抜きゲーみたいな島に住んでる後輩を攻略スるにはどうスりゃいいですか? 作:米五郎左系アイドル
ススガキをわからせてから、一月程度は経った。
時折その情事を夢に見るが、以前と比べるとそういった夢を見ることは大分少なくなった。
実際に体を重ねたせいなのか、学園で話す際もぎこちない会話をすることが少しだけ増えた。
スス子がその度にいつものように軽口をたたいてなんでもないように振舞うが、なんでもないなんてことはない。
”わからせる”とはいったものの、この島に来て初めて自発的にセックスをしてしまったことには変わりないのだ。
今まであった相手から襲われてしまい……というパターンでもなく、こちらの世界に戻るために半ば無理やり……のパターンでもない。
互いが相応の感情を持った上での、両者合意の上での性行為であったことは疑いようがない。
それをススガキと大人のわからせ合戦というオブラートに包んでいるだけだ。
いつか、ハッキリとさせないといけないのは分かっている。
これが体だけの関係なのかどうか。
分かっては……いるのだが。
「これより、生徒会主導によるSSとNLNS合同のバーベキューパーティーを開催します」
「予算に関しては、この私SS代表兼水乃月学園生徒会会長の冷泉院桐香がどうにか話をつけてきました。なので、今回は何も気にせずにぱーっと食べてぱーっと騒ぎましょう」
「礼?号令を」
桐香が宣言し。
「はっ! えー、それでは……ここを、生ハメキャンプ地とする!」
「お肉はナマじゃダメだからねー!」
礼先輩と郁子が取りまとめる。
「イベントの導入が随分雑だな!?」
SSビッグスリーの面々が放課後いきなり教室に現れたかと思えば、学園の裏山まで連れて行かれていきなりバーベキューである。
しかし、周囲を見てみると驚いているのはどうやら俺だけのようでNLNSの他のメンバーは全く動じていない。
美岬はともかく、アサちゃんや文乃までもが慣れてしまったのだろうか。
自然といくつかのグループにわかれていった。
「うほぉぉぉぉ!お肉ですよ!新鮮なお肉!あぁ、どのお肉からいただこうかなー……」
「こら美岬、ちゃんと焼いてからよそってあげるから少し待ちなさい?」
「うぉぉ、奈々瀬さんの焼いたお肉ですと!?おいこら力士、あっちで那賀さんが焼きそば屋台やってるからそれ食べて来い。私は奈々瀬さんのお肉独り占めすんだよ」
「どっちも食べます!ごっつぁんです!」
「うわ、ダメだこいつはやくダイエットさせないと。とりあえず共食いにならないようにこのお肉はもらっておくよ」
「アサちゃん、お肉の独り占めはダメよ?折角のバーベキューなんだから皆で楽しまないと損なのだわ?」
「うほぉぉぉぉ!奈々瀬さんに怒られた!今だけは奈々瀬さんの視線を独り占め……今だけは網の上で様子を見てもらっているお肉以上の扱い!ありがとうございます奈々瀬サマ!」
アサちゃんと美岬も根っこの部分は大概似たような素質あると兄は時折思う。
「文乃ちゃんは、いつも淳くんの家でご飯を作ってくれてるから今日はお休みしよ?こういう時はお姉さんに任せてたっぷり食べて大きくなるんだな!」
「むへむへ……ありがとうございます」
「って、もうなんか食べてるんですけど!?大丈夫?ナマじゃないかそのおニク?」
「はい。あちらのすっすの方が作られている焼きスバと焼きスバでございます」
「ん?焼きスバが二つあるんだな?って焼きサバと焼きソバだよ!別の料理だ!」
「へいらっしゃいっす、新鮮な焼きスバとソースの効いてる焼きスバ焼いてるっすよー!」
「うほぉぉぉぉ!美味しそうな匂い!とりあえず二皿ずつもらいます!」
「はい、まいど!落とさないように気をつけてくださいっす!」
どこにでも湧くなぁ、美岬は。
その後少し経ち参加者のおなかが膨れつつある時間帯になると、それぞれがテーブルを移動し始める。
SSのメンバーを中心にわちゃわちゃしてた礼先輩が、黙々と奈々瀬に用意された肉と野菜の盛り合わせを食べる俺の横へと座る。
「どうだー、食べてるか淳之介?」
「ご覧の通り、鉄板の前に立つことなく食べ続けています」
「それは、なんというか……果報者だな?私からの選別の牛肉だ!よく味わえ!」
そう言うと、礼先輩は自分の皿に乗っていた焼きたてお肉を俺の口元へと運んできた。あーん。
「ウマいだろ?予算が許す限りいい肉を買ってきたからな!」
いつもの調子の礼先輩だ。どうやら、麦ジュース等は振るわれていないらしい。
「な、なあ……淳之介?……少し聞いてもいいか?」
その後少し歓談していると、礼先輩が唐突に恐る恐るといった感じで尋ねてきた。
俺は無言でうなずいて続きを催促する。
「こ、この間伊波とその、コトに及んでいただろう?……伊波とはどういう関係なんだ?」
ああ。そういえば、以前空き教室でセックスをしていた時に礼先輩に見られていたんだったな。
「話すと長くなります。具体的に言うとこの島の歴史位には長くなるかと思いますが、しますか?」
「ああ、いや。そこまで長いなら大丈夫だ」
軽く茶化すと、礼先輩が少し引きつった顔をして拒否する。
あまり、人様に話せるような内容ではないから少し誤魔化した。
「最近、伊波が悩んでいるようなんだ。具体的に何の悩みかという所までは聞けていないが、もし淳之介が絡んでいるのであればと思ってな。」
「悩んでいる……と言うと?」
「丁度一月前ごろから巡回中によくため息をついたり、ボーっとしていることが増えたとの報告を受けている。実際私も何回かそのような姿を目にした」
……心当たりがないと言えば、嘘になるだろう。実際にソレが原因かどうかは別として。
「で、まあなんだ。この間の教室の件ともし関係があるなら、しっかり区切りを付けた方がいいぞと、年上からのアドバイスをしに来ただけだ」
「も、勿論双方合意の上であろうことは、淳之介のことだから心配していないぞ!」
返答に悩んでいると、急に明るい声で励ましてきた。
「ありがとうございます。すこし気持ちを整理してみることにします」
「そうか、頑張れ!じゃあ、私はヒナミの所に行ってくるよ。この後も明日に響かない程度に楽しむように!」
そう言って席を立つ礼先輩を、手を振って見送った。
その後、なかなか減らないお肉の相手をしていると急に身動きが取れなくなった。
体が見えない何かで縛られている感覚。
以前にも体験した経験のあるこの感覚は……
「糸、か」
「はいそうですSS代表兼水乃月学園生徒会会長の冷泉院桐香のお得意の糸です先輩はいアーン」
またしても言われるがままに、口を開き桐香からのお肉あーんを受け取る。
「あっ、ズルいトーカちゃん!イクもダーリンにあーんするー!」
一緒にやってきた郁子に続けざまに肉をぶっこまれる。
ビッグスリーは全員揃ってお肉を差し出してくるあたり肉食系女子であることは間違いない。
「ね、ダーリン。この間言ってた夢の登場人物ってイナミちゃん?」
いきなりド直球が飛んできた。
ちなみに桐香は、人を糸で縛ってあーんするという危険極まりない行為をした事によって文乃にお説教されている。
いまだに苦手意識は抜けないようだ。
「そういえば言ってなかったな。スス子が出てきたんだ」
「そっか。とりあえずは解決、したのかな?あの後変な症状が出たりとか、してないよね?」
「問題ない。いつも通り男前な橘淳之介だぞ」
「なら問題ないか」
決め顔で返答すると、まるで興味ありませんよという風に流されてしまう。
「イクの口から言うと、塩を送っちゃうみたいで少しイヤだったんだけど、トーカちゃんのお説教長そうだからイクが話すね。
今回のイベントね、トーカちゃんがダーリンのためにって計画してくれてたイベントなんだよ」
なかなか戻ってこない桐香を見かねてなのか、ポツりと郁子が話し始める。
その中のダーリンのため、というフレーズに疑問が湧いた。
「俺のため?」
「うん。ダーリンのため。勿論SSやNLNSの皆にも楽しんでもらえるものにしたい!って気持ちはあるだろうけど、でもやっぱり一番はダーリンのため」
つまり、このバーベキューはあくまで目標を達成するための手段でしかないのだろうか。
「お祭りとかってさ、皆気分がよくなってちょっとした勇気がもらえるんだよ。水乃月にはあんまり似合わないだろうけど、学園祭の打ち上げで告白するとかさ
それとおんなじだよ。ダーリンに少しだけ勇気を分けてあげたいって思ってトーカちゃんが作ったイベントなんだよ?コレ」
「題して、『恋よ実るか!?燃えるハートで肉を焼け!コイカツバーベキュー』ですよ、先輩?」
ようやくお説教から開放された桐香が、いつも登壇しているときのような感覚でイベント名を告げる。
そのイベント名は、最初の桐香での挨拶では語られていなかったはずだ。
「やっぱりイク達も気になるんだよね。そういう両片想いみたいなぎこちないのを見てると」
「先輩が、後一歩を踏み出すお手伝いになればと思ってこうしてお肉を焼いては食べ、焼いては食べているのです」
「桐香、そんなに食べるとお尻にお肉が――」
「つきません」
「そうか」
つかないらしい。
最早、ビッグスリー相手に隠し通すのは難しいと判断し、単刀直入に聞いてみることにする。
「ある程度分かっていたのか?その……俺が誰を気にしているかっていうのは」
「結構分かりやすかったよ?ダーリン、イナミちゃんが来ると目が泳いで語彙が落ちる」
どうやら予想以上に分かりやすかったようだ。
「今、私達は自由に人を好きになり、自由に付き合い、自由に睦み合うことができる。青藍島はソレが許される島に変わったんです
先輩も自分に少しだけ自分に正直になってみてはどうですか?」
好きな相手と、好きな恋愛が自由にできる島。
俺がこの島に来た当初は、ソレが許されない島だった。
だからこそ、その元凶であるドスケベ条例を潰そうと動いていたのだ。
そして現在。俺は好きな相手が―――。
「仁浦のオジサマが、日が暮れたタイミングで大きい花火を打ち上げてくれるらしいんだ」
「時間にすれば今から二時間もしないうちに始まるでしょう。それでは先輩、私達はNLNSの皆さんを誘ってくるのでこの辺りで」
「ダーリン、ファイトー!」
そう言って、桐香と郁子も俺の元から去っていく。
頭の中では、この後どうすればいいのだろうかという思考が渦巻いていて手を振って見送れたかどうかの記憶さえない。
このイベントは、勇気を出せない俺のために皆が作ってくれているイベント。
皆がどんな気持ちで、このイベントを考えていたのかなんてことはまるで想像できなかった。
「やあ、淳之介。あーん……はもうお腹いっぱいのようだね。隣失礼するよ」
椅子に座ったまま考えていると、隣に親友であるシュウ君がやってきた。
「あぁと……実を言うと、僕は話は大体聞いているんだ。今回のイベントの本当の趣旨も、そのターゲットもさ」
なんのけなしに、世間話のような感覚で打ち明けるシュウ君に、それでももう驚きを感じることはなかった。
漠然と、シュウ君も何らかのアドバイスをしに来てくれたのではないかという淡い期待すらあった。
「なあ、シュウ君。俺は、どうしたらいいと思う?」
アドバイスを求めてそう質問すると、シュウ君の顔が信じられないものを見たという表情に変わった。
「そんなこと、僕のデータにはないぞ?」
ある意味で聞き慣れた一言であった。
しかし、その一言は助言を求めていた俺の心にやけに鋭く刺さった。
「仮にデータがあったとして、君はその通りに従うのかい?それがどんなに酷いデータであっても?
……淳之介の口から直接は聞いてない気がしたので改めて聞くが、君はスス子君……いや、那賀伊波という女の子をどう思っているんだい?」
橘淳之介が、那賀伊波という女の子をどう思うか。それを真剣に考えたことはあっても、言葉として真剣に発したことは、恐らくない。
だがしかしというべきか。だからこそというべきか。
その気持ちは言葉となって、迷うことなく口から出ていった。
「俺は、那賀伊波という女の子が好きになっている。一緒にいたいと思うし、隣で笑っていてほしいと、そう、思っている」
スっと、胸の中にわだかまっていた感情のうちのひとつが消えていくような錯覚を覚えた。
自分が、スス子という、那賀伊波という女の子とどう向き合っているのか。どう向き合いたいのか。
それが、言葉にすることでハッキリと見えたからなのだろうか。
「そうか。では君がとる選択肢は二つに一つだ。その気持ちに蓋をして何も伝えないまま元通りの日々に戻るか、元通りの日々を壊してでも気持ちを伝えるかだ。」
「シュウ君。それは選択肢ではないぞ。俺には伝えるという択しか見えなくなってしまったからな」
その俺の言葉を聞き、シュウ君が再び信じられないものを見たという表情に変わりそして微笑を浮かべた。
「どうやらいつもの淳之介らしさが出たじゃないか。僕が隣に座るまでの君とは大違いだ」
「俺は悩めるお年頃ってやつだからな。シュウ君のおかげで踏ん切りがついたぜ」
「うじうじしている淳之介なんて、僕も、僕のデータも見たくないからね。おっといい時間だ、そろそろ花火に誘う相手に声をかけなきゃいけないだろう?この辺りで失礼するよ」
「ああ、ありがとうシュウ君」
今度は、しっかりと立ち上がり手を振って見送ることができた。
踏ん切りがついたというのが一番表現としてはいいのだろう。
シュウ君だけではなく、礼先輩や郁子や桐香もそれぞれが事情を知っていて、背中を押すように声をかけてくれた。
自分でも恋と分かっていなかったこの気持ちを、それでも皆が応援してくれていたのだ。
その事実に、今更ながら少し泣きそうになる。
が、今はシュウ君の言った通りスス子を花火に誘わなくてはいけないだろう。
そう思いスス子の姿を探そうと、先ほど鉄板焼きをしていた辺りを見回すが見当たらない。
一体どこに行ったのだろうか。
「どしたんすか、バナさん。誰か探してるんすか?」
「ああ、スス子か。スス子を見なかったか?」
「何言ってんだこの先輩、なんか悪いキノコでも食ったんすか?」
いつのまにか、隣に座っていたようだ。
早速本題に入ろうとする俺の手に、なぜか肉の乗った皿と箸が渡される。
「これは一体?」
そして目の前には、口をあけて何かを催促するスス子の姿。
…………
………
……
「いや、あーんするっすよ!?」
妙に長い間の後、突然スス子がキレた。
「スス、さっきまで焼きスバ作りでものすごく忙しかったんっす!それこそお肉を食べる余裕もないくらいに!」
「それとあーんと何の因果があるかが分からん」
「アーンスールっすよ!」
「いやだからあーんをする意味が――」
「あーんするじゃなくて、アーンスールの法則!あーんをする回数とされる回数が近くならないと負担が生じるって法則の話っす!」
ああ!最初に夢を見始めた辺りで使用した法則か!
「バナさん今日はあーんされてばっかりだから、ススがあーんしてもらいに来たんっすよ。ほれ分かったらはよはよー」
嬉しそうに、口をあけて待つスス子。
その口に、ちょうどいい塩梅でお肉をあーんさせていく。
もぐもぐと味わって食べるスス子。あまりの美味しさに口が軽くすぼんでいるところもまた彼女らしいと言える。
(そうか。こうして、楽しそうにしているスス子を見ていると、俺まで楽しくなってくるから)
だからこそ惹かれていったのだろう。
(一度、はっきりと心で思ったことを言葉にするだけで、こうまで変わるものなのか)
「なあ、スス子。今日日が暮れたら花火をあげるらしいな?」
「あー、話には聞いてたんすけど、マジでやるんすか。気合入ってるっすねー」
「一緒に、見に行かないか?二人きりで」
「っ……いいっすよ。見に行きましょう、二人で」
あーんを継続しながら、そんな約束を交わす。
今夜、俺はこの気持ちに決着を着ける。
橘淳之介の、那賀伊波に対する気持ちを打ち明けるのだ。
その後は、彼女が決めることだから。
大変お待たせいたしました。
多忙ゆえ難産となってしまった今回のお話は、執筆も間が空いてしまい文体のブレなどなかったか不安に思います。
よろしければ感想などいただけると励みになります。
淳之介の誕生日までに、ひとつの完結を迎えようと思っております。
それまでこのお話にもお付き合いください
余談 ぬきたしファンミ二次応募やってるみたいです。