※この作品はR-18です。

アルベドのお食事   作:dolph

82 / 268
真実の探り方

 ルプスレギナは性悪サディスト愉悦系ワーウルフである。

 誰かが勘違いしてたら正すわけがなく、全力で煽って勘違いを加速させ、たっぷりと油を注いで大炎上させ、完全に後戻りできなくなってからネタばらし。

 プークスクスバカスギッスネザマア! とかやってしまう悪い人狼である。

 しかし、このネタはヤバすぎた。間違いなく死人が出る。死ぬのは未来のお婿さんだ。即座に間違いを指摘した。

 

「アウラ様におちんちんはついてないっすよ」

 

 若旦那様はきょとんとした顔でパチパチと二度瞬き。

 

「ダークエルフの生態はエルフと同じだと思ってたけど違うのか。幼少期は外性器が体内にあるのかな」

「違います。エルフもダークエルフも人間も同じです。アウラ様は女性です」

 

 シクススも続いた。ここで若旦那様の勘違いを正しておかないと遠からず死ぬのはシクススにもわかっている。

 二人が間違いを正してくれたというのに、若旦那様は露骨なしかめ面を作った。

 

「二人して俺をからかわなくていいだろう。全く何言ってるんだ」

「何言ってるのはおにーさんの方っすよ! アウラ様は女の子っす! おちんちんなんてついてないっすから!」

「ルプスレギナ様の言う通りです。もう一度いいますよ? アウラ様は女性です」

「男の子の服着てるからって何勘違いしてるんすか」

 

 何故か二人は頑なに間違いを押しつけてくる。

 どんな意図があるのか知らないが、正しく反論すればおかしな押しつけは止むと考えた。

 

「服装から性別を見てるわけじゃないよ。俺はマーレ様を肩車したんだ。マーレ様の股間を首に乗せてもおちんちんはなかった。アウラ様とマーレ様は双子の姉と弟。マーレ様が女の子ならアウラ様は男の子。違うか?」

 

 首に逸物の感触はなく、ちょっぴりぷにっとしていた。マーレ様のぷにまんである。

 

「全然違うっすよ!」

「何が違う? まさかマーレ様が男の子だとでも言うのか? おちんちんがなかったんだぞ? もう一つある。俺はマーレ様のパンツを借りたんだ。あんな小さいパンツじゃちんこが入るわけがない」

「それは……マーレ様のおちんちんはまだ小さいんです。小さいから小さいパンツでも大丈夫なんです」

「……俺がマーレ様くらいの背丈だった頃はあんなパンツに入らなかった」

「おにーさんってそんな頃からちんちんでかかったんんすか?」

「さすがに今よりずっと小さかったよ」

「いつ頃からでかくなったんすか?」

「そうだね……」

「二人とも話が逸れています。マーレ様は男性でアウラ様が女性です!」

「そうっすよ! アウラ様はちゃんと女の子してるっすから!」

 

 アウラは精神的には大人びてるが肉体は幼い。背が小さければ胸もない。そこのところを度々シャルティアがからかって、キャットファイトになるのはいつものことだ。アウラはそこを気にしているからこそバトルになるのだ。

 そのシャルティアとて、アウラにおちんちんがついてる、なんて酷い事は言わない。

 それを言ってしまうと、後はもう命のやりとりしか残されていないのだから。

 

「二人が言ってることはわかった。だけどね、俺は賢くはなくても真実を多数決にゆだねるほど愚かではない。聞いた話を鵜呑みになんて出来ないな」

 

 賢しげな言葉だけどスゴいバカである。

 下手に賢いので、こう言うときどうやって言い聞かせればいいのか二人にはわからなかった。出来るのは力押しだけである。

 

「おにーさんが何て言おうとアウラ様は女の子っす!」

「そうです。立派な女性ですから!」

「……そこまで言うなら。本人に直接確かめるよ」

「絶対ダメっすからね!?」

 

 やってしまえば間違いなく死ぬ。それをさせないがために二人は頑張っているのだ。

 

「アウラ様におちんちんついてますか、なんて聞かないよ。そんなの失礼だし」

 

 相手が男の子だろうと女の子だろうと、とても失礼な質問である。

 

「ではどうやって確かめるおつもりですか? 絶対に、本当に絶対に聞いてはいけないんですからね?」

「簡単さ。ついてるかどうか、脱がせば一発でわかる」

「!?」

 

 

 

 

 

 

 数日おいて、アウラは帝都のお屋敷を訪問した。前回と前々回とその前と同じく、魔導国支配領域の警戒網についてである。

 現在は魔獣を使って警戒しているが、アウラがいかに優秀なビーストテイマーだとしても数に限りがある。効率的な警戒ルートを構築してもいずれ限界が来る。そこを代替するための組織作りについてが主な内容である。

 こういった相談は他へは出来ない。アルベドやデミウルゴスなら何とかなるだろうが、二人ともとても忙しい。どうしてもアルベド麾下のあの男が頼りになる。

 尤も、盲目的に信頼しているわけではない。真摯に受け答えしてくるしアウラにも尤もらしく聞こえるが、出された案が本当に使えるかどうかは別問題だ。試しにアルベドへ、「こんなのどうかな」とアイデアの出所を伏せて話したことがあった。アルベドはたおやかな微笑を崩さずに小さく感嘆の声を上げた。どうやってそんな事を思いついたのか聞きたがった。

 アウラは、詳しそうなのに相談した、としか言わなかった。正直に話してもよかったが、何とはなしにためらわれた。アルベド直属なので、勝手に使うなもう会うな、と言われるのを恐れたのかも知れない。

 

 ともあれ、内容についてアルベドのお墨付きがあるなら問題なし。訪問は二度三度と重ねられていた。

 ところが前回、とんでもないものを見せられてしまった。

 見たいか見たくないかと言われたらわからないがどちらかといったら見たくない。また見せられてしまったらとの懸念はなきにしもあらず。

 だけどもアウラは階層守護者。とても偉いのだ。いやなことはいやと言える立場である。

 変なものを見せられそうになったら断固として拒否することにして、本日。

 

 大きな机に広げられた魔導国周辺の地図や組織図の素案を書いた紙をアウラが仕舞う。持ち帰ってマーレにも見せるのだ。

 何事かを書き付けられた紙は男が片付ける。本邸にいるのはナザリックの一般メイドやエ・ランテルで扱いたメイドたちなので見られても問題ないだろうが、一応は機密事項なので守秘には気を付けていた。

 

「アウラ様にお見せしたいものがあります。少々よろしいでしょうか?」

 

 アウラのエルフ耳がピンと立った。

 

「……………………なに? 変なのだったら見たくないから」

 

 警戒もあらわに、アウラは言ってやった。階層守護者であるアウラには見たくないものは見ないと言う権利がある!

 ちなみに時間は大丈夫。一日の仕事を終えて、近隣の警戒ついでに帝都に足を伸ばしているので、後は帰って寝るだけだ。

 

「少々古い話になります。ハムスケさんのことです」

「ハムスケの?」

 

 会議室から移動した先は帝都の屋敷にも作ったアトリエである。

 使い始めてから日が経っていないので、壁際に並んだ棚はまだスカスカ。大小の机に乗っているものも少ない。

 様々な形のガラス容器や、透明な液体に満ちた小瓶が何本も並んでいるのが錬金術師の工房を思わせる。ただし、臭いはそれほどでもない。これが商売をやっている錬金術工房となると、種々の薬草や薬品の臭いで凄いことになっているのが常だ。

 

「ご覧ください」

 

 黒いトレイに乗っているのは三本の糸。白くて一端が尖っている。男は右の一本をつまみ上げた。糸は曲がることなく真っ直ぐのまま。ハムスケの体毛である。

 

「これが加工する前のハムスケさんの毛です。針金みたいですね。これを持ってみてください」

 

 アウラに頼んだのは真ん中の体毛。小さな手が持ち上げると、ただの糸のように折れ曲がった。

 

「へーーーー! ハムスケの毛がこんなになったの?」

 

 針金のような剛毛が柔らかくなっている。全身がこうなればさぞもふもふになるだろう。

 

「密封した容器で加圧加熱してから脱脂処理を施しました」

「ダメでしょ。そんなのしたらハムスケ死んじゃうじゃん」

「やっぱり死んじゃいますか」

 

 凄い魔獣だけど、300度で一時間も煮れば死んでしまうのだ。

 

「三番目のこれは薬液だけを用いました。皮膚へのダメージもないことを確認しています」

 

 三番目は二番目と同じくらい柔らかくなっていて、未加工の毛と変わらない艶がある。

 

「難点は何度も同じ処置を施さなければならないことです。ハムスケさんは大きいですし、薬液も相当量が必要でしょう。薬液の生産は出来ますが、ハムスケさんに塗布するのが大変そうです」

 

 全身シャンプーのようなものである。

 アウラはお気に入りの魔獣であるフェンの全身を洗うことを考えて、絶対無理と頭を振った。全長20メートルの狼を洗うなんて無理すぎる。ハムスケはそれよりずっと小さいが、何度もしなければならないとなると厳しいものがあった。

 

「ただ腹案もありまして、これを使えば塗布自体は簡単になると思います」

 

 そう言って、机の上から試験管を一つ取り上げた。

 中身を一滴だけ手のひらに垂らすと、液体は玉を作らず広がった。

 

「飲んでも害のない水のようなものです。人の肌と親和性があって、こうして垂らすとどこまでも広がっていくんです。試してみますか?」

「うん」

 

 水のようで水とは違う振る舞いをする面白い液体である。ソリュシャンと共同開発した特性ローションの素材であったりする。

 差し出した試験管を受け取ろうとアウラが手を伸ばすのを、男は変わらぬ表情で見守った。

 

「あっ!?」

 

 受け取った瞬間に試験管が割れ、中身がアウラの体に飛び散った。

 アウラは長い手袋を着けているのでガラス片で怪我をすることはない。装備しているベストとズボンには当然のように耐水性があるので濡れることもない。

 だけれども、

 

「つめたっ!? なにこれ!? 服の中に入ってきたんだけど!」

 

 服や手袋など、人体以外からは弾かれる液体なのだ。たとえば机の上に垂らすと、水の玉になってコロコロと転がっていく。そこへ指で触れると吸い込まれるように上ってくる。

 僅かな隙間から浸入し、人肌を目指すいやらしい液体である。ソリュシャンはこれに毒性を持たせた回避不能の凶悪毒ポーションを持っていたりする。

 

「少し冷たいだけで害はありません。ですが拭き取るのが難しい液体で、乾くのを待つか大量の水で流すしかないんです。すぐに風呂の用意をさせます。大変申し訳ありませんでした。アウラ様はゆっくり温まってきてください。シクスス、案内を頼んだよ」

「はい、かしこまりました」

 

 アトリエのドアを開ければすぐそこにシクススが。

 アウラはあれよあれよとと言う間に連れて行かれた。

 

 もちろん全部仕込みである。

 試験管は通常より薄い作りで簡単に割れるようにしてあった。

 風呂の用意はとっくにしてある。

 シクススはドアの外で待ちかまえていた。ちらとこちらに向けた目は冷たかった。




短いけどきりがいいと思ったので

応援の言葉が心身に沁みました
ありがとうございます
とりあえずアウラ編はもちょっと続きそうです
まあ長くなってもいいやの精神で
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。