冷徹にして酷薄な眼差しに慈悲はない。残酷な未来を突き付けるアルベドはまさにナザリックの守護者統括に相応しい。しかし、内面は外面とかけ離れ、心は乱れていた。
「ルプスレギナからアルベド様のお言葉を伝えられました。アルベド様に見放された私に価値はなく、身投げしようとしましたがこうして御身の前に無様を晒しております」
昨日エ・ランテルにいた男が今日はナザリックにいる。誰かの助力が不可欠で、それはおそらくシャルティア。シャルティアと一晩過ごしたのは間違いない。
今までに何度かあった事で、それをアルベドは知っていたし認めてもいた。自分の食事に影響なければ良しとしてきた。ルプスレギナに残した言葉から、自分がすぐにエ・ランテルを再訪するとは思わなかっただろう。
罪に問えるものではない。
「ご不興を感じましたらいかようにもお裁き下さい」
斬首を待つ咎人のように頭を垂れる男を前に、アルベドは言葉を発しなかった。
裁くも何も、残した言葉は恥ずかしくてつい言っちゃっただけであってどうこうするつもりは全くない。強いて言うならば、あれの直後に複雑怪奇骨折したのが罰と言えなくもない。
それはそれとして、シャルティアとあれこれしてたのは少しだけ面白くない。
アルベドはサキュバスであり、サキュバスに貞操観念なぞは存在しないのだから、誰が誰と何をしようが構わないはずなのに何故か面白くない。
シャルティアはナザリックの守護者であり、ナザリックに相応しく美しい少女であることが、どうしても面白くない。自分の方が美しく魅力的であると知っていても。
一体何がどうして面白くないと感じるのか、アルベドの優秀なはずの頭脳は答えを持たなかった。
男の所業は罪に問えるものではないと理性では答えが出ている。
恥ずかしくてつい出ちゃった言葉なので真に受けてくれても困る。しかし無視されるのは沽券に関わる。無罪放免とするわけにもいかない。
だからと言って死なれるのはとても困る。何物にも代え難いとても得難い男なのだ。
色々と美味しいし、色々としたりさせたりするのは気持ちいいし、声を聴くだけで心地よいし、ナザリックにも存在しない男の美貌は目に楽しい。
はたと気付いた。
ナザリックを愛しているアインズ様は、もしかするとシモベ達の不手際を叱りたくないのではないだろうか。
アルベドからすれば、操られたとは言えアインズ様に槍を向けたシャルティアは万死に値するが、アインズ様は謹慎処分で済ませてしまった。
アインズ様のお言葉を忘れて報告を怠ったルプスレギナはやはり万死に値するが、アインズ様はお叱りの言葉で済ませてしまった。
ああ、なんとお優しいアインズ様アインズ様、偉大なるアインズ様、私共はアインズ様の御心を計りかねておりました。アインズ様のお優しさはまさに海よりも深く天よりも高く。アインズ様賛歌の第九番の出だしはこれで決まり。
偉大なるアインズ様の御心にまた一歩近づけたのは喜ばしい事だが、それはそれとして目の前の男をどうにかしなければならない。
一体どんな罰が適当だろうか。
アルベドはテーブルに片肘を突いて何度か足を組みかえ、一言も発さず考える。
跪く男は脚が痺れてきて、立てる膝を左から右に換えたくなったが黙って待ち続けた。
「これに座りなさい」
ふかふかのクッションを投げ付けられた。言われた通りに座る。するとアルベドは後ろに回って男の腕をとり、白いレースのリボンで縛り付けた。男の腕が動かせない事を確認し、今度は白いシーツを頭から被せる。男の視界は遮られた。
さらさらと、木々の間を微風が通り過ぎるような衣擦れの音が聞こえる。
シーツが取り払われた時、アルベドは漆黒のマントを身にまとっていた。
▼
アルベドが装備したマントは昨夜のシャルティアが着けていたものと同じである。魔法のマントだろうと所詮はロールプレイ用。ユグドラシルでは幾らでも入手できた。幾らでも入手できるならもらえるだけもらっとこうと思った誰かさんのおかげでいっぱいある。
その誰かさんのグッズがアルベドの部屋にはいっぱいある、はずだった。
こう見えてお裁縫が得意なアルベドは、抱き枕やぬいぐるみをいっぱい作って部屋のそこかしこに飾っていたのだが、今は一つもない。男を招き入れる前に全て隠していた。
もしも各種グッズを見られ、
『アルベド様はお可愛いのですね』
とか言われたら恥ずかしくて堪らない。
その甲斐あって、今は白を基調とした豪奢ながらも落ち着いた雰囲気が漂う品の良い部屋になっている。
「これが何かわかるかしら?」
アルベドはテーブルに置かれた小瓶を手に取った。
ナザリック製のガラス瓶はポーションの瓶と同じく繊細な細工が施され、それだけでも芸術的な価値を認める者は多いだろう。
小瓶は黄金色の液体に満ちている。小瓶を傾けると中の液体がゆっくりと揺れ、かなりの粘性があるとうかがえた。
小瓶の蓋を開け、皴すら美しい人指し指を入れる。金色の液体はまるで蜂蜜のように指にまとわりついた。おもむろに男の口へ突っ込んだ。
「しっかりと舐め取りなさい」
舌に包むアルベドの指は甘かった。唇で挟んで吸い付き、丹念に舐め上げる。
指先から伝わる官能的な柔らかさと温かさ。アルベドはうっとりと感じ入って、自分の頬を撫でながら指に吸い付く男を見下ろしている。
アルベドが指を引き抜くと、ちゅぷんと鳴った。指は男の唾液で濡れている。濡れた指を、アルベドは自身の口へ運んだ。
「蜂蜜のように思えましたが甘さが違います。私にはわかりません」
「わからなくて当然よ。これはナザリックにしか存在しない薬なんだから。薬と言っても飲むためのものじゃないわ。口に入れてもただ甘いだけ」
アルベドは小瓶をテーブルに戻した。
何の薬かわからないが、アルベドが言った通りに口にしても甘いだけで体調に変化はない。
「脱毛剤よ」
「!?」
「ただの脱毛剤じゃないわ。毛根を溶かし、毛が抜けると毛穴を塞いでしまう。これで脱毛するともう二度と生えてこなくなる。危ない薬だから一回分だけ調合させたのよ」
ああ、なんと恐ろしきナザリック。
なんと恐ろしい薬を作ってしまうのだろうか。
もしも人間であったころのアインズがこの薬を突き付けられたら死んでも使う事を拒否したことだろう。今や毛穴は一つもない体だが。
男であれ女であれ、何者であっても恐怖のどん底へ突き落とす薬を前にして、男の心は凪いでいた。
かつては面貌が醜く焼き爛れていた。それに比べればハゲになることなどどうと言う事もない。その程度でアルベド様の御心が癒されるなら歓喜と共に受け入れよう。
「かしこまりました。私の腕は動かせませんので、どうかアルベド様の手で私の頭に注いでください」
「違うわよおバカ」
「……え?」
「お前は自分の事がよくわかってないようね。折角とても奇麗な顔をしてるのだからそんな勿体ない事をするわけないでしょう」
かつては金色だったらしい髪は色が抜け落ち、暗がりに輝く銀色となっている。
「私が美しいとは……、光栄です」
未だに自分の容貌が優れているとは思っていない男だが、美を司る美神アルベド様が仰せならばきっと美しいのだ。そう思う事にした。
「しかし私に用いないのなら一体……?」
「ふふふ……」
アルベドは妖艶に笑い、マントの襟を留める飾り紐を解いた。
▽
「おお……!」
男の口から思わず感嘆の声が漏れた。
マントを脱ぎ捨てたアルベドは、マントと同じ黒い衣装をまとっていた。
上半身はホルターネックの三角ビキニ。首の裏を紐が通り、三角形の生地が乳房を覆う。生地が小さいのかアルベドの乳房が大き過ぎるのか。慈悲と慈愛と優しさと、夢と性愛がいっぱい詰まった大きなおっぱいはほとんどが露わになっている。
光沢がある黒い生地はなめし革のように見えたが三角形の中央部には小さな突起が現れており、とても薄くとても柔らかい素材と知れる。
下半身も同素材で作られたビキニショーツ。昨日と同じスーパーローライズ。ギリギリ秘部は隠れているが、黒々とした陰毛は全く隠れていない。
へその下のぬめる下腹。白い肌を飾る陰毛はとても淫靡だ。
間近に立っていることもあって、鼻をくすぐる距離にある。陰毛から立ち昇る雌の匂いが鼻腔をくすぐり、否応なく下半身に熱が溜まった。
アルベドの姿は、まさに正当なサキュバススタイルであった。
男の興奮に満足し、アルベドは小瓶を手に取る。
「こうするのよ」
「あっ!!」
アルベドは黄金色の液体を自らの下腹に垂らした。
とろりとした液体はゆっくりとアルベドの白い肌を流れていき、豊かな繁みに届いた。薬の効果は劇的だった。ふさふさとした毛が立ち切られたように倒れていく。
アルベドが指で隅々にまで塗り伸ばす。本当に抜けてしまったらしい。指には幾本もの縮れた陰毛が張り付いている。
「舐め取りなさい」
「……はい」
陰毛が絡みついた指を男の口へ差し入れた。
細い指と、髪よりも太い縮れた毛を舌に感じる。噛み切ることなく喉を鳴らして飲み込む。
「こっちのお毛けも舐め取りなさい。これがお前への罰よ」
「……かしこまりました」
アルベドは男の目の前に立ち、腰を突き出した。
男は舌を目いっぱい伸ばしてアルベドに触れる。肌の柔らかさよりも陰毛の硬さを感じた。太い縮れ毛が歯の隙間に挟まったり喉に絡んだりしないよう一舐め毎に舌を口に戻し、唾と一緒に飲み込んでいく。
アルベドの陰毛は性器や肛門の周囲には一本も生えてない。魅惑の三角地帯にだけ整った形で生えている。しかし豊かな黒髪から察せるように、陰毛もまた豊かだった。男が知る幾人もの女たちと比べると、かなり濃い方に分類される。普通のパンツを履くと盛り上がってしまうくらいに。
それもまた魅力的なのだが己の舌で失われていく。残念なような悲しいような、アルベド様の御心を計りかねた。
「何度も飲み込んで喉が渇くでしょう?」
アルベドは男の頭を優しく包んで上を向かせた。
「私の唾を飲ませてあげるわ」
妖しく赤い唇をすぼませ、泡立つ唾を垂らした。唾は男の舌へ滴り落ち、ぺちゃりと鳴った。
男は口を閉じ、アルベドの甘い唾を飲みこむことなくじっくりと味わう。
三度垂らしてから舐め取る作業に戻らせた。銀色の美しい髪を撫でながら、水差しからグラスへ注いだ水で喉を潤す。
陰毛の量は多く、舐め取るのは少しずつであったが、確実に終わりへ近付いていく。
薬の効果は確かなもので、舌が這った後には毛穴すら見えないつるりとした柔肌が現れていく。
肌が薄っすらと赤くなっている部分があるのは薬の効果が強すぎたせいなのか。アルベドは何も言わない。
やがて、全てを舐め取り終わった。アルベドの黒々とした陰毛は全て胃の腑に落ちている。下腹には何の痕跡もなく、ただただ美しく白い肌となっている。無毛の股間は、熟れた肉付きがなければ子供のように思えなくもない。
「よくできたわね。偉いわ。これでお前への罰はお仕舞いよ。飲みなさい」
アルベドは冷水を口に含んだまま男へ口付けをした。唾と混じり合った水が男の口へと注がれる。隙間なく合わされた唇からは一滴も零れない。三度口付けをしてグラスに注いだ水が空になった。
男の膝に座る。柔らかな銀髪を優しく抱き寄せ、豊かな乳房の谷間に男の顔を迎え入れた。三角ビキニを少しだけずらす。隠れていた突起が現れる。何を言うまでもなく、男は突起に吸い付いてきた。
「うふふ、可愛いわ。私のおっぱいをいっぱい吸っていいのよ。あなたに吸って欲しくて私の乳首はこんなに固くなっちゃってるの。いっぱい吸わなきゃダメよ?」
吸いながらなのでくぐもった声が返ってくる。
アルベドは優しい微笑を淫靡に染めて男の頭を優しく撫でてやる。もう一方の手で吸われていない乳首を摘まむ。充血して赤く弾けそうな乳首は、きっと吸われている方がもっと勃起している。
「ちゅうちゅう吸うだけじゃなくて優しく噛んで。んっ、もっと強く、あんっ、そう、そうよ。私の乳首をいっぱい虐めて」
乳肉に歯を立てられ、痛みと快感にアルベドの愛欲が深まっていく。
股はとっくに濡らしている。いつもだったら手が伸びるところ。代わりに男の股間を撫でた。ナザリック製の仕立ての良いスラックスの中で窮屈そうに張りつめている。
「あ……アルベド様……」
「うふふ、なあに? 何をして欲しいのか言ってごらんなさい」
「直にして欲しいです」
「いいわよ♪」
「っ!」
アルベドの白い繊手がスラックスの中に潜り込んできた。美しい指は優しい手付きで男を包む。熱が溜まった剛直にはそれだけでひんやりと心地よい。
「あなたのおちんぽがこんなになっちゃってるのは私の責任ね。私が責任を持っていっぱい気持ち良くしてあげるわ……」
形の良い唇を耳元に寄せて甘く囁いた。
「私の手でおちんぽをしこしこされるの気持ちいいでしょう? とても大きくて逞しいのにとっても可愛い私のおちんぽ。こんなに固くして、こんなに勃起させちゃって。ああ……」
包んだ手を根本から先端までゆっくりと上下に動かす。
「あなたは私を愛してるって言ってくれたわよね。今日も私をいっぱい愛して欲しいの。おまんこの奥まで入れられてぐちょぐちょにかき混ぜられたいの」
手付きは依然と穏やかなまま。握るのを止めて指の腹で愛しむように撫でている。
「ここが気持ちいいの? おちんぽがピクピクしてるわ。うふふ、おちんぽからおつゆが出てきてるわよ?」
男の耳朶へ息を吹きかけ、耳孔へ赤い舌を差し入れる。
「ああ……、おちんぽを触ってるだけなのにおまんこが濡れてきちゃう。私のおまんこがあなたのおちんぽが欲しいって言ってるの。ほら、見て……」
男の顔を跨ぐようにして立ち上がった。男に股間を見せつけながら、先走りの汁で汚れた指を口に含む。丁寧に舐めとって飲み込んだ。
「私のおまんこ、こんなになっちゃってるの……。私のおまんこは、アルベドのおまんこはとってもエッチなのよ……」
ビキニショーツは伸縮性に優れているらしい。アルベドはショーツに指を引っかけてずらした。アルベドの淫らな雌肉が目の前に放り出され、しかしすぐに隠されてしまった。
男がゴクリと唾を飲み込む音を聞き、アルベドは満足そうに微笑んで男の腕を縛るリボンを解いてやった。
「ベッドに連れて行って」
「……かしこまりました」
数歩の距離を、アルベドは男に抱き上げられて移動した。