帝都にドラゴン襲来!
二度目である。凄い事態でも二度目になれば馴れたもの、になるわけがない。民草は恐怖におののき兵士たちは絶望に膝を折った。それというのも、一度目はドラゴン襲来直後にマーレ君が大魔法をぶっ放して死者多数、帝国四騎士が三騎士になったりしたからだ。さすがに極悪集団ナザリックはと言いたいところであるが、先にちょっかいを出したのは帝国だった。ナザリック的には正当な報復である。
今回は違う。多くの者が恐慌に陥る中で、帝国の皇帝であるジルクニフだけは平然としていた。事前に連絡があった。それにしたってこれはどうかと思う登場ではあるが。
偉大なる気遣いのアインズ様による思い遣りである。
数日前にアルベドから、人類絶滅とかほざいたあの男は帝国へ遣って多様性を学ばせることにしたと報告があった。アインズはピンと来てしまった。
これは『左遷』である。
魔導国の首都エ・ランテルから近隣諸国で最も栄えている帝国へ送るのは、好意的に見れば栄転かも知れない。しかし、実際には権力の中枢から遠く属国へ追いやられるのだ。どう見たって左遷である。
かつて人間であった時分にサラリーマンであったアインズは、左遷と言うものがどのようなものであるかよく知っていた。
努力を重ねて成果を出しいつか本社に戻るぞ! と意気込めるのは例外中の例外。実際にはあり得ないファンタジーである。
左遷された者がどのようになってしまうかというと、「あーそうですかそうですねお偉いさんたちは俺をそー見てるんですかだったら俺が適当に手を抜くのも折り込み済みですよねやってられるかチクショウ!!」と、なってしまうのだ。つまりは腐ってやる気をなくしてしまう。アインズはそんな同僚たちを幾人も見てきた。
アインズはちょっとだけ心が痛んだ。自分がちょっと注意しただけで左遷に繋がろうとは思わなかった。厳しく叱るだけで済むと思ったのだ。自業自得とはいえ、いささか哀れである。
アルベドにこれでもかと忠誠を捧げている男なのでまさか裏切ったりはしないだろうが、左遷の種を蒔いてしまったのは自分なので、友達のジルクニフにこれこれこういう男を送るからよくしてやってくれ、と伝えたのだった。
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「クソッ、なんだあの男は! アインズめ、まさか帝国を内側から食い破るつもりか!?」
先まで対談していた男が姿を消すなり、帝国の若き皇帝ジルクニフ・ルーン・ファーロード・エル=ニクスは大いに毒づいた。
「そもそも本当に人間か? 人間の男にあんな美しさがあってよいのか?」
「嘘は言ってませんでしたね。人間というのも本当でしょう」
アインズ直々に送ると言われた人間の男だ。ジルクニフは最大限に警戒して、帝城のど真ん中へドラゴンとともに現れた男との面会に愛妾の一人を同席させた。
「一目で帝都の地理も帝城の構造も人の出入りも、全て把握したのが本当だと? アインズのところには相変わらずとんでもないのが……まあいい。あの男をどう見た?」
これと言って美しいわけでなく、生まれが高貴なわけでもない妾の一人ではあるが、人を見る目は確かな女だ。思考も整然としており、ジルクニフは数ある愛妾の中で彼女を一番重用している。と言うことを知っている者は知っている。知っていない者は皇帝との距離がそれだけあると言うことになる。
「陛下と似たところがありますね。ですが本質は隠者。富にも栄誉にも興味はないでしょう」
「となると、残るのは女、か」
「無駄です。どんな女をあてがっても、あの男が相手ならミイラ取りがミイラになるのは確実です」
「……お前もか?」
ロクシーは微笑んだきり、何も答えなかった。
ジルクニフは舌を打った。
(奴が口にしたことは全て本当だとすると、十年前に王都へ遣いを出してれば帝国に仕えたと言うのも本気か?
ナザリックから来たかと思ったが王国の生まれということか。……あんな美貌が市井から生まれたとも思えん。間違いなく貴族かそれ以上の出だろう。奴の年からして……チッ。そんなことを考えて何になる。よしんば奴の出生を掴んだとしても帝国に鞍替えするわけがない)
そこで思考を打ち切った。
美しい男女が市井から生まれることは間々あるが、確率で言えば圧倒的に高貴な出の方が高くなる。権力者は我が身を飾るため、競って美しい男や女を求めるからだ。その末に生まれた者が美貌を誇るのはジルクニフ自身が体現している。
仮に高貴な生まれだとしても、みすぼらしい貧民の生まれだとしても、いずれかの確かな証拠を掴んだところで、魔導国宰相閣下直属を引き抜けるわけがない。
幸いなことに、帝国へ来たのは多様な文化を学ぶためだったようで、帝国内部に食らいつく気配は薄かった。ロクシーが嘘は言っていなかったと見たのなら、精々気持ちよく学んでもらってナザリックで帝国の価値を喧伝してくれればいい。
胃痛の種をいっとき忘れ、ジルクニフは執務に戻った。
魔導国との外交で、詰めるところは幾らでも残っている。
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皇帝陛下に胃痛の種をプレゼントしたエ・ランテルから来た若旦那様は、早速アウラちゃんから足蹴にされていました。
アウラ様ちょっとそこに立ってください、なに?、前を見て足をもう少しだけ開いて、なにするつもり?、マーレ様に喜んでもらえたことをアウラ様にも、ふーんこう?、はいそのまま、うひゃあ!?
アウラちゃんの細い腰を掴んで持ち上げると股をくぐって、更に細い両足を自分の肩から前へ抜けるように下ろしていき、屈ませた体をすっくと立ち上げて肩車完成。
直後に首をしめられ無様に倒れ、アウラちゃんは宙に投げ出されたにもかかわらず見事な着地を決めた。
「なにすんの!」
「ぐはっ」
倒れた成人男性の体が浮かび上がる程度の優しいキックである。アウラが本気で蹴りつければ地面と平行に飛んでいく。
「肩車をすれば遠くまでよく見えると思いまして」
けろりと起き上がり、服に付いた埃を払った。変な方にレベルアップしてちょっとだけ体が丈夫になったのと、ナザリックで仕立ててもらったスーツの防御力によるものである。
「マーレと一緒にしないで」
「しかしこうも賑わっていますと、視線が高い方がよく見えると思います」
「私のクラス忘れたの? 見えなくてもだいたいわかるから。あんたこそわかってる? 皇帝の前で帝都の地理は完全にわかるとか言ったでしょ」
「もちろんわかります。上空から見下ろした景色が目に焼き付いておりますので。真っ直ぐ行くと様々な果物を積んだ店があります。その十五軒右に串焼きを売ってる店がありますね。何の串焼きかまではわかりませんが、まずはそこから」
「果物が先」
「……仰せの通りに」
三人は帝都の中央市場にいた。
帝城内部を除いた帝都の中では一番開けた空間なのだが、人にぶつからずに歩くのが困難なほどに賑わっている。彼ら彼女らの目当ては、多種多様な店だ。ちゃんとした建物の軒先や簡素な屋台、地べたに商品を並べたものまで、様々な店が開かれている。
驚くほどに商品が多様なのは帝国だからだ。
一般名詞で言う王国と帝国の違いとは、王国が単一民族からなる国家なのに対し、帝国は他民族からなる国家である。言い換えれば複数の王国を支配して出来たのが帝国なのだ。尤も、各国の王はそれぞれの民族の長ではなく、帝国の皇帝が派遣する。総督というやつだ。
ゆえに、帝国の帝都の中央市場が文化的に非常に豊かであるのは当然と言えた。多様な文化を学ぶために帝国を選んだのは、さすがのアルベド様である。
中央市場は広大な帝国で最も賑わっている場所だ。混雑するのは必然。しかしながら、三人の周囲は切り取ったように空間があいていた。
遠目にも輝くような美男である。ぶつかる大分前に男に気付いて誰も彼も足を止め、それから幼い美貌のダークエルフが側にいることに目を見張り、最後に全身鎧に固めた帝国騎士に気付く。
ナザリックでも希な美貌の男は、エ・ランテルではよく知られているが、帝国の民が目にするのは初めてだ。エ・ランテルと帝国では受け止め方に違うところがある。
この男は、美神アルベドの寵愛を受けて磨かれ続けてきた。エ・ランテルの民は磨かれていく過程を目にしてきた。帝国の民は磨き抜いた結果を目にしている。まるで高きから降りてきた光が人の形をとったような。
自分の目で見たものが信じられず、しばし呆然として誰も彼もが足を止めた。結果、混雑に拍車が掛かるのである。
無自覚に迷惑を掛けてる二人は中央市場の屋台でお昼にするつもりだった。ジルクニフにつけられた帝国騎士は案内役のはずなのだが、帝都の地理は完全に把握したと豪語している男がいるのでお財布役になっている。
屋台であれこれつまみ、アウラちゃんがちょっとだけ味見して口に合わなかったのは若旦那様が片付ける。アウラちゃんはお肉より果物。酸っぱいのより甘いのがいいらしい。
荷物を届けたアウラがまだ残っているのはちょっとしたわけがあった。
アインズから一人留学させると聞いたジルクニフは、学士の宿に大きな屋敷を用意した。アインズ直々に伝えられ、魔導国宰相閣下直属とくれば軽く扱えないのだ。帝国の文化を学ぶというなら、最大限に厚遇して良い話を持ち帰ってもらわなければならない。
用意したのは帝都における魔導国の公館として確保していた屋敷で、広いし大きいし贅沢な造りである。
だけども来るのが急すぎた。大急ぎで屋敷を整えているが、引き渡せるにはもう少し時間が掛かる。
準備が整うまでは、帝都の高級宿で過ごしてもらうことにした。
このお宿、アインズ様も利用したことがある。とくれば、ナザリックのシモベであるアウラが万難を排して行きたくなるのは道理である。ドラゴンに言付けて配下の魔獣たちへメッセージを飛ばし、今日はお泊まりすることにしたのだった。
それ以外にも、この男がジルクニフと交わしていた会話から思いついたことがある。そのことについて、ちょっと相談してみたいとも思っていた。
帝都にはどうせしばらくいることになるので、食事を終えたら早々に中央市場を後にして宿に向かった。
アインズ様に「高級ホテルみたい」と思わせた宿である。ナザリックのロイヤルスイートとはさすがに比べるべくもないが、アインズ様効果によってアウラちゃんはちょっぴり心が弾んできた。
「詳しいことはまだ言えないけど、また来るからその時によろしくね」
「かしこまりました」
防諜を気にして、アウラは詳しいことを話さなかった。
事は魔導国の安全に関わることなのだ。
具体的にはアウラのお仕事、魔導国の警戒網についてである。
この男はジルクニフへこんなことを言っていた。
『帝都内での警備に手薄のところがありますね。それとも警備兵の巡回ルートで補っているのでしょうか。詰め所の位置から察するに少々効率が悪いようです。よろしければ改善案を出しましょう』
ロクシーが見たとおり善意からなる発言である。
帝都には、これからルプスレギナとミラと、シクススが来る。前者二名は強いので放っておいて良いが、シクススは無力なメイドである。そして至高の御方が手ずから創造したシモベである。そのシクススに万一の事があると、間違いなくアインズ様は激怒する。そして帝都が灰燼と化す。破滅を避けるがために、帝都の治安向上の一助になろうとしたのだ。
ジルクニフは目眩がするほどの怒りで、笑みを繕うのに必死だった。
始めは改善案だろうと、警備に口を出すことに代わりはない。警察権への介入だ。提案の効果が認められ、徐々に差配できる領域を増やしていけば、行く行くは自治権にまで届きかねない。警察すなわち国家による暴力は、国家が独占するものなのだ。それを取り上げられるという事は。
結局は、アウラが魔獣を派遣して居住する屋敷の警備は万全にすることになった。
アウラに引っかかったのは警備だった。
アウラのお仕事は魔導国全体の広域警戒である。現状では何とかなっているが、魔導国は順調に支配領域を広げている。いずれ抜本的に警戒体制を見直さないと息詰まってしまうかも、と思っていた。
アルベド直属でデミウルゴスが認める頭脳なら、何かいい考えがないかと目を付けた。
さすがにこんなところで話せない。
宿では雇人を呼んでアインズ様が滞在したときの様子を聞いたり、マーレにお土産を持って行くべきか相談したり、それなりに楽しく過ごして夕食を迎えた。
帝都が誇る一見様お断りの高級宿でもナザリックに見劣りするのは当たり前。夕食には美味しくないのも出てきたが、そこは目の前の男があれこれ注文をつけてアウラにもそこそこ美味しく食べられるものを用意させた。
当然ながら部屋は別。
やたらと広い一人部屋に入った若旦那様は、階層守護者なのでかなり偉いアウラ様と一緒だったためにずっと張っていた気を緩めて現状をあらためた。
行き先は自身の内部。帝都よりも広大な記憶の宮殿。
そこには帝都が丸々入っていた。入れようと思ったのではない。上空から見下ろした折りに勝手に構築されてしまった。
帝都の大通りを歩く。自身の内部にある帝都なので、歩いているのは自分一人だけのはずだ。それなのに、行き交う人がいる。見知らぬ帝都の民だ。こんなものをおいた覚えはないし、あっても邪魔になる。
行き交う人の話し声も聞こえる。こんなものを聞いた覚えはない。
自分はいったい何を見て、何を聞いているのだろうか。
果たしてここは自分の中なのか外なのか。
エ・ランテルに戻り、屋敷の門を潜ればやはり無人だ。書斎には幾つもの書見台に今まで読んだ本が置いてあり、思うままにページをめくることが出来る。アルベド様のお食事部屋に行けば、ソファに座るアルベド様、ソファに横たわるアルベド様、サイドテーブルの傍らに立つアルベド様、寝台の上にはお美しいと呼ぶことすら憚れる神々しいお姿で。
もう一度帝都に戻り、今度は帝城に踏み入る。衛兵が幾人もいるが、自分に気付く様子はない。当たり前だ。これは自身の内部にある光景なのだから。
置いた覚えがないものだからか、エ・ランテルの屋敷にある記憶と違って触ることが出来なかった。
果たしてこれは自分の中なのか外なのか。外だとしたら何故中にあるのか。自分が見ている帝都はいったい何処にあるのか。
疑問は尽きず、考察すべきものが膨れ上がった。
だけどもそれらは後回しにして風呂を使い、夜着代わりにガウンを羽織って部屋を出た。
目的地はお隣の部屋、アウラ様のお部屋である。
添い寝するのだ。
ドラゴンの上で抱っこしたアウラ様はとても温かくて気持ちよかった。
添い寝すれば温かくて気持ちよく眠れること間違いなしである。
簡単に禁煙出来るわけないんじゃ(#゚Д゚)
アルベドやシャルティアと違ってエロ属性がなく、プレアデスより偉い守護者なアウラなのでじっくり行きます
アンケートはもうしばらく置いときます
アウラはアインズ様が秘蔵してる凄いマジックアイテムで
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爆乳王女様(公式)になって色んなことを
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やっぱ小さいままで出来るとこまで