抜きゲーみたいな島に住んでる後輩を攻略スるにはどうスりゃいいですか? 作:米五郎左系アイドル
『んちゅっ、れろっ……ちゅぷっ』
青藍島の景色が日に沈むころ、道を歩く二人の間で口づけが交わされる。
『ちゅむっ、じゅるっ……』
相手を貪るようなキスに翻弄されてしまう自分に
『やっぱり、バナさん、キス下手っぴじゃないすか』
それでも不思議と劣等感は感じないのであった。
…………
………
……
「――――ッ!?」
朝だ。
何の変哲もない、代わり映えない朝だ。
鳥のさえずりもあえぎ声も、耳には入っているがそのまま通り過ぎていく。
あの喫茶店でのいろいろから始まったデートから早くも数日が経った。
二人でのエロエロを経たからか色々と変わったことがある。
まずB世界の追体験である夢をパッタリと見なくなった。
その代わり見るようになったのは、A世界で起こった俺とスス子のやり取りである。
それも些細なものから今朝のようなキスシーンまで多彩だ。
急に夢を見なくなった理由まではわからないが、なにかが一段落ついたから…だと思うようにしている。
次に、俺とスス子の関係性の変化について。
この期に及んでスス子が俺に好意を持っているかどうかわからない――などという朴念仁ではない。
俺の中に渦巻いている、このいうなれば『この後輩みてらんねーぜ。おもしれー女』という気持ちが恋ではないにしろ何かしらの好意であることは疑いようもない。
が、先日のアレは告白というよりかは『宣戦布告』
お前のこと絶対恋に落としてやるからな覚悟しとけよ!? おう、かかってこい!といった選手宣誓だとおそらく互いの中で認識している。
少なくとも、俺はそう思っている。
個別√までのフラグはきっちり立っているものの、肝心の告白シーンまで段階が進んでいないようなものだ。
たとえば週明けの最初の登校日。
『ばーなぱーいせん!』ムギュッ
『おう、スス子!……当たっているぞ?』
『当ててるに決まってるじゃないすか?どうだ嬉すいすかー、童貞サン?ほれほれー』
と、このように互いに呼び方や距離感が戻っているように見えても、その実以前よりも近づいているのだ。
いわばこれは恋に落ちるか落ちないかの勝負。
その勝負にスス子は何を使っても構わないし、俺はそれを鋼の童貞力で受け切るのみである。
そう決意を新たにしながらリビングへと降りていくと、朝だというのにアサちゃんと鉢合った。
「おはよう、兄ぃ。あのさあ、ウチのクラスにSSの那賀さんっているじゃん?あのスッススッスの子。その那賀さんに昨日メチャクチャ兄のこと聞かれまくったけど何だったのアレ?」
勝負は情報を制したものが勝つ、か。いい教官を持ったものだな。
「神聖な勝負の最中だ。ちなみに何を聞かれたんだ?」
「兄の性癖、というか好み?」
「なるほど。それでアサちゃんはなんて返したんだ?」
「少し前までは処女厨拗らせてたクソインポ兄貴だけど、最近ではこの島のよさに目覚めたのかギャルビッチと実の妹でする3Pは最高だぜ青藍島にきてよかったー!って毎日言ってるって返しといた」
「後半部分妹の好みになっていないか?」
数ある情報の中から正誤を見極める技術こそ情報戦において真に求められるスキルである。
俺のオペレーター(B世界)であるなら、我が妹の情報撹乱を乗り越えてこそだ。
そんな話をしていると、文乃も何かを言いたげにこちらに寄ってきた。
「淳之介さん、文乃のところにも、その、すっす?の方?が参られまして色々と訊ねてゆかれました」
「文乃、そのすっすというのをもう一度」
「す、すっす?」
「むべむべっぽく自己紹介を交えて」
「む、むべっす……文乃っす……ふんす!」
かわいい。シャッターチャンスだ。
「那賀さん文乃のところにも行ったんだ。文乃は何聞かれたの?」
シャッター音を響かせている間にアサちゃんが話を進めてくれる。よくできた妹だ。
「い、いぇーぃ――こほんっ。淳之介さんの、お食事の好みを根掘り葉掘り聞いてゆかれました。」
カメラに向かってピースをしていた文乃が我に帰ってアサちゃんに答える。
「んで、文乃はなんて答えたの?」
「はい。淳之介さんは私の作った料理であれば大抵のものは大変美味しそうに食していただいております、と」
あながち間違いないところではあるが、その言い方では回答になっていないのでは?
「いや文乃それ先輩に対してナチュラルにマウントとってるぞ?言い方もう少し考えよ?」
アサちゃんがお姉ちゃんしている。がんばれアサちゃん。
しかし、アサちゃんや文乃に話を聞くとは、身近な人物から徐々に徐々に外堀を埋めていこうというのだろうか。
(だが、俺は決して屈しない……ドスケベな誘惑にも耐え切ってみせる……)
「それはそれとして、アサちゃんもちょっとお調子者な同級生っていう新たなジャンルを開拓しておこうな?」
「なーにが、それはそれだい!アタシは奈々瀬さんと女部田先輩と兄のスーパーギャルビッチ丼以外は認めないやい!」
「むっすむっす!むべっすむべっす!」
一家の大黒柱である俺に一悶着あっても、やはり橘家は変わらないのであった。
…………
ぬきたし…っす
…………
「おーい、淳之介!」
放課後廊下を歩いていると、後ろから声をかけられた。
振り向くと、シュウ君がなにやら慌てた顔でこちらに走ってきているところだった。
「シュウ君……SSなのに廊下を走るとは何事だ?」
「そんなことは些細なことさ。それより大変なんだ淳之介!」
「廊下を走るほどに大変なのか?」
「そうさ!……最近だが淳之介、君のデータを嗅ぎ回っている不届き者がいるようなんだ。」
「俺のデータを?」
意外な言葉である。
データを嗅ぎ回るなどという不穏な単語に、思わず体が反応してしまう。
仁浦氏は今やエナジードリンクの販売に努めているし、SSがいまさら俺のことを疑う理由もなし。
A世界での決闘以降姿をみない防人老人も、わざわざデータを求めずとも他に方法はいくらでもあるはず。
また新しくこの島を脅かす脅威が現れたのかと勘繰ってしまう。
「僕も直接聞かれたさ。僕が今まで収集してきた君のデータを開示してほしい――だなんて無茶な要望だったからもちろん拒否したさ」
意外な行動である。
シュウ君のデータベースから得られる情報など、新手の脅威にとっては皆無に等しい。
これはシュウ君のデータ収集能力をけなす訳ではなく、単純に友人として出会いデータをとりはじめたタイミングがNLNSの活動の必要性がなくなった時だからだ。
必然的に得られる情報も、戦時の俺達の動き方ではなくプライベートや趣味など個人的なものに留まるし、それより重要な住処などの情報も入ることはない。
誰が、いったい、なんのために?と頭の中で疑問符が渦巻いている。
「それにしても、直接聞くなんて事は相手は顔見知り―――」
「悪いが淳之介…どうやら追っ手が来てしまったようだ。これにて失礼するよ!」
なのか?とそう聞こうとしたところで、シュウ君は突然走り去ってしまう。
結局誰がシュウ君伝手でデータを聞き出そうとしたのかという肝心なところは分からずじまいであった。
シュウ君のデータが聞けていないぞ。
むにゅっ
「どうしちゃったんすかねー、ベルトさん?急に廊下なんか走り出して」
「なんか追っ手が来たとか言っていたぞ」
腰に両手が回されて、背中にはやわらかい二つの物体の感触。
どうやら抱きつかれているようである。
もちろん相手はスス子だし、なんならこんな風に何も言わずに抱きついてきたのはここ数日でこれが初めてではない。
というか最近はいつもの『ばーなぱいせーん!』が聞けない時が多くて少し寂しい。
「島外の人間かは分からないが、最近俺の情報を嗅ぎ回っている人間がいるらしい。シュウ君も直接聞かれたと言っていたしスス子も十分気をつけてくれ。……それにしてもなぜシュウ君のデータベースを?」
いや本当になぜなのだ。
そのデータには俺の歴代購入同人作品のデータベースとそこから導き出されるオススメ作品を紹介するメカニズムしか導入されていないはず……
「あー、案外ハニトラみたいな感じにシモから落とすために調べてるかも知れないっすよ?」
「ハニトラ、そういう手段もあるのか……」
「うんうん、特にパイセンは青藍島だからって素性も知れない女の人とススケベスッススしたらいけないんすからねー?」
「肝に銘じておこう。ところで今後ろから胸を押し当ててくる怪しい女がいるんだが、それはどうすればいい?」
「そ、れ、はー、血統書つきの由緒あるブランドおまんこなので即ハメおっけーってやつっすね」
「血統書」
犬か何かだろうか。
ようやく満足したのか、押し当てていた胸ごと背中から離れていく。
「ほらほらー、どすかどすか?SS業務でたまたま見つけた無人のスポットがあるんっすよ」
お尻をフリフリとゆすって誘ってくるスス子。
その誘惑には屈しないようにしつつ、少しだけ気になっていたことを聞く。
「なあ、スス子」
「なんすかパナばいせん」
パナ焙煎コーヒーとかありそう。
「いや…こうして狙われているというか堕としにきているというのは感じるが、そもそもの話なぜ俺なのだろうかとふと疑問に思ってな」
一連の夢から互いを強く意識することはあっても、それはあくまで些細なものでしかない。
他に何か要因があったからこそ、今のような距離感になっているではないのだろうかと、柄にもないことが気になっていた。
「……あー、それ聞いちゃいます?ススとしては物凄く恥ずかすうことになるのは予想できるんであんまり話したくないんすけど…」
「聞いちゃいます」
俺の真剣なまなざしから、避けては通れない話題と覚悟したのだろうか。
少し大きなため息を一つ吐いて。
スス子はいつぞやの(といってもそこまで経っていない)あーんの時のように、少し目をそらして気恥ずかしそうに話し始めた。
「ちょっと想像してほしいんすけど」
「ふと見た時に惹かれた相手がドスケベ戦役の英雄として祀り上げられてて、お近づきになろうと思って話しかけたらアタシとすっごく距離が近くて
……まるで何年もい居沿った友人みたいに振るまわれて、段々と一緒にバカ騒ぎをしていくようになる、っていう関係性の人がいて」
「それで恋心を抱かないほうが、頭どうかしてるっすよ」
「でも、その人の周りには前々から仲良くしてる美人さんが沢山いて、これじゃあアタシはよくて精々友達ポジション止まりかな?なんて諦めてたら
その本人から、勘違いしてもいいぞー、本気で好きになって俺のことを振り向かせてみせろー、なんて言われて」
「そんな挑発されたら、ぜったい、ぜったい、ぜーーーったい、アタシに夢中にさせたくなっちゃんすよね」
なんてこともないように言い切るのであった。
俺は驚きのあまり二の句が継げなかった。
「今は、返事はいらないんです。いつか絶対橘先輩から、本気で、心の底から、愛してるって言わせてみせます」
その言葉は、俺に言い聞かせたものなのだろうか。
或いは、自分自身への決意表明だろうか。
それは分からなかった。
「……なーんて、ちょっと湿っぽくなっちゃったっすね。ついでにアタシのオマンコも湿ってきたんで当初の予定通り空き教室へレッツラゴーっす!」
スス子が俺の体をずるずると引っ張っていく。
先日スス子との真剣勝負に負け、すっかり負け犬精神が身についてしまった体は思うような抵抗をしてくれない。
この体が動かないのは敗北のトラウマのせいだ。他の要因はないはずだ。
放課後の誰も居ない教室で、二人きり。
かたや妖艶な雰囲気を纏う少女と、かたや借りてきた猫のように大人しいタチで橘淳之介。
教室の机を少しどかして作ったスペースに少女は立ち、反対に俺は椅子に座らされている。
「いつか言ってたっすよね、愛がないセックスは~なんて。」
「……ああ、誇り高き童貞は愛がないセックスなど決してしてはいけない。」
「愛してるなんて大仰に言ってほしいわけじゃないんっすよ。ただ、スス子すこだー、って言ってくれれば今はそれでいいっす」
彼女が真に求める愛を、今俺が持ち合わせていなくとも。
今俺が持つ親愛を表現すれば、それが性行為の大義名分になる、と。
性愛も、親愛も、友愛も、等しく愛である。
そういう理論なのだろう。
普段であればこのような挑発には決してノリはしなかっただろうが、今回は少し状況が違う。
スス子の気持ちの吐露に、俺の心が揺り動かされているというのは動かぬ事実だ。
そのユラユラとゆれている心が、俺の中にある愛をさらけ出してもいいぞと判断してしまう。
「今は、これしか言えないが。――スス子、すこだ」
「そっすか。……アタシも淳之スコ先輩がすこっす!」
そう言うやいなや、唇を合わせてくる。
その瞳はいつもの快活さからは程遠くとろんと細められており、まるで発情した肉食獣を思わせる。
キスをしながらも、手はこちらのズボンをやさしくまさぐり勃起を促してくる。
スス子すこだ、と愛を語ったのだ。
であれば、愛のあるセックスになだれ込むのはある意味当然の帰結であった。
次回 ススケベスッスス(本番予定)
ご期待ください