※この作品はR-18です。

花田提督と艦娘達の日常   作:花田司令

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第百九話「戦いの終わり」

海風「すごい……」

 

海風は那智の冷酷なまでの戦いぶりに圧倒されていた。

 

そこへヒィッツが現れた。

 

ヒィッツ提督「まさかこんな所にいるとはな……ヤイバと那智が気付かねば分からなかった……来るのが遅れて本当にすまない。花田君達ももうすぐ来るからな」

 

海風「ヒィッツさん……」

 

ヒィッツ提督「こんなに痛めつけられちまって……痛かったろうに……花田君に合わせる顔がねぇぜ」

 

ボロボロになった海風の姿を見て、ヒィッツは苦々しく言った。そしてヒィッツは地面に倒れ伏しているウェイカーの姿を認めると、その体を起こして手錠とロープで後ろ手に拘束した。

 

ヒィッツ提督「手間ァ取らせやがってこのクソガキが……ただじゃ済まさねぇからな……!」

 

「お兄ちゃんにさわるなぁあああああっ!!」

 

ヒィッツ提督「うるせーぞクソガキ二号!テメーも今からこうなんだよ!……ん?」

 

拘束される兄の姿に気付いたウェイカー妹がヒィッツに向かって叫ぶ。それを一蹴するヒィッツだったが、技をかけ続けている那智の姿を見て何かに気付いた

 

ヒィッツ提督「なんだ、那智のやつ、催眠術にかかってやがるじゃあないか。こいつらの能力か」

 

海風「えっ?」

 

海風は驚いた。正確無比な戦いぶりから那智はてっきり催眠術にはかかっておらず、兄妹への攻撃に転じる直前までかかった演技をしているとばかり思っていたのだ。

 

海風「かかってないんじゃなかったんですか……?」

 

ヒィッツ提督「ああ、それどころか『解けていない』」

 

海風「それじゃあどうしてあんなに─」

 

ヒィッツ提督「あんなに戦えるのか、か?そいつはなぁ海風。那智は戦いが『安易ではない』事を知っているからだ」

 

海風の疑問に答えるヒィッツだったが、海風は今一つ理解出来ない。ヒィッツは続ける。

 

ヒィッツ提督「戦いとは不都合なもの、思い通りにはならないもの。那智にとって戦いとはそういうものだ」

 

海風とヒィッツがウェイカー妹と那智の戦いを改めて注視する。

 

海風「あれで、かかったままなの…催眠術に」

 

ヒィッツ提督「それじゃあ術を解こう」

 

ヒィッツが大きく手を叩いた。

 

那智が極めを緩めてウェイカー妹の拘束を解いた。ウェイカー妹はすぐさま飛び起き反撃に転じようとしたが、その時には既に那智は背後からウェイカー妹の頭と首に両手を伸ばし、瞬く間にチョークスリーパーを極めた。

 

海風「特に変わった様子も無い……」

 

ヒィッツ提督「すげぇモンだぜまったく。アイツが幻影の中で見ている動きと現実のあのガキの動きに差が無い以上変化は起こりえない……もっとわかりやすく言うなら、那智にとって催眠術にかかっていた事なんざ記憶にも無いってわけだ」

 

海風「…やっぱりすごいな、那智さん………」

 

海風は最早想像もつかない様な水準の話に半ばついていけなくなりそうになりながらも感嘆の声を漏らした。その表情にはどこか曇りがあった。

 

ヒィッツ提督「だがなぁ海風よ。那智があんな風になる事が出来たのはお前のおかげでもあるんだぜ」

 

海風「え……?」

 

ヒィッツの言葉に海風は疑問符を浮かべた。あの強さと自分にどんな関係があるのだろうか?

 

ヒィッツ提督「戦いが思い通りにならないものだってのは実戦を重ねていけば嫌でも身に付く事だ。だが、戦いを重ねるごとに、経験を積むごとに、強くなるごとに……つまり『戦いが楽になっていく』ごとに心のどこかに戦いが『自分の思い通りになる』『容易く成せる』という気持ちが大なり小なり生まれちまうんだ。自分自身でも気付かない内にな。例えばお前さんが蛇口の栓をひねって水を出してそいつをコップで飲む時に、『もしかしたら上手くいかないかもしれない』なんて事を考えるか?」

 

海風「思わない……」

 

ヒィッツ提督「だろう?つまりそういう事だ。強くなる、苦戦しなくなる、負けなくなる……戦いにおいてそれは確かに大事だ。ベリーベリー大事な事だ。だがそれが続けば心にいつの間にか『思い上がり』が生まれる。いくら慢心しない様に気を付けていても逃れる事の出来無い、勝ち続ける事で必然的に生まれる『経験と自信』と言う名の『見えない慢心』がな」

 

海風「……」

 

ヒィッツ提督「そいつを消す為にはどうすりゃ良いのか。それには『負ける』事しか無い。それもこっぴどい負け方をな。だが自慢じゃあないがおれ達海特警やお前さん達NPFの艦娘連中は揃いも揃った強者揃い。実戦でも演習負ける事なんざ殆どありはしないし、そもそも実戦で負けるのは命取り、生死に直結する。おやおやコイツは困った、負けたくても負けられないな?」

 

ヒィッツ提督「そこでお前さんが那智や隼鷹達とやった麻雀だ。アレは良い転機になった。あの麻雀で那智がボロ敗けしたのはお前さんも知る通りだな。那智はゲームとは言えお前さんに大負けしたのが相当予想外の事だった様で大分ショックを受けた。それがむしろ結果的にアイツにとって良かったんだ。まぁあの対局に関してはお前さんのセンスが天才的だったのとそれと逆に那智のセンスが壊滅的だったってのもあるが、それでもあの敗北があった事で那智は戦いというものが『ままならぬもの』であるという事を再認識する事が出来た。もしあの時那智がああまで負けていなかったら、あるいは勝っていたら、このガキ共の術中に嵌まったままやられていただろうな」

 

ヒィッツ提督「お前さんはあの時の麻雀に関して那智達のおかげで自分なりの強さを見つける事が出来たと思っているが、それだけじゃあない。那智もまた、お前さんのおかげで強くなる事が出来た。言わば互いが互いを高めあった対局……互いが互いを強くした対局だったってわけだ。有り難うな、海風。お前のおかげだ」

 

海風「そっか…そう、なんだ…私も力に、なれたんだ……」

 

ヒィッツ提督「ああ」

 

ヒィッツの言葉を聞いた海風は、曇りが晴れた様な顔をしていた。

と、そこへ催眠の解けた那智がやって来た。

 

那智「こっちは終わったぞ提督。話は済んだか」

 

那智の右手には猫の様に首根っこを掴まれたウェイカー妹がぐったりとぶら下がっていた。どうやら那智の関節技(サブミッション)により完全にノックアウトされ気絶した様だった。

 

ヒィッツ提督「おお、済まない。有り難うな那智」

 

ヒィッツは那智からウェイカー妹を受け取ると、兄と同じ様に拘束した。

 

ヒィッツ提督「ウェイカー兄妹いっちょ上がり…と。っったく面倒な相手だったな…悔い改めろオラッ!」

 

ヒィッツはウェイカー兄妹の腹に一発ずつ蹴りを入れた。

 

ヒィッツ提督「これがほんとの『けり』がつく…ってな」

 

戦いは終わった。

 

高雄「いやぁ大事にならなくて良かったですね」

 

花田中将「そうだな」

 

蒼龍「刀治郎?」

 

花田中将「大丈夫だ。少し考え事をしていたと明石に連絡して入渠の準備をするよう伝えてくれ」

 

高雄「分かりました」

 

花田中将「さぁて迎えに行きますか」

 

蒼龍「そうね」

 

続く 

  

 

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