酷いことを言ったわ。まだ許してあげないんだから!」
「くっ!」
扱く手を止めれば、しばらくして予兆が遠のいた。根元を放しても噴き出ない。その代わり、尿道口に珠の雫が浮いてくる。
直に舐めたら我慢出来ない。潰してしまわないよう指先でそっと触れ、指を上げれば長く長く糸を引く。赤い舌がれろりと舐め取った。
男の視線を感じて見下ろせば、ぞくりと体がざわめき始めた。
「もう……、そんな目をして……」
美貌が歪み、睨むような縋るような目を向けてくる。シャルティアが、目からエロビームが出てると力説するのもよくわかる。
焼かれた顔しか知らないあの女は、この顔を知らないのだ。
「あむっ……。ちゅっ……、ちゅっ……♡」
見えない力に有無を言わさず引き寄せられる。アルベドは男の唇を啄んだ。
豊かな乳房は男の胸板で潰されて、下腹に熱い逸物が押し付けられる。
アルベドはゆるゆると腰を振り、唇が離れるのは寂しかったがちょっとの間と我慢して、少しだけ体を滑らせた。
下腹に押し付けられていた逸物が、淫紋の真ん中を滑って解放された。勢い良く跳ね上がってから戻って来る。尻の割れ目の少し下。
位置を合わせるのに摘んだりしない。ピッと右手の中指を立て、自分の尻へ伸ばす。尻の割れ目にそって進めば、反り返る逸物に辿り着いた。
裏筋をそっと撫でたら軽く押す。先端がアルベドに触れ、体を滑らせるにつれ入ってくる。
「お口もいいけど、アルベドのおまんこもいいでしょう? お口とおまんこ、あなたはどっちが好きかしら?」
「今の方……、おまんこです」
「あら?」
そちらとは思ったが、即答されるのは意外だった。
乳房を触られる前から湿っていたし、口を使う間に溢れてきた。見られた時は浅く達した。
一度も愛撫を受けてないのに深くまで受け入れて、腰を振らなくても締めては緩め、肉ひだが取り込もうとして蠕動する。
けれど口だって劣らない。しゃぶってあげれば根元まで咥えられる。舌は媚肉より繊細に動かせるし、吸ってあげるのはお口だけ。下のお口は注がれないと入って来ない。
「アルベドのおまんこはお口より気持ちいいの? あっ? あっ♡」
答えの代わりに抱き締められた。
男も腰をずらし、一層深く入ってくる。奥の壁に先端が届き、軽く圧された。
「アルベド様のお口が素晴らしいのは当然ですが、こうして抱き締める事が出来ません」
「っ!!」
「口付けも」
「〜〜〜〜っ♡♡」
締めようと思ってないのに勝手に締め付け、ぬるりと緩めば膣壁が蠢いた。
アルベドからも抱き着いたので、腰が跳ねるのは耐えられた。
「以前も申し上げた事があります。いえ……、このまま死にたいとは申せません。ずっとこうしていたい。アルベドと繋がったまま」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!!」
掠れた声が耳朶を打つ。アルベドは、自分も、と答える余裕がなかった。
心も体も悦んでいる。密着しているので淫紋から漏れる光は隠せたけれど、繋がったところ全てで知られてしまった。声になる前の声で叫んでしまった。
「ぅっ!」
「あ゛っ!? あ゛あああぁあぁぁあぁぁああぁあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ♡♡♡」
挿入して五分も経ってない。奥まで入って好きなところを圧されていたけれど、動きらしい動きは全然なかった。
なのに囁きだけで絶頂した。
尻も腰も小さく震え、尻の穴が皺を深くしては伸ばされて、それに同期して逸物を咥えた膣口が締めては緩む。結合部からはじわりと汁が滲んで溢れた。演技どころか声すら出せない。
深い絶頂で体が弛緩し、男の体にくったりと全身を預け、子宮口に押し当てられた尿道口が、どぴゅどぴゅと熱い粘液を吐き出した。
膣内射精は当たり前でいつも受け入れているけども、今は凄い追い打ちになった。
誤差ではないと男は主張する。
入れてから早かったのは確かだが、その前にアルベドの口でたっぷり焦らされたのだ。根元を押さえられていたから出せなかっただけ。しゃぶられ扱かれる刺激で出ていたはずだった。
少し間を置いて落ち着きが戻ったけれど、アルベドの中に受け入れられた。全てを包まれ温かくて柔らかくて、入っているだけで気持ち良い。柔らかな肢体が全身に絡みつく。ずっとこのままとは正直な気持ちだ。
そこでアルベドの本気イキ。うねる媚肉が気持ち良ければ、甘い叫びも心地よい。愛欲と快感で歪む女の顔は言うに及ばず。
確かに早かった。しかし、あれで出さないわけがない。
愛しい美神が自分の上で絶頂している。
射精直後でも全く萎えず、アルベドがもっと欲しくなる。
「あっ♡ らめ、まってぇ♡ アルベドおまんこイッたばかりだからぁぁあああぁんっ♡」
大きな尻を揉んでから自身に跨る太ももを掴み、下腹でアルベドの体を押しながら軽く浮かせる。
自由に動ける空間は人差し指より短いくらい。それだけあれば一先ず十分。下からアルベドを突き上げた。
激しく交わる二人は、プレイの前戯中にアインズが現れた事を全く気にしていなかった。
ラナーをナザリックに迎えることが決定している以上、一度は会わなければならない。それが少し早まるだけである。
頻繁に会いに行けるようマジックアイテムを下賜してくださるそうだが、会いに行ったところでラナーはわんわんとわんわんごっごの真っ最中。お取込みをお邪魔してはいけないだろう。
つまりは何も変わっていない。クライムによるラナー封じ込め作戦で解決済みの問題だ。
にもかかわらず激しく言い争ったのは、喧嘩の後の仲直りセックスの一環である。
恐るべきことにこの二人は、偉大なる死の支配者の訪問を前戯の一部にしてしまったのだ!
さすがは覚醒サキュバスと、淫魔淫獣の称号をほしいままにする男である。
男が突き上げアルベドは淫らに腰を振り、深いキスでたっぷり唾液を交換した。
アルベドが男へ抱き着きころんと後ろへ倒れれば、男が上の正常位。
股を開かされたアルベドは恥ずかしがる素振りを見せて、男が腰を使い始めた時である。
コンコンと書斎のドアが叩かれた。
アルベドの目が剣呑な光を湛え、
『失礼いたします』
二人とも疑問に首を捻った。
▼
守護者統括が重要な話があるからと封じたドアである。開けられるのは最低でも階層守護者以上。或いは例外のソフィー。
シャルティアかソフィーなら、ミラの取次ぎどころかノックもなしに入ってくる。
アウラかマーレであったら、余程の緊急事態でない限り待つか帰るかするだろう。
コキュートスはそもそもエ・ランテルを訪れない。
デミウルゴスは、アインズがホワイトにしようとしているナザリックなのに、たった一人でブラックにしてしまえるほど忙しくしている。訪問することはまずないし、用があるならまず呼び出す。
アインズは先ほど来たばかりだ。覗き見、盗み聞きしてノックもなしに転移の魔法で入室するのだから、さすがはカルマ極悪である。
二人とも頭の回転が非常に速い。ノックの音からミラが挨拶するまでの間に上記の考察を終えた。
ミラなのもわからない。この男を我が君とし絶対の忠誠を捧げるミラが、男が称えるアルベドの命令に背くわけがない。背くくらいなら自裁するだろう。すぐにしたがるので男は割と困っている。
「入れ」
『失礼いたします』
アルベドに目線で許可され、男は入室を許した。
素早く入室してドアを閉めたミラは、その場で跪いた。
「ご命令に背いたことを我が命で償うことをお許しください。ご報告の後に疾く自裁を果たし」
「そーいうのは止めろと何度も言っただろう。どうしてお前はすぐに死にたがる。アインズ様だって死ぬなと仰ったと教えただろうが」
「そうね。死ぬ必要はないわ。急ぎの報告があるんでしょう? このまま聞くわ」
「はっ! ご主人様の寛大なお心と、アルベド様のご慈悲に深く感謝いたします!」
見てないところで勝手に死なないだろうなと少し不安な男に対し、アルベドは感心していた。
ミラは絶対の命令に背いて報告に来たのだ。報告の内容によりけりだが、非常な勇気を必要としたのは間違いない。ヴァンパイアブライドにしては出来る方で、男への忠誠も認めて皆での宴に参加させた。中々とは思っていたが、ここまで強い心を持つとは驚かされた。
なお、二人は繋がったままである。
見せつける趣味はまだなくても、ミラに見られるくらいは今更である。
しかし続いた報告は理解出来なかった。
「クライムがご主人様への面会を願っております」
「…………………………………………………………………………は?」
男も理解出来なかった。
幾つかの誤算が重なった。
一つ目は、クライムにあてがった女が本気になった事。
女は体を売ることを承知で自分自身を金貨に代えた。
様々な教育を施され、娼館で客を取らされた。いつか来るとわかっていた事だし、使ったのは手や口までだった。けども自分は汚れたと強く思った。
そこでクライムである。
秀でた容姿ではないが、初心で素直で実直な年下の男の子。娼館で見た客たちと比べれば段違い。教えられた通りに自分がリードして、真っ赤な顔で狼狽える姿はとても可愛げがあった。
しかし、自分は近いうちに王都を離れなければならない。クライムと離れがたかった女は、一緒に行こうと何度も誘った。
女がクライムに惚れたのはヒルマの鑑識眼と教育の賜物である。
クライムが見事に成功したのを確認した後、ヒルマは宰相閣下相談役から「よくやった」と抱き着かれた。犯罪組織八本指の幹部だったのがナザリックの支配下に入ってからと云うもの、胃を痛める日々が続きそれどころではなかったのだが、一瞬で女を目覚めさせられた。輝く美貌で宰相閣下相談役の地位があるとは言え、ヒルマから見れば大分年が下の男である。にもかかわらずと言うことで愕然とさせられたのは余談である。
二番目がティアとティナ。
男から色々な事を聞かされてしまった二人だが、まさかクライムに話すほど呆けてない。話したのは周知の事だ。王国の全員が知っているとは思えなかったが、ラキュースからラナーに伝わっている話。当然クライムも知ってると考えた。
話したのは大したことではない。魔導国と王国は緊張状態にあっても、敵対しているわけではない。但し、何かが起これば、と言うところまでだ。暗に王国を離れるよう勧めた。
二人にとって知らない相手ではないし、初心な童貞を揶揄うのは楽しかった覚えもある。叶うなら死なずに、と思う情が二人にはあった。
クライムは頻りに王女がと訴えたが、その王女が王国を売ったと知ってる二人である。複雑な心で笑うしかなかった。その笑いを見て、クライムは確信した。
クライムの大将が魔導国宰相閣下相談役になったと伝えたのも二人である。公然であるし、隠す意味がなかった。
そして三番目が最大の誤算である。
「大将にお願いがあります」
書斎に招いたクライムは、男の前で跪いた。
子供の頃の呼び方は止せと、男が口にする余裕はなかった。
クライムを入れたのだからさすがに行為は中断した。
しかし、アルベドミルクの副反応で一度立ったら中々萎えない男である。アルベドがサキュバススキル「サクリファイス・イグゾースト」で瞬時の射精に導いた。代償にまたも深い絶頂を与えられ、幸せの国に旅立った。
今は着用者の正体を隠すローブを裸の上にまとい、ソファーの一つに体を預けている。
「……なんだ?」
「俺はどうなっても構いません。何でもやります。……汚い事でも命じられるなら。勝手に出て来たので王国での立場はありませんが、王城内への手引きも出来ます」
王国と緊張状態にある魔導国の宰相閣下相談役に王城内への密かな潜入を持ち掛けるのだ。尋常でない覚悟だった。忘恩どころではない。親殺しの畜生にも劣る。
それを為してでも、クライムには絶対の願いがあった。
今のクライムをコキュートスが見れば、「見事ナリ」と称賛するだろう。デミウルゴスとてほうと唸るに違いない。
「で?」
「俺はどうなったっていいんです。死んでも、石を投げられても。でも、どうか、お願いします!」
クライムが憧れた王国戦士長ガゼフ・ストロノーフは、王国・国王・ランポッサと仕える主を度々変え、最後は自身の矜持に殉じた。クライムは違う。使える主を絶対に違えない。
クライムは王国の騎士でありながら、王国への忠誠はない。王族へもない。王女にだってないのだ。クライムが忠誠を捧げるのはラナーである。王女ではなくラナー個人。
最大の誤算は、クライムが抱くラナーへの深すぎる忠義であった。
「ラナー様だけは助けてください!」
クライムなりに考えたのだ。
抱かれた女がいなくなり、さりとてラナーへそのような事を出来るわけがない。思慕しているのは確かでも、尊敬の方が遥かに強い。あえて言うなら敬慕だろうか。
王国と魔導国が緊張状態にあり、いずれ衝突することは確実だと思われた。王城で見る貴族たちは呑気にしている者が多かったが、ティアとティナの話は喉元に迫る刃を幻視させた。
王国が魔導国と戦争をして負けたらどうなるか。カッツェ平野での会戦を見れば、油断どころか相当の覚悟が必要となる。民がどうなるかわからない。しかし、王族は確実に処刑されるだろう。魔導王の力を思えば、支配のために古い血をとっておく意味がない。
ラナーは王女で王族だ。恐ろしい未来が迫っていた。
僥倖にも魔導国の中枢と繋がりが出来た。横紙破りも甚だしいし、人として最低以下に堕ちようとしている。
しかしそれでも、ラナーの命さえ助かるのなら。
「お願いします! ラナー様だけはどうか!」
クライムは額を床に擦り付け、ラナーの助命だけを繰り返した。
それを聞いていたアルベドは、口から魂が抜けてきた。
男も口から魂が抜けてきた。髪が元の色であったら、真っ白になっていたかも知れなかった。
本作って面白いですか?
自分で読んでそこそこ面白いとは思いますが他の方はどうなのか
評価やお褒めの言葉を頂けば嬉しいは嬉しいですがピンと来てないのです
それよりもここすき一個の方がありがたく
その一文を確実に読んだ人がいると目に出来るので
などと思ってるのですが、良いと言われて動揺しました
そこまで言わせてしまったら終わるわけにいかないので、まただらだらと続きます
やめるやめる詐欺みたいで申し訳ない
が、ぐぼあとなってお腹痛いので回復してセーフティ作って(作れるのか?)から
ストレスに弱い体が恨めしい
次回の区切りは最終話にしてもいいくらいの区切りなのでそっから先が真っ白です
ずっと一話先は闇で来たので同じことですが
で、ひとまずの最終話は図々しくも余韻を持っていただけたらと思うので後書き書かない予定です
本文は後書きの前書き的な
本作をここまで連れてきて頂き、死んだところを拾ってくれた月光蝶Gさんに多大な感謝を
ご愛読ありがとうございます