抜きゲーみたいな島に住んでる後輩を攻略スるにはどうスりゃいいですか? 作:米五郎左系アイドル
『スス子!待たせてしまってすまない!』
『もー、本当っすよ!どんだけ待ったかと思ってるんすか!なんてあたすも今来たところなんでスけどね。』
『なに!?それでは謝り損なのではないか?』
『いーんっすよ、こういうデートでは男に少し罪悪感を抱かせつつ、壺をドーンっと買わせるもんなんっす。』
『手の内を自分から明かすのか…。まあいい、毒婦を食らわば蜜壺までとも言う。では、いくか―――伊波。』
『―――っス。了解しました!…淳之介センパイ!』
『では、上官命令だ。手を出せ!』
『らじゃっす!』
伊波と呼ばれた時の、驚いたようなそれでいて可愛げのある笑顔。
手を出せと言われたときの、快活な笑顔。
そして、手を繋いだ時のひまわりのように満面に咲いた笑顔。
どれもこれもが眩く輝いていて、彼女の魅力を表していた。
ああ、この笑顔を見ることができてよかった――
…………
………
……
「――――……可愛すぎかッ?」
何の変哲もない朝だ。
小鳥のさえずりと、外から聞こえてくる喘ぎ声が耳に心地いい。
まだ寝惚けてはいるものの、今日こそは夢の内容を覚えている。…いるのだが。
(一体なんだったんだ、あのメチャ甘空間は…)
昨日は、たまたま居合わせたシュウ君やスス子と食事を一緒にとることになり、不覚にもスス子にときめいてしまったが。
まさかその日の夜に、こんなハレンチな夢を見るとは思ってもいなかった。
付き合ってから二年は性交渉をしないと、自分に固く誓っていたはずなのに。
付き合い始めるどころか、ちょっと意識したその日の夜に手を繋ぐ夢を見るなんて……!
(いや、待て…もしや昨日見た気がするであろう夢もまさか!?)
もし…もし仮に二日も連続で同じ相手の甘ったるい夢を見て、更に現実でも同じように甘いことを繰り広げるだなんて。
誇り高き童貞にしてあるまじき、浮付きではないのか?
そうなのであれば…いやそうに違いない。
――筋トレだ。
心を無にして、ただひたすらに筋肉をいじめぬくのだ。
そうすれば、この心の浮付きや、妙に昂ぶった心臓も落ち着かせることができるはず。
…………
「よんひゃくきゅうじゅうにっ…きゅうじゅうさんっ、きゅうじゅうよんっ」
自らの戒めに筋肉をほどほどに痛めつける。
トレーニングすることで煩悩を退散させ、更には体を引き締める。
やはり筋トレこそ至高。
そんな風に無心で筋トレに励んでいると、アサちゃんが部屋に来た。
「いや、兄は朝っぱらからなんてことしてんだよ。今日平日だぞ?文乃がさぁ、音はすれども淳之介さんが全然起きてこないのですって嘆いてるぞ?」
もうそれほどまでに時間が経っていたのか。中々に煩悩が消えてくれないからと少々夢中になりすぎていたようだ。
「なにっ、もうそんな時間か。きゅうじゅうきゅうっ、ごひゃくっ……ふう、待たせたな。今行くぞアサちゃん。」
リビングに降りると、文乃が少し拗ねた様な顔で、食事を用意して待っていた。
「…淳之介さんが起きている音は聞こえたのです。ですが、一向に食事をとりに降りてこられないので、先日のように人が変わってしまったのかと…」
「むっ、すまない…そこまでの心配をさせているとは考え付かなかった。ごめんな文乃」
「よいよいでございます。わたし自身で階段を上がって直接確認にもいけない、弱い文乃が悪いのです。」
世界線オナホールの一件があってから、なるべく文乃に心配はかけまいと気を配ってはいたが、どうやら動揺して自分のことで頭がいっぱいになってしまっていたようだ。
確かに、ある朝妹が平行世界の妹と入れ替わってしまって、お前なんて本当の兄じゃない!だなんて言われてしまってはショックで立ち上がれないかもしれない。
いや、そんな流れはもう既にB世界に俺が移動した時に実際にやっている。
そしてそれは、ものすごく不安で寂しくて傷付いたのだ。まさしく身を引き裂かれるような思いであった。
それこそSSビッグスリーの三人がいなければ狂っていたのではないか?と思う位には。
そんな不安を解消してあげねば。撫でてあげねばと、俺は一人憤慨した。
「あー、ごめんな文乃よしよしよし文乃は偉い子強い子だ、これから何かあったらすぐに言え?もうお前は橘家の末の妹なんだからな?よーしよしよしよしよし」
「わっわっ、そ…そのように言っていただけるのは大変光栄でございますが、頭をそのそんなにナデナデされると、ぬっへっへっへっへ」
文乃の頭をわしゃわしゃと撫でてやると、あのいつもの微妙な笑顔で受け入れてくれた。
その後も、日頃から家事をやってくれている文乃に対する感謝の言葉を送りながらよしよしし続けてやった。
やはり文乃は偉いのだ。この島でたった一人で戦っていた時からずっと。
「おーい、最初の妹であるアサちゃんを置いて二人だけの世界に行くのやめてもらっていい?大体文乃も文乃で口では遠慮しといて最初っからニヤケ顔が隠せてないんだけど…?」
こうして、少しずつ家族の絆が深まっていく橘家であった。
…………
ぬきたし
…………
昼休み
「んあぁっ、ダメっアタシまだっ、アっ♡、ランチパック食べてる、とちゅうだから…そんなにハゲしく腰とめっ、やっ、イっちゃぅ…!」
「なに?ランチファックだって?さっさと精子たくさん集めてマジイキ孕めパンパン祭りに応募でもしてな!孕めオラ!」
真ドスケベ条例が施行されてしばらく経つが、廊下を見てみると昼休みでも相変わらず性産的行動に勤しむ生徒は多かった。
そんな中、今日はシュウ君と水引ちゃんの三人で和気藹々と昼食をとっている所だ。
「いつも思っているが、ああいう語感センスってプライベートで黙々と考えていたりするのかな?」
前々から思ってはいたのだ。
孕めオラ等のオーソドックスなセリフから、セミになったり、句を詠んだりよくもまあ語彙が尽きないものだなと。
そこから出てくる当然の疑問ではあるだろう。あれ程多数のネタをいつ考えているのかと。
などと二人に聞いてみたところ、水引ちゃんから驚きの声があがった。
「えぇっ?橘くん、孕ませ文句考えたことないの!?」
「孕ませ…なに?」
アレそんな名称がついてたの?
「おいおい淳之介、島の男子なら決めゼリフの一度や二度考えることはあると僕のデータベースにも登録されているぞ?
……っと、すまない。君は最近島に越して来たばかりだったな。失念していたよ。」
「ワタシはハメドリくんの中にいたからそうでもないけど、島外から来る人とよくドスケベセックスしてた他のSSのメンバーはより一層ドスケベ語彙力が求められるからねー。」
「ああ、僕のデータにも多数のパターンがインプットされているよ。読み掛けに対してタチ返りで返せてこそ、真の返喘、真のドスケベセックスと言えるからね。」
シュウ君と水引ちゃんが、説明してくれる。
確かに島の顔として観光案内に務める人間は、どんなドスケベシチュエーションにも対応できるようにしなければならないのは当然だ。
「なるほど。それでシュウ君返喘とは?」
「ああ、そこもかい?返喘とは古くは平安時代から続いている行為で、相手の喘ぎに対し、即興で喘ぎを返せる人物が風流とされていたんだ。
それは現代でも変わらず、素晴らしい返喘が行われると見ている我々も感嘆せざるを得ないよ。」
「そんなにやることがなかったのか、昔の人間は。」
「でも、橘くん!そんな昔の人間がヤることヤってたからワタシ達後世の人間がこんなに繁栄したということを忘れないでね?」
「いやー淳之介、これは水引くんに一本取られたな。」
「「「やんややんや」」」
こうして、いつものように会話をしながら昼食時は過ぎていく…のだが。
あまりNLNSやSSの女性陣には話せない話題があることを思い出し、タイミングを計って切り出した。
「そういえば最近、と言ってもせいぜい数日前後の話なんだが聞いてくれるか?」
当然、どの事についてかも特定されにくいよう詳細はボカしながらにはなるが。
「ああ、もちろん。」
そう返してくれるシュウ君と、うんうんと頷く水引ちゃんに安心して、話を切り出す。
「夢を見るんだ。同じ女の子で、それも実在する子。その子と俺は夢の中で恐らく恋仲に発展しているようだった。
その夢を見ていると、興奮が収まらなくなってしまうし、現実でも意識せざるを得なくなってしまっているんだ。どうすればいいだろうか?」
神妙な表情で聞いてくれる二人。
ふとシュウ君が口を開いた。
「まず、前提としてだが催眠音声などの副次的な誘導があった上でその夢を見ている…という訳ではないんだろう?」
「ああ。最近は耳かきなどのソフトな癒し音声を視聴している。」
「んーと、橘くんとその女の子って、恋仲になるかも知れないほど凄く親密だったりするのかな?」
「いいや。ある程度気心は知れている、と俺は勝手に思っているが恋仲という程ではないし、そもそも向こうがどう思っているかも分からない。」
茶化さずに真剣に相談に乗ってくれている二人が、今は本当にありがたい。
二人してうんうん唸った後に、またもや先にシュウ君が発言する。
「ここ最近という話であれば、手っ取り早いのが『これは夢だ!』と割り切ってしまうことだろう。半月、一ヶ月と続くようであれば話は違うがね。」
「なるほど。実際そこまで長く続いていることでもないし、一過性のモノと割り切るのもありだな。」
シュウ君の言うとおり、何回か夢を見て、あーんされたりして、急激に意識してしまっているだけで。
少し経ったら、ああそんな事もあったな程度の認識まで落ちていることの方が高いのだ。
いいアドバイスをもらったな。と、納得していると水引ちゃんがふとつぶやいた。
「でも逆に、この後もずっと夢でも現実でも意識することが続くのであれば………」
―――恋、なのかもしれないね?
恋
確かに、続いたときの事を考えていなかった。
これからしばらくスス子の事を考え続けるようになってしまったら。
それは俺が自分でも気づかないだけで。
―――スス子に恋をしている、ということなのだろうか。
「へーっくしょいっす!」
どこか遠くで、誰かがクシャミをする音が、聞こえた気がした。
続きました。
読んだ人に受けているかどうかすら分からず怖いですが、書きました。
ペース的には半月で1話をめどにまた続くかもしれません。