あなたのために・・・ 作:優作
「志保 今度 店を大きくできるぞ」
「良かったわね。アナタ」
3か月前の夫の歓喜の言葉が、まるで昨日のことのようだった。
業者の突然の倒産により、出店計画が頓挫し、多額の借金だけが残っていた。。
夫婦ふたりで駆けずり回りって、一部は工面できたが、
焼石に水だった。
先日は、夫と二人で依頼していた建設会社の社長に
支払いの延期を懇願しにいってきた。
「私たちの関知するところではありませんな。
支払うべきものは、きちんと払ってもらわねば」
「そこをなんとか。店がきちんと立ち上がりさえすれば
お支払いできるんです。」
「社長さん お願いします!」
「奥さん 今の状況で、どうやって立ち上げるんですか。」
「そ・・それは」
「残念ですが、期限は今月末ですよ。」
力なく席を立ち去っていった夫を追いかけようとすると、
ぼそっと声が志保の背後から聞こえた。
「まぁ 奥さん・・貴女次第では考えなおしてもいいんだよ・・」
驚いて香川の顔を見ると、
険しい皺深い顔をにやっと少し口元を歪めていた。
「し・失礼しますっ」
「せいぜいあがいてみなさい。私はいつでも待ってますよ」
あの日以来、
社長 香川からかけられた言葉が志保の耳から離れない。。
「だめだっ。明後日までに・・なんとかしないと・・くそっ!」
「・・・あなた・・」
「くそっ!あの建設費用さえ・・なんとかなれば・・」
苦渋の表情で思い悩んでいる目の前の夫の姿を見て、
志保もまた悩んでいた。。
そして・・・ついに。
「・・・・・・私・・・うん・・ちょっと行ってくる」
「志保?」
「そういえばもう1件あてがあったの思い出したの」
意を決した志保は夫を勇気づけようと、
凜とした顔をして力強い声をかけ、出掛けた。
志保は、白いシャツ、白いジーンズに履き替えて
家を出て駅に向かったが、駅に近づくにつれ足取りは重くなってゆく。。
(・・私が・・・私が頑張らなくちゃ・・こうするしか・・)
手にしたスマホで、自らかけたことがない電話をコールする。。
コール音が鳴っている間、手が小刻みに震えた。。。
6度目のコール音が鳴り終わり、もう諦めようかと思ったそのとき。。
香川の野太い声が耳に入り込んできた。
「そうか・・・・連絡をくれると思っていたよ・・・」
「奥さん 貴女は賢明な選択をしたんだよ。これで彼も救われる」
会社に着くと、香川はおらず、指定された社長の車に乗ると、
運転手が到着と告げた場所は、志保が見たこともないような立派な料亭の屋敷だった
そして、待っていた女将が奥座敷に連れて来られた。
去り際の女将の視線が志保をさらに不安にさせた。。
待っていた香川と座敷机を挟んで正座をして座っていた。
周りに誰も客がいないかのように静かな部屋だった。
香川から話はじめるでもなく、じっと香川の視線に耐え、
気まずく居心地の悪さを感じていたところに料理が運ばれてきた。
「さぁ・・せっかくだ。奥さん。 この料亭の料理は極上ですよ」
香川は食べ始める。
志保もそれに従って箸を手にして口に運ぶが緊張のあまり、何も味がしなかった。。
目の前で、香川が話していたが、あまり耳にはいらなかった
ついに食事も終わりをつげる
志保は、身体が火照り、頭がぼうっとしていて、緊張のあまり
香川に勧められるがまま、お酒を飲んで、いつもより飲みすぎていた。。
料理も下げられ、気まずい空気が流れる。。
「あ・・あの・・今月末の・・お支払いなんですが」
「あぁ・・わかっておるよ・・私は約束は守るよ」
香川は立ち上がると、女将がでていったふすまと反対側の
ふすまをすっと開く。。
1組の布団が敷いてあった。。。
「・・さぁ 奥さん・・はじめようか」
志保は身体が強張る。。。
だめだ。。もう後悔しても遅い。。
「これで彼は店を開くことができる・・・貴女は一晩、身を委ねるだけ」
香川は開かれた和室の奥においてあったソファに座って
動けない志保にゆっくりと優しく声をかける。
「さぁ 奥さん 脱ぎなさい。」
志保は逆らえなかった。
お酒で火照っている身体がさらに熱くなる。
志保はすっと立ち上がり、香川をきっと睨むが
香川の貫禄ある視線でみられて、目を背ける。
香川の視線を避けるように顔を右下に落としながら、
白いシャツのボタンを上から順に外してゆく。。
ぶるんと、白いブラに覆われた乳房が現れる。
そして、凛とした視線を香川に向ける。
(ふふ・・まったく気丈な女だ・・わしを睨む目はまだ力強さが残っている)
香川は志保の芯の強さに感嘆する。
(夫のためにその身を捧げる若き妻・・まったく良妻だ)
志保は、香川の視線に耐えていた。
両手を胸の前で隠すように組んでいたが、小刻みに震えているのがわかる。
(まずは今宵、不貞によって得る快楽の味をたっぷり味わせてやろう
今日が終わるとき、奥さんはもう今の奥さんではなくなっているのだよ・・)