抜きゲーみたいな島に住んでる後輩を攻略スるにはどうスりゃいいですか? 作:米五郎左系アイドル
『ばーなぱーいせーんっ!』
『なんだ、お前か…』
……少し前までは考えてもいなかった。
『お前とはなんですかお前とはぁ!……あーあ、最近めっきり暇になっちゃったっすねー。』
……いわゆる並行世界に移動するまでは考えられなかった日常で。
『ああ、そうだな。だが、望んで以前までの忙しなさに戻ろうとは思わないが。スス子もそう思うだろ?』
……けれども、今のこの日常こそが自分たちが追い求めていた平和であり希望の日々で。
『まあ、戻りたいかって言われたら絶対イヤっすね…。SSの仕事に反交尾勢力の対処にって、ハードすぎっすよ。』
……だからこそ、決して失ってはならない。これから襲い来るであろう苦難から守らなければならないのだ――
『それと、スス子じゃなくて伊波っす!って何回言えば呼んでくれるんっすか、――淳之介センパイ!』
橘淳之介が作り上げた日常を。
…………
………
……
「――――……可愛すぎかッ?」
何の変哲もない朝だ。
小鳥のさえずりと、外から聞こえてくる喘ぎ声をもう違和感にも思わなくなってしまった。慣れとは恐ろしい。
まだ寝惚けている頭で、起きざまに発した言葉の真意を探る。
すごく…もどかしい夢を見ていた気がする。……するのだが。
(どんな夢を見ていたのか。さっぱり忘れた。)
可愛すぎ!となるほど悶える夢であればもう少し記憶に残っていてもいいのでは、とも思ったが所詮は夢なので思い出せないなら仕方ない。
思い出せないことに延々と悩んでも仕方がないので、リビングへと降りる。
「おはよう、文乃」
「おはようございます、淳之介さん。今日は日差しが大変強く、昨日と比べて暑くなるかと。」
「この時季には珍しいな。急な温度の変化で文乃も体調崩さないようにな。」
「存じ上げております。お気遣いいただきありがとうございます。」
あの世界線オナホールの一件からしばらく経って。
B世界の”性帝”であった橘淳之介から受けた朝食ショックが未だに後を引きずっているのか、今日も今日とて朝食は豪勢だ。いやむしろ豪勢過ぎる。
美岬がいると心もとないが、美岬がいないと完食に不安が残るそんな塩梅だ。
「ふぁーあ…あーねみー。兄ーきいてー、妹一人で起きたよー。いやもうこれはノーベルあさちゃん賞受賞するレベルの快挙だわ兄あさちゃんのこと褒めて称えてついでにご飯をアーンして」
丁度あさちゃんを起こしに行こうとした所で、珍しくひとりでに起きてくる。
ノーベルあさちゃん賞がどんな賞かはわからないが、確かに快挙である。
「おおよしよしえらいぞあさちゃん。はい授賞式だあーん。」
「あーんムチャウマハムハム」
椅子に座ったあさちゃんに、あーんしてあげる。すると文乃もこちらに顔を向けて
「じゅ、淳之介さん、文乃にも何卒…」
「おおいいぞ、いつもありがとうのあーん」
「あ、あーんでございます。むべむべむへむへ」
こうしてあーんし、あーんし、橘家の朝食は何事もなくすぎていくのであった。ちなみに交互にあーんすることに手一杯で、誰からもあーんしてもらえなかった。ぐすん。
しかし、遅寝の名人であるあさちゃんが早く起きてくると朝の時間が大分余ってしまった。
「…テレビでもつけるか」
適当にSHKをつけると、一人の中年男性とマスコットがなにやら会話しているようだった。
『ズコズコさぁん 今日は何を作るんだい?』
『今日はねパコリ。子供を作っていこうと思うんだ。』
『え゛ぇ゛… 僕達二人ともオスだから子供なんてできっこなーいよ』
『そういうと思ってねパコリ。今日は用意してきたんだよ。じゃーん!出産適齢期のいい感じの女!』
『いやったぁー!じゃあ僕からいくぞー!孕めオラ!』
『トンでくアクメアン!パコってイクイクー!』
………パコってアソぼというタイトルの番組らしい。
「いや、子供作るっていう目的でやってるんだったら、遊びの範疇を超えるのでは?思いっきり孕めオラって言ってるし」
あさちゃんから鋭いツッコミが飛んでいったが、悲しいことに相手は画面の向こう。責任を取る気でやっているのかは誰にもわからないのであった。
「パコってあそぼですね!久々に見ました!私この番組の前にやってたデキるかな好きだったんですよ!最終話でちんぽさんが射精した時は子供ながらに泣いちゃって…」
射精しなければデキるも何もないのでは?
「というか、いつの間に入ってきたんだ、美岬。」
「いえ、なにやらおいしそうな匂いだなーと思ったらいつの間にかこの食卓までフラフラと来てしまいました。」
「はっはっは。美岬は食いしん坊だなぁ。そのシャケの切り身は俺がとっておいてるやつだから絶対食べるなよ?」
今日も今日とて、平和な島の平和な食卓は過ぎていくのであった。
美岬が来たことでオカズの取り合いには発展したが。シャケ返せ。
―――――
そんなこんなでやってきた、平和な授業の合間のこれまた平和な昼休み。A世界でSSに色々と迷惑をかけてしまったという所から始まったランチタイム。
今日は奈々瀬の手作りお弁当を生徒会室まで持ってきてそのまま食べる、という日なのだ。
生徒会室の前で、たまたまシュウ君と鉢合った。
「やあ、淳之介。今日も会長達とランチかい?」
「おおシュウ君!奇遇だな!よかったらシュウ君も一緒にランチといかないか?」
「会長達が許可を出してくれるのであれば、是非ともご一緒したいね。僕のデータも突然湧いて出た友人との会食のチャンスに期待を膨らませているよ」
データが勝手に膨らむのはどうなのだろうか。容量的な意味で。
「失礼します。中村です。そこで淳之介と鉢合わせまして、もしよろしければランチをご一緒してもよろしいでしょうか?」
シュウ君と共に生徒会室に入室すると、そこにはSSビッグスリーだけでなく、スス子の姿もあった。
「あら中村さん?構いませんよ?食事は人数が多いほうが楽しいですもの。いいでしょう?郁子、礼?」
「おっ、いいですねぇ。寮でのパーティーみたいでワクワクしてきた!伊波もどうだ?」
皆でランチと聞いてテンションが上がっている礼先輩に誘われたスス子。自分に質問が飛んできた時からそれはもういい笑顔で
「いいんっすか!?やったー!パーティーだー!」
とはしゃぎはじめるのであった。
「礼ちゃんも伊波ちゃんもすごいはしゃいでるけど、あくまで昼休みだからいつものしゅわしゅわ麦ジュースはなしだよー。わかってるー?」
「「はーい!」」
郁子が諌め、二人が元気よく返事を返す。あいも変わらず、仲がよさそうなSSであった。
それぞれがお弁当を広げ、食事が進んでいく。
桐香の食事の世話をしながら自分の食事もすすめていると、スス子が隣に移動してきた。
「普段ばなせんぱいとこうすてお昼食べることないんで、結構新鮮っすねー。」
「確かに放課後に話すことはあっても、お昼時限定ってなるとな。桐香達とももう一緒に食べ始めてそこそこ経つし、シュウ君とは水引ちゃん達と3人で食べる時に一緒だからそうでもないが」
NLNSの皆やSSに水引ちゃん達の3グループをローテーションで行き来しているが、普段桐香達偉い人グループと食事をしないスス子とはあまり機会がなかった。
「スス子君が会長達に混じって食事を取るとなると、他のメンバーもいるパーティーならいざしれずどうしても普段の場面だと緊張してしまうのも無理のないことだろう。」
うんうんと俺とスス子がシュウ君に首肯する。その片手間に桐香にご飯をあーんさせながらふと気づいたことがあった。
(今日あーんさせてばかりで、一回もあーんしてもらえていないのでは?)
気づいてしまった。
「誰か俺にもあーんしてくれ!」
叫んでしまった。
「何言ってんだこの先輩…」
スス子に怪訝な目で見られるも、そんなことお構いなしだ。
「今朝からあさちゃんと文乃にあーんしてばっかりで、一回もあーんしてもらえていない。そして今、桐香にあーんをしているが、誰からもあーんを返してもらえていない。
これはアーンスールの法則に反している!そうだよな、シュウ君?」
「確かに、あーんに対して一定回数のあーんでお返ししてあげるのは、かのフランスの学者アンドレ・マリ・アーンスールの発見した法則によって決められていることだ。 これが遵守されないと、あーんをするだけの人間に酷く負担がかかる……ましてや今日あーんした人数が一人ならともかく三人にもなると……」
シュウ君はそういって、奈々瀬の手作り弁当からオカズを一つ摘まんでこちらに寄越してくる。
――まさか!?
「淳之介にばかり負担を強いるのはよくないと、僕のデータも言っている。さあ淳之介、あーんだ。」
「シュウ君!?なんとよい友人をもったものだ。あーん。」
「いや、なんすかアーンスールの法則って。そして何を急に始めてるんだこの先輩方…」
またしてもスス子からの冷静なツッコミが入るが、そんなものこの友情の前には無粋なものよ。
「ダーリンと中村君のやりとりにはソソるものがあるけど…いいなぁイクもダーリンにあーんするのー!」
「何!?それなら私も淳之介にあーんするからな!」
とまあ、郁子や礼先輩もあーんしてきて。
「あらまあ楽しそうね礼、郁子?私もセンパイにあーんしてさしあげたいので――あーんもぐもぐ」
桐香にあーんをさせると何が起こるかわからないので、勝手に動き出される前に追加のあーんで動きを封じる。
すると、食事をしているメンバーであーんをしてもいないし、されてもいない人は一人になってしまう。
「え、コレあたしもばなぱいせんにあーんしてあげなきゃいけない流れっすか?」
シュウ君と俺、無言の頷き。ビッグスリーの面々も言葉に出さないものの、なにやらスス子を見る目が楽しそうである。
「うわ、完全に流れから出遅れた…全員が見てる前でやるのって結構キツいものがあるんっすけど…」
全員の視線がスス子に向く中、意を決したスス子は主菜であるお肉を箸で摘まみあげる。
そのままスムーズにあーんの流れかとも思われたが、俺と目線を合わせないようにしているのか動きが緩慢だ。
いや、目線を合わせないようにはしているが、しっかり意識はこちらに向けている――!?
少し目を反らしつつ、けれどないがしろに扱っているわけではないよというこのバランス感覚と、照れ臭さから来ているであろうもどかしさ。
「いい」
「いや、いいじゃなくてあーんされる側の人間が口を開けてくれなきゃ、どうしようもないんスけど!?」
中々じれて進まない現状に業を煮やしたスス子が、半ばダチョウのアレ的に肌に押し付ける位の勢いで肉を突きつけてきたのであーんはそこで終わってしまったが。
……あーんを恥ずかしながらにするスス子に。
そのいつもの快活さとは違った儚げな雰囲気な表情に。
ものすごくときめいていた。
後、お弁当として作られてから時間が経っているので、お肉は熱くなかった。
リアクション芸殺しだ。
需要があれば、続きます。
なくても自分が疲れるまでがんばります。
ゲームに近いテンポ感なら、セリフ前に誰が喋ってるか入れたほうが読みやすいでしょうか?