※この作品はR-18です。

アルベドのお食事   作:dolph

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サキュバス的乙女心

 偉そうな事を言ったところでアルベドにも恋人がいたことはない。

 

 代わりに妄想はバッチリである。愛しのアインズ様もといモモンガ様とのイチャイチャラブラブ空間に毎日浸りきっている。

 だがしかし、妄想であろうと出来ないことが厳として存在する。モモンガ様は妄想の中であっても俗な事や幼稚なことを決して仰らないのだ。

 例えば、である。

 

『アルベドちゃん好き好きちゅっちゅしよ♡』

 

 などと品性も知性もない言葉をモモンガ様が口にするだろうか。いや、ない。ありえない。絶対にない。もしもモモンガ様がそんなことを言い出したら、それはもうモモンガ様ではない。ただの骨である。モモンガ様はいつだって端倪すべからざる叡智を秘めた至高にして偉大なる絶対的な死の支配者であるゆえに。

 アルベドがちょっぴり期待する俗な言葉をモモンガ様は口になさらない。

 

 隣に座るこの男も妄想には頻出する。モモンガ様と違って俗な言葉を口にさせても問題ない。

 だがしかし、アルベドがこの男を妄想に登場させるときはそんな気分になっている時であり、イチャイチャを通り越していきなりエッチなことを始めている。

 今は違う。まだ始めていない。

 鞭の前にあげる飴と言うことにして、アルベドがやってみたい妄想を形にする絶好の機会であった。

 

 

 

 

 

 

 アルベドはソファに座り直してから男の方へ向き直り、左腕をとって胸の谷間に迎え入れた。

 今日のトップスは以前見せたチューブトップとは違って、ゆったりとした白と黒のキャミソールを重ねている。チューブトップは見た目はとってもセクシーで、寄せられた胸の谷間に棒状の何かを差し込むにはとても都合がいいのだが、ぱっつんぱっつんなので着たままでは生乳に触りにくい短所があった。そこへいくと、おへそがチラチラするキャミソールはとても触られやすい。肩紐を外してよし、たくし上げてよしである。

 

「あなたは私のことをどう思っているのかしら?」

 

 赤青の目がキラリと光った。

 

「アルベド様はいと高き彼方より真の美を衆生に知らしめるために降臨なさったお方で」

「ストップ」

 

 アルベドは真顔で止めた。

 以前、ナザリックでアインズ様や他のシモベたちの前で賛辞された時は割と恥ずかしかった。それを目の前で、一点の曇りもない輝く瞳で、心底真面目くさった真顔で言われたら色々な意味で堪らない。

 

「私の評価を聞いてるのではないわ。あなたが私に向ける感情を聞いてるのよ。今は二人きりで誰も聞いていない。正直に答えなさい」

 

 お食事部屋の壁は分厚く、魔法的な加護もあって、アインズ様であってもちょっと頑張らないと盗み聞きは難しいレベルである。そのアインズ様は、いつぞやアルベドの休憩時間を覗いたときに見てしまった物凄く難しそうなお勉強風景にちょっとだけ心に傷を負ってしまい、アルベドがエ・ランテルで過ごす休憩時間は二度と覗かないと誓っている。

 ドアの向こうでメイドが耳をくっつけていても、室内での会話は全く届かない。

 お食事部屋の防諜は完璧である。

 

「敬愛しております」

「……敬愛」

 

 良い意味ではあるのだが、期待とはかけ離れていた。敬愛とは下から上へ向かうもの。恋人同士が使う言葉ではない。

 

「もっと砕けた言葉を使いなさい。他に言いようがあるでしょう?」

「……お慕いしております」

 

 敬愛より距離が近くなった。それでもまだまだ固い。騎士と王女の宮廷恋愛ではあるまいに。

 アルベドはそう思うのだけれど、男の方から見ればアルベドは世界の創造主にも等しい偉大なる美の女神である。アルベドに向ける感情はあっても、気ままには表現しにくい。ナーベラルがスムーズに「モモンさん」と呼べないのと同じである。

 これは自分から近寄って一から色々と教えてあげなければダメだと察し、アルベドは幾つかのルールを定めた。

 

「今だけは私と対等になったと思って接しなさい。恋人同士に上も下もないわ」

「私がアルベド様と対等に?」

「様も禁止」

「アルベドさ…………、ある……ある……べど、……あるべ……ど……」

 

 大きく目を見開いた後、俯いて何事かを呟き始めた。

 今までは胸中で思うときでさえ敬称を付けて呼んできたのだ。いきなり呼び捨てにしろと言われても難しい。それでもナーベラルよりは遙かにましだったようで、10回ほど繰り返せば様を付けなくても呼べるようになった。

 

「何かを喋るときは……そうね、私だけに聞こえるよう囁いて」

 

 叫んでも外には聞こえないお食事部屋。それでも囁いて欲しいのは、耳元でこしょこしょと話して欲しいからだ。声が小さければ自然と距離も近くなるのだから。

 

「わかりました。それでは……」

 

 腕を抱かれたままアルベドへ向き直り、顔を寄せて言った。

 

「あなたを愛しています」

「…………」

 

 アルベドはもにゃっと来た。

 今のは逃げである。名前ではなく「あなた」と来た。愛していますも初体験の時に聞いている。もっと違う言葉が欲しい。

 アルベド自身、これを口にするのは恥ずかしいのだが、言ってやらないとわからないらしい。

 

「そうじゃなくて……、あなたは私のことが、しゅ、しゅきかしら?」

 

 噛んだ。アルベドだって口にしたことのない言葉なのだ。言い慣れていないのだから仕方ない。

 恥ずかしい言葉を言ってしまったことに加え、噛んでしまった羞恥で赤くなった顔を見られまいと咄嗟に顔を背けた。数秒して恐ろしくなった。彼は何も言わない。もしかして駄目なところ見せてしまったことで幻滅させてしまったのだろうか。

 

 そんなわけがなかった。噛んでしまって頬を染めたアルベドを見てほんの数瞬だけ呆気にとられ、次の瞬間に降りてきたのは歓喜である。

 恥ずかしがるアルベド様がめっちゃ可愛らしい。胸を満たす恍惚感は、さながら主の奇跡を見せられた信徒の如し。

 

「え……」

 

 アルベドに抱かれていた左腕を外し、艶やかな黒髪をかきあげて形の良い耳へ口を寄せた。

 

 耳に触れる吐息と熱。

 幻滅されたかも、呆れたから腕を抱かれるのが嫌になったのかも、と内心ではビクビクしていたアルベドの胸中は耳から伝わる官能に空白が生まれ、

 

「アルベドが好きだよ。とっても好きだ。愛してる」

「くぅ~~~~~~~~~~~~~~~っ!!!!」

「あ、アルベド様!?」

 

 生まれた空白に、するりと愛の言葉が滑り込んできた。耳から入ってきた言葉は瞬時に全身を駆けめぐり、体の隅から隅まで至る所へ熱を届けた。下腹の淫紋がうっすらと光った。

 今のはかなり効いた。よくわからないくらい効いた。嬉しくなって恥ずかしくなって、噛んだ時の比ではないくらいに顔が熱くなり、きりっとしていた唇がだらしなく緩んでしまったのを実感して歯を食いしばった。

 こんなところは見せられない。両手で顔を覆い、倒れるようにして顔を伏せた。

 

「……アルベド様?」

「あなた……、魔法か何か使ったかしら?」

「は?」

 

 顔を上げたアルベドは真顔になっていた。

 幾らなんでもさっきの言葉は効きすぎたと思ったのだ。言葉一つで自分をあんなにしてしまえるのはおかしい。精神操作系の魔法を使ったのではないだろうか。そうだとしたら、

 

「いえ、何も使っておりません。そもそも私は魔法の類が何一つ使えません」

 

 アインズ様に太鼓判を押されるくらい魔法の才能がない男である。

 

「仮に使えたとしてもアルベド様に使う理由がありません。使ったにせよ、私の魔法如きがアルベド様へ効果を及ぼすとも思えません」

「……そうね」

 

 三重に否定され納得せざるを得なかった。

 と言うことは、アルベドは言葉一つで悶えるほど嬉し恥ずかしになってしまったという事である。

 

(それもそうよね。この子が魔法を使えるわけがないわ。モモンガ様だってこの子には魔法の才能が全くないと仰っていたし、ソリュシャンからもそう聞いている。魔力がないから薬の調合過程を工夫してると言ってたけれど。

 でもそれじゃ私はどうしてあんなに嬉しくなったのかしら? 好きって言われただけなのに。この子が私のことを好きなのはわかりきったことなのに。

 ……ちょっと疼いちゃってるわね。濡れてきちゃったかも。恋人っぽくするだけでこんなになれるなんて。まだキスもしてないのに、好きって言われただけなのに。このまま続けたらどうなっちゃうのかしら♪)

 

 どうしてそうなったのか、アルベドは途中で考察を打ち切った。サキュバスの本能が更なる快感と陶酔を求めている。

 

「やはり私の言葉がご不快でしたでしょうか?」

 

 言葉を放ったと同時に顔を伏せられ、詰問されればそう思う。

 

「違うわ。気にしないで頂戴。今のでいいのよ。もう一度言いなさい」

「かしこまりました」

「今は対等だと言ったでしょう? かしこまる必要はないし様付けも禁止よ」

「……でしたら私からお願いが一つ。よろしいでしょうか?」

「お願い? 言ってみなさい」

「少しでいいので、命令口調を抑えてくれると助かります。アルベド……から命令されるとどうしても反射的に」

 

 アルベドはパチパチと大きく瞬きした。おでこに豆鉄砲をもらったような驚いた顔。あどけない少女のよう。

 この場この時だけは対等な恋人同士と言うことにしても、態度が変わらなければどうしたって普段の階級を引きずってしまう。アルベドから命令口調で言われれば、ははーっと頭を垂れてしまうのだ。

 

「わかったわ。気を付けるからあなたも出来るだけ砕けて喋るようにしなさい。……砕けて喋って」

「わかりました。それでは、さっきの言葉をもう一度ですか?」

「それもいいけど、それより……私のどこが好き?」

 

 それはアルベド以外は言ってはいけない言葉だった。地雷とも言う。

 美神アルベドに仕える美の信徒である。そんなことを聞いてしまえば、どこが素晴らしいここが素晴らしいこのように素晴らしいこのようなところも素晴らしい、と延々と続いてしまう。賛辞を遮った者は万死に値する。アルベドだけに遮る権利がある。しかし、美神賛美はつい先ほど止められたばかり。他の表現でどこが好きなのか答えなければならない。

 端的に言えば全部好きとなる。それだけでは如何にも幼稚。アルベドの求めるものを満たせないだろう。ソリュシャンから与えられた課題図書のおかげで、このような時はどのように答えればいいかを学んでいた。

 白いスカートの上に乗せられたアルベドの手をそっと握り、指先へ恭しくキスをした。

 

「透き通ったように美しいアルベドの爪が好きです。か細い指は皺すら美しい。手も指も、なめらかな肌触りも好きです」

「……それから?」

「指を支える腕も、私は肘を見ただけでアルベドだとわかります」

 

 撫で、あるいは口付けしてからここが好きだと連ねていく。

 肩から鎖骨へ、首から頬へ、耳へ届いてからは口付けを送らなくなった。

 黒髪をかきあげ、あらわにした耳へ口を寄せて囁いている。

 囁き声は段々小さくなっていった。掠れたような囁き声は、何を言っているのかアルベドにも次第にわからなくなっていった。但し、好きと言われているのだけはわかった。

 

「唇も……」

「んっ……あむぅ……れろ……ちゅっ」

 

 唇を撫でていた指が口の中に入ってきた。躊躇なく迎え入れちゅっと吸いつく。舌で包んで唾をからめ、何度もしてきたようにちゅうちゅうと吸う。

 

「温かくて柔らかい舌も好きですよ」

「れろ……ちゅる……ちゅぅ、んっ……あっ」

 

 強く吸おうと思ったのに、タイミングをずらされて引き抜かれてしまった。唇と指とで糸を引き、男の指はアルベドがたっぷりからめた唾に濡れている。

 

「お顔の美しさは言葉に出来ません」

「あっ……」

 

 唾に濡れた手で頬を撫でられた。手のひらは温かく、唾に濡れた指だけが冷えている。アルベドは男の手に自分の手を重ねた。唾に濡れていても、自分の唾だし、可愛い恋人の指だし、汚いとは思えない。

 

 どこが好きと言われて、最初の内は腰から生える黒翼がパタパタと上下していた。今は静かなもので、翼は磨き上げられた床に下りている。嬉しさと恥ずかしさが閾値を越えて裏返った末に、苦しくなったわけではない。

 いつぞやは恨めしそうな目を向けていたが今は違う。大きな瞳を潤ませて、夢見るような表情で言葉を受け入れている。

 好きと言われただけで嬉しさと恥ずかしさに悶えそうになったのに、好き好きと何度も言われて、完全にのぼせ上がってしまった。

 アルベドは熟れ熟れの肉体をしたサキュバスで、初体験を経て大人になり、覚醒を果たして淫紋を手に入れた。ナザリックではアインズ様に次ぐ地位を持つ守護者統括だ。種族と立場に相応しい肉体と精神と優れた頭脳を持っている。

 だけれども、心は乙女だった。愛しのアインズ様とどうのこうのと毎日妄想を逞しくするアルベドが乙女でないわけがなかった。

 肉体ではなく心が、夢見る少女の乙女心が満たされている。

 嬉しいとか恥ずかしいとか気持ちいいとか、それら全てを内包した幸福感。ここがどこで今はいつで、自分が何だったかを忘れてしまう恍惚感。

 多淫なサキュバスの体は心に引きずられ、キスもされていないのに男を受け入れる準備を始めてしまう。

 準備が始まってることにアルベドは気付いていない。もしも我に返って注意を向ければ、乳房の先端がキャミソールの生地に擦れるのがわかったろうし、ピンク色に輝き続ける淫紋と呼応するように濡らしているのがわかるはず。同時にそこに何も入っていないことに気付いて、一刻も早く埋めて欲しくなっただろう。

 そこまで意識したわけではなかったが、好きと言ってくれた場所を触ってくれるのはわかっていた。

 アルベドは、触って欲しい場所をおねだりした。

 

「それならぁ……私のおっぱいも好き?」

「もちろん大好きです」

 

 あの女に刻まれたスレンダーな体への欲求は未だ拭いがたくも、大きなおっぱいは大好きなのだ。ソリュシャンのおっぱいは毎日毎日朝昼夕晩と何度も見せられて少々飽きと言うか食傷と言うかあれがそれでこうなのだが、アルベドの美巨乳に飽きるわけがない。毎日ずっと顔を埋めていたとしても、初めて見て触った時の感動は全く薄れないだろう。

 

「私のおっぱいも触っちゃう?」

「ええ」

 

 頬を撫でていた手が下りて、キャミソールの内側へ潜った。

 キャミソールの下は当然のようにノーブラである。アルベドの肌を這い上がる手指が柔らかな乳肉に触れ、ピタリと止まった。豊満な乳房を掴むことなく、手は細い腰に回ってアルベドを抱き寄せた。

 

「私はアルベドが好きです。愛しています。ではアルベドは? 今だけの対等な恋人同士として、アルベドは私を好きですか?」

「……え?」

 

 今だけは対等な恋人同士のように、と言ったのはアルベドだ。恋人同士とは想い想われの関係で、どちらか一方の好意だけで成り立つものではない。好き合った二人だけが恋人同士になれる。

 

 この男が嫌いなわけがなかった。

 精気も精液もとても美味しい。

 体質的に筋骨隆々にはなれないだろうが、逞しくなってきた肉体は均整がとれている。上背があり、手足はすらりと長く、中々スタイルがよい。

 どうしてそうなのか考えると憎たらしいが物腰は洗練されており、ナザリックのロイヤルスイートで働かせても問題ない。

 顔立ちはこの上なく整っている。ナザリックでも稀な美貌と言うものがどれほどのものか、言うまでもない。

 自分への忠誠は揺るぎなく、何があろうと砕けることはないだろう。

 一言で言って、とても気に入っている。もしも自分が守護者統括と言うとても多忙な地位になければ、傍に侍らせて四六時中愛でていたくなる。

 

 アルベドが何を言ってくれるのか、胸の鼓動をうるさいほど高鳴らせた。

 抱き締めているのだから、鼓動はアルベドに伝わった。心臓が100回鳴ったのを数えてから、アルベドは慈愛に溢れる優美な笑みを浮かべた。

 

「一度しか言わないからちゃんと聴きなさい」

「……はい」

 

 アルベドも男を抱き締めた。顎を肩に乗せ、赤い唇を耳に寄せる。

 何度もされたように熱い息をふきかけて、鈴の音にかき消されるような小さな声で、女が愛しい恋人へ捧げる想いを囁いた。

 

(す……き……♡)

 

 口にしてからも、しばらくは抱き締めたままでいた。

 何度も言わせたくせして、自分で言うのは恥ずかしかった。頬が熱を持ってくるのがわかる。赤い顔を見せるのは恥ずかしい。照れ隠しなのかマーキングなのか、何となくしてみたくなっただけか、男の頬へ頬をすり合わせ、好い匂いを胸一杯に吸い込んでから離れた。

 アルベドは恋する乙女の顔をしているのに、告白された男は困ったような微笑を浮かべていた。

 

「あの……全く聞こえませんでした。吐息がかかったのは感じたのですが」

「………………むぅ」

 

 アルベドの告白は繊細すぎたらしい。優秀なレンジャーであるアウラだったら聞こえたかも知れないが、そう言った技能を何も持っていない男には吐息しか感じられなかった。

 想っていようと口にしようと、相手に聞こえなければ何も伝わらない。

 頑張ったのが無意味に終わり、アルベドは少々お冠になって頬を膨らませた。子供じみた仕草だ。今のアルベドは恋する少女になっている。

 

「仕方ないわね……。もう一度だけ言ってあげるわ」

 

 一度目より二度目の方が抵抗は少ない。

 今度は抱き締めなかった。隣に座る男の肩に手を置いて身を乗り出し、

 

「あなたのことが好きよ♡」

「!!!!」

 

 言葉に弾かれたようにアルベドを見た。

 アルベドは微笑んでいる。頬を赤く染めている。目が合うと逸らされた。もう一度視線が絡む。また逸らされる。もう一度視線が絡んで、見つめ合った。無言で見つめ合った。またもアルベドから目を逸らして、視線が下がっていく。

 

「あ……」

 

 下がった視線は男の股間で止まった。目が離せなくなった。ズボンは盛り上がっていた。

 

「私に好きって言われただけで大きくしちゃったの?」

「はい……。それにアルベドの表情がとても可愛らしくて」

 

 ナーベラルの生乳を揉んでも立たせなかったのに、アルベドだと一撫でで、あるいは吐息一つで大きくなる。

 それに言葉一つが加わった。初々しい少女のような表情だけでもいけてしまう。

 

「私に好きって言われて嬉しかった?」

「ええ、とても」

「私もあなたに好きって言われて嬉しかったわ」

「アルベドが好きですよ。……好きだよ、アルベド」

「んっ……、そんなこと言われたらキュンってしちゃうじゃない! お返しに私も言ってあげる。あなたが好きよ。大好き♡」

 

 手を握って、互いに好き好きと言いながら距離が詰まっていく。

 唇で相手の吐息を感じる距離になっても言葉は止まない。

 

「ちゅっ……。好きよ。あなたとキスするのも好きなの」

 

 キスの合間に好きと言って、言葉よりもキスの時間が長くなっていく。

 くちゅくちゅと舌を絡める音に、じゅるじゅると唾をすする音。すすった唾を飲み込む嚥下の音。

 一度だけと言った好きが十を超え二十も超えて、触れ合う度に口にする。

 

 

 

 ここに原始の魔法があった。

 アインズたちが使う位階魔法より、この地の竜王たちが使う始原の魔法よりも遙かに古い、言葉が生まれたときから存在する最初の魔法。魔法よりも古いおまじないである。

 口にすればするだけ言葉の意味に引きずられる。たとえ偽りの言葉であっても、心を込めて口にし続ければ命が与えられる。偽りの中に本当が僅かでもあれば、言葉を糧に育っていく。

 アルベドは何度も何度も好きと口にした。愛しい恋人を想って好きと言った。

 

「キスだけじゃなくておっぱいも触って。あなたに触って欲しいの。あなたに触ってもらうの、とっても好きなの♡ あんっ」

 

 キャミソールの中に入ってきた手は、今度こそ他へ目移りすることなく乳房に触れた。五指をめいっぱい伸ばし、柔らかな乳房へ押しつけるように乳房を掴む。

 アルベドよりも大きな手なのに、指を伸ばしても大きな乳房は包みきれない。柔らかなだけでなく滑らかな乳肉に指が埋まり、大きさと柔らかさを確かめるように揉み始めた。アルベドの吐息が荒くなった。

 

「私のおっぱいだけどあなたのおっぱいよ。あなたが触りたいだけ触っていいわ。私のおっぱい、あなたの好きにしていいのよ? でもこの前みたいな乱暴はイヤ。あれはあれですごく気持ちよかったけれど……。今は優しくして欲しいの。あなたと私は恋人同士なんだから」

 

 愛し合う恋人同士はイラマチオとかアナルセックスとかはしない。少なくともアルベドはそう思っている。

 サキュバスであっても、アルベドは乙女であった。

 ただし、優しい愛撫だけでサキュバスが満足できるかどうかは別の話になる。

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