銀髪ロリ巨乳の死神がセックスお誘いしてくる 作:緋枝路 オシエ
子供達は夏休みか。
学校が休みでも施設で虐められるから、恩恵なんて感じた事は無かったな。
昆虫採集とか植物観察日記とか、花火大会とか海とか…………行ってみたかったな。
掃除中に仲良しグループの談笑がこの階まで聞こえて来たんだ。セミは五月蠅いけど子共達はそれぐらい元気、アパート住民も俺ら以外出かけているのかもしれない。
掃除は終了してまた俺が夕食を作って…………そうそう、イシュチェからリクエストを聞いて素麺を食べたんだ。
俺の仕事は具材を切っただけ、にも関わらず「美味しい」って彼女は『俺が切ったから美味くなった』と主張するかのように、艶の磨かれた唇で麺を啜る。
(二人で食べたから? 美味しくて嬉しくて…………? イシュチェは何時も一人だったから…………)
今はイシュチェが入浴中、先に入らせて貰った俺は34年間で生まれた事の無い感情で、心が痛いくらいに鳴らす早鐘を沈めようと横になってる。
同じご飯を作っていてもバイト時代はお金の為に、客や店長に怒られない為に以外の感情は持てなかった。
でも――――違った『イシュチェに喜んで貰いたい』と思いながら具材を切っていた俺が確かに居た。
誰かの為に何かをしたい。
自分が生きる為…………死にたくないから…………そうじゃない、そうじゃなくなった。
他人の人生なんかに構う余裕も無かったけど、残り一週間ちょいで俺は死ぬ。たった一週間ちょいの期間しか設けられないけど、他人の人生を生きるのもいいんじゃないかって。
誰に命令されるでもない、俺自身の意思で変わりたいと。
その相手が――――
「隣、座るぞ」
666年もの間、一人ぼっちで流浪した冷徹になりきれない少女。
お風呂に入ったらどうする? なんて決めてない…………でもこのムードって次に〝アレ〟が控えているみたいじゃないか。
「………………………………」
「………………………………」
人差し指の爪と爪が接触する距離感、かつての俺は童貞特有のキモい勘違いをしていたかもしれない。
童貞を卒業したから…………そうじゃない、彼女をもっと知りたい、僅かだとしても孤独に生き続けなければならない悲しみを俺が緩和出来るなら――――
「イシュチェ」
勘違いと思いたくない。逆に確信があるくらいだ。
「なんだ?」
人差し指と親指で爪を挟み込んでくる。こんなアプローチを受けるのは当然初めてだが、本能の興奮剤を理性と言う白湯で薄めながら気張る。
「誰かの為に生きたい、そう思った事は無かった。俺の残りの命、イシュチェの人生として生きてみたい」
*
鮮明に鼓膜が聞き取った「あの言葉」同じベクトルとして改良を加えたらしい。
私の人生として生きる、自分の為に残り期間を生きて欲しいのに今まで関わった人間はそれが当たり前であった。
死を目前にして自己利益を優先させぬ者、666年に一度だとすればその瞬間に邂逅しているのだな。
「だから…………私の為に生きるな。あの時は頷いてしまったが…………」
雰囲気に飲まれ勢いづいたまま頷いた、とは伝えられなかった。
プシュケテロスである私が私情に流され与えられた役割――――罪――――を放棄する愚行であると。
「じゃあさ、こういう頼み方はダメ?」
『俺が死ぬまでに沢山思い出作りたい、イシュチェと一緒に』
――――そんなっ、そんな申し出は…………
「ズルイぞ、私が応じると悟っているだろう…………悪知恵の働く奴だな」
好きな願いを何だって叶える、そんな能力は所持していない。身体を許せるのは『私が応じられる範囲内』で大金を寄越せは『私が応じられない範囲外』
「今になってこういう気持ちになれると思わなかった。イシュチェと一緒に居たい、思い出作りたい、自分勝手な意見の押しつけ、結果的に別れが辛くなるかもしれない…………それでも俺っ、イシュチェと一緒がいい…………」
彼なりに勇気を出した決意と理解する、言葉の途中でギッ、ギッ、幾度も歯軋りを立てる苦悶の仕草、私が一人残され続けた過去を知りながらも彼は歩み寄ってくれている。
「人間は――――最も汚い生き者だ。貴様の思想も所詮はエゴでしかない」
彼が何かを発する前、酸素を取り込む隙間も与えず私は言葉を連ねる。
汚くて――――最も儚く尊い生き者。
人間は…………貴様も死ぬ事が約束され許されている、それは癒やしだ、人間は死ねるから行動が出来る。……………………私は死ねない、世界から相手にされない有害な物体。
時折――――いやっ、400年前には羨ましいと感じていた。
醜く、浅ましい、陥れて愉悦に浸る者達でも『死ねるから羨ましい』
触れている範囲は爪と第一関節だけ。
もっと触っていたい…………指が五本、その他の造形は一つとして私の手と被っていない彼の…………私をもっと知りたいと拒絶される覚悟を持ってして…………
――――それは範囲内だ
「えっ…………?」
ダメッ、普段の表情が保てないっ、私の顔…………どうなっているのか確かめたい、けどっ、鏡を見たらきっと…………
「対等な関係、それが条件だ…………私も貴様の事をもっと知りたくなってしまった…………」
「イシュチェ……………………っ!」