アウラはステップに足を置いたまま、中には入らなかった。
男から異臭が立ちのぼっている。男と女が交じり合った臭い。それだけなら、この男とミラが実演した時に嗅いでいる。しかし、今回はシャルティアの匂いが混じっている。知ってるはずの性臭がどうしようもなく汚らしいものに思えて、近付きたくなかった。
「お帰りになったのではなかったのですか?」
「いいから答えて。シャルティアと何してたの?」
この場所に現れたのなら、何をしていたかずっと見ていたはずである。アンデッド馬にミラが警戒していても、優秀なレンジャーであるアウラにとっては案山子も同然だったようだ。
「ご覧になっていたのでしたら察していただけると思いますが」
「何してたかって聞いてるのよ!」
わかってるだろうに語気が荒い。何が癪に触ったのか全くわからないが、言えと言うなら答えるのはやぶさかでもない。
「シャルティア様をお慰めしていました。有り体に言えばセックスです。アウラ様の前でお見せしたこともあるので、どのようなことかはご存知のはずです」
「……シャルティアはアインズ様の正妃に立候補してる。それをあんたは……。自分が何したかわかってるの?」
馬車内は魔法の灯りで照らされているが、光量は吸血鬼であるシャルティアを基準としているので大した明るさではない。馬車の中に入ろうとしないアウラがどんな顔をしているのか、男からは見えなかった。
声は平静で落ち着いてるように聞こえた。
内心では全く落ち着いていない。荒れすぎて自分の感情がわからない。
シャルティアがシモベたちと戯れているのはアウラも知っている。アインズ様の御前で下着をぐしょぐしょにしてしまうほどどうしょもない淫乱吸血鬼だ。ナザリックのシモベたちにとって、シャルティアが性に奔放なのは今更のことだ。
アウラにもわかってることなのに、どうしてこんなことを聞いてしまったのか。
この男にシャルティアを盗られたように感じたのなら話は簡単だ。アルベド直属とは言え人間の男。守護者である自分の方が遙かに地位も権限も上にある。シャルティアに近付かないように言えば済むし、それでも気が済まなかったら痛い目に遭わせてもいい。
だが、アウラが感じたのは真逆だった。
この男をシャルティアに盗られたように感じてしまった。シャルティアに一歩先を行かれたように思った。シャルティアに置いて行かれた。
そもそもとして、この男がシャルティアに言い寄ることはあり得ない。ナザリックにいるシャルティアと、エ・ランテルにいたこの男とでは接点がない。間違いなくシャルティアから近付いた。シャルティアから積極的に関係を迫ったのだ。迫られて、あんなことをしていた。
それがわからないほど愚かだったら良かった。この男を責めるだけで終わったつもりになったことだろう。
この男を責めても無駄だとわかっている。それなのにどうしてこんな言葉で責めているのか。
「ふむ……」
「答えられないの?」
「いえ、存じております。アルベド様とシャルティア様がアインズ様の正妃を望んでいるのは私も聞き及んでおります。私はアルベド様が勝ち取ると信じておりますが」
「じゃあシャルティアが不利になるようにあんなことしたってわけ!?」
「全く違いますよ」
立候補してるもうお一方であるアルベド様とはそれ以上のことをしているのだから、そんなことは考えたこともない。
あちらから迫られている以上、こちらには拒否権がないのだ。そうと話してもアウラは納得しないと思われた。
幸か不幸か、王国の王女と長かったこの男には、あれがどういうことか理解できていた。
「アウラ様は宮廷騎士と言うものをご存知ですか?」
「適当に言って誤魔化すつもり?」
「違います。立派な役目ですよ。ご存知ないようですので説明しましょう。どうぞ中へお入り下さい」
「ここでいい」
「左様ですか」
アウラに近付こうとしたが目で制された。仕方なくその場に座り直し、アウラの方を向く。
「アウラ様にお尋ねします。例えば、帝国の東端に所領を持つ領主が皇帝の命を受け、軍を率いて聖王国まで遠征するとします。片道にどれくらい時間が掛かるかわかりますか?」
「それがなんか関係あんの?」
「宮廷騎士の役割をご理解いただくために必要なんです」
「……十日くらい?」
「移動は徒歩です。カルネ村からエ・ランテルまで、旅慣れてる冒険者でも野営の必要があります」
「知らない。だからなに?」
「軍での移動になりますので、速度は最も遅い者に合わせる必要があります。領主は馬に乗るでしょうが兵は徒歩です。食料だって持って行かなければなりません。
数日の旅でしたら野営はマントにくるまって寝ればいいでしょうが、長旅ではそうもいきません。夜を迎える度に寝所として天幕を張らなければならない。設営の為に時間をとられます。また、歩き通しでは疲れますので、適度に休憩をとる必要もあります。日に六時間も移動できないでしょう。
そうして遙々帝都まで進軍し、そこからアゼルリシア山脈を迂回するために大きく南下します。カルネ村付近を通ることになりますね。
山脈を抜けたら王国を横断して海沿いに南下するか、はたまた法国を抜けるか。
いずれかのルートを踏破したら、今度はアベリオン丘陵があります。現在、デミウルゴス様が活動されている地域とか。
最後の難関を越えてようやっと聖王国に入ることが出来るんです。
片道で三ヶ月以内でしたら上等でしょう」
「三ヶ月!? そんなに掛かるわけないじゃん!」
「早くて三ヶ月です。人は飛べないのですよ。それだけ掛けて目的地に到達し、目的を果たすとします。帰り道にもやはり三ヶ月。冬季の移動は困難になりますから、時期によっては春を待つこともあります。未知の世界ではない、地図の西端へ行って帰ってくるだけで、一年以上掛かることも珍しくありません」
どうしてそんな話をしているのかわからないが、アウラだったら数日で済む道程が一年も掛かるとなれば、驚いたのもあるし、やっぱり人間は、と思う向きもある。
「領主たちは一年以上も領地を留守にします。妻を残して。残された妻はどうするか? 夫の帰りを待つわけです」
「そんなの当たり前じゃん」
「ですが一人残されるわけですよ。寂しい思いをすることもあるでしょう。そういったご夫人たちを慰めるのが宮廷騎士の仕事です」
「でもアインズ様は…………」
「はい、アインズ様はナザリックにいらっしゃいます」
アウラが察したのを察して、説明を付け加えなかった。
アインズ様は確かにナザリックにいらっしゃる。少し前に遠征へ赴かれたが、何ヶ月も何年も掛かるものではなかった。
但し、アインズ様の玉体はお骨である。肉はない。アインズ様へどれほど肉欲の解消を求めても、決して与えられないのだ。
「領主程度ではわかりませんが、王族になりますと、王と王配が閨を共にするときは公的な記録に残します。それ以外の時期に出来た子供には正当な継承権が与えられません。王が気まぐれに町女に手を出しても産まれた子供が王子になるわけではないのです。その逆も然り、です。もっとも、帝国の皇帝は若いので妻や愛妾を放っておくことはないでしょう。耄碌してる王国の長はわかりかねますがね」
「じゃあ………………、あんたはシャルティアがそうしろって言うからしただけって言うの? シャルティアのことは何とも思ってないわけ?」
「まさか。とてもお美しい方だと思っております。振り回されもしますが、光栄でもあります」
シャルティア様に真の美を見てしまったばかりなのだ。
世界を照らすのがアルベド様なら、夜に輝くのがシャルティア様と言うことか。ナザリックはお二方で昼と夜を支配しておられる。これは世界征服と同意ではないだろうか。
「私にもあんなことしたよね?」
「はい。楽しんでいただけたかと存じます」
「そ、そんなことはいいの!」
舐められて吸われた感触を、生々しく覚えている。
「…………じゃあ」
言うべきか否か、アウラは数瞬迷った。
迷ったのに口にしてしまったのは、シャルティアへの対抗心と、あの時感じた以上のものへの期待と、この男への執着と、その場の勢いが後押しした。
自分をどう思っているかは聞けなかった。期待してない答えだったらと思うと怖くなる。
しかし、こういう風に言うのなら。
ついさっき、宮廷騎士の役割として、と語ったばかりだ。階層守護者であるシャルティアがいいのなら、シャルティアと同じ地位にある自分が求めても受け入れられるはずである。
ずるい言葉だとは思ったが、それ以外の言葉は思いつかなかった。
「私にもしてって言ったらするの?」
「セックスのことですか?」
「……そう」
「無理です」
即答され、アウラはかっと血が上った。
「アウラ様には入りません。私のものをお見せしたのですからアウラ様にもわかるはずです」
女の悦びを知っても、アウラは体が小さすぎる。入れようと思っても未成熟な体は受け入れられない。
「先日のようにお慰めするのでしたら構いませんが、それ以上は無理です。入れようにも入りませんし、その前に立ちません」
「っ!!」
「体の成長を待ってからでも遅くないはずです。長命なアウラ様ですから、その頃まで私が生きてることはないでしょう。ですが、アウラ様は美しく成長されることが約束された方。アウラ様が求めれば誰であれ…………あれ?」
開け放たれた馬車の扉の向こうには、ひたすらに闇が広がっている。
僅かな光に照らされて、朧気に見えていたアウラの姿は消えていた。
「ご主人様、どうかされましたか?」
「…………いや、夜の空気を吸ってただけだよ。帰路に問題ないかい?」
「はい、何も問題はございません。馬に任せておけば私が何もせずとも帝都に到着いたします」
「それならこっちに来たらどうだ? 帝都までまだ掛かるんだろう?」
「はい! 夜道を駆けるわけにもいきませんので静かに走らせるとどうしても時間が掛かってしまいまして帝都に着くまでまだ間があるのですが私は座っているだけでこれと言って何かをしているわけでもありませんのでご主人様のご命令には何なりと従う余裕がございますから何なりとお命じ下さい!」
アルベド様と違って、シャルティア様は一度で満足なさることが多い。精気や精液を吸収するわけではないからだ。
シャルティア様に備えて準備は万端だったが、一度だったので残弾が余っていた。
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アウラはナザリックに戻った。
男の言葉を聞いて、反射的にあの場を離れていた。まるで逃げるようだった、ではない。逃げたのだ。
悔しいのだろうか。
敗北感を覚えているのだろうか。
たかだか人間の男から逃げた自分が、惨めでならなかった。
「おやあ? アウラじゃないでありんせんか」
「…………シャルティア」
ナザリック表層部のログハウスでは、ユリが気遣わしげな顔をしていたような気がする。
振り切って第九階層へ直通してるゲートを潜った。とぼとぼと歩いていると、会いたくなかった奴に会ってしまった。
たっぷり良い思いをしてきたシャルティアはとっても上機嫌だ。シモベが目の前で転んでドレスにワインを引っかけても笑って許し、気遣いをしてやれるくらいに。
「相変わらずおチビはおチビでありんすねえ。おチビが下を向いて歩いてたらあんまりにもおチビで見過ごしそうでありんす。踏んづけるのも可愛そうでありんすから? 踏まれたくなかったら隅っこを歩きなんし」
「………………次おチビって言ったら怒るから」
「おチビじゃなければお子様でありんすね。お子様は寝る時間でありんすからさっさとベッドに入って寂しく寝なんし!」
「シャルティアアアアアアァァ!!」
「やりんすか!?」
心身ともに充足してる夜の吸血鬼はキレッキレだった。
すり減ってるアウラは温まっていた堪忍袋の緒がぷつりと言って、ナザリックでは珍しくもないキャットファイトが始まった。
引っかき噛みつき、髪を引っ張ってビンタをすれば頭突きもあって、およそ淑女には相応しくないラフファイト。
いつものアウラだったら頭を使って直情型のシャルティアを上手くあしらう。
ところが今日は様子が違った。
頭に血が上りきって、真っ直ぐに突き進むことしか出来ない。100レベルのアウラであろうと、シャルティアもまた100レベル。その上シャルティアの得手は近接戦。群を率いるのが真骨頂なアウラでは分が悪い。シャルティアとのラフファイトに勝てるのはアルベドだけである。
近接戦とくればコキュートスやセバスも強いのだが、彼らは空気を読んで早々に負けを宣言するのだ。
「きゅう…………」
「まったくお子様は頭までお子様でありんすねえ。これに懲りたらお子様はお子様らしくすることを覚えなんし」
考えもなく近接戦でシャルティアに挑むのは無謀だった。
アウラは目を回して床に倒れ伏し、シャルティアは高笑いしながら去っていった。
ややあって、気遣わしげなメイドたちに見守られながら、アウラは何事もなかったように立ち上がった。深く俯き、目元を袖で拭う。
誰にも会いたくない。一人になりたい。シャルティアに言われた通りにするのは非常に腹立たしいが、さっさと寝てしまいたかった。
誰にも会いたくなくて、俯いたまま歩く。
ゆえに、声を掛けられるまで偉大な気配が近付いたことに気が付かなかった。
「どうしたのだ?」
「あ……、アインズ様!」
咄嗟に跪く。玉顔を直視する非礼を犯さないよう、頭を下げた。
「アウラにしては珍しく力のない歩き方だったな。一体何があった?」
「い、いえ! 何でもありません。アインズ様にご心配をお掛けして申し訳ございませんでした」
ナザリックのシモベたちにとって、アインズ様に心配を掛けるのはこの上ない苦痛なのだ。どうして自分の愚かさ故に偉大なるアインズ様にご迷惑をお掛けしなければならないのか。
半死半生であっても、アインズ様に心配を掛けるくらいなら、「何でもありません」と答えるのがシモベたちのデフォである。
と言うことを、アインズも理解しつつあった。
自分に迷惑を掛けないように振る舞うシモベたちの心遣いを嬉しく思うと同時に、些細な事から大きな事まで話そうとしないのは割とかなり困ってる。
ナザリックはブラックかも知れないがホワイトな組織を目指しているのだ。そのためには、シモベたちが困っていることに耳を傾けなければならない。
特にアウラは、ギルドメンバーであったぶくぶく茶釜が創造したNPC。中身は大人びていてもまだまだ子供。
俯き歩く様子は、明らかに元気がなかった。声を掛けるまでこちらに気付かなかったのも異常事態だ。
問題があるなら聞き出して解決したい。しかし、アウラからは頑なに話そうとしない。
こんな時に役立つのが、今日まで培ってきた支配者ロールである。
「私の喜びはお前たちの幸せだ。そしてお前たちの悲しみは私の悲しみでもある。私のためを思うなら話すのだ。どうしても話せないというなら無理は言わんが」
「いえそんなことはありません! アインズ様を悲しませるなんてそんな、けっして……」
偉大な主の余りにも深い優しさに、アウラの脳裏でああなんとお優しいアインズ様アインズ様偉大なるアインズ様とアインズ様賛歌が流れた。
顔を上げたアウラの目元は、少しだけ赤くなっていた。
「実は……、シャルティアにチビとかお子様とか言われて頭に来ちゃって……。アインズ様にご心配をお掛けしてしまって本当に申し訳ございません」
アウラは再度頭を垂れた。
(シャルティアかあ。シモベを気遣えるようになったと思ったんだが、俺が誉めすぎて調子に乗らせたか?)
実はシャルティアなりにアウラを気遣ったのである。シャルティアの発言を意訳すると、
『元気がありませんね。そんなところをシモベたちに見られると貴女の威厳にかかわります。早くお休みなさい』
となる。
こんなのシャルティアの側近であるヴァンパイアブライドエリートシックスだって翻訳できない。
アウラとキャットファイトしたのだって気分転換のつもりだった。いつもの調子でやっつけてしまったのは、これはもうシャルティアだから仕方ない。
気持ちの伝え方がどれほど大切であることか。コミュ力はとっても重要である。
「でもいいんです」
顔を上げたアウラは、唇を歪めてふふと嗤った。
「シャルティアはアンデッドだから成長しませんけど、私はいつか大人になります。そうしたらシャルティアにお子様って言ってやりますから」
アウラらしくない暗い笑みだった。アウラは、いつか果たせる復讐の暗い愉悦に浸っている。
復讐とはとてつもない快楽をもたらすのだから。ゆえに、いつの時代も復讐譚は人気がある。
アウラの暗い笑みを見て、アインズの脊椎に怖気が走った。
(まずいぞ。このままではアウラがダークサイドに墜ちてしまう!)
ダークサイドに墜ちるダークエルフとはこれ如何に。
「少しここで待っていろ」
「アインズ様?」
アインズ様は魔法でどこかへ転移してしまった。
言われた通りに待ち続ける。
再び現れたアインズ様は、手に大きな瓶を持っていた。何の飾り気もない只の瓶。中には青くて丸い物がいっぱい入っている。
「アウラにはこれをやろう」
「何でしょうか?」
アウラは思わず受け取った。中身こそ宝石のようにきらめいているが、ナザリックには相応しくない素朴すぎる容器である。
「それは『不思議な青いキャンディー』と言う魔法の薬だ。舐めれば一時的に大人の姿になることが出来る」
「いただけません! こんな貴重な物を……」
「確かに貴重な品だ。しかし、貴重なアイテムよりもお前たちの方が遙かに掛け替えのない存在と知れ」
アインズ基準では貴重な品である。なにせ入手手段がもうないアイテムなのだから。
しかし、有用なアイテムかと言えば全く違う。ゴミである。ユグドラシル時代のお使いイベントで入手したきり仕舞っておいたものだ。ほったらかしにしてたとも言う。
使い道など全くない。それなのにスペアが十個ある。
貴重かと言えば貴重だが、必要かと言えば要らないものなのだ。
そんなアイテムを下賜されたアウラの脳裏にアインズ様賛歌が流れた。
感動の余りに、涙をポロポロとこぼす。
「早速試してみるとよい」
「はい!」
蓋を捻ってきゅぽんと開ける。
大きなキャンディーを一つだけ取り出して、口の中へ放り込んだ。
キャンディーなのに甘くない。ちょっぴり苦いのは大人の味。
「おお……」
アインズは小さく感嘆の声を上げた。
「あの……どうでしょうか?」
アインズ様を見上げるときの首の角度が大分違う。
視界に映る自分の手が大分大きくなっている。
大きくなった実感はあるのだが、鏡でもない限り自分の姿は見えないのだ。
「うむ、確かに大人の姿になってるな。シャルティアに見せてやれ。そうすれば変にからかってくることもなくなるだろう」
「……はい! アインズ様、ありがとうございます!」
大人になった姿がどうなのかを聞きたかったのですが、アインズ様にはそこまでわかりませんでした。
アインズは、長くなった足で駆けていくアウラを見送った。
(まさかアウラがあんなになるとは……。これはシャルティアに悪いことしたかも)
▼
「シャルティアアアアアアァァ!!」
「オノレナニヤツ敵襲か!?」
「何バカなこと言ってんの」
アウラが屍蝋玄室の扉をバーンと蹴破ると、シャルティアは大きな寝台の上でヴァンパイアブライドたちを侍らせていた。
「まさか……、まさかアウラでありんすか!?」
「そうよ。アインズ様から大人になるアイテムを頂いたの。私が大人になるとこうなるのよ?」
「あ……アインズ様が……、アウラに…………」
寝台の上で立ち上がったシャルティアは、崩れ落ちた。
足を揃えて両膝を突き、頭を伏せる。
両手もシーツの上に突いて、頭は尚も下がって額をシーツに擦り付けた。
「……まいりました」
「「シャルティア様!?」」
ヴァンパイアブライドたちの悲鳴が上がる。
己たちの愛しい主人が敗北を宣言したのだ。
ならば自分たちが、と行きたいところだが、今のアウラにはヴァンパイアブライドたちであっても敗北を認めざるを得ない。
「お前たちも謝りなんし!」
「「アウラ様の勝利でございます」」
ヴァンパイアブライドたちも頭を垂れた。
両手両膝を床につき、額すら床に擦り付けて、勝者へ向かって敗者たる己たちに寛大なる裁きを求める由緒正しき謝罪のポーズ。
土下座である。
大人の姿になったアウラは、ただ姿を現すだけで吸血鬼たちから完全無欠の勝利を収めてしまった。
「わかったならいいのよ。……それでね、ちょっとシャルティアに相談したいことがあるんだけど……」
「お前たちは出て行きなんし。……私に何用でございましょうか?」
「もうそれいいから、普通に話してよ」
「わかりんした。それにしてもあのおチビがこんなになるなんて……」
「へえ? シャルティアは私に向かっておチビとかお子様とか言うわけ?」
「申し訳ございません!」
「いやもうそれいいから」
「何でありんしょう?」
「……えっとね」
半裸のシャルティアから目を反らし、頬を赤らめた。
「セックスって……どうすればいいの?」
アンケートに従った結果、アウラは致命的に相談相手を間違えました
次回、濃厚なGL描写がある可能性大です
タグをつけるべきかとも思いますが、80話超で出てくるんじゃタグ詐欺になる気も
前書きに注意文書くだけにしときます