海風「……?」
突然出て来た場違いとも言うべき音楽器具に海風は訝るも、次の攻撃への警戒を緩めない。
「す―っ……」
ウェイカー妹は小さく息を吸うと、唇にハーモニカを当てて吹き始めた。ハーモニカが音階に沿った音を鳴らしていく。攻撃らしいものが出て来る様子は無い。そして音が音階を一往復すると、ウェイカー妹はハーモニカを元の場所にしまった。
「フフ……♥お姉さん、もう『負け』だよ♥」
「なんですって…?」
高雄「挑発でしょうか」
花田中将「いやそれにしてはやる気満々な目をしてやがる。一体何をするつもりだ?」
ウェイカー妹はそう言って再び攻撃の構えに入った。そして兄と共に指弾を発射した。
土煙は未だに十分立っている。弾の動きは十分観測できる範囲にある。海風は再び回避運動を取り─
指 弾 の 直 撃 を 喰 ら っ た 。
海風「え……?」
花田中将「な!」
痛みを感じる間も無く続けて攻撃の第二波がやって来る。そしてこれも直撃した。
海風「づぅっ……」
蒼龍「海風!」
高雄「なんで。あの距離ならかわせるはず」
花田中将「…」
身を打つ弾の痛みに顔を歪め呻く海風。そこへ飛んで来る指弾。今度は両肩と両膝を抉る様に打った。
海風「あぁ゛ぁっ!」
先程までとは打って変わって、攻撃の全てが海風に当たり続ける。
「どうしたの~お姉さ~ん?」
「さっきみたいにひらひら~って避けてよ~♥」
兄弟がくすくすと笑いながら海風に指弾を浴びせ続ける。
海風「ど、どうして……」
海風は自身の痛みよりも自身に起こった事象への疑問に思考を移していた。
海風「どうして『体が思うように動かせない』の……!?」
何故海風は動きの読めていたはずの指弾を避ける事が出来なくなったのか。それは『体が海風の意思に反して動いていたから』だった。
花田中将「あの音を聞いてから急に海風の動きがおかしくなった。まさか!」
海風「(あの女の子のハーモニカの音を聞いてから急にこうなった……まさか、そんなまさか……!)」
海風がハッとした顔をすると、ウェイカー妹は嗜虐に満ちた悪辣な笑みを浮かべた。
「アッ、気付いた~?そう、私のハーモニカの音は神経を狂わせるの♥足を動かそうとすれば頭が、手を動かそうとすれば足が動く…♥私達がぶっ潰した人たちはみ~んなこれでやられたの♥面白いよね~!私達よりずっと大きくって、力も強いのに、何にも出来なくなっちゃうんだもん♥キャハハ♥」
海風「そ、そんな……」
「だからね、お姉さんももうオシマイなんだよ~♥カワイソ~♥」
嘲る様に海風に言うウェイカー妹は何かを取り出した。それは砲丸投げの球だった。
「うふふふ…♥」
海風「っ!」
花田中将「おいまさか!」
高雄「あれを喰らったらさすがにまずいですよ!」
蒼龍「海風!」
花田中将「かわせー!」
次に来る攻撃を予測した海風であったが、指弾と同じ様に一直線に飛んで来る砲丸を躱す事は叶わなかった。砲丸は海風の腹部にボディーブローの様に深く突き刺さった。
海風「っ゛……かはっ……!」
海風は腹を押さえて蹲る様に崩れ落ちた。
「あははははははッ!言った通りになったね♥お姉さんの負けだって♥」
「痛そうだね、大丈夫〜?」
「くぅっ………」
兄弟の嘲笑が響く。海風は苦痛と屈辱の混じったうめき声を漏らしながら地に這う事しか出来ない。
花田中将「ふざけるな」
蒼龍「刀治郎?」
花田中将「ふざけるのも大概しろよこのクソガキどもがー!待ってろよ今その首叩き斬ってやる!」
ヒィッツ提督「駄目だ花田君!」
花田中将「離せ!ヒィッツ提督!これ以上海風を傷つける訳にはいかない!あの調子に乗ってるクソガキどもを叩き斬る!」
ヒィッツ提督「駄目だ!そんな体では!」
花田中将「黙れ!あんたは!海風がやられていく様をのうのうと見ていろというのか!海風が死んでもいいと思うのか!」
ヒィッツ提督「落ち着け!花田君!」
花田中将「これが落ち着いていられるか!グッゴホゴホ!」
蒼龍「刀治郎!」
へたれ提督「今のその体では行っても返り討ちにあうだけだぞ!」
花田中将「なら!どうすれば!どうすればいんだよ!」
ヒィッツ提督「大丈夫。今彼女が向かってる!」
蒼龍「彼女?」
ヒィッツ提督「あぁうちの最強の女がな」
花田中将「私も行く!」
ヒィッツ提督「駄目だ!彼女を信じろ!」
花田中将「くっ!離してくれ!」
クロード提督「御免!」
ドゴ
花田中将「ガハッ!海…風」
ガクン
蒼龍「刀治郎!」
高雄「クロード提督!何を!」銃口を向ける
クロード提督「大丈夫。気絶させただけだ。」
ヒィッツ提督「すまないな」
クロード提督「彼の気持ちは俺にも分かる。それはあんたも同じだろ?」
ヒィッツ提督「あぁもちろんだ。これがうちの家族だったら俺も同じようにしていただろう」
高雄「くっ!」銃を置く
ヒィッツ提督「間に合ってくれよ」
続く